キックなしでもクロールは泳げる!

医療従事者が水泳の常識にメスを入れていきます。

48 2ビート背泳ぎ

 

 

今回は、前から予告していたとおり、オリジナルの背泳ぎを紹介したいと思います。 

私は現在、『常識』に囚われない泳ぎを追求している。

一般的に、2ビートでの背泳ぎは無理!と言われます。連続キックというのは、下半身を浮かす役目がある。キックを打ち続けることにより、下肢の沈下を防ぐことが出来る。

しかし、背泳ぎもクロール同様腹圧を入れ、あることをすれば足を浮かして泳ぐことは可能です

私がそれを実証しているように、背泳ぎでも2ビートは可能です。

 

 

1 指先までまっすぐなリカバリーアーム

背泳ぎは、遠心力を最大限に生かします。

そのため、最も重視するのは、フィニッシュではなく、リリースなんです。見た目にも、このリリースが鋭い。

 

 腕を鋭くリリースして天高く伸ばすと、遠心力により肩甲骨が体の外側へ開いてくる。そしてそれにつられて上半身が水面上に引き上げられ、ボディポジションが高くなる。つまり、肩の位置が高くなるんです。

 

一般のフォームというのは、リリース時は手首の力を抜き、リカバリー中は手がだらんと下がっています。リカバリースピードも最初からゆっくりです。 

 これでは遠心力も働かず、ボディは腕の重みにより沈んでしまう。

 

皆さんは、ストレートアームの本当の意味を考えたことはありますか?

 

遠心力。

背泳ぎは、これを最大に活かすためにストレートアームで泳ぐんです。

リカバリーアームが体をより高く、より前に引っぱるんだ!

こう意識すると自然に指先までまっすぐ伸びます。

 

2 2ビートキック

 ※初心者の方は、必ず連続キックで泳ぐことをお勧めします。いきなり2ビートをやると、体幹の軸がかなりブレます。2ビートは、連続キック(6ビートでなくとも可)で背泳ぎが出来るようになってから挑戦して下さいね。

 

前回やぎさんからご質問を頂いてから、もっと分かり易いキックにならないか試行錯誤しました。その結果.独特の2ビートが誕生した。このキックは、4ビートに比べ、動画を見ながらイメトレがしやすいと思います。というわけで、前回4ビートで説明しましたが、2ビートに訂正させて頂きます。

 

私は基本、クロールの2ビートの要領で足を動かします。(22記事参照)つまり、蹴った後必ず両足を揃える。

膝の緩めと蹴り上げがワンセットです。どういうことかと言うと・・右のダウン→右のアップ、そして休みを挟み左のダウン→左のアップとなります。メインはあくまで足の甲で蹴るアップのほう。それは、クロールの2ビートを背浮きでやっているだけだからです。

背泳ぎもクロール同様、腰の回転時は意識しなくとも、自然に膝が緩むんです。だから、アップキックだけを意識して打てばいい。

 

[補足]水泳のキックのイメージについて・・誤解しやすい表現として、サッカーのキックがあります。

サッカーボールは蹴る前に、一度後方に足を振り上げますよね?力を入れて大きく膝を曲げています。そしてボールにインパクトするのがメインキックです。これまた、前へ振り抜いて(フォロースルーして)います。これは水泳では誤ったキックの打ち方です。あくまで曲げ伸ばしではなく、膝を緩めて打つ。

  下のビデオは、サッカーキックになっており、両足が開いてしまっています。

注意したいのは、クロールの2ビートと、背泳ぎの2ビートは使用目的が全く違うこと。クロールは、腰の回転を補助する為に打つんですが、背泳ぎの場合、遠心力を使ったグライドに勢いをつける為に、推進力を目的とし打ちます。なので、斜め内側に打つのではなく、後方に水を押します。斜め内に打とうとすると、必ず横蹴り(サイドキック)になり、大きく左右にブレます。上級者でさえもブレるくらいです。中には、入江選手に憧れサイドキックを打ちたい人もいるでしょう。しかし、サイドキックのイメージは払拭したほうがいい。意図的にするものではない。まっすぐ後方へ押す。それでもローリングにより、勝手にサイドキックになるのでご安心を。

 

さて、打つタイミングは腰が回転した直後です。

フィニッシュを終えた右手をポーンと天井に向かって放り投げるようにリリースする。これに同調して右足もポーンと後方に蹴ります。

 

 

 蛇足ですが、皆さんは『なんば歩き』という言葉を聞いたことはありますか?人は普通、右足(右腰)を前に出す時、左手(左肩)が前に出ますよね?つまり、身体を捻るんです。

なんば歩きというのは、右足を出す時、左腰と左肩を前に出します。身体を捻らず同側に力を入れるんです。(補足参照)

特に階段や急な上り坂を上る時には、同側パワーの素晴らしさが実感出来ます。

試しに階段を昇る時、同側の肩と足を斜め上に出してみてください。同時に、反対の肩と足を同側で下へ踏ん張ってみてください。

これは左右に重心を乗せ替えるためと言っていい。

普通の昇り方より、明らかにラクですよ!コツは右足を上げる時は右肩甲骨と肘を上げるようにする。左手は左の足先に向かって伸ばすことです。というわけで、なんば式だと一段や二段飛ばしは、いとも簡単に出来ちゃいます

 

[補足]

『なんば歩き』という概念が提唱された当時は、『右手と右足が同時に前へ出る』と言われた為(私も)大混乱を招いていた。しかし現在は、『右足を前に出す時、左肩左腰を前に出す』というのが正論である。なんば式であっても、右足が前に出ると左手が前に出る。ただし、階段を上る時は、右手右足は同時に前に出ます。私はそれを実証しています。

 

 つまるところ、なんば式とは、腕と足の関係というより、上半身の重心の動きと下肢の動きを連動させた方法。その肩の動きは09動画のヤーさん歩きにとても似ています。やはり肩を前後(肩甲骨の上下動も含める)に揺らしたほうが下肢と通動しやすくなる。腕振りは意識しないほうがスムーズです。極端に言えばポケットに手を入れたままでもいいくらいです。

 

 

 

このなんば式からも、水泳に応用できるヒントがいくつがあります。

体幹主働。別の表現をすると、重心移動のことです。特に上半身の重心の動き(これを可能にするには肩甲骨の上下動が必要)が下肢をリードすることによりラクになる。

体幹(特に腹部)は捻らない。同側で力を入れる。

体幹意識。腕は肩の動きについていくだけである。

  

 話がそれましたが、背泳ぎの2ビートも体の扱いは同じです。

体を捻らず同側に力を入れる。

なんば歩きはともかく、背泳ぎのイメージとしてはこれでいい。

 

そしてキック後は足を伸ばしたまま惰性の力でグライドします。

意識としては、グ-ンと手を前に伸ばす!です。

クロール同様、グライドを重視するのが私のスタイルです。この時が最も推進力が出る。

 

  3 着水動作

私の入水は、入江選手の入水を参考にしています。正確に言うと、腕全体で着水動作をしており、その流れで手の甲から入水します。泡がほとんど手につかない。また、手の甲が入水した時は肩がまだ高い位置にある。つまり、まだローリングをしていないんです。手の平を上にし(ニュートラルポジション=回内回外中間位)、片手万歳している。一般の泳ぎに比べて、入水時の肩の高さが際立っているんですね。

 

では一般の泳ぎは・・肩の延長上に小指入水させるには・・特に肩が固い人はローリングをしながらでないと不可能です。まずローリングにより肩が入水し、それから肘が入水し、最後に手が入水する。

手が入水する時点で既に肩が水面下に沈んでいます。

水中から見ると肩が一番低く手先が高い。クロールとは真逆です。この為、入水抵抗がかなり大きい。だから、惰性の力で滑ることが出来ないんです。

背泳ぎのスピードが思ったより出ない理由・・実はここにあるんですね・・。

さらに、肩峰と上腕骨頭がこすれてインピンジメント症候群を起こしやすくなります。これは、肩関節を内旋したままだからです。

 

 

[補足]

対策として、小指入水は必ず肩の延長線より外目に入水させます。その理由は、ゼロポジション(47記事参照)になるからです。肩が硬い人は外目がおススメ。

じゃあ、なぜあなたはそれをやらないの・・?と突っ込みたくなると思いますが・・

私は、幅の狭い相互通行のコースで泳ぐ為、外目入水だと、必ず手先がコースロープに接触するからです。それを防ぐ為、どうしても肩の延長上に入水せざるを得ないのです。

 

再び・・一般の泳ぎは、手が入水した時は既にローリングが終盤て、手の平が下を向きます。これは、予めリカバリー時に手の平を外に向けた(肩の内旋と前腕の回内をした)状態で小指入水するから。さらに深い位置に手が沈み込み(押さえ込み)、すぐキャッチに入る。私がこれをやると、肩の内旋域がかなり狭い為、余計な力みを生じる。また、ゼロポジションから大きく外れており、グライドもやりにくい。そして、肩関節の一番弱い部分に力が入り、とても違和感が残ります。

さらに、プルの予備動作として一旦、手の平を足先に向け(回外させ)肘を曲げる必要がある。結果的にS字プルになります。

 

一方、入江式は・・着水し、手が入水時初めてローリングが開始され、ローリングにより手の平は外を向く。前段階のリカバリーの途中で手の平を外に向けない(肩関節の内旋と前腕の回内をしない)。

内旋と回内を止めると無駄な力みがなくなる。

そのおかげでラクに入水出来るんです。さらに、頭より前方でキャッチもできる。スカーリングも要らない。ほぼストレートプルになります。

 

 

 

また、肩を高く保ち手の甲着水動作をすると(ローリングを、手の入水ぎりぎりまで行わない、すなわちプルを遅らせること)わきの下から手先まで、腕が水面と平行になり、抵抗が最も少なくなります。だから、滑るように進むことが可能なんです。見た目にはキャッチアップに近くなる。

従来、背泳ぎの(左右の腕の)タイミングはほぼ対称的でしたが、実はこのスタイルそのものが下半身の沈む原因です。背泳ぎの常識で、私にとって?なのがこれでした。なぜグライドをしないのか・・?クロールなど他の泳法はグライドが大切と言いながら、なぜか背泳ぎはグライドせず即キャッチするように言われる。

私から見れば、キックを打ち続ける短距離のクロールを教わっているようなものです。そのスタイルでゆっくり泳ぐことに違和感があります。

 

私の腰の位置がなぜ、2ビートなのに高いのか不思議に思いませんか?

それはズバリ、キャッチアップに近いから。クロールでも話したように、足を浮かせるには、片方の腕が常に前に伸びていること。グライドです。私は、グライドしているから、6ビートを打たなくとも浮けるんですね。

もし私が従来のタイミングを用いて2ビートで泳いだら、下半身が沈みます。

 

 

もう1つ、これも私にとって?ですが、小指入水。その目的は、即キャッチする為。もちろんテンポは上げやすいですね。しかし・・

先程のビデオでも言いましたが・・

小指から入水は、リカバリーで上腕を内旋します。すると、私のように可動域の狭いスイマーはロックがかかってしまう。(選手のように内旋域の広いスイマーなら間顕ありませんが)

手前(肩幅よりやや外目)に入水する為ストローク長が短くなる。つまり、ストローク数が増加する。速いキャッチとあいまって、短距離向きの泳ぎになる。

従来のタイミングで行えば、体幹の回転力を効かす局面もフィニッシュに限定される。腕力に頼った泳ぎになります。

 

ついでに・・

小指入水をやると、肘が曲がった状態で入水する例が多いですよね?外目に入水!と意識しても曲がってしまう人は、非対称性緊張性頸反射(ATNR)が働いている可能性があります。どういうことか?

背泳ぎでは、肩が水面上にある時は肘が伸びやすく、肩が水中へ移動するにつれ、肘が曲がりやすくなる現象です。もっと具体的には、ローリングしながら入水しようとすると、肘は曲がりやすいということです。それを抑制するには、入水する直前までローリングしないうにすることです。入江式の長所が、実はここにあります。

 

私が入江式で泳いだ感想ですが、とにかく

肩がとてもラク!

これは十分に試す価値あり。

従来からあるフォームと、入江式の伸びるフォームを泳ぎ比べてみればその差は歴然!!

入江選手は、こんな気もち良さを味わいながら泳いでいたとは!!

  

皆さんも入江選手の泳ぎを研究して泳いでみると、また新たな発見がありますよ!

 追記  背泳ぎのメカニズムについては、45記事でも詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。また、背泳ぎのフィニッシュについては、53記事で述べています。