キックなしでもクロールは泳げる!

医療従事者が水泳の常識にメスを入れていきます。

55 エピローグ

   〔おことわり〕

勝手ながら、2016年3月31日をもちましてコメントの受け付けを終了させて頂きました。

[お知らせ]

47『クロールにおけるゼロポジション』を改訂させて頂いた。

あなたの泳ぎの一助となれば幸いである。尚、当ブログ記事は、必要に応じて予告なく改訂させて頂くことがあるので、予めご了承願いたい。

 

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 [ABARA]  2015年11月22日  iPhoneで撮影

 

  

いきなり(文字どおり)露骨な写真から始まった最終回。スケルトンを見るのが怖い人には大変申し訳ない。これは、シャントンゴサウルスのあばら骨だ。

 私が医療従事者として、どうしても奥深くまでメスを入れてみたかったことがある。それは、人類の躰(からだ)の本質についてである。今回は水泳から一歩離れ、そこから水泳のありがたさに気付いてみたい。

尚、今回も長文である為(前回の反省を踏まえ)退屈しないよう、ビデオ映像を適所に配した。その映像は、私の貴重なパフォーマンスである。こちらもぜひご覧あれ。

 

 

  

 

 

 

  1 躰 ~イントロダクション ~

 

 地球上にきる。

 

生きるために絶対に欠かせない行為、それは・・呼吸。

脊椎動物の生涯は、呼吸に始まり呼吸に終わる。

人は生まれる時はオギャーと産声を上げ、最期は息を引き取る。

 

 私は職業柄、寝たきりの患者さんと日々向き合っている。そのため、生命を営むとはどういうことなのかいろいろ孝えさせられる。そして、あることに気付いた。

それは・・『重力』という存在だ。地球上で暮らしている限り、重力からは逃れられない・・

 地球上に生きるとは、この重力に抗うことなのだ。この重力に抗うことが出来なくなった状態が・・そう、寝たきりだ。しかし、それでもまだ抗う行為がある。

 

 実は呼吸も重力に抗っている。寝ている時でさえ。その重力にうち勝てなくなった時、死を向かえる。これが人の自然な最期だ。 その呼吸が現在では疎かにされている。ほとんどの人は呼吸の大切さに気付いていない。それはあまりにも当たり前な行為だからだ。 

 

さて・・在であるが、免疫カが低下している人が大変多いと感ずる。その証拠にガンで亡くなる人が増え続けている。様々な感染症もしかり。そして・・高血圧による疾患も当たり前のように耳にするようになった。

 

  万病一元。それらは全て、血流の滞りが原因である。

 血流?なんだこんな話か。ありきたりで聞き飽きたよ!

しかし、心配は用だ。私は、ありふれた一般論は嫌いだからだ。もちろん、ありふれた文章を書くつもりは毛頭ない。特に、メイン記事である『人類の宿命』は、私の鋭い視点から述べている。では早速、鋭いメスで切り込んでみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

2 呼吸の意味 

血液の循環は、具体的に何によってなされているだろうか?

心臓でしょ?それから第2の心臓、下肢の筋ポンプ作用でしょ?

ここまでは、少し詳しい人ならすぐ分かる。ではもう一つ。

実は、も血液循環に直接関わる。はい・・?ハッ!

そうなのである。第3の心臓は呼吸そのものである。

肺が膨らんだり縮んだりする動作が、ポンプ機能なのである・・。

肺の中には肺胞と言う小さな袋が無数にある。そこには毛細血管が縦横無尽に入り込んでいる。全身から集めた二酸化炭素を含んだ血液が、全て肺にやってくる。そして酸素と交換し、また出ていく。

血液の出入りは心臓が担っているが、呼吸によってもなされている。もちろん、全身の血液循環に直接的に影響する。意外と知らない事実・・。

直立二足歩行をする人類は、心臓単独で、全身の血液を循環させることはどだい無理なのだ。(筋ポンプ)と、呼吸により、正常な血流を保っているのである。

 

もう1つ忘れてはならない。免疫に係わるリンパの流れも、運動によって保たれている。全身のリンパの流れは呼吸に大きく頼っている。これも事実。リンパ管は、心臓のようなボンプがないのである。全身のリンパは、リンパ本管に集められ、鎖骨下の静脈角に注いでいる。この部の流れは、鎖骨の動ぎと、呼吸(肋骨の上下運動)によってスムーズに流れている。

 

もうひとつ呼吸の役割がある。それは、筋肉の表面を覆う筋膜を柔軟に保つ働きである。特に重要なのは、胸部に属する大胸筋の筋膜である。大胸筋というのは、放置するとすぐ萎縮を起こす。実は、ねこ背の原因は大胸筋筋膜の萎縮によるものである。だから、両肩が前に突出するのである。このように私たちの体が歪むのは、筋肉というより、筋膜という結合組織が縮んでしまうからだ。本当にストレッチが必要なのは、筋肉ではなく、筋膜なのだ。深呼吸は、筋膜のストレッチも担っているのである。

    さて次は、思い切って太古の昔へタイムスリップしよう。とても長い旅になるので、その前に早めに休憩。

 

 

 

 

  

 

 珍技 1/4  『その場で個人メドレー

 https://youtu.be/gHihrWuUJFM 

 

 

 

 

 

 

 3 樹上への離陸 

 私速人類は、なぜ二足歩行が可能なのだろうか? 

そのキーワードは・・『樹上への離陸』にある。

人類の遥か遠い祖先である魚類は、無重力下(水中)で生活していた。それが・・上陸した際、まずぶち当たったのが・・そう、重力の存在だった。先ずは、鰭を足へと進化させ、匍匐を開始する。この頃はまだ、胴体は地面に接したままだ。その胴体が、だんだん地面から離陸していく。やがて恐竜時代が訪れ・・シャントンゴサウルスのような仲間は、尾が地面に接したまま上半身だけが天高く離陸した。さらに空中へ完全離陸したのが・・そう、鳥類だ。

しかし一方で・・忘れてはならない動物がいる。

私達の近い祖先、霊長類だ。彼らは、準空中である樹上へ進出を果たした。鳥と同じく、地上から離陸したのだ。

 

いささか脱線するが、重力の働く地球上で最も非効率な生物が・・巨大化した恐竜だった。あの巨体で重力下で暮らすには、あまりにもエネルギーの無駄使いだった。では、彼らはなぜ、巨大化したのだろうか?一つには、栄養過多だ。この頃は最も生物が栄え、栄養も豊富だった。森林も豊富で光合成により新鮮な酸素があふれていた。爬虫類にとどまらず、あらゆる生物が巨大化したのだ。しかし、巨体は陸上には適さなかった。

時は経ち、隕石が降ってきてからというもの、地球上は一変してしまった・・厚い塵とガスが空中を覆い、太陽光を遮りやがて氷河期を向かえた。巨大な彼らが氷河期に絶滅したのは、食量危機で巨体を維持できなかった為だ。ちなみに、重力に抗うことに疲れた種は、再び水中へと還っていき、絶滅を免れた。そう、クジラ達だ。

一方、しぶとく陸上に生き残った種の一つが・・そう、毛の生えていた霊長類だった。恐竜を避け、三次元空間(樹上)に潜んでいた彼らは・・すでに驚異的な身体能力と関節可動堰を獲得していた。現代風に言えば、森の中のターザンだったわけだ。彼らは、木によじ登り、枝から枝へ飛び移り、枝にぶら下がり、さらには逆立ちして木の実を取った。また、石を投げつけ木の実を落として食べた。身体能力は現代人とは比べものにならないほど優れていた。

そして彼らは、恐ろしい恐竜がいなくなったのを見計らい、樹上で作り上げた逞しい体で、再び地上へ戻ってきた・・

 

では、ここで直立二足歩行について。

身近な四足獣である犬は、とても首が凝る。それは背骨が地面に対し平行であり、その先に頭が付いているからだ。あなたの愛犬はいつも、背中の筋肉で重い頭部をもち上げているのだ。

一方人類は、背骨が垂直で、てっぺんに頭が乗っている。直立した人類は、重い頭を骨格で支えるようになった。つまり、ムダな筋力を使わずに済むのだ。

  

魚類から、人類へと進化を遂げる歴史は、重力との戦いだった。重力は、万物を下(地球の中心)へ縛りつけようとする。私連の祖先は、木と同じように、重力に抗って上へ伸びて(離陸して)行った。私逹の祖先は、重力という『敵』と戦ったのだ。

そして・・木にぶら下がり、重力を利用して体を伸ばし、いつしか・・重心移動による直立二足歩行を手に入れていた。つまり、重力を『味方』に変えたのだ。

私遠のDNAには、重力を利用する為の(=重力に抗う)プログラムが刻まれている。今の私遠の身体があるのは、陸上に上がった遠い祖先が、効率を追求した結果だったのだ。

 

現代人が、省エネ、効率、ラク、便利さを追求するのも、遠い祖先の意思が宿っているからに他ならない。私たちは、DNAレベルで効率を追求し続けるよう仕組まれているのだ。これが二足歩行人類たる所以である。

 話が飛躍したが、

彼らは、二足歩行で自由になった上肢を使い、狩をした。獲物に向かって槍や石を投げた。そして、物を作るたびに脳が発達していった・・。

 

こうして、彼らの一連の動作を見ると、頻繁に腕を肩より上に挙上していたことがわかるだろう。要するに、腕を万歳していたのだ。だから、他の動物にはない、とてつもない関節可動域を獲得したのである。

また、最近の研究によると、樹上生活と二足歩行の両方をこなす祖先も存在していた事が明らかになっている。

  

ここで鋭いメスを突っ込んでみたい。

樹上や地上という、彼らのステレオな生活で最も力を要する動作は何であっただろうか?そう、木登りである。木によじ登るには、腕を大きく万歳し、そこからグッと力を入れて引くはずだ。人間の広背筋や大胸筋が異様に発達しているのは、木登りを毎日くり返したからである。ただ、一つ頭に入れておきたい事がある。木登りの主役は、上肢(腕)ではなく、下肢であることだ。私逹が開脚し、あぐらをかけるのは、木登りを毎日くり返した祖先のおかげなのだ。

 

蛇足だが、クロールのプルは、木登りの筋力発揮に非常によく似ている。クロールでも、万歳してから(伸びてから=グライド)引いてくるだろう。初動負荷理論にも通じるが、引き始めが最も力を要する。

また、木登りには万歳の姿勢(ゼロポジション)から引く動作はあっても、肘を伸ばして下へ押し出す動作は存在しない。なぜなら、下肢の大きな屈伸に頼ればよいからだ。

このことは、解剖学的にも裏付けられている。

大胸筋と広背筋は、『気をつけ』の状態では、停止部付近で筋繊維がクロスしている。しかし、『万歳』してゼロポジションにもってくると、筋繊維は平行になる。このようなことからも、人間は万歳して(ゼロポジションで)引く動作を行うのが自然だ。これが、47記事でも述べている、クロールのストロークの根拠である。

 

 ともかく木と戯れ重力と遊ぶ習慣が、現代人の骨格筋肉を形成することになったのだ。つまり・・

『樹』があったからこそ、直立二足歩行が可能になったのである。

 

樹上生活とは、重力を利用した直立二足歩行への、準備運動だったのだ。

 

樹上への離陸。 

それは・・私逹の祖先が、自らの将来を樹に託した瞬間だったのである。

だから人間は、今でも本能的に万歳するのだろう。木に抱きつき、ぶら下がっていたことを忘れないために・・

 

 

 

 

 

 

珍技 2/4 『逆再生→一時停止→早送り→停止』

 https://youtu.be/exqXbvez_Ik

 

 

 

 

 

4 人類の宿命

さて、視点を変えよう。

 免疫カ。 

免疫は体温が低いと有効に働かない。低体温。その理由としてよく言われるのが運動不足だが、その意味を深く知っているだろうか?

一般的には熱を産生する筋肉量の減少が原因と言われる。しかし、もっと深く掘り下げると・・

運動するとは、呼吸筋を大きく使うことを意味する。例えば、ジョギングやマラソン。ある一定以上のペースを保つとなると息がはずみ出す。つまり多くの酸素を必要とする為、呼吸が大きくなるのだ。人間、運動すれば必ず呼吸筋が活発に動く。

しかし・・現代人は運動をあまりしない。

 運動不足とは、すなわち

『呼吸筋の』運動不足なのである・・。

  人間は、安静時は腹式呼吸(横隔膜の運動)が主である。なぜなら、地球上には重力が存在するからだ。重い大胸筋をまとった肋骨は重力により押し下げられている。その為、横隔膜で出し入れしたほうが力を使わずに済むからだ。必要最少限のエネルギーしか使わないのである。

しかし、運動するというのは酸素をたくさん要する。つまり、肺を最大化することになる。その為、肋骨を広げる胸式呼吸(外肋間筋の運動)も必ず生ずる。

  

少し脱線するが、四足獣は腹式呼吸しか出来ない。というより、胸式呼吸をする必要がない。なぜなら、四つん這いの四足獣は、重力ににより、

肋骨が広がっているからである。

一方、二足歩行の人類は・・背骨が直立している為、

肋骨は下がっている。

つまり、

 重力が 肋骨の広がりを阻害しているのだ・・。

 その為、運動時は意識的にあばらを広げざるを得ない。これは二足歩行の人類の宿命である。

 

ところで私逹大人は・・万歳する機会がほとんとない。中には、万歳なと1度もしないで1日を終える人もいるだろう。そんな大人でも、小さい頃はよく木登りなどをして遊んだはずだ。大人というのは、子供を公園でよく遊ばせるが、自ら遊ぶことはあまりしない。それを補う為に、バスケ、テニス、バレー、水泳、体操といった、

万歳するスポーツが存在するのだが・・。

 

しかし現代人というものは・・ここまで体を動かさなくなるとは・・神様も想定外だっただろう。

私逹は、樹上動作ではなく・・机上動作ばかりするようになってしまった・・

  

ちなみに万歳するというのは、肋骨を広げやすくする行為だ。

 

では・・運動不足になると、万歳して肋骨を広げる機会が減少し、肋骨が下がったまま動かなくなる。すると、何が起こるか?

肺が常に圧迫され酸欠を招く。すると、酸欠を心臓の収縮カで補おうとする。結果、慢性的な高血圧に陥るのである。

人間、万歳し肋骨を広げれば、圧迫から解かれる。

ここから言えることは、人間は万歳を必要とする生き物だということだ。太古の人類が、万歳を頻繁にしていたことは先程も述べた。万歳すればいつも肋骨を広げられたのである。

 万歳をしない現代人は、ある意味重力に抗うという、祖先から受け継いだ意思を失っているのだ・・

 

 

ここで健康の常識について指摘したい。生活習慣病の予防には、ウォーキングが艮いとよく言われる。確かにそのとおりだ。しかし残念ながら、ウォーキングだけでは不十分だ。なぜなら、運動強度が低く、胸式呼吸を動員する(肋骨を広げる)までには至らないからである

運動不足の現代人の持つ、あらゆる骨格の中で唯一使われていないのが・・肋骨なのだから。

 

理想は、息がはずむ(=肋骨が動くこと)強度の運動を行うことだ。そういう意味でジョギングやマラソンは、二足歩行をする人類にとって最高のスポーツである。しかし、血圧が高めな人は難があるだろう。心拍数をあまり上げずに実践するならば、歩行 + 万歳行為がお勧めだ。そう、ステレオ生活者の祖先がしていたことである。この二者が揃えば運動は十分である。

この万歳行為であるが、もう気付いている人もいるだろう。当ブログを読まれているあなたは・・水泳だ。ウォーキング+スイムこそが最高のエクササイズなのだ!

そして・・さらに効果を引き出すには、この二者ともドローインしながら実践することだ。ドローイン(下腹部を凹ますこと)は、肋骨を広げる行為そのものだからである。

 

 

ドローインしながらウォーキング!

 

 

ドローインしながらスイム!

 

 これを合い言葉にぜひ実践して頂きたい。

 

 

さて、先程出てきた『呼吸筋の』運動不足についてである。

それは、もっと突っ込めば『外肋間筋』の運動不足である。

  お年寄りになると、かなりの確率で唾液やべ物を喉に詰まらせてしまう。これが原因で誤えん性肺炎にかかりやすくなる。

これには根本がある。呼吸筋の衰えだ。強くせき込むには、外肋間筋を使い、大きく息を吸う必要がある。そして、重力の助けと内肋間筋の収縮により、せき込んで内容物を吐き出すのだ。この大きく吸うことがお年寄りには出来ない。

私は職業柄、亡くなる直前の患者さんを何人も見てきた。亡くなった患者さんは例外なく、外肋間筋が働いていなかった。

 

また現代人は、背中の筋力が弱く、ねこ背の為外肋間筋が働きにくくなっている。つまり、肺を大きく膨らましにくいのである。

ここに、とても良いねこ背改善方法がある。やはり、万歳をし肋骨を広げることである。肋骨さえ広げられれば姿勢が格段によくなる。

 

さらに・・  人間、自信なくすとあばらが下がる。デスクワークでも下がりっぱなしである。

普段の会話でさえも。から声を出せば確実に下がる。

 

 そして・・意外と気付きにくいが、直立して気をつけになるのは、あばらを圧迫する。なぜなら、肩甲骨を含めた上肢帯(腕)があばらの上に馬乗りになるからだ。また、カバン、手提げ袋を持てば余計圧迫する。直立で休むならば、腰に手を当てがい、軽く脇を開くことである。

 

ちなみに、イスに肘かけが付いている理由も、あばらを圧迫しないようにする為だ。肘かけに腕を乗せればラクなのは皆さんも同じだろう。肘かけは何も偉い人の為だけのものではない。

 

肘かけは、人間にとって必須の装備である。

 

 

そして、厄介なのは・・

精神的にストレスが溜まると、肋骨がさらに下がることだ。

どういうこと?ストレスが溜まるとみぞおちが痛くなるが、それは・・

 肋骨をおもいっきり下げるほうへ力が入っている 

ということだ。

 

だ  か  ら  高血圧になる。

  

  よく、ストレスが高面圧を招くと言われているが、このように言い当てている専門家はまだ少ない。

 

もう一つ。これもそうだが、

ストレスが溜まるとギックリ腰のリスクが高まる。

ストレスが溜まると、肋骨を下げる内肋間筋、腰方形筋、後鋸筋がガチガチに固まる。この状熊で何気なく床の物を拾ったり、重い物をもち上げたり、そして・・せきくしゃみをすると・・見事なくらい、ギクッとなる。特にせきくしゃみというのは、肋骨を下げるほうへ力が入る。ただでさえ、ストレスにより下げるカが入っているというのに・・。

 

まだある。

お腹のぽっこりが気になり、腹筋運動を黙々と頑張る人もいるだろう。腹直筋を鍛えるというのは、肋骨を下げる行為である。ストレスの溜まっている現代人が、さらに腹筋運動で体にストレスを与えるというのは・・悲しいかな・・ますます健康から遠ざかってしまう。

 

ここで質問。

日常生活であなたが必ずやっていることとは?それは・・トイレだ。

毎日必ず排便する人は健康的でとても良いのだが、肋骨を締めながら排便するだろう。私もそうだ。排便行為そのものが肋骨を下げる方に力を入れている。お腹の調子が悪く便秘の人は、息みながら排便する。これは、肋骨を下げる内肋間筋の筋トレをしているのと全く同じである。高血圧の人は、ウンが悪いとトイレの中であの世行きだ・・。

 

 

 このように現代人は、寝ている時はもちろん、

 普段の生活でも肋骨が下がったままである。

 

 

先程出てきた免疫力も、ストレスにより低下するが・・

肋骨が下がりっぱなしでは血流やリンパの滞りを招く。肺のポンプがうまく機能していない為、新鮮な酸素が全身の細胞に行き届かない。つまり、酸欠だ。その上、リンバが細菌等の異物を濾過出来ない。こうして風邪も引きやすくなる。

  

さらに突っ込めば、あばらが下がった状態というのは、身体前面の筋膜の萎縮をもたらす。さらに良くないことに・・肋骨の間を通っている血管も圧迫されてしまう。すなわち、肋間神経の栄養不足を招く。だから、帯状疱疹や肋間神経痛のリスクが高まる。

 もちろん酸欠だから、全身疲れやすい体質にもなる。頭痛もする。細胞全てが不活発になり代謝が下がる。つまり、熱を産生しない体質、低体温になる。

 

だ  か  ら  ガンになる。

 

  とどめは・・   現代人の主症状の一つ、原因不明の肩こりや五十肩も、万歳を習慣にしてこなかったツケである。万歳不足で、外肋間筋が弱いことによるものだ。いくらマッサージしても治らない本当の理由・・実はここに原因はある。使わない呼吸筋は萎縮し弱くなり、トリガーポイント(痛みの根源)を生ずることになる。

 

 

おしまいに、

男性が女性に比べ、平均寿命が短いのは、腹式呼吸(肋骨が固まっていることがほとんど)だからである。逆に、大半の女性は・・肋骨を上下させる胸式呼吸だ。

男性も、女性のように、肋骨の動きを柔軟に保つことが長生きに繋がるということだ。

 

 念を押したいが、肋骨が下がって固まる原因は、腕を肩より上に伸ばさないつまり、万歳しないことである。体を伸ばしていないことに根本がある。

 

 あなたの心臓、肺、脾臓、肝臓、血管、神経・・これらの重要な臓器が悲鳴を上げている。これらの臓器を苦しめるのは、もう止めにしようではないか?

肋骨をこれ以上下げたまま(臓器を圧迫したまま)、動かさないでいるのは止めにしようではないか!

 

そろそろあなたも肩が凝ってきたかもしれない。私も、この話は本当にストレスが溜まる。

  あ~また肋骨が下がった。まずはプールでひと伸びしてこよう。

 

 

 

  

 

 

珍技 3/4   ペットボトル背泳ぎならぬ『ペットボトルクロール!』

 https://youtu.be/-TW9ChOK0kw

 

 

 

 

 

  

 

 5 腹式呼吸の盲点

人間は胸式と腹式両方の呼吸が出来る。では、予備知識を。以下頭が疲れるが、少しだけ辛抱願いたい。

 ①胸式(肋骨の上下運動、つまり胸が膨らんだりしぼんだりする)。

吸う時は、肋骨を広げる外肋間筋が収縮し肺が広がる。吐く時は外肋間筋は弛緩する。すると肺の弾性と重力により、自然に肋骨が下がる。結果、息が吐き出される。尚、強く吐く時は、肋骨を押し下げる内肋間筋が収縮する。

 

②腹式(お腹が膨らんだりしぼんだりする)。

吸う時は横隔膜が収縮し肺は広がり、それにより圧迫される内蔵は下へ押しやられる。つまり、お腹が出る。吐く時は横隔膜が弛緩し、肺、皮膚、腹膜腹筋群の弾力によって内蔵は元の位置に収まる。尚、強く吐くときは腹横筋が収縮し、お腹は凹む。以上である。

 

 

 さて現在、腹式呼吸がもてはやされている。

これは、副交感神経を高め、体をリラックスさせるのが目的だ。リラックスすれば血圧も下がるだろう。しかし、誤った指導をよく見受ける。先程も述べたが、血圧が上がる要因は、肋骨を締める(下げるほうに力を入れる)ことだ。

 

そもそも、私から見れば、胸式と腹式に分けること自体ナンセンスだ。人間という生き物は、胸腹式が自然な呼吸形態である。

 

では、よくある好ましくない腹式呼吸の説明を抜粋してみる。

吸う時は交感神経が働き、吐く時は副交感神経が働く。その為、吸う時間より、吐く時間を長くすること。ここまでは正解である。

 

問題は・・お腹を膨らましながら鼻から息を吸う。次に、ロをすぼめるようにしてロから少しずつ長く吐く。そしてお腹が凹むまで吐ききる。

こんなものだうう。実はこの説明には、思わぬ盲点が潜んでいる。

 

ロをすぼめて吐ききるという行為だ。あなたはこの言葉に、どんなイメージを持たれるだろうか?力を入れて吐くことだと思うのではないだろうか?少なくとも私はそう思う。力を入れて吐くと必ず肋骨も下がる。肋骨を締めてしまう。

腹式は、吸った時点で肋骨はすでに下がっている。そこに力を入れて吐けば血圧が必ず上がる。

そのわけは、ロをすぼめると呼息抵抗が大きくなるからだ。息こらえに似た状態になるのだ。

 

 息を長く吐くと副交感神経が優位になる・・。そのとおりである。

しかしそれは、吐く時に力をぬいているからである。

本来の腹式とは、吐く時は力を入れず、リラックスして長く吐くのである。力を入れて吐ききる必要などどこにもない。

え?力抜いて吐く?

よくよく考えてみてほしい。

横隔膜は吸う時に収縮し、吐く時には弛緩する。

  念を押したいが、

 力を抜くから副交感神経優位になるのであり、吐くから副交感神経優位になるわけではない。

 

 

 

ここで水泳の呼吸との混同について。

水泳は純粋な腹式ではない。

(もちろん、純粋な胸式でもない。)

あれ?どうして?リラックスして泳ぐには腹式で副交感神様を高めたほうが・だから水中でも少しずつゆっくり吐いたほうがいいんでしょ?

 ノー!NO!あなたは、安静にして就寝したいのだろうか?

水泳という『運動』をしたいのだろうか?

運動というものは、交感神経を高める行為である。副交感神経を高める行為ではない。ここを混同しないで頂きたい。

 

それに、水泳は全身リラックスして行うものではない。体幹は必ず伸ばすほうに力が入っている。生理学的な知識として非常に誤解が多い。

 

水泳時は、交感、副交感神経うんぬん以前に、セロトニン効果で抗重力筋が活発に働いていることを忘れてはならない。セロトニンが分泌されると、体幹を伸ばす抗重力筋がより強く働き、ストリームラインがとりやすくなる。このセロトニン効果を促すには、リズミカルな動きがどうしても必要である。

 

水泳は、リズムが存在する運動である。

 

長距離をラクに泳ぎ続ける秘訣は

リズムに乗ること。

 

市民プールではタランチュラのごとく、ゆっくり緩慢に泳ぐ人が非常に多い。見ていても軽快さ(リズム)が全く感じられない。

リラックスしているのに心地よくない・・なぜだろうか?それは、セロトニンが働いていないからだ。

 

泳いで心地よい状態とは、リズムに乗った結果、セロトニンが作用するからである。

重要なのは、攻撃神経やリラックス神経ではなく、覚醒神経なのである。

 

 

そして、本当に多いのが腹式呼吸で腹圧を入れる

という誤解だ。

 

腹式呼吸では腹圧は入れられない。

 

呼吸の指導者でさえ腹圧を正しく理解していない。今すぐ認識を改めて頂きたい。

 

 腹式呼吸の欠点は、完全に肺を膨らますことが出来ないことだ。大きく吸い込むには、肋骨を広げなければならないのである腹圧というのは、肋骨が広がらないとかからないのだ。

 ※腹圧については、46、53記事で述べているのでぜひ参照されたい。

 

 

胸式呼吸はどうだろうか?代良的なのはピラティスだ。

 

ここにも実は、正しく理解されていないフシがある。

胸を膨らましながら鼻から吸う。次に、胸をしぼめながらロから吐く。これが純粋な胸式だ。ピラティスの導入としては私も理解できる。なぜなら、ピラティスは肋骨を意識的に動かす呼吸法だからだ。しかし、これをピラティスの呼吸だと誤って紹介している指導者がいる。

本来のピラティス呼吸は・・下腹部を常に凹ましながら呼吸するのである。

 

では次の例。お腹を凹ましながら胸を膨らまし吸う。次に肋骨を下げ、お腹に力を入れながら吐ききる。これは、よくありがちなピラティス呼吸の説明だ。

皆さんは何が誤りであるか見抜けるだろうか?答は、お腹に『力を入れる』である。正しくは、お腹を『凹ましたまま』である。

もう1つ。肋骨を下げながらというのは、自然につまり、重力と肺の弾力に任せて肋骨を下げるのであり、内肋間筋や腹直筋に力を入れて下げるのではないということだ。これは、水泳(特に競泳)も全く同じである。

 

腹横筋を収縮させる。

 

ん?どこかで聞いたような・・

そう、46記事でも紹介した『万歳ドローイン』だ。実は、これが本来の水泳やピラティス呼吸法なのである。(汪:両者呼吸動作は同じであるが、ピラティスの場合は息を止めないという点が違う)

この呼吸法は、体が理解するまで時間がかかる。一朝一タで簡単に出来るものではない。しかし一度習得してしまえば、とてもラクに安定した呼吸ができる。

私の実践しているドローインや、(本来の)ピラティスであるが、 正確に言うならば、胸腹両式呼吸である。 わかりやすく書くと、

胸で吸い、お腹で吐くということだ。

 この表現のほうが、血圧を上げることもなく、下腹部も凹ましたまま呼吸ができる。腹式より、大きく積極的な呼吸運動となる。大きく息を吸い込む深呼吸が可能なのだ。

深呼吸というものは、片式でやるより、両式で行った方が効率がいいのである。

そして、この呼吸法は『現代人が鍛えるべき呼吸筋』

を最大に収縮させることが可能である。

幾度も申し訳ないが、

 外肋間筋を収縮させ、肋骨を広げる行為こそが、現代人には必要な運動なのである。 (補足→特に下部肋骨を広げると、横隔膜が最大収縮する)

 ここで最後の休憩。 

 

 

 

 

 

 

 珍技 4 /4  『アシュラ』

 https://youtu.be/Hgm6ahZ23H0

 

 

 

 

 

 

6  躰 ~エンディング~ 

 私達が健康に暮らすには?免疫カを高めるには?高血圧にならないためには?

長生きの4姉妹を筆頭とする、人生の先輩は言う。

よく笑うこと。よく話すこと。大きな声で歌うこと。

これらの共通点は?それは、大きく呼するである。喉ではなく、お腹から声を出す!使う筋肉は腹横筋。

  

さあ、ここからが私の強調したいところ。

大きく呼するには、大前提として大きく吸うこと!使う筋肉は外肋間筋と横隔膜。

『がいろっかんきん』  と  『おうかくまく』。

この両者揃って初めて肺は大きく膨らむ。肺の奥深くまで新鮮な空気が行き渡る。

 

普段行っている腹式呼吸の落とし穴は、肋骨を広げないこと。前述した生活習慣病を予防する意味で、また水泳の前重心の体を作る意味でも、常に肋骨を広げることを意識したい。それを言う私も、記事を書いているこの瞬間、肋骨は下がりっばなしだ。ねこ背になっている。どうしても胸を広げることを忘れてしまう。

そこで私は、冒頭の写真をiPhoneの壁紙にし、いつも思い出せるようにした。もちろんこの写真はあなたに使って頂いても全然構わない。

  さて水泳である。あなたは、水泳が健康に良い本当の理由に付いているだろうか?

水泳の基本姿勢であるストリームラインは万歳をする。そして、大きく肋骨を広げると血液リンパがスムーズに流れる。つまり、免疫カが上がる。

だ か ら、水泳を嗜むと カゼを引きにくくなる。

  

さあ、

常に万歳するスポーツは他にあるだろうか?

常に呼吸筋を意識するスポーツがあるだろうか?

 

あばらをここまで広げるスポーツがあるだろうか? 

 

水泳は健康というものをとても身近にさせてくれる。なんとありがたいスポーツなのだろう!

 

健  康  水  泳 。

 

もしタイムマシンがあったなら・・

遥か遠い昔の祖先は、私逹にこう言っただろう。

もうひと伸びして深呼吸してごらん?

 それが健康の秘訣だよ・・それが水泳のコツだよ・・と。

 

                                                                                                      END

 

 

 

  

 

 

 

 

 

謝辞 

私が水泳を根本から見直すきっかけとなったのが、田中育子コーチとの出会いです。いつも丁寧にご指導くださる田中コーチは、現役(マスターズで平泳ぎ、OWSの大会にも出場、いつも金、銀メダル)であり、公式大会の審判もされています。また、子供から大人まで(最高齢は80代!)幅広く指導され、生涯に渡って指導者の道を走り続けており、過去から現在までの水泳を熟知されています。このように経験豊富な田中コーチからは、ずいぶん勉強させて頂き、泳ぎも上達させることが出来ました。この場を借りてお礼申し上げます。

そして当ブログですが、記事を読んで下さった方、田中コーチの生徒さん、また、当ブログをきっかけにプールで知り合いになった方、またコメントを寄せて頂いた、様々な方がいたから、ここまで書き続けられたのだと思います。本当にありがとうございました!またどこかで、お会いしましょう!

 

尚、当ブログ読者のやぎさんが水泳のホームページを開設されたので紹介させて頂きます。↓

 http://swimming.uetsuki.info

  

[おことわり]

当ブログは、TIスイムの学習法を紹介するものではありません。予め、ご了承下さい。