キックなしでもクロールは泳げる!

医療従事者が水泳の常識にメスを入れていきます。

49 知られざる 水泳の呼吸

 

 

当記事では、バサロキックやギャロップクロールについても述べています。

 

[おことわり]

今現在ラクに呼吸出来ている人は、わざわざやり方を変える必要はありません。当記事は、従来の方法論で吸がラクに出来ない人、そして泳ぎをさらに追求したい!という人に参考になる内容です。

 

今回は、水泳の基本中の基本である呼吸について。

水泳の呼吸には、あまりにも誤解が多い為、私がこれにメスを入れていきます。

 

 

 

 

 

 

1 吐く→吸う→止める。

今現在、水泳の呼吸ほどに、統一されていないものはないでしょう。それは、水泳の目的、体格、胸郭の柔軟性、年齢、性別等により千差万別だからです。理屈がどうであれ、呼吸がラクに出来れば、それがあなたのベストな呼吸方法です。10人居れば10通りの呼吸法が存在する。しかし、いくら練習しても呼吸がラクにならない!という大人はたくさんいます。それには・・多くの指導者でさえ気付いていない根本的な問題があります。当記事では、しかるべき根拠に基づいて述べていきますが・・

 

その前に・・私について述べてみます。私の体脂肪率は10%を切っている。何も考えずに伏し浮きすれば、見事に足から沈みます。もちろん、キックなしクロールも同様です。

そして私は、体の持病により、激しい運動は出来ません(活性酸素を増加させない=酸素消費量を抑える必要がある為、息の上がらないラクな泳ぎを追求している)その為、6ビートキックに頼らずに速く泳ぎたい。つまり、キックに頼らないで足を浮かす必要がある。

 

さて現在、抵抗削減を目的として、フラットに浮く(足を浮かせる)ことが最新の理論ですが、その為には伏し浮きを完璧に出来るょうにしたい。

 

 では本題です。キックに頼らずに足を浮かせるには?

それは、大きく吸って(=肋骨を広げる)肺を膨らますことです。私のように足が自然に浮かない人は、肺という浮き袋を味方にするしかないんですね。その為に伏し浮きを練習する必要があるんですが・・

 

伏し浮きを成功させるには、水中で息を止めることです。水中で吐いてしまうと必ず足から沈みます。これはまぎれもない事実です。

 

キックに頼らずクロールを泳ぐ。

その大前提が大きく吸って止める。

 

言い換えれば

肋骨を広げて止める。

 

その上で必要な時に

パァッ!ハア!

呼吸(→文字どおり“呼して吸う″)をする。そして再び止める。

つまり、呼吸以外は常時肺を膨らましておくんです。これが呼吸のベースになる。

 

 ※ ※ ※『止める』というのは、『こらえる』とは全く違う。皆さんここをよく誤解されます。53記事で述べましたが、『こらえる』行為は基本のストリームラインが出来ない(肋骨が広がらない)人によく見られます。どうしてもこらえてしまう場合、少しずつ『漏らすこと』。念を押しますが、意図して『吐く』ではありません。

そもそも、従来からなぜ『水中では止めず吐くように!』と言われるのか?それは、こらえてしまい、血圧が上がるからです。

 

ここで少々専門的な話を。

呼吸には、ニュートラルポジション=NP(安静時呼吸※の吐き終わりの状態)というものがある。

 

※安静時呼吸とは、努力を要しない無意識的な呼吸。吸気時は横隔膜が収縮し呼気時は弛緩する。

 

肺というものは、努力して大きく膨らましても、力を抜けばNPに戻る。また、努力して吐き切っても、これまた力を抜けばNPに戻る。これは、肺(胸郭や腹部も含める)に弾力があるからです。

※従来は後者を重要視していた。

大きく吸って止めるのは、この弾力によって肺がNPに戻ろうとする性質を利用する為です。つまり、肋骨を広げることが大前提。だ か ら、ストリームラインを練習する必要があるんですが・・。

 

分かり易く言うと、ゴム風船(肺)を膨らましてロ(声帯)を閉じておくんですね。そうすればロ(声帯)を開いた途端、ゴム風船は縮んで元の大きさに戻る。つまり、肺が弾力で自然に縮む。だ か ら 吐ける。そして吸う。

肋骨が広がっていれば、吐く時はなにも努力する必要がないんです。もっとわかりやすく言えば、息を『漏らす』んですね。

私の呼吸は、吐く→吸う→止める。ではなく、さらにラクな『漏らす』→吸う→止める。です。

ストリームラインやスイムで肋骨を広げられるようになれば、『吐く』が『漏らす』に変化していきます。これが理想形です。

 というわけで

 

努力するのは吸う時です。

ただ後で述べますが、脇を開けば吸う努力も最少限にはできます。

 

 これが 私の実践している『吐く→吸う→止める』のメカニズムです。

 

 

あなたは、壁蹴りスタートのストリームライン(けのび)を練習したことはありますか?

この行為のはじめに、大きく吸って(肋骨を広げて)止めていますか?

肋骨が下がったまま息を止めていたら、腕が前に伸びません。耳をしっかり挟んだストリームラインにならない。

ストリームラインの基本も『きく吸って止める』。

 

質問!止めたら苦しいじゃん!なんで? 

それは、肋骨が下がって固まっているからです。

あなたは大きく胸を広げて吸えますか?特に男性はあばらをあまり広げられないですよね?

55エピローグで述べたように、現代人は相対的に肋骨を下げる筋力が強く、逆に広げる筋力が弱っている。

日常生活で肋骨を広げることを意識していない。

 

その為、

肋骨を広げる筋肉(外肋間筋と横隔膜)が衰えています。

 

これが根底にあるから、呼吸がラクにならない。息を止めるのもラクにならない。こらえてしまう。知られざる事実。

 

呼吸をラクにするには、大きく吸う(あばらを広げる)筋力を強化する必要がある。

 

水中では水圧がかかります。つまり、肋骨を下げる方向に常にカがかかる。この為、吐くことには筋力はさほど要しない。逆に吸うことの方が筋力を要する。吸うという行為は、助骨を広げる方向に力が入ります。

 吐くことよりも、吸うこと(水圧に抗うこと)の方が全然重要なんですね。

 

 

別の見方をすると、

浮力をなくす努力よりも浮力を大きくする努力が必要ということです。

 

ボディポジションが低い人というのは、も と も と 小 さ い 容量の(肋骨が下がっている状態)浮き袋を、さ ら に 小さくしながら(息を吐きながら)泳いでいます。

ボディポジションが高い人というのは、浮き袋の容量が 大 き い ま ま(肋骨を広げた状態泳いでいるんですね。

 

 しかし実際の指導では・・水中で吐ききりなさい!

とロを揃えて言います。

これは、バタ足(6ビート)が前提だからです。吐いて沈む分を、キックで浮かそうとしているんですね。

 

従来の水泳は、水中で吐くのが常識だった。こらえると危険だからです。また、吐かないと吸えないという理由もある。その為、ブクブクパーが当たり前だったんですね。

また、バタ足をすれば足は浮くし、姿勢も安定した。その為、腹圧という概念もなかった。つまり、伏し浮きなど出来なくとも泳げたわけです。

ただ、バタ足が出来ない人にとっては鬼門だった。ひたすら板キックをすることになり、なかなかラクに泳げるようにならなかった。従来の水泳では限界があったわけです。

これを覆したのが、伏し浮きを重視したフラット理論です。フラットに浮けばキックなど必要なくなります。

 

しかし・・この伏し浮き(腹圧)のメカニズムが、なかなか解明されなかったんですね。その原因は、水中で吐くという固定観念に囚われていたからです。

私は、フラットに浮くことを知った時(足が浮くようになった時)、同時に腹圧の謎が解けたんです。

 

伏し浮きを完璧にするには、脇の下を伸ばしながら、大きく吸って止めればいいだけのことだったんです。→詳しくは46記事で。また、53記事にも腹圧のことが書かれています。

 

 話が脱線しましたが、

キックなしや2ビートクロールで息を吐き続けると・・見事、溺れるんです。

吐ききるというのは浮力をなくせ!ということです。

溺れて当然ですよね?

 

の為ですが、この時バタ足をしていれば溺れません。

ただ、6ビートで身体を浮かそうとすると、吐ききりたくなります。なぜなら、キックを打てば酸素消費量が増加するからです。

 

さて・・

息を吐ききると何が起こるか?上半身は当然沈みます。その後大きく吸ったらどうなるか?当然上半身は浮いてきます。こうして身体は、上下動しだすんですね。おかしなバウンドが生じる訳です。それをするならば、ギャロップでうねったほうがまだ救いはあります。

 

もう1つ。

『吐ききる』というのは、肋骨を下げる筋肉を鍛えていることを意味します。

現代人は、ただでさえ肋骨を下げる筋力が強いというのに・・(腹筋は逆にかなり弱いですが。肺活量をアップするには腹筋の強化が必要)さらに肋骨を締めるだなんて・・

つまり、こらえる訓練をしているのとなんら変わりはないんですね。私には到底考えられない。

 

 

 2ビートやキックなしがスタイルなのであれば、

息は吐ききらなくてもいいんです!

このことは後ほど詳しく説明しますね。

 

〔参考〕

この記事の『吸う』理論は、COPDの方には当てはまりません。

COPDの方の肺は、これ以上吸えない状態まで膨張しています。肺の弾力を失っている為、意識的に力を入れないと吐けないんです。その為、『吐く』が重要です。

私の知り合いのАさんもCOPDを患っています。水泳で『吐く』リハビリを兼ねてクロールを泳がれています。Аさんは吸うことは比較的ラクであり、自然に息は止められます。その為、伏し浮きが完璧でよく体が浮きます。クロールでは完全に足が浮く。バタ足も必要ないんですね。というより、換気量を大きくできない為、酸素をたくさん摂取できない。だから必然的にキックなしで泳ぎます。

Аさんの泳ぎを見ていると、本当に優雅です。本人もラクだと言われます。COPDの方は、浮き袋が健常人より大きい為、水泳ではデメリットどころか、メリットになるんですね。私は、Аさんの泳ぎからもヒントを得ています。

私たち健常人も浮き袋を大きくできたら、どんなにラクに泳げることでしょうか?

これを実証できたのが今の私です。肺の容量を大きくすること(下部肋骨を広げる=横隔膜を最大収縮すること)に見事成功しています。

私はここ数年、健康診断の胸部X緑検査では、いつも肺気腫の疑いありと診断されます。念の為、精密検査を受けましたが異常はありませんでした。

実際私のX線写真では、肋骨横隔膜角の鈍化が見られます。レントゲン検査というのは、必ず『大きく息を吸って~止めて!』と言われまよね?鈍化が見られるということは、一般人に比べ横隔膜が最大収縮していることになります。

『大きく吸って止める』。特に、『止めることにより、等尺性収縮が可能になり、必ず横隔膜が鍛えられます。結果、浮力が増大しラクに速く泳げるようになりました。

 

 

 

 

 

 

 2 腹圧のこと

 

もう一つ確認したいと思います。

 

息を止めないと腹圧はかからないんです。

水中で吐いている間は腹圧が抜けるんですね。結果、下半身が沈むわけです。

 

さらに

息を完全に吐ききると、非常にお腹が固くなりますが、これを腹圧が入った状態と説明する著名な指導者がいます。これは単に、体を緊張させているだけです。

 

そもそも腹圧とは何ぞや?

腹圧とは、腹腔内圧のことです。腹圧は、横隔膜、骨盤底筋、腹横筋のインナーマッスル三筋同時収縮した状態で入ります。吐ききった時は、横隔膜が完全弛緩します。つまり、腹圧が完全に抜けるんですね。

信じられない!ちゃんと体幹は安定するよ? 

それは、体を固めているからです。何度も言いますが、『腹圧』によって安定しているのではありません。アウターマッスルによって力ずくで固定しているだけです。肋骨とお腹両方締めたら、体が縮むだけです。

 

腹圧は、横隔膜も収縮しないとかかりません!!

 

吸気時は横隔膜は収縮する。呼気時は弛緩する。呼吸と腹圧についてまとめると、以下のようになる。

 

息を吸う=横隔膜が収縮→腹圧が入っていく。

息を止める=横隔膜が最大収縮→腹圧がかかる。

息を吐く=横隔膜が弛緩→腹圧が抜けていく。

※ただし、肋骨が常に広がっていることが大前提。肋骨が下がった状熊から息を吸うと、腹圧は入っていかない。なぜなら、外肋間筋と横隔膜は、同時に収縮しないからである。

 

 あのさ、腰痛改善の目的でさ、立っている時や歩いている時にドローインするじゃんね?あれは息止めてないよね?なのに、腹圧は入ると説明されてるけど?だいたい息止めたら生活できんじゃん。

もちろん腹圧は入ります。しかし、呼吸時は圧は弱いんです。止めた時が最も圧が強くなる。

 

ねえ、人間はそもそも、なんで自然に腹圧をかけられないの?

その訳は・・遠い昔、人間の祖先が足獣だった頃は、腹横筋は内蔵を支える役割をしていた。それが、直立した人間は、骨盤が内蔵を支えるようになった。その為、新たな役割(姿勢維持や呼吸)に使われるようになったんですね。

しかし、腹横筋は元来、姿勢維持と呼吸を同時にこなせる筋肉ではありません。その為、訓練しないと使いこなせないんです。腹横筋というのは、両方同時には本領発揮できない。強く深い呼吸をすれば(肋骨を上下させるほど)、それだけ腹圧はかけにくくなります。 水泳の場合は、姿勢維持を優先するならば息を止めることです。

 

ねえ、トイレで大便を排泄するときに、息を止めてお腹に力を入れる(こらえるけど、あれは腹圧で出しているんでしょ?どうなの??

これは確かに腹圧で出しています。しかし、メカニズムが違います。

横隔膜の収縮力ではなく、肋骨を締めて息を止め、胸腔内圧を加担させて高めています(プレスという)。その為、血圧がかなリ上昇します。これが、水泳における誤った腹圧です。

 

しかし実際水泳では、ストリームラインが上手くなるまでは、どうしてもこらえてしまう。

だ か ら、『少しずつ吐きなさい!』と言われるんですね。私流に言えば、息は『漏らしてもいいよ!』ということ。決して強く吐かない。強く吐くのは吸う直前です。

 

止めるな!』と言うのは、こらえるな!力むな!ということ。力まずストリームラインが維持できれば

つまり、肋骨を広げられるようになれば、自然に止めるようになります。

 

 

 念の為ですが、腹圧を最大にするには肋骨(特に下部)を広げて止めることです。これが正しい腹圧です。→46記事参照

 

 

 このように腹圧は、

門 家 でさえ理解できていない。

肋骨と横隔膜の解剖学的な関わりをよく理解しないと、誤ったことが起こります。

 

 

 もう一つ。

正しい腹圧を入れるには、腹部(腰椎)を捻らず、腹横筋をコルセット状態にする必要があります。よく、腹斜筋を使え!と言う指導者がいますが、腹部を捻ると息を止めにくくなります。つまり、腹圧がかからなくなる。また、余計な筋力を使い、酸素摂取量も増加します。

 

 というわけですが・・

正しい腹圧の理論は、ほんの一部の指導者しかまだ知らないんですね。

 

 

下のビデオでは、息継ぎ後腰急に下がっています。速く泳ぐと、腹圧が抜けた途端に、これほどブレるわけです。↓

 

速く泳ぐ為には、ボディポジションを上げる必要がありますが、従来の考え方では、スカーリングによる揚力と、バタ足によって、モーターボートになることが理想的とされた。しかし、今は違います。息を止める(腹圧を入れる)ことにより、浮力でボディポジションを上げるのが最も効果的です。私の場合、息を止めるだけで、キックなしでも背中が水面上に出ます。↓

 

http://www.nicovideo.jp/watch/sm27841287

 

さらに・・息継ぎで、横を向いてもロが水面に出ない!という悩みはありませんか?それは、泳速が低いのに水中で息を吐いてしまうからです。泳速が低いのに水中で吐くとボディポジションが下がるんです。選手が吐ききっても沈まないのは、泳逮が上がっているからです。速く泳げない人は、吐き続けるのを止めれば息継ぎはラクになります。

 

そして、肋骨を広げて止めることにより、吐く→吸うは自然に出来ます。人間、苦しければ必ず呼吸します。私の呼吸は赤ちゃんと全く同じ。その為、無意識でありとてもラクです。

 

 足 が 沈 ま な い、顔 が 沈 ま な い呼吸の基本は、水中で自然に息を止めることです!

 

  

 

  

 

 

 

3 呼吸のタイミング

 

 

皆さんは、ビデオをご覧になってどう感じたでしょうか?

 

吸うタイミングが遅い。頭の戻しも遅い。

 

そう、その通りです。実はこれこそが超自然なんです。

 

理由は、体の力の入れ方と連動するから。力を入れる(シメる)と力を抜く(ゆるめる)。→23記事参照

呼吸もそう。おなかに力を入れる時に吐き、力を抜く時に吸う。

すると・・ストロークとのコンビネーションは自然に決まる。

入水し腕を鋭く伸ばす時(プル時つまり、シメ)に吐く。つまり体幹(頭)の回転する時に吐く。リカバリー(ゆる)の時に吸う。吸ったら止める。これが超自然。体というのは、シメとゆるは必ず統一されているからです。

 

では・・

従来の指導では、フィニッシュ(プッシユ)で息を吸え!リカバリーアームが前に移動するより先に頭を戻せ!とよく言います。これは、力を入れる時に吸え!と解釈出来ます。少なくとも私にはそう聞こえる。

生理学的に考えると??です。なぜなら、吐いたほうがプルに力が入るからです。(吐くと言うより、お腹に力が入ることによって息が漏れるだけなんですが)

つまり、お腹に力を入れるから息が吐き出されるんですね。

もちろん、前に述べた肺の弾力も加わる為、ラクに吐ける。自然に吐けるとはこういうことです。

 

あのな、早めに息つぎを終えて顔をさっさと戻したほうが抵抗が少ないんだよ!

それは確かにそうです。ただし、条件があります。それは、プル前半に力を入れる(前にピークを作る)こと。後半はすでに力が抜けていることです。つまり、ハイエルボーがしっかり出来ていることを意味します。これが出来ない人は後ピークの為、どうしてもフィニッシュで力が最大に入る。どう考えてもフィニッシュでは吐いたほうがラクです。

 

筋トレは、息を吸いながら力を入れませんよね?必ず吐きます。

 

また、肋骨の動きとストロークの関係から見てみると・・全身に力を入れると(入水、プル、キックやお腹など)多かれ少なかれ肋骨は下がる。つまり肺を縮める働きが生じる。→結果として息は漏れる。そして力を抜くと(特にリカバリー動作は脇を開く動作の為、自然に肋骨が広がるから)肺は広がる。→つまり吸える。このような肋骨の動きに連動させて呼吸するわけです。

 

 この肋骨ですが、

体ががちがちに緊張していると、肋骨が下がったまま動かなくなります。結果、横隔膜呼吸がしにくくなり、長く泳げなくなる。リラックスすることがいかに大切かなんですが・・ちなみにリラックスするというのは、胸郭を広げることを意味します。人間、怖かったり、自信がないと胸郭が萎縮するんですね。

体が緊張(縮む)していても、呼吸が苦しくなるんです。

 

ここで重要なことをひとつ。

クロールは、入水(肋骨は前へ動く)とプル(肋骨は後ろへ動く)は同時に行う。その為、両方に力を入れると、たがい違いに胸郭が捻れる。

これは、同時に腹部にも波及する。入水側の腹部は伸ばされ、プル側の腹部は縮むことになる。こうなると、お腹を凹ます(腹横筋を締める)ことが困難になる。

特にフィニッシュに力を入れると肋骨は余計に押し下げられ、腹部が固まってしまう。

フィニッシュは、47記事で述べたように

押しきらないこと。

その為には、プル意識を持たずに入水意識で泳ぐことです。

くり返しますが、力を入れたフィニッシュでは、自然に吸える訳がないんですね。どう考えても不自然です。

 

※46記事で紹介したドローインですが、スイムの呼吸時は肋骨を広げて完全に固定することは出来ません。力の入れ方により若干肋骨は上下します。同時に上腹部が膨らんだり凹んだりします。なぜなら横隔膜が動く為です。ただし、下腹部(腹横筋)は締まります。これが正しいドローイン腹式呼吸なんですね。引き締めるのは下腹部(おへそから下つまり、ズボンのベルトがかかる高さ)のみ。

腹直筋に力を入れ、お腹全体を固めるのではない!

肋骨がかなり押し下げられてしまい、上腹部までもがガチガチに固まってしまう。上腹部が緩んでいないと横隔膜が動かせなくなり、その紹果吐くこと吸うことすら出来なくなるんです。

 

ここで私のエピソードですが、案外知られていない事実があります。吐きなさい!の落とし穴なんですが・・

私が遭遇した人の中に、吐こうと思っても、どうしても吐けない!止めたままになっている!という人がいました。これは、よくよく考察すると、すでに吐いてしまっている状態なんですね・・。というより、始めから肺を空っぽにして泳いでいるんです。これでよく浮いていられるなと思うでしょう。それは・・体脂肪が多い為なんですね。

この人の場合、あとは、吸うだけなんですが、吐く意識しかなく、吸い忘れていたんです。止めているから苦しいというのは、文字通り吸えていないんです。

本人曰く、だって吐け吐け~!って言われるから。笑おうにも笑えない話です。また、常に全身緊張しており、肋骨を下げるほうに力を入れてるんですね。だから、自然に吸えない。

まずは、大きく吸っておくことが大前提ですよ!そうしないと吐けませんよ!するとこの人は容易に吐き、吸うことが出来ました。

ここから言えることは、肋骨を広げるように大きく吸うことをまず教える必要があるということです。

よく、水中で息を止めたまま吸えないのは、吐いていないからとよく言われます。でも中には、すでに吐いてしまって体を固めてしまっている人もいることをお忘れなく。意外と知らないことかも知れないですね。

 

 

 

ここでひとつ提案。

腹圧による息の吐き方を練習するには、大きな声を出してみることです。私がよくやるのは、カラオケボックスマイクなしで歌うこと。のどを傷めずに声がよく通るようにするには、①姿勢を正し②大きく吸って③下腹部(丹田)に力を入れること。

①について・・ねこ背のままでは声は出ない。またアゴを引き過ぎても気道が狭まる。一番いいのは、みぞおちを前上方につき出すことである。むろん、肩の力は抜くこと。ちなみにこの姿勢は、バタフライの体幹の扱いに直結します。

②について・・肋骨を広げること。通常の腹式呼吸にて肋骨を下げたままだと、これまた声は出せない。

③について・・

お腹全体に力を入れて固めてはならない。のどで歌う人は固めることに慣れてしまっている。もちろん声が出ない上、とても苦しくなる。

以上、これらのことは全て水泳の呼吸に当てはまる。ぜひ参考に。

 

 ついでに・・

 現在、健康フィットネスなどで腹式呼吸の有効性が叫ばれていますが、肋骨を全く意識しない(肋骨が下がったままの)通常の方法では効果は半減します。この方法は、男性ならば普段から自然にやっています。また、ねこ背の人も同様です。

健康増進の為に行うのであれば、肋骨を広げ(肺を大きく膨らまし)た上で腹式呼吸を行うほうがより効果は上がります。このことはエピローグで詳しく述べます。

 

 

 

 

 ずいぶん脱線しましたが・・

上のビデオを見ると、体幹の回転と同時に頭が回ります。腕が入水するタイミングに頭が動いていますよね?

私は入水意識で泳ぐ為、入水と同時に(顔が横に向きながら)息を吐きます。というより、力が入ると漏れていく。入水して前に伸ばす動作は力を入れる為、私にとってはちょうどいいタイミングなんです。体が回転してからリカバリーで吸います。極端な話、リカバリー(体が静止している)ならいつでも息が吸えるわけです。そしてリカバリーアームの山を見てから、手の入水と同時に顔を戻します。

 

私のタイミングに納得出来ない人もいるでしょう。そうであれば、柴田亜衣元選手の泳ぎをよく観察してみて下さい。彼女も私と全く同じタイミングで頭を戻しています。なぜあのハイピッチ泳法が可能なのか?それは休幹の回転に連動しているからです。ギャロップクロールもそうですね。

 

 

 というわけで

私が速く泳ぐ時は、こうした体の特性に合わせている為、吐くことも意識を必要とせず、呼吸していることなど忘れているくらいナチュラルなんです。↓

余談ですが、私のダッシュを見て気付かれた方もいると思います。

ヘッドポジションですが、従来からよく言われる『髪の生え際で水を切る』というのは、スピードが上がり、上体が水面上に出るから可能なんですね。ちなみに速く泳ぐ時、水中で息を止めれば、キックを一生懸命打たなくとも必ずボディポジションは高くなります。

逆に、ゆっくり泳ぐ時は、ボディポジションが下がり、頭頂部は水面下です。それを、ムリやり前を見て頭を起こすと、うなじが緊張します。

一流選手は、ボディポジションを上げているから、わざわざ頭を上げなくてもいいんです。つまり、うなじをリラックスさせられるんですね。

なので、初級者は泳速が低い為、『髪の生え際で水を切る』は忘れて下さい。

 

 

 ここで、息を止めることに異論を唱える人の為に書き加えてみます。

あなたは、25mや50m(注50mは無理せず1・2回息つぎを入れる)のノーブレダッシュをしたことはありますか?そしてダッシュ時、止めておくのと、吐き続けるのとどちらがラクか比較したことはありますか?私の答えは『止める』です。

なぜなら一旦吐き出すと、肋骨が下がり続けることに歯止めがきかず、どんどん肺から空気を逃してしまいます。結果、後半になるにつれボディポジションが下がり、抵抗が大きく感じます。もちろんムダなエネルギーを使う為、体が重くなり、疲れます。息を止めていればボディポジションが上がり(腹圧によって)体はブレなくなり、抵抗も減る為省エネでとてもラクになります。

 

先日池江選手が、ノーブレで50m自由形日本記録を更新しましたね

息継ぎというのは、どんなに上手い人でも必ず抵抗になります。彼女はその行為を止めたことにより、タイムが上がりましたが・・

 

皆さんは、息継ぎが抵抗になる理由をご存知でしょうか?

顔を横に動かす時の左右のブレが原因でしょ?

いいえ、私の毎回息継ぎのダッシュを見ればわかるように、ブレずに泳ぐことは可能です。横を向いたくらいでブレが生じるようでは、まだまだ改善の余地はあります。

 

抵抗になる根本は『吐き続ける』という行為そのものにあります。

強く吐き続けると肋骨が下がり、腹圧も同時に抜けます。その為に体が縮みボディポジションが下がります。

次のビデオでは吐いた瞬間腰が若干沈んでますよね?

 

http://www.nicovideo.jp/watch/sm30476938

 

これは一流選手であっても必ず生じる。人間の宿命と言っていい。

 

彼女は息を止めて』いました。決して『吐き続けて』いません。もし吐き続けていたら、超人的な彼女でもノーブレは不可能です。記録も落ちたでしょう。

ではなぜ彼女は長く止められるのか?それは、肋骨がよく動くからです。

肋骨を広げっぱなしにする能力(腹圧を入れること)こそが彼女の最大の強みであり、このことで止息がラクになる。

 

ついでに・・

背泳ぎを実践しても『吐き続けることが抵抗になるのが解ります。

 吐き続ければ力が入りにくく姿勢も崩れます。もちろん、ボディポジションも下がります。『止息』マスターして泳ぐと軸が安定し、力も入りやすくなることがはっきり実感できます。なにしろ背泳ぎというのは、クロールと違い顔を横に向ける行為がない。『顔を横に向けるから抵抗になる』という定説は当てはまりませんょね?

『吐き続ける』から抵抗になる。背泳きを泳げば、このことがより明確になります。

 

 誰もが、抵抗になる理由は息継ぎの『動作』にあると思いますよね?ところが呼吸の『吐き続ける』という行為に原因があるとは誰も思いません。

くり返します。

『吐き続ける』のは抵抗を生む行為です。

これも知られざる事実。

 

というわけで 

止めることに異論を唱えるのであればぜひ、ノーブレダッシュをしていただきたいものです。

 

 

 

 

 

 

 

4 換気量

 先程、吐ききらなくてもいいって言っていたけど、100%出さないと酸素摂取効率悪いんじゃないの?

いいえ、それでいいんです。100%吐ききらなくてもいい。50%で十分!もし100%吐ききってしまうと、大きく吸うことになる。助骨を大きく上下させることになる(胸式)。

つまり、呼吸筋をフルに使う為に酸素をより必要とする。

呼吸筋の為に多くの酸素が必要なんです。

これが実は、呼吸が苦しくなる知られざる原因です。これこそエネルギーの無駄使いなんです。

酸素摂取効率うんぬんを言うより、酸素消費量を抑えることのほうが全然大切です。

なぜなら、酸素消費量の増加は、血圧上昇を招くからです。

話が少しそれますが・・

従来の常識で言えば、まず板キックでバタ足(連続キック=フラッターキック)を練習し、副産物として心肺機能を高める訳ですが・・特に血圧の高めな熟年者にはお勧め出来ません。

ではなぜバタ足をするのか?それはもちろん推進力を得る為ですが、それ以外にも下半身を浮かす為、上半身を安定させる為です。キックという行為を、泳ぎの土台として捉えているんですね。

しかし、私は違います。体幹(腹圧を入れたストリームライン)そのものを土台と考えています。

要は、キックでバランスを取るのか、体幹でバランスを取るのかの違いです。

さらに追求しますが・・

6ビートクロールというのは、腹圧を入れなくとも体は安定します。逆に2ビートは腹圧を入れないと安定しません。その理由は、静止する局面があるからです。キックなしクロールは常に静止状態の為、さらに腹圧を意識しないとブレまくります。

2ビートはラクそうで、実は姿勢カが必要。だから、ふしうきをしっかり訓練せねばならないんです。『腹圧を入れて浮く』努力は必要です。これをやらずにラクしようということは出来ないんですね

 

話を戻しますが、私の言う『ラク』というのは、酸素消費量を抑えた状態であるんです。バタ足をすれば当然消費量は増加しますよね?

 

ここからが私のハッキリ言いたい事ですが、

バタ足(6ビート)は必然的に酸素消費量が増加する。以前から言うように、下肢は酸素が大量に必要なわけです。だ  か  ら、吐ききらないと酸素供給が間に合わないんです。だから吐ききりなさいと言うんです。

逆に、私の実践しているキックなしや2ビートは、酸素消費量は格段に少ない。省エネです。だ か ら、50%で十分なんです。

 

ともかく、

血圧の高めな年者の場合、血圧をあまり上げない省エネな2ビートをマスターし、深い呼吸ではなく、省エネの浅い呼吸でこまめにすべきです。

呼吸の為の呼吸になってしまわないように!

 

もう1つ。100%吐ききる意識を持つと、肋骨を完全に下げて(肺を最小化して)しまう。この状熊から急激に肋骨を広げると、自然気胸のリスクが生ずる。特に喫煙している人、肺疾患のある人、高齢者は肺の弾力が低下している為、肋骨を急激に大きく上下させるべきではない。

 

さらにさらに・・

100%吐ききると(肋骨を下げてお腹をしぼり出すと)血圧がかなり上昇します。

このこともエピローグで述べます。

リスクマネジメントがしっかりしていないと、大変な目に遭うことをお忘れなく。水泳で事故が起こってしまったら・・

とても笑えない話ですよね?

 

そして・・

水中で吐ききってしまうと、体が沈み水圧をまともに受ける為、吸うことが困難になります。そして吐いてしまっていると、ロが水上に出る前に吸いたくなる。

結果水を飲みます。

 

 

もし、足のつかないプールや海で水難事故に遭ったらどうしますか?そこまでいかなくとも、足がつったりしたらどうしますか?

泳ぎを止め、その場で浮くには息を必要以上に吐かないこと。肺の空気の浮力を確保すること。

吐いてしまえば体は沈みます。それでもあなたは、吐き続けますか?

 

水中で吐 き き る。

まるで都市伝説のように言われ続けているおかしな常識・・

もう、吐ききるのは止めにしませんか?

必ず水中では   止  め  る  んです!  

※※※念の為ですが、こらえてしまうようであれば少しずつ吐いてもかまわない。

というわけで・・

今の指導法には、警鐘を鳴らしたいと思います。

 

 [補足I〕

ちょっと待て!競泳選手は、水中で鼻から息を出しているではないか!・・これはよく誤解されますが、意識的に吐いているのではないんです。運動負荷が強い為、腹圧でどうしても息が漏れるんですね。ちなみに私は運動負荷が低い為、息は漏れることはないんです。

 止めろったって、吐くヒマがないじゃないか!一瞬でどうやって吐くんだい?

前述のように競泳選手は腹圧を使って吐き出しています。腹圧を入れていれば瞬時に吐いて吸うことは可能です。 あくまで吐く→吸うはワンセットです。

 

〔補足2〕

泳速の遅い初級者は、ボディーポジションが下がる為、水中で止めることをお勧めします。私は、ゆっくり泳ぎでは少しずつ吐くと必ずボディポジションが下がります。息継ぎしようにも顔が水面に出ない為、水を飲みます。それがイヤで頭を起こしてしまう。これ、結構ありがちな現象です。

じゃあ、泳速が上がっている時は止めるのは必須ではない。なぜならボディーポジションが上がるから。と言いたいところですが・・しかし、止めないと腹圧がかからなくなる。最近の水中映像は画質もよくなり、選手の息づかいも細かく確認できるようになりました。よく観察すると、水中で止めている選手は意外と多いことに気づきます。ただし、中には止める理由が少し違う人もいます。競泳ではよく肋骨を下げ腹筋を固めて(プレスと言う)泳ぐ選手がいます。酸素摂取効率を高めるのが狙いです。これは腹圧とよく誤解されますが、一般の大人のスイマーは真似しないほうが得策です。あくまで水面に浮く為の正しい腹圧(46記事参照)を入れるようにします。

 

 

〔補足3〕

初級者が苦しい!というのは、水中で息を止めてしまい、吐けていないからというのがあります。こういう方にこそ、止めるをベースに『吐く→吸う→止める』を徹底させるべきだと思います。息を止められるというのは、実は長所です。長所を否定せず活かしたほうがいい。

また、苦しい根本の理由は、呼吸回数にあることが多い。4かきに1回の人がそう。こういう人は、毎時呼吸に切り変えてみてはいかがでしょうか?この場合は止めている時間はほんのわずかです。止めた所ですぐ吐きます。上違し、省エネになるにつれ、3かきや、4かきに一回の呼吸をするのも良いですね。

 

 

 

追記

息を吸う時、大きくロを開けると必ずうなじが緊張する。

先程の過去の動画を見ると、ロを大きく開けています。その為、うなじが縮まっています。短い距離なら気付きませんが、長距離を泳ぐと首が凝ってくるんですね。これは最近気付いたのですが、ロを開けるというのは、力を入れて開けるのではなく、アゴのカを抜くだけで十分なんです。 

 

ええ?これじゃたくさん吸えないじゃん!

そう、少ししか吸えません。しかし、前述のように50%で十分です。

いやそうじゃなくて、気道が狭くて全く吸えないの!だから大きく開けるんでしょうが!

実は、気道が狭くなる根本は(私もそうですが)猫背にあります。胸椎が後湾しているとそうなる。このことから、背骨の真っ直ぐなストリームラインがいかに大切なのかが改めてよくわかります。正しい姿勢ができていればロを大きく開けなくても吸えます。

 

普段から猫背の人は、水泳中も猫背になる。私もそう。だから、余計にストリームラインを意識する必要がある。一つ実験してみます。

 

 まず万歳しながら、目一杯大きく息を吸っておく。

息を止めたままお辞儀する。

②息を吐きながらお辞儀をする。

さあ、とちらがお辞儀しにくいでしょうか?

もちろん①ですよね?

お辞儀しにくいということは、それだけ体幹の自由度が制限されているわけです。裏を返せば、ぐらつかず安定するわけですね。これが腹圧の入った状態です。

くり返し言いましたが、

大きく吸って止める。

重要なのは、

『肋骨を広げる』こと。

これで背骨はまっすぐになる。もちろんねこ背が改善される。

 

ちなみに、猫背を助長する行為があります。何だと思いますか?

実は、『吐ききる』ことです。吐ききると、お腹を凹ますどころか、みぞおちまで凹み、体がまるくなります。

つまり、吐ききると体が縮む。それは、呼息筋である腹直筋と、肋骨を下げる内肋間筋が強く収縮するからです。

水泳のストリームラインは、体を伸ばす行為です体を縮める行為ではありません。

 

背伸び、ぶら下がりもそうですが、

大きく吸えば体は伸びます。

それは、吸息筋である斜角筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋上部そして、肋骨を広げる外肋間筋が収縮するから。もちろんこの筋群は、伸びをする時に働きます。

つまり、体を伸ばすには、吸う方へカを入れる訳です。決して吐く方へ力は入れません。あなたは、このことを本当に理解しているでしょうか?

 

吐ききるというのは、胸椎が崩れるということです。すると・・うなじが縮む。そして緊張する。だから、その後ロを大きく開けないと吸えない。

 

 

よく、息が苦しくなるのは、吐ききってないからだと言われます。私はむしろ逆だと思います。

吐ききるとみぞおちが凹む。それを復元しようと大きくロを開けて吸う。するとアゴが上がる。もちろんうなじが緊張し、その結果全身に余計な力が波及する。体が縮こまって姿勢の崩れた泳ぎになる。足も沈む。扱抗が増え、ますます酸素消費量が増加し苦しくなる。こうして、負のスパイラルが完成するんですね。

 

ちなみに、抵抗の少ない姿勢というのは、背骨が(うなじと胸椎が)よく伸びている状態です。 つまり、体幹は『締まっている』んですね。※締めると縮めるは違う。→53記事知られざる腹圧参照

 

 あなたはこんな悩みを抱えていませんか?

はじめはリラックスしていても・・長く泳ぐとだんだん苦しくなってくる・・滑るように泳げない・・

それは、姿勢が崩れているからです。実は、全身リラックスしても姿勢は崩れます。

 

ラクに泳ぐ。

 

これは、全身の力を抜くことではありません。無駄な力は抜き、必要な力を入れる。普段の生活もそうですが、背すじをまっすぐ伸ばす(体幹を締める)ことは最低限必要です。ストリームラインです。

 

 姿勢の崩れ、あなたもこころ当たりありませんか?

 

 

 最後に、

水泳は(肋骨を広げたままで行う)腹式呼吸が基本ですが・・

 腹式呼吸の知られざる目的を述べます。

一般に腹式呼吸は、吐く方を重視する傾向にありますが、水泳の場合は吸うことの方が全然重要なんですね。

なぜなら、肋骨を広げ肺を膨らませないと、吐く行為は生じないからです。

大きく吸わないと吐けない。

大きな声は、大きく吸わないと出せないということは理解できますよね?

 

そもそも、水泳はなぜ腹式呼吸なのか?それは、腹圧には欠かせない横隔膜を活性化する為。

横隔膜は、吸うときに収縮、吐く時は弛緩する。

つまり、吸うことにより横隔膜が活性化するんですね。

 

もう1つ。

横隔膜が収縮すると、大腰筋が活性化します。

大腰筋はキックを打つ時に働きますが、意外にも息を吐くとカが入りません。カが入るのは大きく吸って止めている時です。

え?吐いてもカ入るよ?

それは、大腰筋ではなく腹直筋や大腿頭筋が活性化しています。

例えば、バサロキックを例にすると、息を止めているほうが鋭利なカが出ます。

 

蛇足ですが、背泳ぎの入江選手は(特にターン後の)バサロが非常に苦手です。なぜか?それは、バサロキック中、常にたくさん息を吐いているからです。吐くと横隔膜が弛緩し、大腰筋に力が入りにくくなります。それに、吐いてしまうと浮力で水面に浮上できなくなる。それを理解していない為、カずくで爆弾キックを打つんですね(大きく体幹を動かすから息が漏れてしまうのが真相)。せっかく鍛え上げた体幹の筋肉は、キックよりも吐息に使われてしまっている。本当にもったいない。彼の泳ぎそのものは超一流です。息を止めるバサロをマスターすれば間違いなく世界記録を出せます。

 

肋骨(特に下部)を広げて息を止める。

 

バサロで有名な鈴木大地氏は、このことに既に気付いていました。ただ、仰向けの姿勢というのは、慣れないと鼻から水が入ります。(だから鼻から息を出すしかないんですが・・)そこで彼の取った方法は、上唇を鼻の穴に押しつけ栓をすること。私もこれを実践しています。

というわけですが、息を止めているから15m以上潜ってもラクなんですね。先程のノーブレで泳ぐのと理屈は全く同じです。

 

バサロは息を大きく吸って止める。↓

 

http://nicovideo.jp/watch/sm26637610

 

つまり、横隔膜を最大収縮させること。

 

これが大腰筋をフル活用するコツです。

※※※くれぐれも、こらえることはしないでくださいね。肋骨が広げられない方は少しずつ吐いても構いません。

 

 水中で息を止めるメリットは他にもあります。53記事『5 知られざる腹圧』をご覧下さい。

 

吐くことばかりを強調しすぎると、思わぬところで損をします。

 

 

 

 

 

 

 

 

5 ギャロップについて

 ギャロップクロールとは、毎回呼吸をし、左右ストロークのタイミングが違うクロールのことです。ギャロップというのは、泳法というより選手の個性が出た結果でしょう。利き手を活かしたり、リズム感だったり・・自然にそうなるわけですね。もともと左右均等に泳げる選手でも、ラストスパートすると自然にギャロップになることはよくあります。

※このギャロップクロールは、初心者の方にはお勧め出来ません。あくまで基本をしっかりマスターするのが上違の早道です。

さて・・

先日、内田選手の泳ぎを見たみすずさんから、ギャロップクロールについて研究してほしいとの要望がありました。

ギャロップ。これに憧れを抱く人も結構いるでしょう。私もカッコイイと思います。しかし、私は水泳人生一度もギャロップしたことはない。それでも泳げるのか?私は考えた。

ラストスパート。そこにギャロップのヒントが隠されている気がした・・最後の力を振り絞って、より前へ前へ泳ぐその姿。必死にギャロップしている。どうやら片側呼吸に答はありそうだ・・

 

早速泳いでみました。結果は・・あっさりギャロップで泳げました。

全くギャロップしたことのない私が、いきなりギャロップ出来たのは、体斡主導だったからだと判りました。

え?もっと具体的に説明してよ!

実は、ギャロップというのは、息継ぎが片側だけで、なおかつ頭の戻しが素速いから、馬が走っているような泳ぎになるんですね。

 ちよっと待った!なぜ頭を速く戻す必要があるんだい?

息継ぎ時は腹圧が抜ける為、腰が下がります。だから息継ぎは瞬時に完了させ、頭を水中に入れて腰を浮かせる必要があるんです。その結果うねりが生まれる。ギャロップクロールがうねるのはその為です。

で、俺は速く頭戻してるよ!リカバリーアーム見る前に。それでもギャロップにならないけど?

それもそのはず。あなたの泳ぎは体斡主導ではないからです。あなたは、手の入水よりも先に顔を戻してるんですから。体斡の回転が遅れて(頭の回転が先行して)いるんです。首が疲れませんか?

ラクな息継ぎ動作(頭の回転)というのは、先に述べたように体斡の回転に連動させて行います(体斡主導)。このほうが首の筋肉を使わずにラクに回せます。それを、頭だけ先に回すと体斡がすぐについてこない為、首の筋肉は引っぱられる。これを延々毎回呼吸してみて下さい。必ず首が凝ります。

私が毎回呼吸で頭の戻しを速くすると、自然にギャロップになります。↓

ギャロップというのは、体斡主導だからそうなるんですね。

その証拠に、頭の戻しと手の入水は同時です。ということは?頭の戻しが速いとリカバリーアームも素早く前に運ばねばならない。つまり、リカバリーアームの山を見てから頭を戻すことになります。これがギャロップクロールの正体です。

 

 

 

 

 

 

6 知られざるバタフライの呼吸

バタフライはクロールと違い、左右対称の動きをする。そして、胸郭を伸縮させながらうねります。言いかえれば、肋骨を上下に動かしながら泳ぎます。

 

 

ラクなバタフライの呼吸は、この肋骨の動きに逆らわないこと。

 

では・・

人間の肋骨は、腕の動きと連動しやすくなっています。万歳すれば肋骨は広がり、腕を下ろせば肋骨も下がる。もちろん、肋骨が広がれば自然に吸えるし、下がれば吐ける。まずこのことを頭に入れて下さい。

そして前に述べたように、お腹にカを入れる時に吐き、力を抜く時に吸うということも。

これらの考えに基づくと、プル(腕を下げる)で吐き、リカバリー(腕を上げる)で吸う。これはわかりやすいですね。

 

では、入水~グライドは?

入水は力を入れるから吐くんでしょ?

実は・・答えは『止める』です。

えっ?なんで?

グライドというのは、万歳し体を伸ばします。特にバタフライは、胸を張る為必然的に肋骨は広がります。どう考えても自然に吐けませんよね?必ず止息します。

さらに、ラクなバタフライの入水~グライドですが、キックで潜るのではなく、上半身の重みを使って前へ沈み込むことです。前に伸びることに力を使います。だから、息は吐けないんです。

いや、私は選手だけど吐けるよ!

それは、第一キックを強く打つ為、腹圧で漏れていくんですね。吐いているのではないんですそれが正確な表現です。本当に吐いてしまったら浮力がなくなり、大変疲れます。

 

ではストロークと呼吸のまとめです。

 

グライド~キャッチ→止める。

プル→吐く。

リカバリー→吸う。

冒頭の見出しの『吐く→吸う→止める』。

バタフライこそ、この流れを徹底する必要があリます。これこそが、バタフライをラクに泳ぐコツなんですね。

 

 

 

従来の『止めない』呼吸を教わった人の中には、バタフライに苦しむことがままあります。肋骨の動きに反して、強制的に吐き続けるからです。

スクールでは、クロールを一番始めに教わりますよね?クロールというのは、入水意識(肋骨を広げる)だと止めるのがラクになり、プル意識(肋骨を下げる)だと吐くのがラクです。

よく、クロールの呼吸は、水中で止めるのか?吐くのか?と議論されますが、これで謎が解けた人もいるでしょう。

大半の大人はプル意識が強い為、肋骨を下げて泳ぐクセがつきます。その為に止息出来ず、吐き続けるのがラクになります。このままバタフライを教わると・・肋骨の動きに反する為(うねりに合致しない為)大変苦労します。

 

余談ですが・・

スクールでは、バタフライを教える時、上半身のうねりから教える指導者はほとんどいません。必ずキックから教えます。第一、第二キックというように、トントントントンとリズムで泳ぎましょう!というわけです。実は、これも止息をしづらくしている要因なんですね。キックを主体にすると、必ずと言っていいくらい、フンフンフンフンと息を吐くクセがつきます。入水~グライドする時も、第一キックでフーンと吐いてしまいます。ここで勢いよく吐いてしまったら、次の第二キックでフーンが持ちません。

つまり、プル時に吸いたくなる。吐いたら吸うしかなくなる。だから顔をムリやり上げることになる。

結果、背中が反る。

 

このように初級者のほとんどの人は、頭を上げるタイミングが早すぎます。要するに、吸うタイミングが早すぎるんですね。

 

キック主体の、背中が反る初級者のタイミングをまとめると

第一キック(グライド~キャッチ)→吐く

第二キック(プル~リカバリー)→吸う??

となっている。??と冠するのはなぜでしょうか?

第二キックを打つときは、本能的に吐くのが自然です。これに逆らって吸うのはとてもしんどいはずです。止めていればまず吐ける。そして吸うにつながる。呼吸を遅らせるがとれるんですね。

というわけで、

背中の反るバタフライの隠れた原因は・・

息を止めないからである。

 

さらに余談になりますが、いつもバタフライを練習されている方と、お話をさせて頂いた時のことです。

私は、吐いて~吸って~で泳いでるよ。すぐかかずに、しばらく前に腕を伸ばしているんだけど、でもなぜか推進カが上がらないんだけどね・・。

早速、泳ぎを見させて頂いたところ・・

ストローク中ずっとねこ背のままで、肘が曲がった状態で入水していました。すぐプルせずにびているつもりが、キャッチの状態だったんですね・・

こういった事例、たまに見受けます。いつも背中が反っている人とは真逆ですね。息を止めることが出来ない理由とも言えるんですが、

グライドが抜けているんです。

すなわち、息を止める大切なステージが抜けているんです。

 

グライドは本来、胸を張り、肋骨を広げて沈み込むんです!腕をまっすぐ伸ばすんです!ねこ背で肋骨を下げていると、沈み込めない上、息をきたくなります。

息を止めるステージであるグライドがないと、浮力で上がることが出来ない。つまり、推進カが出ないんです。

 

 

胸を張って伸びること、上半身のうねり(胸郭の動き)を主体にすること、これを実践すればこのような過ちは犯さずに済むはずです。

 

幾度も言いますが、息を吐き続けると、ボディポジションは下がり、溺れたバタフライになります。入水は水中深く潜りすぎる上、浮力による自然な浮上が出来ず、プルとキックにたよらざるを得なくなります。

 

バタフライは、しっかり前にグライドすれば(胸を張って肋骨を広げれば)、息を止めるのもラクになります。