キックなしでもクロールは泳げる!

医療従事者が水泳の常識にメスを入れていきます。

53 固定観念に縛られない平泳ぎ

52記事の投稿から、もうはや半年が経ってしまった・・。お待たせして大変申し訳ない。

当記事は、平泳ぎが苦手な人はもちろん、平泳ぎにあまり関心のない人、クロールをはじめとする、他3泳法を泳ぐ人にも参考になる内容である。特に、メイン記事である『5 知られざる腹圧』は専門家も知らない重要なことを述べている。ぜひ一読を。

 

 さて・・

4泳法中もっとも難しいのが平泳ぎである・・。

これは私が身を持って感じたことだ。

え~?何言ってんの?一番簡単だよ!

それを言うあなたは、速く泳いだことがないのだと思う。水の抵抗というのは、速度の2乗に比例する。つまり、速く泳ごうとすればするほと抵抗はぐんぐん増加する。ご存知平泳ぎは、4泳法中最も抵抗が大きい。だから、速さを追求するのはとても難しいのだ。平泳ぎは、水泳の基本が出来ていないと、速く泳ぐことは不可能である。それが、泳ぎに露骨に表れる。ごまかしが効かないのだ。平泳ぎは、他の3泳法より抵抗削減の技術を最も要する、とてもシビアな泳法なのだ・・だから、最後に紹介することになったのだ。

私が平泳ぎを泳ぐ目的は、このシビアな技術と感覚を磨き、他の泳法に応用する為である。

というわけで今回は、『ある程度速く泳ぐ』平泳ぎについて述べたい。もちろん『ラクに』である。

 

私はこの1年、平泳ぎと悪戦苦闘してきた。いかに抵抗を減らすかということに。また、現時点ではキックの推進力も小さい為、どのように推進力を得るかについても取り組んだ。

今回は、以下の映像をもとに、私自身が実証したことを私の視点から述べたい。

 

水上から↓

http://www.nicovideo.jp/watch/sm27211969

水中から↓

http://www.nicovideo.jp/watch/sm27193359

 

 

 

 

 

 

 1 固定観念が、平泳ぎの苦手意識を作り出す

 他の泳法は得意でも、平泳ぎだけが苦手な人は多いだろう。私もその一人だった。キックで疲れるわりにちっとも進まなかった。なぜなのか・・?それは、平泳ぎはキックでたくさん進むものだという固定観念に縛られていたからだ。しかし実際は違った。

 

では、1年前まで平泳ぎがまともに泳げなかった私が、ラクにそこそこ速く泳げるようになった理由を結介する。 

 

 

 平泳ぎの推進力は一般に、キック7割、ストローク3割と言われる。要するに下半身メインだ。が、私の平泳ぎは逆だ。上半身メインである。ぶっちゃけて言うが、私はキックがとても苦手である。キックの推進力など上手い人の5割にも満たないくらいだ。その為、意識としてはキック3割ストローク7割で泳ぐようにしている。

ただし推進力そのものは、何割と明確に言えない。なぜならば、体幹からも生じているからだ。キックだけが上手くても平泳ぎは速くならない。

私の平泳ぎは、推進力に何を利用するかと言えば、重力、浮力、そして・・

惰性のカだ。それを生かすにはストリームライン(伸び)をとる必要がある。また、バタフライと同じく上半身がうねる。

   

そもそもうねりはなぜ必要なのか・・?

バタフライでは肩を水面上に出す為に必要だった。そしてもう1つ。キックを生み出す為だ。上半身がうねるからキックが打たれることは52記事で述べた。では平泳きはどうか?実は、平泳ぎも上半身がうねることによりキックが生じる。ウソのようで本当の話である。当の私が実証しているのだ。間違いない。

 

もう1つ。うねりは、前後の重心移動の為に必要である。バタフライでも述べたが、いわゆるシーソーをする為である。上半身が上がれば下半身は下がる。

また、うねりは息つぎも助ける。息つぎは頭を起こさなくとも、上体が上がればついでに出来る。わざわざ息つぎをしに行かなくとも良い。

念を入れたいが、上半身を使わなければうねりは生まれない。私の平泳ぎは上半身がうねる。下のビデオをご覧頂きたい。

 

http://www.nicovideo.jp/watch/sm25519939

 

キックなしでグングン進んでいるのがわかる。どう考えてもキック主導ではない。重心移動だけで前に進んでいる。

うねりというものは、胸郭(正確には胸椎)の伸縮から生じる。私の平泳ぎは、バタフライと全く同じうねり方をする。私の上半身は、バタフライと酷似していることからもわかるだろう。↓

                             

http://www.nicovideo.jp/watch/sm26385551

 

私がバタフライや平泳ぎをうまく泳げるようになった訳は、キックなし平泳ぎ(ドル平)で、上半身でうねる練習をやったからである。

 

 

 

 

 

 

 

2 上体を上げる高さについて

  その前に・・

平泳ぎでよく進む人、進まない人の差はズバリ、伸びの姿勢にある。水泳の基本中の基本、フラットなストリームラインだ。特に平泳ぎは、1にも2にもこの伸びの姿勢が最重要項目である。平泳ぎというのは、まっすぐなストリームラインから、息継ぎの為に瞬時に上体を上げ、瞬時に元のストリームラインに戻る泳法だ。これは腹圧の観点からとても重要になる。腹圧については後述する。

 

平泳ぎでラクに速く進むようになりたい人はぜひ、伸びることを練習されたい。これなくしては平泳ぎそのものが成り立たない。

 次に・・

 もともと平泳ぎとバタフライは同じ種目だったことは皆さんもご存知だろうか? 私の泳ぎは、ここからヒントを見い出している。競泳のスタンダードな平泳ぎのように、上体が高く立つことはない。(バタフライは上体が立たないだろう)これはつまり、背筋や腕力を使っていないからである。浮力重力でうねる。

ではなぜ競泳の泳ぎは上体を高く上げるのか?実は平泳ぎは、一瞬スピードがゼロになる届面がある。え?!本当である。上体を高く上げた直後だ。もちろん重心は後ろへ移動する。しかし、このタメのおかげでキックの推進力を最大化出来る。私には実感出来ないが、トップ選手は固いカベを押しているように感じるという。これはドラフティング効果の1つと言えるが、選手は意図的に上体を上げる。すると足に水の塊が引っかかるのである。

 

ただし!これは足のうらでしっかり水を捕らえられないと意味がない。キック単体でグングン進むスイマーならともかく、私のようなキック苦手人間は、上体を高く上げると(重心を後ろへ移動させると)見事に墜落する。

 ついでに・・

マスターズスイマーの中には、トップスイマーを真似て上体をかなり上げている(水面に対し背骨が垂直に立っている)人がいる。見た目はダイナミックだが、意外と進んでいない。なぜなのか?それはリカバリーの腕が完全に伸びきってから頭が落下を開始するからだ。伸ばす勢いを殺しているのである。重心移動にズレがある為と言える。上体を高く上げるには筋力を要する。また、背中が反ってしまっている。

 

試しに背浮きになり背中腰を思い切り反らしてみてほしい。すると下肢もつられて膝が曲がるだろう。人間の体は本能というものがある。上体を反らすと必ず股関節は伸び、膝は曲がる。また、構造上90°まで反らすと、腰椎の棘突起がぶつかり合う。ここまで反らすことを延々と続けると腰痛を引き起こすリスクが高まる。水中から見るとまるでサッカーのへディングの姿勢のようだ。

 

これは緊張性頸反射なのだが、平泳ぎでは邪魔になる。(バタフライでは有効だが・・)

平泳ぎの難しい所はコンビネーションだ。ストロークとキックを同時に行わないようにせねばならない。それが本能により、同時になってしまうのだ。するといくら頑張ってもスピードは出なくなる。この本能を抑制するには、背筋に力を入れない(ねこ背になる)ことである。また、アゴを上げて顔を正面に向けないこと。水面を見るようにすることだ。

 

 

ここで平泳ぎはひと休み。 

頸反射の話が出たのでクロールについて書こう。

私がクロールを速く泳ぐ時は、非対称性緊張性頸反射(ATNR)を利用している。赤ちゃんによく出現する本能だ。どういうことかと言うと、右に首を回せば、右の上肢は伸ぱしやすく、左の上肢は曲げやすくなる。反対も同様。要は、人間の体は、視線の方向へ腕を伸ばしやすくなっているのだ。

のATNRを最大限に活用しているのが、実は空手の突きである。医科学が発達する前から、先人はすでに、ATNRを経験的に知っていたのである。私は、空手の形を見る度に、完成度の高さに驚かされる。

 

では、試しに弓道の弓を引く構えを取ってほしい。視線は伸びた腕の先を見ているだろう。そして後頭部には、肘の曲がった腕が構えている。この(架空の)弓を、ななめ上方へ向けてみる・・。

 

あっ!サメのポーズではないか!

そうなのである。クロールというのは、ローリングするたび(体幹を基準に見れば)首は右に左に回っている。スイッチするたぴ後頭部にある曲がった腕が、視線の方向へ伸ばされるのだ。そして他方の腕は、伸びた状態から肘が曲がりながらプルし、リリースしていくのである。要するに空手の突きそのものなのだ。(注:突きの動作は全く同じだが、引く側は違いがある。肘が曲がっていくという意味では同じであるが、空手の引き手は脇が締まる。対し、クロールのプルはフォロースルーしていく。このことは後述する。)

 

これじゃ押し切れなくなるじゃん?それでいい。フィニッシュは押しきる必要はない。私の実践しているクロールは、上腕三頭筋を使って肘を伸ばさないのである。広背筋で引く体幹主導だからだ。空手の突きや、クロールのストロークは、体幹主導であることを忘れてはならない。

でもそれやると、プルの手が腰で止まるじゃん?ご心配なく。内旋を入れていけば自然に反動でリカバリー出来る。ゆっくり動かせば、腰の位置で手がリリースするが(肘が伸びきることはない)速く動かせば内旋の反動で一瞬肘が伸び、大腿の付け根に手がくる。手が大腿付け根にある時、肘はすでにリリースしている。

結局、押し切るクロールと押しきらないクロールの違いとは、直線運動なのか、円運動なのかの違いである。広背筋で内旋して引きながら、押しきらずスムーズにリカバリーしていくほうが体幹の回転にうまく同調する。私のプルは、体幹の回転カで行っているにすぎない。末端に(上腕三頭筋)力を入れていない。

だからテンポも上げやすいのだ。私はこの押しきらないフィニッシュのほうが断然力を入れやすい。

押しきらない理由はまだ他にある。これは後述する。

 

さらに脱線するが、背泳ぎの入水時、よく肘が曲がる人がいるが、ATNRが働いている可能性がある。

肩関節が硬い人に、肩幅より外目に小指入水!と言っても、肘を伸ばして入水出来ない人は、思い切って親指入水させたほうがよいだろう。

 

 

   さて、平泳ぎに戻そう。

平泳ぎもバタフライと同じく、腰を支点にシーソーしている。上半身が上がれば下半身は下がる。もちろん上体が上がらなければ下半身は下がらない。(※フラットに浮けるのが前提)だから、バタフライ同様ローボディで泳ぐのだ。

あの北島公介選手の上体をよく見てほしい。前傾しているのが分かるだろう。最大でもここまでなのだ。それ以上立てるともろ後重心になってしまう。平泳ぎというものは、あくまで斜め上方へと上体は上がっていく。直上へ上がるのではない。

 それに、上体を真上に上げるのは心臓にも負担がかかる。

 

 

 

 

 

  

3 心臓への負担

~あまりにも専門的である為、省略させて頂いた。

 

 

 

 

4 ストロークについて

私の考えでストロークを細かく分けると、アウトスカル~インスカル~リカバリー(グライド)の3ステージである。

あれ?プルは?    よく教本ではプルやハイエルボーなとと説明されるが、それらは全て選手向けであり、少なくとも私の平泳ぎには、プルは存在しない。プルとは引くと言う意味である。少なくとも、初級者が引くと必ず失敗する。

え?キックに頼らないわけでしょ?ならばプルに頼らないとどこから推進力を得るわけ?

ところが・・キックで蹴らなくても、腕でかかなくてもちゃんと進むのである。

 

 では

まずアウトスカル。基本のストリームラインの(伸びた)姿勢から、グーッと胸を張って外へ腕をゆっくり広げる。手の平は外へ向く。

そして、インスカルは・・大胸筋に力を入れフッと息を吐く。すると肘は落ちて、外科医ポーズ(後述)になる。この瞬間に吸う。すぐさまリカバリーに入り、元のストリームラインに戻る。と同時にグライドする。たったこれだけである。へ?と思われるかもしれない。

しかし、プルは本当に必要がない。

よくあるNGに、アウトスカル後、ハイエルボーにせず肘を引いて(プルして)しまうことがある。

教本にもよるが、脇をしめるという表現がよく出てくる。これが原因でおかしなことになる。

 

『脇を締める』この言葉は、空手の引き手の話だ。平泳ぎでは禁句である。

 

ひとつ指摘する。クロールのプルでよく、広背筋を使って脇を締めよ!と書かれているが、私が素直にやると肘が落ちる。正確に言うと、外旋したまま肘から引いてしまうのだ。つまり、前腕が引く方向に対して平行になり、水をとらえられなくなる。その結果何が起こるか?引っかかりがえられない為、上腕三頭筋で押そうとするのだ。さらにこの状態からリカバリーすると棘下筋(外旋の主働筋)が強く働く為、脇を締めたまま手先から動かしてしまう。これは普段のプールで非常に多く見受けるが、後ろへ押す識が強く、その結果脇を締めてしまい、棘下筋が緊張し不自然なリカバリーになるのだ。これを延々繰り返したら、水泳肩まっしぐらである。リカバリーは脇を開かないと、つまり棘下筋を緩めないと自然なリカバリーにならない。 

 

 あなたは、クロールで次のような悩みをだかえていないだろうか?

肘から先をリラックスしているのに(上腕三頭筋を緩めているのに)なぜか不自然なリカバリーになる・・その根本は棘下筋に『力を入れて外旋している』からに他ならない。より遠くに入水!とぱかりに、手先を水面から高く上げる意識があるからだ。

 

正しくは、棘下筋の『力を抜いて外旋する』のである。この問題を解決するには、ジッパードリルがおすすめだ。手先を水面から離さないようにサメのポーズにもっていくのだ。体側の近くを手先でなで上げるようにすれば確実にハイエルボーになる。なにも遠くに入水する必要はない。

ただ、根本の解決を計りたいのであれば、反動をよく理解することである。→52記事6フィニッシュ参照

 

クロールのプルに話を戻そう。

正しくは、脇を開けて、肘を外に張り出しながら引くである。すると前腕が引く方向に対して垂直になる。これが内旋しながら引くということだ。詳しくは21記事を参照されたい。

ともかく

内旋という行為は、脇をある程度開かないと起こらない。

広背筋というのは、脇を締めること『内転』のみに意識を持つと最大限に力を発揮できない。

 

広背筋は、『内旋』を加え、『引く』ことにより最もパフォーマンスを発揮するように出来ている。

 

広背筋を鍛える、ウェイトトレのラットプルダウンの落とし穴が、ここに見えてくるだろう。思ったより広背筋が効かないのは、内旋していないからである。だから、一生懸命脇を締めて無理やり効かせようとしてしまうのだ。→広背筋の正しい意識の仕方は、47記事で述べている。

 

話が長くなったが、平泳ぎでも脇を締めるのではなく、外へ開いた両手を顔の前にもってこればいい。肘を落とせばいい。ハイエルボーの意識ではなく、逆にローエルボー意識のほうがすばやく肘を落とせる。手部は、顔前にあり、常に視野に入っているようにする。

プルせず(引かずに)、背中を緩めねこ背になればいい(肩甲骨を開けばいい)結果として顔の前に手の平をもってこればよい。手は広げてから寄せる。結果的に外科医ポーズをとることになる。

え~?うまく出来ないよ?

それには、 胸郭を開いて閉じるという意識も必要かも知れない。バタフライでも述べた、胸を張る、ねこ背になるである。アウトスカルは胸を張る。インスカルは力を抜く。結果としてねこ背になる。

  

あくまで顔の前で両肘を近づけることである。脇を締めないことだ。

その現由は・・肘を後方へ引くとそれだけリカバリーが遅れることになるからだ。腕力があればそれもいいが、私など、力ではどだい無理だ。

それに腹圧の観点からして引くのはとてもデメリットが大きい。

 

  

 

 

 

 

 

 5 知られざる 腹圧

あのさ、腹圧 腹圧ってそんなに重要なの?クロールでもビート打てば体は安定するよ?腹圧なんて別に必要ないんじゃないの?

あまい!強く言おう。腹圧は必要である。ではその根拠を述べる。

 

水泳というのは、腹圧いかんで泳ぎが大きく変わる。特に平泳ぎは、腹圧に左右されやすい、てもデリケートな泳法である。

平泳ぎはもともと抵抗の大きい泳法である。腹圧の抜けた状態で泳ぐとさらに抵抗が大きくなる。これでは惰性のカを有効活用出来ない。

 

私が、よく進むな・・と感じる時は、常に腹圧が入った状態になっている。しかし、呼吸をすると腹圧は確実に抜ける。なぜなら、呼吸という行為自体が、腹圧の抜ける原因だからだ。そして息つぎで上体を上げると、肋骨が重力により下がるからでもある。また、大胸筋を収縮させると、肩が前に出てねこ背になる。なおさら胸郭を狭めることになる。その結果息が強く吐き出されるのだが・・。

 

ここで止息(しそく)について

腹圧の基本は、息を止めること。しかし、息を止めると苦しい人がいるだうう。こらえるのが身についているからだ。具体的には肋骨を下げる(内肋間筋、腹直筋が収縮)方向に力が入っている。こらえると、胸郭内の血管や肺や心臓を圧迫してしまうのだ・・血圧が急上昇するのは言うまでもない。

 

腹圧という言葉が流行りだした頃、まだよく理解されておらず、誤って教える指導者がいた・・。いや、今でもだ。

顔に赤身がさしてこないような、プルプルしてこないような、苦しくならないようなら、腹圧が入っていない証拠だ・・と。ある指導者は言う。しかしこれは、単なる怒責(息こらえ)である。忠告するが、苦しくなるようなやり方は、決してすべきではない。

このような誤った腹圧を教える指導者がいることは、非常に残念である。

 

じゃあ、 

 息を止めても、苦しくならないようにするコツはあるの?

 

ある。

肋骨を意識して広げられるように!

 

それがコツ(骨)だ。早い話が、大きく息を吸って、伸びをすればいいのだ。46、49記事の延長で申し訳ないが、水泳においての止息は、肋骨を広げる(外肋間筋、横隔膜が収縮)方向力を使う。つまり、肺を陰圧に保つのである。むろん、お腹は伸ばされて凹み、腹圧も入りやすくなる。あばら特に肋骨下部の胸径拡大には、横隔膜も関与していることは意外と知られていない。腹圧というのは、横隔膜が最大収縮しないとかからない。

横隔膜が緩むと、息が吐き出される。つまり、水中で吐いている間は、腹圧はかからないのである。

 

腹圧をかけるというのは、

肋骨を広げ、止息することを意味する。

つまり、『大きく吸って止める!』である。

 

少し脱線するが、クロールには入水意識と、プル意識とがある。

前者は、腕を前に伸ばすつまり、肋骨を広げる働きをする。後者、特にプッシュは、肋骨を下げる働きをする。

ノーブレでダッシュした時、止息はどちらがラクだろうか?もちろん前者だ。息をこらえることがない。後者の場合、明らかにこらえてしまう。強くプッシュするとこらえきれなくなり、息が漏れる。肋骨が下がるということは、肺に圧力をかけていることになるからだ。

私の泳ぎは、入水意識で自然に肋骨が広がる。この状態で止息するから腹圧が入る。だから苦しくならないのだ。

腹圧の知られざる効能その1である。

 

 

じゃあ、肋骨を広げられるようにはどうすればよいの?むずかしそうだけど?

これは、本来なら私が言う必要はないはずだ。なぜなら、水泳の基本を正しく練習している人なら、すでにやっているからである。

??

 選手を含めた、水泳がうまい人というのは、ストリームライン(言いかえると、万歳し肋骨を広げた姿勢)を嫌というほと練習している。頭上に腕を伸ばし耳のうしろを挟んで、手を伸ばす。この姿勢をとると必然的に肋骨が上がる。腹部が伸ばされ凹む。この姿勢で息を止めれば結果として腹圧がかかる。

 

  

やれ肋骨だの、やれ腹圧だの教わらなくとも自然にやっているのである。子供の通うスイミングスクールでもしかり。必ずふしうきからスタートする。ふしうきが出来ないと次に進めないシステムになっている。ところが大人から水泳を始めた人は、大抵これをやっていない。これをやらないまま板キックしたり、見よう見まねでいきなり泳ごうとする。 

 

基本を飛ばしてしまっているのだ・・。

 

 

ストリームライン(伸び)は、見方を変えれば、肋骨を広げる訓練、もっと突っ込めば肋骨を広げたまま息を止める訓練になる。すなわち腹圧の練習をしていることになる。ストリームラインを正しく練習していれば自然な止息が身に着くのだ。

だから私は、口すっぱく伏し浮きを勧めるのである。

 

伏し浮きは、足を浮かす為だけの訓練ではない。

 

正しい止息の訓練でもあるわけだ。

 

そして、ストリームラインのまま(万歳したまま)息を吐くと肋骨は下がらない為、お腹を絞って吐くクセが身につく。これが腹圧で息を吐く(水泳における腹式呼吸)ということだ。

 

歌を歌う時もそうだが、肋骨を下げながら声を出すと、息のコントロールは難しい。お腹から出さないと(お腹を絞らないと)コンスタントに息を吐けない。水泳でも歌う時と何ら変わりはないのだ。

補足!ドローインというのは、お腹を殴られた時のように、うっ!と体をくの字にすることではない。あくまで背骨をまっすぐのまま、お腹を絞るのだ。とても誤解が多いので気をつけたい。

 

ついでに・・ 

 

背骨をまっすぐに!とは言っても、胸を張って気をつけ!のごとく、背面を壁につけてまっ平らにしようとしないこと!これは水泳界の都市伝説なのだが・・自然な人間の背骨は、緩いS字である。

背中の胸椎は緩くカーブする。

これが私の言うねこ背である。軍隊行進のごとく、肩甲骨を背骨に寄せて胸を張ることなどしない。私のクロール、バタフライ(プル~リカバリー期)の背中をよく観察してほしい。決してまっ平らではない。ねこ背ぎみで、肩甲骨は外に開いている。

 

というわけで、壁に背中をつけて立った時に、うなじと腰の後ろは少しスキマができるのが正解である。

 

続けよう。

 大人から水泳を始めた人は、ふしうきをほとんと練習しない。だから、息を吐く時、こらえの延長で肋骨を下げて吐いてしまう(胸式呼吸)。

 その結果足から沈むのだ・・。

 

しかし、ふしうきを練習しろ!って言われてもねぇ・・俺は一応泳げることだし・・周りの人はやってないし、ふしうきの練習は素人っぽくて気恥ずかしいわ。

少しイラッときた。私は素人ではない!私は今でも必ずふしうきの練習を行っている。どんなに泳げるからと言って基本を怠ることはまず無い。なぜなら、水泳のコツ(骨)を知っているからだ。

 

1つとてもいい例がある。

 

池江璃花子選手が、うんていを自宅に設置し、毎回欠かさずぶら下がりを行っていることはご存知だろうか?彼女は幼い頃からぶら下がりを習慣にしていた。

このぶら下がりという行為は、水泳時の体幹扱い方(肋骨を広げる行為)そのものだ。肩甲骨の可動域が広がるのはもちろん、その土台である、胸郭をもストレッチできる。

彼女は『体を伸ばす』つまり、『体幹を締める』という、水泳の超基本行為を当たり前に行っている。だから、男子選手並みの大きなストローク(伸びるグライドクロール)が可能なのである。

 

さらに、ぶら下がって呼吸すればよくわかるが、肋骨を上下させる胸式呼吸は不可能である。なぜなら、腕を伸ばすことにより、肋骨が引っぱられ(広がって)固定されるからである。

大きく胸を広げたままだから、吐ききることが出来なくなる。

逆に止息がラクなのだ。必然的に46記事で述べた『ドローイン』の呼吸になる。池江選手は、自然に腹圧が高まる体なのだ。このような観点からすれば、

彼女が驚異的な速さで泳げるのは当然のことかも知れない。

 

伏し浮きはどうも・・というならばぜひ、ぶら下がりをお勧めする。

というわけで、

水泳というのは、ストリームラインでフラットに浮かなければならない。その為には、体幹の扱い方(=肋骨の扱い方)を学習する必要があるということ。コツ(骨)をつかまずに、プルやキックを学習しても上達は知れているのだ。

 

私は、体幹と言う言葉をよく使うが、筋肉を鍛えろ!と言う意味ではない。体幹の扱い方を練習するということだ。体幹を長軸方向に、背骨をまっすぐ引き伸ばせ!そして肋骨を広げ腹圧をかけよ!ということである。

それにしても体幹という言葉、何だか腹直筋メインに体を固くするイメージが強い。なんかしっくりこない。

この際、体幹力と言わず、姿勢カと言うことにしよう。

 

 蛇足だが、私は長年の腰痛持ちである。腹圧を入れずにクロールを泳ぐと必ず腰が痛くなる。また、ウェーブ型バタフライを泳いだ後は、翌日の仕事に支障が出るくらいである。だから、腹圧を入れてフラット型で泳ぐのだ。

日常生活も同様。

毎朝の通勤ラッシュの車内では、立ちっぱなしである。もちろん、腰が痛くなる。立ち読みも10分が限界だ。しかし、ここしばらく、腹圧を意識するようになってからは、腰痛も起こらなくなった。腹圧の効能その2である。

 

 

ともかく、伸び(ストリームライン=伏し浮き)がどれほどの意味を持つのか・・今一度水泳の基本を根本から考え直したほうがいいだろう。

 

 

 

では、意外と知られていない効能その3。

腹圧の抜けた状態とは、体が緩むことを意味する。体がゆるむと皮膚の表面抵抗が増加する。体というものは、締まっていないと筋肉がゆれ動き、皮膚もたるんでなびく。このまま泳ぐと、接している水も動きだすのだ。これが想像以上に抵抗になる。

ここでよく出てくる、体を締めるとはとういうこと? 

それは・・何度も言うが、伸びをしろ!ということ。

手先足先方向に体を伸ばすことだ。つまり、肩をすぼめ、肋骨を広げ、お腹を伸ばす、ストリームラインの姿勢をとることだ。

へ?さっきの説明では・・つまり腹圧を入れるってこと?お腹を絞るってこと?

正解!絞る(締める)理由は簡単だ。お腹が出ていれば断面積が増え抵抗になるからだ。見た目に凹んでいたほうがいいに決まっている。そして・・柔らかいお腹は皮膚も肉もなびく為、余計締める必要がある。

 

体幹を締める=体を伸ばす

水泳で言う体幹には、胸部と腹部とがある。以下、専門家も誤るポイントであるが・・

体幹を締めるとは、正確に言うと胸郭(肋骨)を広げ、下腹部を締めるということである。

特に誤解されやすいのが肋骨の扱いだ。とある記事に、腹圧を入れるには『肋骨を締める』とある。つまり、肋骨を下げる方向に力を入れよ!体を固めよ!ということだが・・(誤った)腹圧を入れたままどうやって呼吸するのであろうか?

胸部と腹部両方とも締めてしまうと、ガチガチに緊張してしまい、浮けるのも浮けない。ふしうきはリラックスすることだとよく言われないだろうか?

そしてスイムではよく前へ前へ!伸びろ!とも言われないだろうか?それは、肋骨を広げるという意味でもある。

緊張して、腹直筋に力を入れると肋骨が下がる。体はむわけだ。すると、見事なくらい足から沈む。

 

まとめ

体を締める=体が伸びる→あはらを広げる外肋間筋と横隔膜、そしてお腹を絞る腹横筋がメイン

 

体を固める=体が縮む→あばらを下げる内肋間筋と腹直筋がメイン

 

体を『締める』『縮める』『固める』。言葉の違いを明確にしないととても誤りやすい。

 

 

さて・・体が緊張すると余計に皮膚がたるむのだ。

 ん?

試しに座ったまま何もしないでお腹の肉をつまんでみてほしい。必ず皮膚をつまむことが出来るだろう。では、姿勢を正してみる。少しつまみにくくなる。さらに大きく吸って肋骨を広げてみる。さらにつまめなくなるはずだ。

いや、つまめるよ!

ならば、次は直立して姿勢を正して大きく息を吸い、肋骨を広げてみよう。お腹が引き伸ばされて、もうつまめないはずだ。これがストリームライン時の皮膚の状腹だ。

次に、腹直筋に力を入れ、肋骨を下げてみる。皮膚が少しつまめるだろう。そのまま息を吐ききってみると・・簡単につまめるようになる。

 これで納得したのではないだろうか?

肋骨を広げて腹圧を入れるというのは、お腹の断面積を少なくするのみならず、

皮膚のたるみも取っているのである。

  

冒頭の話に戻そう。腹圧の抜ける息継ぎは、素早く完了させ、すぐストリームラインでお腹を締めたほうがよい。

お腹を締めるには肋骨を広げることだと述べた。アウトスカルで胸を張るというのは、肋骨をもっと広げろ!ということである。こうすることにより、手先がより前方へ伸びて体重がかかるようになる。これは同時に、手先からお腹までの皮膚をたるみなく引き伸ばし摩擦抵抗をおさえているのである。このことはバタフライでも同様。

 

ここで注意すべき点を上げる。先程の実験のように、息を吐き続けると、浮力が弱まるのみならず、肋骨も下がり腹圧が抜け、お腹の皮膚がたるむのだ。平泳ぎのストロークで、プルしてしまうと、さらに肋骨を下げることになる。

 

ついでに!

クロールで、フィニッシュ時押しきると、これもまた肋骨が下がるほうへ(腹直筋に)力が入り、余計に皮膚がたるむのである。

 押しきることはデメリットでしかないことを改めて強調したい。

 

蛇足だが、レースの水中映像で、その選手が調子がいいか悪いかどうかがわかる。その判断は呼吸で見る。水中で止めているか、吐き誠けているか、どれだけ息が漏れているか・・等で調子がわかる。もちろん止めている局面が長ければ、腹圧がしっかりかかっている証拠だ。

今年夏、世界水泳で金メダルを期待された、入江選手の200m決勝について述べてみたい。(私は、入江選手をとてもひいきにしている)なぜこの実例を取り上げるかと言えば、今回のレースで腹圧がいかに重要であるかがよくわかったからである。

 

~決勝レースでは、入江選手の調子が良くないことはすぐに判った。ターン後のバサロキックで、多量の息が漏れていたのだ。当然腹圧は抜ける。あそこまで漏れることは、過去のレースでは私の記憶にはない。調子のいい時の彼は、伸び伸びとリラックスした大きなストロークで、うっとりさせられたものだ。ところが今回は・・明らかに力んでいた。無駄に筋力を使うものだから、息も上がる。当然肋骨も下げて多量に吐き出さなければ苦しくなる。おそらくスイム中も深い呼吸になっていただろう。そのたびに腹圧が抜けて軸がブレる。当然泳速は落ちてゆく。それを必死で挽回しようと、プッシュに頼った泳ぎで、余計に酸素消費量がアップし・・悪循環だった。~

 

最近の彼が結果を出せないのは、もっと根本がありそうだ。ここからは、私の私見であるが、筋トレによる肉体改造が主因ではないかと考える。幻の世界新記録を打ち立てた頃の彼は、とても華奢で体がよく締まっていた。ところが現在の彼は、腹直筋が割れた逞しい体になっている。しかし・・それが彼の専売特許である伸びのある泳ぎを奪ってしまったようだ・・。体を伸ばす(締める)ではなく、縮めて(固めて)しまったのだ。本来、肋骨を広げてお腹を伸ばさなければならないものだが、彼の泳ぎは、腹直筋が強く働くため、肋骨が下がる方へとシフトしてしまったのだ。つまり、より胸式呼吸になってしまった(→補足参照)のだ・・。その為に息がより強く漏れ出すのではないだろうか?

 

昔の彼のように、肋骨を広げ、伸びをしっかりとれば腹圧のかかった腹式呼吸が行えるのではないだろうか?筋肉を鍛えてお腹を固くせず、肋骨を広げやすい柔軟なお腹を取り戻すことが先決のように感じる。皆さんは、このことについてどう思っているであろうか?

 話が長くなってしまったが、  

呼吸という視点から、レースを見るのもまた面白いものだ。

 

  というわけで、息を吸ったら、肋骨を広げたまま、必ず止める(腹圧を入れる)。これが4泳法に共通する抵抗削減のキモである。

 

[補足]競泳の場合、酸素消費量が多い為、腹式だけでは間に合わない。肋骨も下げて(胸式も加えて)、強く吐ききる。よく誤解されるが、競泳は純粋な胸式ではないことに注意されたい。正確には、胸腹両式である。あくまでお腹を絞って(腹圧を入れて)、さらに吐ききれば肋骨も勝手に下がるだけのことである。

 

 

 

 

 

 

6 メイン推進力

 ここでいきなり問題。

よく進む平泳ぎの基本は、水上滞在時間を短くし、水面下でフラットな姿勢を出来るだけ長くとることだ。そして惰性の力でグライドする。

では、速く泳ぐ為に何が必要か?

強いキックでしょ?キック後が一番推進力が出るし。キックして惰性のカでグライドするんだ。

 

実は、惰性のカは、キックよりも手前ですでに働いている。

速く進むには?その答えは、素早いリカバリーだ。よく進む平泳ぎのリカバリーは、文字どおり水中へ突き刺すのである。平泳ぎの選手を見れば明らかだろう。これに後押しする形でキックを入れるのだ。つまり、手と足のタイミングは同時に行わない。

 

あなたは次のような疑問を抱えていないだううか?

ストリームラインという基本は出来ている。キックも申し分ない。タイミングも合っている・・はず。でもなぜか逮くならない・・。

タイミング・・よく教本には、かいて蹴ると書かれていることが多いが、とてもやっかいである。この表現は間違いではないが、聞く人によって全然違った解釈をする。私が素直にやると、リカバリーしながら(前に伸ばしながら)蹴ることになる。ゆっくり泳ぐにはこのタイミングでもよいが、速く泳ぐには伸 ば し て か ら 蹴るのが正解である。ここが、よく混同されるところだ。平泳ぎを速く泳ぐには、キックよりも先に、素早く手を前に伸ばす必要がある。ストロークが終わってから、つまり、上半身がストリームラインになってからキックするのだ。

 

人間は、本能で手足を同時に曲げ伸ばしするのが得意だ。しかしこれでは、全くといっていいほど前に進まない。タイミングをずらすには、キックを遅らせるか、リカバリーを早めるかのどちらかである。しかし、キック自体は本能でどうしても遅らせるのは難しい。だから素早くリカバリーする必要がある。そして・・この素早いリカバリー動作そのものが惰性のカを生み出すのだ。クロールの入水と全く同じだ。

実は、この素早いリカバリーこそが、私のメイン推進力となっているのだ。平キックの苦手な人こそ、この素早いリカバリーを極めたい。

リカバリーはだらだらやるものではない。このことはしっかり頭に叩き込んでほしい。

 

 

 

 では・・

その素早いリカバリーであるが、これを実現する秘策があることは意外と知られていない。せっかくなので紹介したい。

 

皆さんは外科医ポーズをご存知だろうか?よくドラマでも見るが、手術医がオペ直前、手ぶくろをしてから、肘を落とし手の平をやや顔に向けるあの構えだ。あれをやるのはなぜだろう?細菌感染予防の為に、余計な物をさわらないようにしているんでしょ?正解!しかし、もっと重要な意味がある。実はこのポジションが最もリラックス出来るのだ。これは医療テクニックの一例である。リラックスの秘密は、外旋回外にある。※回外というより、回内回外中間位。要は力を入れない状態。

逆に回内させると全ての筋肉が締まり力が入りやすくなる。具体的には、肩甲骨が挙上し、肘が伸び腕会体が内側へ捻れた状熊だ。

手の平の動きは、筋膜を介し、肩に間接的に影響を与える。手の平が下を向くと(前腕の回内)肩は緊張し、逆に上に向けると(前腕の回外)肩も緩むのだ。ご存知のとおり手術は、回内した緊張し状態が長時間続くわけである。この緊張を少しでも和らげる為に意図的に外科医ポーズをとるのだ。

 

もちろん、デスクワークも回内したままだから肩がこる。手の平を上にし、休ませることによって肩こりもラクになる。

このポーズは平泳ぎの息つぎ、つまりリカバリー直前の形でもある。なぜこのような話をしたかというと、

 

筋肉というのは、緩んだ状態が最もパワーが出るからだ。平泳ぎのリカバリーは、瞬間に突き刺す動作つまり、最も力を要する。その準備として筋肉を緩めるのだ。これをタメと呼ぶ。では突き刺し方だが、肩をすくめながら手の平を下に向けてななめ前方へ伸ばす。すると、タメておいた分一瞬で伸びる。

 

例えば、空手は引き手を必ず回外(手の平を上に)して構える。そして回内しながら突く。手の平は当然下になる。(10記事動画参照)ボクシングのストレートバンチも同様。野球の投球も。サッカーのスローインや、バスケのシュートも。

そして・・実はクロールも同じなのだ・・

ローリングするから気付きにくいが、片手でちゃんとゆるのポジション=サメのボーズを取り、回内内旋しながら水中へ伸ばされる。

回外外旋(ゆる)と回内内旋(しめ)のメリハリが大切なのである。

要は、腕を伸ばす時リラックスした状態から腕を内側へ捻ればいいのである。

 

 さらに脱線するが・

 人間のDNAには、動物的な動きと人間的な動きの両方が刻まれている。前者は以前に紹介した広背筋で引く動作(体幹意識)。後者は、物を投げるあるいは突く動作(末端意識)だ。太古の昔、人類は槍や石を獲物に投げて狩リをした。その投げる(視線の方向に伸ばす)という行為は、二足歩行の人間ならではの本能である。標的を定め、そこに正破に投げるという能力が優れている。先ほと出てきたATNRもそうだ。この能力があったから人類は生きのびれたわけだ。その投げる(突く)動作は、必ず腕を内側へ捻るようDNAレベルでプログラムされているのだ。これが進化したのが野球の投球である。

 だから、勢いがつき惰性の力が生ずる。

惰性の力。

私がこの事に気付いたのは平泳ぎ(のストローク)を練習したからなのだった。まさに空手の突きそのものなのだ。

 

ちょっと待って!空手でさ、突く時は上腕が外旋で前腕が回内って言われてない?

確かに言われてるね。しかし、あなたは上腕と前腕を逆にひねる事できる?私は無理だよ。

なぜ上腕外旋と言われるんだろう?それは肩が浮かないように、固定する為だよ。そうでないと怪我するし、威力出ない。でも普通の人なら、回内しようとすると上腕もつられて内旋して肩が上がってしまう。これを防ぐには、瞬間的に呼息するんだよ。ヤッ!と声に出すことだね。すると前鋸筋が収縮して肩甲骨が固定(下制)される。結果的に内旋が抑制されるにすぎない。先程も言ったように、人間の体はDNAレベルで内へ捻るようにできている。上腕を力を入れて外旋するようにはできていない。

要は、肩甲骨を下制して腕の付け根を安定させること。これが重要。外旋させるのが重要ではないんだよ。わざわざ外旋するより、呼吸と同調したほうがうまくいくよ。上腕は外旋、前腕は回内。当に誤解を招く表現だね。

 

じゃあ、水泳の場合は?

グライドは必ず内旋する。そうしないとキャッチで肘が落ちるよ。それに、わざわざ外旋したら肩甲骨が前に伸びない。水泳というのは、体を伸ばすことが最も重要。そう、他のスポーツとの最大の違いがここだよ。

そして、プル時だけ広背筋によって肩甲骨は固定される。

 

 

話がずいぶん飛躍しだが、浮力による上体の上昇に合わせてインスカルすればラクに息つぎが出来る。決して力は要らない。そして、その流れを止めないよう、つかさずななめ前方へ突き刺すのである。もちろん上半身がそれを追いかけるように水中へ入っていく。キックは、上体が水面下に沈む時、後方に押す。キックは重心移動の補助だと割り切ればよいのだ。キックが苦手な人、なにもキック単独で進まないからと、悲観的になる必要はない。推進力の補助だと思えばこれで気がラクになるはずだ。

ねえ、キックについては?

残念ながら、現在の私のキックは、まだまだお手本になるような代物ではない。

現在は、股関節を緩めることが課題になっている。もちろんこれから先も練習を続けるつもりである。キックの改善が上手くいけば、改めて当記事で紹介したい。

 

なお、初めて行うキックについては、50記事で述べているのでそちらを参照されたい。

 

 

 

 

 今回の記事を振り返ってみると、なんだか水泳の基本の話ばかりになってしまった。しかし、よくよく考えてみれば、平泳ぎというのは、水泳の基本の塊なのである。基本(伸び)が出来ているかを、すことができる泳法とも言える。私は平泳ぎを練習するようになり、体幹の扱い=肋骨の扱いに細心の注意を払うようになった。そのおかげで、クロールがさらにラクに速く泳げるようになっている。

   

キックが苦手だからと、平泳ぎをあきらめなくて本当によかった。

 

 

 というわけで、

 

固定観念に縛られなければ 平泳ぎは泳げる!