50 平泳ぎのキックについて
平泳ぎのストローク、タイミングについては、53記事で紹介しています。
私は、平泳ぎのキックがとても苦手です。 その理由は、すねの骨(脛骨)が一般の人より内側に捻れている為、つま先が外を向きにくいからです。また、股関節の内旋域もかなり狭いこともあります(逆に外旋域はかなりある)。
こういった身体的特徴の為、常識通りに練習しても、キックがなかなか出来るようにならなかった。あげくの果てには・・身体のせいにして平泳ぎを全く泳がなかった。
しかし、あることがきっかけで、急に平泳ぎが出来るようになった。その秘訣はどこにあるのか・・?
というわけで、今回は平キックが苦手な人の為に解説してみます。
平泳ぎはもともと、古くから親しまれている泳法で、自己流の方が大変多いのが特徴です。その為、誤解が最も多いのが平キックです。過去の私がそうだった。皆さんは果たして、平泳ぎのキックを本当に理解していますか?
さて・・
平泳ぎのキックには、ウェッジとウィップの2タイプがあると言われている。そして、初心者はウエッジで、膝や足首が柔らかい人や上級者はウィップと説明されている。私は、この常識にとても疑問を持ちます。だいたい平キックを、上記の2タイプに分けていること自体ナンセンスではないか?
1 いわゆるウェッジキック
かなり音からあるタイプ。市民レベルでは最もポピュラーなキックですね。自己流で泳いでいる人はほとんどこのタイプです。
外側に向かってけり出すキック。足が伸ぴきったところで股を閉じて両足を揃える。推進力は主に挟み込みによって得られる。見た目は、足全体が大きく股を広げて回っている。平面的な動きです。
だから、平泳ぎと呼ばれたんですね。
動作は必然的にゆっくりになります。けり出してから、足が揃うまで時間を要する。
昔の平泳ぎは、もともと速く泳ぐためのものではなかったことが起因です。
それなのに・・無理やりこの動きで速く泳ごうとする人がいます。外側にけり出し股を閉じると・・股関節に多大な負荷がかかる。勢いよく蹴ると、必ず股が痛くなります。そのわりに、ちっとも速くならない。それは抵抗が大きいからです。
また、外側に向かって蹴り出す為、運が悪いと隣の人に直撃します。狭いプールや、海で混雑した状況ではとても危険!
私は何度も蹴られました・・。
2 いわゆるウィップキック
これは現在競泳選手が用いるキック。膝を捻ることなく直線的に、水を後ろに押します。
えっ?膝を捻って膝から下だけを回すのがウィップじゃ・・?いいえ、それは誤りです。
確かに水中ビデオを見れば膝から下が回っているように見えます。が、ここが大きな落とし穴。
ウィップは膝を捻りながら蹴っているわけではない!
もっとつけ根(股関節)から捻っています!
膝を痛める人は、股関節をうまく使えていないからです!
解剖運動学を学べばすぐ解ることですが、膝から下を回す動きには、股関節の内旋外旋が組み合っています。股関節が柔らかければ膝を捻らなくとも膝から下は回ります。
具体的には、足の引きつけ(股は軽く外旋している)後、股関節を内へ捻りながら閉じるんです(内旋しながら内転する)。もっとわかりやすく言えば、引きつけた後、両かかとを離して(ウイングして)真後ろへ押す。股をしめるような感じです。すると膝下が回ります。
あくまで、しめるのは押すときのみ。引きつけ時からしめると膝幅が極端に狭くなり、膝を壊します。
というわけで、膝の柔軟性はさほど必要ではないんです。
そのかわり、股関節の柔軟性を高めよ!
以上、ウエッジとウィップの違いをハッキリさせてみましたが・・
では、私のした事とは・・?
3 直線的に後ろに押す
平キックのスタートポジションは、両足をまっすぐ伸ばして揃えた状態(ストリームライン)。
引きつける時は股関節と膝と足首を緩める。すると軽く股が開く。膝幅は肩幅以内に収まる。
引きつけ終了時、足首をしっかり曲げる。
すると自然に、足のうらは後方を向いてハの字につま先が外を向く。
そこから、まっすぐ後ろに押す。(ストリームラインに戻る)
たったこれだけです。膝から下を回そうと考えない。
昔のことですが、膝下を回そうと、股を開いて外へ蹴る人がいた。無知な私です。ウェッジキックをなめらに行うイメージだったんですが、うまくいかなかった。それは意図的に回していたからなんですね。昔の私は、平キックというのは、回して蹴るものだと思い込んでいた。しかし、股関節が硬い為うまく回らない。回せないから平泳ぎをあきらめた・・
回さなくていいんです!股関節が硬いなら、
直線的に後ろに押す!
私は、これがきっかけで急に平キックが出来るようになったんですね。
あなたも無理に回そうとしていませんか?
一方股関節が柔らかい人は・・回したほうがもっと推進力を増加させることが出来ます。しかし、勘違いしないでほしい。本当の回し方は、股をしめながら後ろへ押すんです。すると結果的に膝下が回るんです。
※平キックというのは、初めから膝下を回そうと意識するとうまくいきません。まずは直線的に後ろへ押す。後ろへ押すことが体得できたら、ここで初めて股をしめるように(股関節を内転内旋する)押します。すると、選手のように膝下を回すことが出来ます。
注)膝が悪い人は、回そうと考えないほうが無難です。
以下、全ての動画は、初めて後方キックを練習した時のものです。どうぞご参考に。
1回目2回目のキックが後方キック。3回目はもろウェッジキックになっている。↓
私は、つま先が外へ開きにくい為、水の引っかかりが小さく、キック単独ではあまり進みません。しかし、心配は無用。クロールの2ビートキック同様、平泳ぎというのは、キックがメインではないからです。えっ?どういうこと?そのことは別の機会に説明しますね。
4 平泳ぎのキックは足のうらで押すもの
当たり前だ!そう言いたくなると思いますが、その当たり前な動作には秘密があります。
では、医学の目から平キックを見てみます。
人間には共同運動パターンなるものが存在する。高位脳障害でよく出現する動きです。これは原始的なつまり、本能なんですが健常者でも最大に力を発揮するには、本能を利用したほうがスムーズにパワーが出せます。
ここで言う本能とは、決まった方向に全ての関節が同時に曲がったり伸びたりすることなんです。だから、素早い対応が出来る。四足獣のように生きるか死ぬかの世界では本能なしには生きられません。犬を飼っている人は犬の足の曲げ伸ばしをしてみてください。必ず各関節が同時に動きます。
さて・・細かい説明は割愛させて頂きますが・・
わかりやすい動作として、ジャンプがあります。ジャンプ直前は必ず腰を落とし(各関節が緩み、足のうらが地面に接している)、飛び上がったら両足がまっすぐ揃います(各関節は締まり足首は伸びる)。
ジャンプは重力に逆ってするもの。だから、腰を落とすには力を抜くでしょ?力を入れて下肢を曲げないでしょ?関節を緩めてから、力を入れて伸ばすんです。ごく単純だと思いませんか?これが後方キックの正体です。
一方、外へけり出すウェッジキックは・・共同運動がバラバラです。内転動作が遅れている。外へ蹴っていては、素早いキックなど出来るはずもないんです。
効率のいい(抵抗の少ない)平キックというのは、後ろに押すキックなんです。足も自然に揃う。
ウエッジのような大きな挟み込みがない分、シンプルでとても簡単です。
※水の引っかかり感はウエッジに比べ小さくなりますが、筋肉に負担がなくとてもラクになります。
5 平キック新常識
ウィップキック(後方キック)は膝関節や足首が柔らかくないと、とても出来ませんよ!初心者にはウエッジキックがお勧めですよ!これが今までの常識でした。
しかし、そうではない!私のような、関節の硬い人でも後方キックは出来るんです!
常識に囚われ、外へ蹴り出している限り、これからもきっともがき続けるでしょう・・過去の私のように・・。
後方キックはなにも、上級者、関節の柔らかい人だけのキックではないんです!
平キックの苦手な人こそ、トップスイマーの後方キックをマネしてほしい!
というわけで、一つ私からお願いがあります。
隣を泳いでいる私を蹴ることだけは止めて下さい!
自分の体にやさしい、そして周りを泳いでいる人にもやさしい後方キックでお願いします!
これからの時代、周りの人に迷惑をかけない後方キックがスタンダードになるでしょう。後方キックが平泳ぎを泳ぐ上でのマナーとなります。