キックなしでもクロールは泳げる!

医療従事者が水泳の常識にメスを入れていきます。

23 ゆっくりに見えて速いのはなぜ?

 キックと体幹とストロークのタイミングを合わせるとは?

上記三者が一体となって動く。クロールってほんと、難しい泳ぎだなって改めて私は思います。そして、よくもまあ難しい泳ぎを、初心者に練習させるものだ、と。後日水泳界の常識について話そう・・。つぶやきはこれくらいにして。

さて、上級者の泳ぎに共通する特徴として、ゆっくりに見えても泳ぐスピードが速いということが上げられます。ゆっくりなのに速い。一見、 矛盾した現象に感じるのですが、なぜだと思いますか?それは速く動かす(力を入れる)パートと、ゆっくり動かす(力を抜く)パートという『メリハリ』があるからです。

皆さんは、ゆっくり泳ぐ時はプルもゆっくり動かすものだと思っていませんか?実は、これは大きな誤解です。

私がゆっくり泳ぐ時は、水上動作(リカバリー)はゆっくりでも、水中の動作(プル)は素早いんです。

 

さて・・

人間、力を入れっぱなしではとても疲れる。どんなに筋力があっても疲れます。筋肉は、収縮と弛緩をくり返します。伸び縮みする。だから、関節運動ができる。これは誰でも分かるよね?そして、筋肉はリラックス(弛緩)した状態が一番パワーが出せる。なぜなら、縮みしろがある状態だから。これをタメとも言います。常に力を入れていたら(収縮した状態)、これ以上収縮できないでしょ?力をぬく(弛緩)、力を入れる(収縮)、このメリハリが大切。これを体全体で統一させることがコンビネーションです。すると、各部位のタイミングも自然に決まります。↓ 

 入水直前、頭の横の手は脱力します。力を入れる準備、つまりタメを作るんです。前に紹介したサメのポーズのことです。さらにいうと、この脱力した時が、反対側の手のキャッチのタイミングなんですね。この時にキックの準備として軽く膝も力をぬく。

そして腕の落下(入水)と同時に全身に力が入る。つまり、キックが入り、体の回転時、腹筋も力が入り腹圧で腰から肩が固定される。前に伸ばす腕は鋭くまっすぐ水中を貫き、反対の腕も広背筋に力が入りプルする。全て同時にです。

同時 ・・同時・・同時・・どうじ・・Doji・・・止まれ!

ついに壊れたかい!

この腕の落下により、左から右、右から左へ重心を移動させます。この切り換えは一瞬です。一瞬の間に全身に力が入り体幹が回転する。まさに空手そのものです。切り換え以外はリラックスする。このメリハリがあるから、どれだけ泳いでもスタミナがきれないんです。ラクに泳げるんです。もし、それぞれがバラバラに動くと歯車が狂い、とても疲れます。