14 キャッチのメカニズム!
今回は、重要な話です!
おそらく、水泳をやっていくなかで一番悩むのがこれではないでしょうか?『キャッチ』。水をとらえる・・。私にとってキャッチは難解でした。
昔の私はこれがなかなかできないで苦しんだ・・。しかしこれは、思い込みが邪魔していたんです。何冊か買った教本に書いてあることを信じて、疑わずにそのとおりにやってた。10年以上前の教本だけど、あれじゃいつまでたってもできるわけない!ってことがわかったよ。
今だから言えるんですが、昔の私はズバリ、1軸クロールだった。ローリング角度が大きい、いわゆるオーバーローリングだったんです。
肩関節がめちゃ固い私が、ロール角が大きいままハイエルボーなどやろうとするからおかしな事になっていたんですね。私がハイエルボーをやろうとするには、体を完全にフラット(ローリングしない状態)にしないと出来ない。これではまともなクロールなど泳げやしない。
ハイエルボーが出来ない私が、ローリングしつつしっかりキャッチするには?以下のビデオをご覧ください。流体力学的な根拠がなきゃ、わかんないのです。↓
※引き寄せられ効果。専門用語ではドラフティング効果と呼んでいます。
引き寄せられ効果を利用してキャッチするには、水中へ斜め前方に腕を伸ばせば(グライドすれば)いいんです。この時はもちろん手の甲側に水がぶつかってくる。
(※選手のグライドは、手先が水面ギリギリをキープしています。つまり手の平側に水の抵抗を受けている。だから揚力が生じる。ただし、これを行うには、肋骨を大きく広げることが大前提。
肋骨が大きく広がらないと、下半身が下がるもしくは、背中が反る原因になる。私は選手ほど広がらない為、水面にキープしない。その為、選手ほどの揚力は発生しない。)
そして一瞬脱力するんです。すると肘は緩む(肘を意図的に曲げるのではなく、ニの腕の力を抜く)。また、腕は手前に若干引かれる。だって、グライド時グーンと大胸筋と広背筋を伸ばしてる(すなわち肩甲骨を挙上している)んですからね。大胸筋と広背筋が弾力で元に縮む(肩甲骨かがニュートラルポジションに戻る)わけです。すると今度は、手の平側に水の抵抗を受ける。これがキャッチ。
そして、すばやく漕ぐ。
漕ぐ??
そう、漕ぐんです!
私は今まで、内旋しながら引く!と表現してきました。確かに運動学を理解出来る人にはこう伝えたほうが解りやすいんですが、一般の人はピンとこないですよね。(医療従事者のよくないところは、専門用語を使うことですね)
そう、手漕ぎボートのオールで漕ぐイメージです。
いや、カヤックの漕ぎでもいい。
引くと書くと、肘からどうしても引いてしまう。また、かくと書いてもしっくりこない。
漕ぐと書いてみると、あっ!と思った人もいるのでは?
漕ぐというのは、オールを立てた状態で動かすでしょ?
そう、肘から先全体を立てる。前腕を立てる。これがよくある表現、『肘を立てる』です。
キャッチするには、
肘から先をオールだとイメージすることが一番大切なんですね。
オールを立てる。そして漕ぐ。
これが水に乗っかるということ。
このようにキャッチを重視するんです。これを前ピーク(初動負荷)のプルと言います。
従来からあるやり方に、スカーリングしながら、始めはゆっくり、後半は加速して押す。とあるんだけど、要するにフィニッシュ重視なんだね。水を動かしながら(水を逃しながら=揚力を発生させながら)プルしているわけなんです。これを後ピーク(終動負荷)のプルと言います。
もっと簡単に言うと、感覚的にプル前半は『引く』になり、プル後半は『押す』になるでしょ?
プルの前半後半どちらを重視するか?と言うのは、広背筋主役にするか、上腕三頭筋主役にするかの違いです。
私は、もちろん『引く』を重視します。理由は、大きな筋肉(広背筋)を使えるからです。『押す』は、小さな筋肉(上腕三頭筋)を酷使するからすぐ疲れるんです。
というわけで、伸ばした腕を、すぐに下げて(プレスダウン)徐々に後ろへかかないように!しばらく静止(グライド)する。かくのを『がまん』するんです。そして、一瞬カを抜いてすばやく漕ぐ。メリハリが大切。
少々専門的になりますが、『水の抵抗は速度の2乗に比例する』。
素早くプルすれば、それだけ手の平側に水がぶつかってきます。ゆっくり動かせば、ぶつかりも弱くなる。つまり、スカスカになる。
というわけで私が、選手のようにハイエルボーが出来なくとも水をとらえられるのは、素早く動かすことで得られる、ドラフティング効果を晟大に活用しているからです。初動負荷 型のプルです。
ついでにS字プルですが・・。理想のプルは、キャッチしたらいっきに大腿前面まで移動させることです。これはゆっくり泳ぐときも、速く泳ぐときも同じです。
余計な動き(S字プル)をすると、それだけ時間をかけることになり、前に伸ばす腕とのタイミングがズレます。つまり体幹の回転を殺すことになります。
10の空手を思い出してみてね。ズレた分、残りは腕力で水をかくことになる。シンプルに動かせば(I字ストレートプル)体幹と連動し、水を動かさずに体だけを前に進めることができます。
補足!
私の実践しているストレートプルは、(左右方向の)揚力を使いません。これは、ふしうきが出来るつまり、フラットに浮いていることが前提だからです。
私の場合、ふしうきで足が浮いているから、プルの揚力で浮かせる必要はないんですね。
特にキックなしクロールで揚力を使ったら、かえって下肢が沈みます。
よく学生さんが、プルブイ挟んでキックなしクロールを練習しています。が、足が沈んでいる人が結構いる。プルブイ挟んでいるのに?原因は、胸郭が固いのに、手先を水面にキープしようとするからなんだね。まさか、ふしうきが出来ないわけじゃないよね?そう信じたい。
揚力は上半身を浮かす為のものです。結果、反動で下半身は下がります。それを補おうとバタ足で頑張って下半身を浮かせるんだから・・。先程も述べましたが、肋骨を大きく広げないから足が下がるんです。
それに、ふしうきでフラットに浮けるのなら、わざわざ揚力を使う必要はないでしょ?
いや要るよ!ボディポジションを上げる為にね。
それは、泳速が上がれば自然に浮き上がるよ。腹圧を意識して息を止めてごらん?私はそれだけでぐんとボディポジションが上がる。何も手の平の揚力に頼らなくともいいんじゃない?
ついでに、大人の方は?やっぱり揚力が発生している。それは水面に平行に腕を伸ばすから。胸(上半身)に水の抵抗を受けている。だから足が沈む。そりゃそうだよね。水面に平行に入水したらすぐ水を下へ押さえてしまうんだもの(プレスダウン)。後重心になる。
この原因は板キックにあるんだよ。やはり、ふしうきや片手万歳を練習して、体を伸ばす(肋骨を広げる)姿勢を学習したほうがいいね。
ちょっと待った!だから板キックで腕を伸ばしてキックするんじゃないのか?
いいえ、板キックというのは、うでを伸ばして板を押さえるでしょ?胸郭や肩周りの柔らかい人は問題ないけど、肩が固い大人がやると余計に大胸筋と広背筋に力入るでしょ?そして肩周りが固まって凝ってくるでしょ?どんどん脇の下が縮こまってしまうよ。この体の使い方をクセにすると、いざスイムで入水した途端に必ず腕が下がる。がまんして前に伸ばすこと(グライド)が出来なくなるよ。
グライドというのは、肋骨を広げ大胸筋と広背筋を伸ばす(脇の下を伸ばす)行為なんだ。脇の下を縮めるんじゃないんだ。
グライド。脇の下を伸ばすから足が浮くんだ。板キックをやると、かえって足が沈むんだよ。
指導者も、ふしうきと板キックの体の扱いに、雲泥の差があることに気付いていないんだよね。いいかげん気付いてほしいよね。
指導者は、ストリームライン!ストリームライン!と言いながら、ふし浮きを重視せず板キックで下半身を浮かせようとしてる。これじゃいつまで経ってもラクに泳げないよね。
ラクに泳ぎたい大人にとって、板キックは本当に必要なの?
私が板キックをやったら肩が凝って、いざ泳ぐとストロークがギクシャクするよ。
板キックというのは、体の柔らかい選手が、もっと速く泳ぐためにすることであって、少なくとも体の固い大人が真似することじゃないよ。
大切なのは、板キックじゃなくて、脇の下を伸ぱしてグライドするということだよ。
お~い。まだ納得できないな。グライドで水に乗っかるためには、水を押さえないとあかんのじゃないのかい?だから水面に平行に伸ばすんじゃないのか?だからビート板使うんちゃうか?
水に乗っかる。それはグライドじゃなく、キャッチのときだよ。
グライドで乗っかるというのは、肋骨が柔らかい人がやるから、そういう感覚なのであって、固い人がやると足が沈むよ。
私の場合、グライドの感覚は、水を下へ押さえるのではなく、脇の下に体重をかけて、水を前に押す感じになる。下へ!下へ!ではなく、前へ!前へ!だよ。
ラクな水泳というのは、前に体を伸ばすのが最も重要。これが前に体重をかけるということになる。
次回は、またまた重要な話。というか、私は毎回重要なことしか話しませんが・・。キーワードは『鮫』。あなたも、私がどういう意味で話そうと思っているか推測してみて?