55 エピローグ
〔おことわり〕
勝手ながら、2016年3月31日をもちましてコメントの受け付けを終了させて頂きました。
[お知らせ]
47『クロールにおけるゼロポジション』を改訂させて頂いた。
あなたの泳ぎの一助となれば幸いである。尚、当ブログ記事は、必要に応じて予告なく改訂させて頂くことがあるので、予めご了承願いたい。
[ABARA] 2015年11月22日 iPhoneで撮影
いきなり(文字どおり)露骨な写真から始まった最終回。スケルトンを見るのが怖い人には大変申し訳ない。これは、シャントンゴサウルスのあばら骨だ。
私が医療従事者として、どうしても奥深くまでメスを入れてみたかったことがある。それは、人類の躰(からだ)の本質についてである。今回は水泳から一歩離れ、そこから水泳のありがたさに気付いてみたい。
尚、今回も長文である為(前回の反省を踏まえ)退屈しないよう、ビデオ映像を適所に配した。その映像は、私の貴重なパフォーマンスである。こちらもぜひご覧あれ。
1 躰 ~イントロダクション ~
地球上に生きる。
生きるために絶対に欠かせない行為、それは・・呼吸。
脊椎動物の生涯は、呼吸に始まり呼吸に終わる。
人は生まれる時はオギャーと産声を上げ、最期は息を引き取る。
私は職業柄、寝たきりの患者さんと日々向き合っている。そのため、生命を営むとはどういうことなのかいろいろ孝えさせられる。そして、あることに気付いた。
それは・・『重力』という存在だ。地球上で暮らしている限り、重力からは逃れられない・・
地球上に生きるとは、この重力に抗うことなのだ。この重力に抗うことが出来なくなった状態が・・そう、寝たきりだ。しかし、それでもまだ抗う行為がある。
実は呼吸も重力に抗っている。寝ている時でさえ。その重力にうち勝てなくなった時、死を向かえる。これが人の自然な最期だ。 その呼吸が現在では疎かにされている。ほとんどの人は呼吸の大切さに気付いていない。それはあまりにも当たり前な行為だからだ。
さて・・現在であるが、免疫カが低下している人が大変多いと感ずる。その証拠にガンで亡くなる人が増え続けている。様々な感染症もしかり。そして・・高血圧による疾患も当たり前のように耳にするようになった。
万病一元。それらは全て、血流の滞りが原因である。
血流?なんだこんな話か。ありきたりで聞き飽きたよ!
しかし、心配は無用だ。私は、ありふれた一般論は嫌いだからだ。もちろん、ありふれた文章を書くつもりは毛頭ない。特に、メイン記事である『人類の宿命』は、私の鋭い視点から述べている。では早速、鋭いメスで切り込んでみたい。
2 呼吸の意味
血液の循環は、具体的に何によってなされているだろうか?
心臓でしょ?それから第2の心臓、下肢の筋ポンプ作用でしょ?
ここまでは、少し詳しい人ならすぐ分かる。ではもう一つ。
実は、肺も血液循環に直接関わる。はい・・?ハッ!
そうなのである。第3の心臓は呼吸そのものである。
肺が膨らんだり縮んだりする動作が、ポンプ機能なのである・・。
肺の中には肺胞と言う小さな袋が無数にある。そこには毛細血管が縦横無尽に入り込んでいる。全身から集めた二酸化炭素を含んだ血液が、全て肺にやってくる。そして酸素と交換し、また出ていく。
血液の出入りは心臓が担っているが、呼吸によってもなされている。もちろん、全身の血液循環に直接的に影響する。意外と知らない事実・・。
直立二足歩行をする人類は、心臓単独で、全身の血液を循環させることはどだい無理なのだ。運動(筋ポンプ)と、呼吸により、正常な血流を保っているのである。
もう1つ忘れてはならない。免疫に係わるリンパの流れも、運動によって保たれている。全身のリンパの流れは呼吸に大きく頼っている。これも事実。リンパ管は、心臓のようなボンプがないのである。全身のリンパは、リンパ本管に集められ、鎖骨下の静脈角に注いでいる。この部の流れは、鎖骨の動ぎと、呼吸(肋骨の上下運動)によってスムーズに流れている。
もうひとつ呼吸の役割がある。それは、筋肉の表面を覆う筋膜を柔軟に保つ働きである。特に重要なのは、胸部に属する大胸筋の筋膜である。大胸筋というのは、放置するとすぐ萎縮を起こす。実は、ねこ背の原因は大胸筋筋膜の萎縮によるものである。だから、両肩が前に突出するのである。このように私たちの体が歪むのは、筋肉というより、筋膜という結合組織が縮んでしまうからだ。本当にストレッチが必要なのは、筋肉ではなく、筋膜なのだ。深呼吸は、筋膜のストレッチも担っているのである。
さて次は、思い切って太古の昔へタイムスリップしよう。とても長い旅になるので、その前に早めに休憩。
珍技 1/4 『その場で個人メドレー』
3 樹上への離陸
私速人類は、なぜ二足歩行が可能なのだろうか?
そのキーワードは・・『樹上への離陸』にある。
人類の遥か遠い祖先である魚類は、無重力下(水中)で生活していた。それが・・上陸した際、まずぶち当たったのが・・そう、重力の存在だった。先ずは、鰭を足へと進化させ、匍匐を開始する。この頃はまだ、胴体は地面に接したままだ。その胴体が、だんだん地面から離陸していく。やがて恐竜時代が訪れ・・シャントンゴサウルスのような仲間は、尾が地面に接したまま上半身だけが天高く離陸した。さらに空中へ完全離陸したのが・・そう、鳥類だ。
しかし一方で・・忘れてはならない動物がいる。
私達の近い祖先、霊長類だ。彼らは、準空中である樹上へ進出を果たした。鳥と同じく、地上から離陸したのだ。
いささか脱線するが、重力の働く地球上で最も非効率な生物が・・巨大化した恐竜だった。あの巨体で重力下で暮らすには、あまりにもエネルギーの無駄使いだった。では、彼らはなぜ、巨大化したのだろうか?一つには、栄養過多だ。この頃は最も生物が栄え、栄養も豊富だった。森林も豊富で光合成により新鮮な酸素があふれていた。爬虫類にとどまらず、あらゆる生物が巨大化したのだ。しかし、巨体は陸上には適さなかった。
時は経ち、隕石が降ってきてからというもの、地球上は一変してしまった・・厚い塵とガスが空中を覆い、太陽光を遮りやがて氷河期を向かえた。巨大な彼らが氷河期に絶滅したのは、食量危機で巨体を維持できなかった為だ。ちなみに、重力に抗うことに疲れた種は、再び水中へと還っていき、絶滅を免れた。そう、クジラ達だ。
一方、しぶとく陸上に生き残った種の一つが・・そう、毛の生えていた霊長類だった。恐竜を避け、三次元空間(樹上)に潜んでいた彼らは・・すでに驚異的な身体能力と関節可動堰を獲得していた。現代風に言えば、森の中のターザンだったわけだ。彼らは、木によじ登り、枝から枝へ飛び移り、枝にぶら下がり、さらには逆立ちして木の実を取った。また、石を投げつけ木の実を落として食べた。身体能力は現代人とは比べものにならないほど優れていた。
そして彼らは、恐ろしい恐竜がいなくなったのを見計らい、樹上で作り上げた逞しい体で、再び地上へ戻ってきた・・
では、ここで直立二足歩行について。
身近な四足獣である犬は、とても首が凝る。それは背骨が地面に対し平行であり、その先に頭が付いているからだ。あなたの愛犬はいつも、背中の筋肉で重い頭部をもち上げているのだ。
一方人類は、背骨が垂直で、てっぺんに頭が乗っている。直立した人類は、重い頭を骨格で支えるようになった。つまり、ムダな筋力を使わずに済むのだ。
魚類から、人類へと進化を遂げる歴史は、重力との戦いだった。重力は、万物を下(地球の中心)へ縛りつけようとする。私連の祖先は、木と同じように、重力に抗って上へ伸びて(離陸して)行った。私逹の祖先は、重力という『敵』と戦ったのだ。
そして・・木にぶら下がり、重力を利用して体を伸ばし、いつしか・・重心移動による直立二足歩行を手に入れていた。つまり、重力を『味方』に変えたのだ。
私遠のDNAには、重力を利用する為の(=重力に抗う)プログラムが刻まれている。今の私遠の身体があるのは、陸上に上がった遠い祖先が、効率を追求した結果だったのだ。
現代人が、省エネ、効率、ラク、便利さを追求するのも、遠い祖先の意思が宿っているからに他ならない。私たちは、DNAレベルで効率を追求し続けるよう仕組まれているのだ。これが二足歩行人類たる所以である。
話が飛躍したが、
彼らは、二足歩行で自由になった上肢を使い、狩をした。獲物に向かって槍や石を投げた。そして、物を作るたびに脳が発達していった・・。
こうして、彼らの一連の動作を見ると、頻繁に腕を肩より上に挙上していたことがわかるだろう。要するに、腕を万歳していたのだ。だから、他の動物にはない、とてつもない関節可動域を獲得したのである。
また、最近の研究によると、樹上生活と二足歩行の両方をこなす祖先も存在していた事が明らかになっている。
ここで鋭いメスを突っ込んでみたい。
樹上や地上という、彼らのステレオな生活で最も力を要する動作は何であっただろうか?そう、木登りである。木によじ登るには、腕を大きく万歳し、そこからグッと力を入れて引くはずだ。人間の広背筋や大胸筋が異様に発達しているのは、木登りを毎日くり返したからである。ただ、一つ頭に入れておきたい事がある。木登りの主役は、上肢(腕)ではなく、下肢であることだ。私逹が開脚し、あぐらをかけるのは、木登りを毎日くり返した祖先のおかげなのだ。
蛇足だが、クロールのプルは、木登りの筋力発揮に非常によく似ている。クロールでも、万歳してから(伸びてから=グライド)引いてくるだろう。初動負荷理論にも通じるが、引き始めが最も力を要する。
また、木登りには万歳の姿勢(ゼロポジション)から引く動作はあっても、肘を伸ばして下へ押し出す動作は存在しない。なぜなら、下肢の大きな屈伸に頼ればよいからだ。
このことは、解剖学的にも裏付けられている。
大胸筋と広背筋は、『気をつけ』の状態では、停止部付近で筋繊維がクロスしている。しかし、『万歳』してゼロポジションにもってくると、筋繊維は平行になる。このようなことからも、人間は万歳して(ゼロポジションで)引く動作を行うのが自然だ。これが、47記事でも述べている、クロールのストロークの根拠である。
ともかく、木と戯れ重力と遊ぶ習慣が、現代人の骨格筋肉を形成することになったのだ。つまり・・
『樹』があったからこそ、直立二足歩行が可能になったのである。
樹上生活とは、重力を利用した直立二足歩行への、準備運動だったのだ。
樹上への離陸。
それは・・私逹の祖先が、自らの将来を樹に託した瞬間だったのである。
だから人間は、今でも本能的に万歳するのだろう。木に抱きつき、ぶら下がっていたことを忘れないために・・
珍技 2/4 『逆再生→一時停止→早送り→停止』
4 人類の宿命
さて、視点を変えよう。
免疫カ。
免疫は体温が低いと有効に働かない。低体温。その理由としてよく言われるのが運動不足だが、その意味を深く知っているだろうか?
一般的には熱を産生する筋肉量の減少が原因と言われる。しかし、もっと深く掘り下げると・・
運動するとは、呼吸筋を大きく使うことを意味する。例えば、ジョギングやマラソン。ある一定以上のペースを保つとなると息がはずみ出す。つまり多くの酸素を必要とする為、呼吸が大きくなるのだ。人間、運動すれば必ず呼吸筋が活発に動く。
しかし・・現代人は運動をあまりしない。
運動不足とは、すなわち
『呼吸筋の』運動不足なのである・・。
人間は、安静時は腹式呼吸(横隔膜の運動)が主である。なぜなら、地球上には重力が存在するからだ。重い大胸筋をまとった肋骨は重力により押し下げられている。その為、横隔膜で出し入れしたほうが力を使わずに済むからだ。必要最少限のエネルギーしか使わないのである。
しかし、運動するというのは酸素をたくさん要する。つまり、肺を最大化することになる。その為、肋骨を広げる胸式呼吸(外肋間筋の運動)も必ず生ずる。
少し脱線するが、四足獣は腹式呼吸しか出来ない。というより、胸式呼吸をする必要がない。なぜなら、四つん這いの四足獣は、重力ににより、
肋骨が広がっているからである。
一方、二足歩行の人類は・・背骨が直立している為、
肋骨は下がっている。
つまり、
重力が 肋骨の広がりを阻害しているのだ・・。
その為、運動時は意識的にあばらを広げざるを得ない。これは二足歩行の人類の宿命である。
ところで私逹大人は・・万歳する機会がほとんとない。中には、万歳なと1度もしないで1日を終える人もいるだろう。そんな大人でも、小さい頃はよく木登りなどをして遊んだはずだ。大人というのは、子供を公園でよく遊ばせるが、自ら遊ぶことはあまりしない。それを補う為に、バスケ、テニス、バレー、水泳、体操といった、
万歳するスポーツが存在するのだが・・。
しかし現代人というものは・・ここまで体を動かさなくなるとは・・神様も想定外だっただろう。
私逹は、樹上動作ではなく・・机上動作ばかりするようになってしまった・・
ちなみに万歳するというのは、肋骨を広げやすくする行為だ。
では・・運動不足になると、万歳して肋骨を広げる機会が減少し、肋骨が下がったまま動かなくなる。すると、何が起こるか?
肺が常に圧迫され酸欠を招く。すると、酸欠を心臓の収縮カで補おうとする。結果、慢性的な高血圧に陥るのである。
人間、万歳し肋骨を広げれば、圧迫から解かれる。
ここから言えることは、人間は万歳を必要とする生き物だということだ。太古の人類が、万歳を頻繁にしていたことは先程も述べた。万歳すればいつも肋骨を広げられたのである。
万歳をしない現代人は、ある意味重力に抗うという、祖先から受け継いだ意思を失っているのだ・・
ここで健康の常識について指摘したい。生活習慣病の予防には、ウォーキングが艮いとよく言われる。確かにそのとおりだ。しかし残念ながら、ウォーキングだけでは不十分だ。なぜなら、運動強度が低く、胸式呼吸を動員する(肋骨を広げる)までには至らないからである
運動不足の現代人の持つ、あらゆる骨格の中で唯一使われていないのが・・肋骨なのだから。
理想は、息がはずむ(=肋骨が動くこと)強度の運動を行うことだ。そういう意味でジョギングやマラソンは、二足歩行をする人類にとって最高のスポーツである。しかし、血圧が高めな人は難があるだろう。心拍数をあまり上げずに実践するならば、歩行 + 万歳行為がお勧めだ。そう、ステレオ生活者の祖先がしていたことである。この二者が揃えば運動は十分である。
この万歳行為であるが、もう気付いている人もいるだろう。当ブログを読まれているあなたは・・水泳だ。ウォーキング+スイムこそが最高のエクササイズなのだ!
そして・・さらに効果を引き出すには、この二者ともドローインしながら実践することだ。ドローイン(下腹部を凹ますこと)は、肋骨を広げる行為そのものだからである。
ドローインしながらウォーキング!
ドローインしながらスイム!
これを合い言葉にぜひ実践して頂きたい。
さて、先程出てきた『呼吸筋の』運動不足についてである。
それは、もっと突っ込めば『外肋間筋』の運動不足である。
お年寄りになると、かなりの確率で唾液や食べ物を喉に詰まらせてしまう。これが原因で誤えん性肺炎にかかりやすくなる。
これには根本がある。呼吸筋の衰えだ。強くせき込むには、外肋間筋を使い、大きく息を吸う必要がある。そして、重力の助けと内肋間筋の収縮により、せき込んで内容物を吐き出すのだ。この大きく吸うことがお年寄りには出来ない。
私は職業柄、亡くなる直前の患者さんを何人も見てきた。亡くなった患者さんは例外なく、外肋間筋が働いていなかった。
また現代人は、背中の筋力が弱く、ねこ背の為外肋間筋が働きにくくなっている。つまり、肺を大きく膨らましにくいのである。
ここに、とても良いねこ背改善方法がある。やはり、万歳をし肋骨を広げることである。肋骨さえ広げられれば姿勢が格段によくなる。
さらに・・ 人間、自信なくすとあばらが下がる。デスクワークでも下がりっぱなしである。
普段の会話でさえも。喉から声を出せば確実に下がる。
そして・・意外と気付きにくいが、直立して気をつけになるのは、あばらを圧迫する。なぜなら、肩甲骨を含めた上肢帯(腕)があばらの上に馬乗りになるからだ。また、カバン、手提げ袋を持てば余計圧迫する。直立で休むならば、腰に手を当てがい、軽く脇を開くことである。
ちなみに、イスに肘かけが付いている理由も、あばらを圧迫しないようにする為だ。肘かけに腕を乗せればラクなのは皆さんも同じだろう。肘かけは何も偉い人の為だけのものではない。
肘かけは、人間にとって必須の装備である。
そして、厄介なのは・・
精神的にストレスが溜まると、肋骨がさらに下がることだ。
どういうこと?ストレスが溜まるとみぞおちが痛くなるが、それは・・
肋骨をおもいっきり下げるほうへ力が入っている
ということだ。
だ か ら 高血圧になる。
よく、ストレスが高面圧を招くと言われているが、このように言い当てている専門家はまだ少ない。
もう一つ。これもそうだが、
ストレスが溜まるとギックリ腰のリスクが高まる。
ストレスが溜まると、肋骨を下げる内肋間筋、腰方形筋、後鋸筋がガチガチに固まる。この状熊で何気なく床の物を拾ったり、重い物をもち上げたり、そして・・せきくしゃみをすると・・見事なくらい、ギクッとなる。特にせきくしゃみというのは、肋骨を下げるほうへ力が入る。ただでさえ、ストレスにより下げるカが入っているというのに・・。
まだある。
お腹のぽっこりが気になり、腹筋運動を黙々と頑張る人もいるだろう。腹直筋を鍛えるというのは、肋骨を下げる行為である。ストレスの溜まっている現代人が、さらに腹筋運動で体にストレスを与えるというのは・・悲しいかな・・ますます健康から遠ざかってしまう。
ここで質問。
日常生活であなたが必ずやっていることとは?それは・・トイレだ。
毎日必ず排便する人は健康的でとても良いのだが、肋骨を締めながら排便するだろう。私もそうだ。排便行為そのものが肋骨を下げる方に力を入れている。お腹の調子が悪く便秘の人は、息みながら排便する。これは、肋骨を下げる内肋間筋の筋トレをしているのと全く同じである。高血圧の人は、ウンが悪いとトイレの中であの世行きだ・・。
このように現代人は、寝ている時はもちろん、
普段の生活でも肋骨が下がったままである。
先程出てきた免疫力も、ストレスにより低下するが・・
肋骨が下がりっぱなしでは血流やリンパの滞りを招く。肺のポンプがうまく機能していない為、新鮮な酸素が全身の細胞に行き届かない。つまり、酸欠だ。その上、リンバが細菌等の異物を濾過出来ない。こうして風邪も引きやすくなる。
さらに突っ込めば、あばらが下がった状態というのは、身体前面の筋膜の萎縮をもたらす。さらに良くないことに・・肋骨の間を通っている血管も圧迫されてしまう。すなわち、肋間神経の栄養不足を招く。だから、帯状疱疹や肋間神経痛のリスクが高まる。
もちろん酸欠だから、全身疲れやすい体質にもなる。頭痛もする。細胞全てが不活発になり代謝が下がる。つまり、熱を産生しない体質、低体温になる。
だ か ら ガンになる。
とどめは・・ 現代人の主症状の一つ、原因不明の肩こりや五十肩も、万歳を習慣にしてこなかったツケである。万歳不足で、外肋間筋が弱いことによるものだ。いくらマッサージしても治らない本当の理由・・実はここに原因はある。使わない呼吸筋は萎縮し弱くなり、トリガーポイント(痛みの根源)を生ずることになる。
おしまいに、
男性が女性に比べ、平均寿命が短いのは、腹式呼吸(肋骨が固まっていることがほとんど)だからである。逆に、大半の女性は・・肋骨を上下させる胸式呼吸だ。
男性も、女性のように、肋骨の動きを柔軟に保つことが長生きに繋がるということだ。
念を押したいが、肋骨が下がって固まる原因は、腕を肩より上に伸ばさないつまり、万歳しないことである。体を伸ばしていないことに根本がある。
あなたの心臓、肺、脾臓、肝臓、血管、神経・・これらの重要な臓器が悲鳴を上げている。これらの臓器を苦しめるのは、もう止めにしようではないか?
肋骨をこれ以上下げたまま(臓器を圧迫したまま)、動かさないでいるのは止めにしようではないか!
そろそろあなたも肩が凝ってきたかもしれない。私も、この話は本当にストレスが溜まる。
あ~また肋骨が下がった。まずはプールでひと伸びしてこよう。
珍技 3/4 ペットボトル背泳ぎならぬ『ペットボトルクロール!』
5 腹式呼吸の盲点
人間は胸式と腹式両方の呼吸が出来る。では、予備知識を。以下頭が疲れるが、少しだけ辛抱願いたい。
①胸式(肋骨の上下運動、つまり胸が膨らんだりしぼんだりする)。
吸う時は、肋骨を広げる外肋間筋が収縮し肺が広がる。吐く時は外肋間筋は弛緩する。すると肺の弾性と重力により、自然に肋骨が下がる。結果、息が吐き出される。尚、強く吐く時は、肋骨を押し下げる内肋間筋が収縮する。
②腹式(お腹が膨らんだりしぼんだりする)。
吸う時は横隔膜が収縮し肺は広がり、それにより圧迫される内蔵は下へ押しやられる。つまり、お腹が出る。吐く時は横隔膜が弛緩し、肺、皮膚、腹膜腹筋群の弾力によって内蔵は元の位置に収まる。尚、強く吐くときは腹横筋が収縮し、お腹は凹む。以上である。
さて現在、腹式呼吸がもてはやされている。
これは、副交感神経を高め、体をリラックスさせるのが目的だ。リラックスすれば血圧も下がるだろう。しかし、誤った指導をよく見受ける。先程も述べたが、血圧が上がる要因は、肋骨を締める(下げるほうに力を入れる)ことだ。
そもそも、私から見れば、胸式と腹式に分けること自体ナンセンスだ。人間という生き物は、胸腹式が自然な呼吸形態である。
では、よくある好ましくない腹式呼吸の説明を抜粋してみる。
吸う時は交感神経が働き、吐く時は副交感神経が働く。その為、吸う時間より、吐く時間を長くすること。ここまでは正解である。
問題は・・お腹を膨らましながら鼻から息を吸う。次に、ロをすぼめるようにしてロから少しずつ長く吐く。そしてお腹が凹むまで吐ききる。
こんなものだうう。実はこの説明には、思わぬ盲点が潜んでいる。
ロをすぼめて吐ききるという行為だ。あなたはこの言葉に、どんなイメージを持たれるだろうか?力を入れて吐くことだと思うのではないだろうか?少なくとも私はそう思う。力を入れて吐くと必ず肋骨も下がる。肋骨を締めてしまう。
腹式は、吸った時点で肋骨はすでに下がっている。そこに力を入れて吐けば血圧が必ず上がる。
そのわけは、ロをすぼめると呼息抵抗が大きくなるからだ。息こらえに似た状態になるのだ。
息を長く吐くと副交感神経が優位になる・・。そのとおりである。
しかしそれは、吐く時に力をぬいているからである。
本来の腹式とは、吐く時は力を入れず、リラックスして長く吐くのである。力を入れて吐ききる必要などどこにもない。
え?力抜いて吐く?
よくよく考えてみてほしい。
横隔膜は吸う時に収縮し、吐く時には弛緩する。
念を押したいが、
力を抜くから副交感神経優位になるのであり、吐くから副交感神経優位になるわけではない。
ここで水泳の呼吸との混同について。
水泳は純粋な腹式ではない。
(もちろん、純粋な胸式でもない。)
あれ?どうして?リラックスして泳ぐには腹式で副交感神様を高めたほうが・・だから水中でも少しずつゆっくり吐いたほうがいいんでしょ?
ノー!NO!あなたは、安静にして就寝したいのだろうか?
水泳という『運動』をしたいのだろうか?
運動というものは、交感神経を高める行為である。副交感神経を高める行為ではない。ここを混同しないで頂きたい。
それに、水泳は全身リラックスして行うものではない。体幹は必ず伸ばすほうに力が入っている。生理学的な知識として非常に誤解が多い。
水泳時は、交感、副交感神経うんぬん以前に、セロトニン効果で抗重力筋が活発に働いていることを忘れてはならない。セロトニンが分泌されると、体幹を伸ばす抗重力筋がより強く働き、ストリームラインがとりやすくなる。このセロトニン効果を促すには、リズミカルな動きがどうしても必要である。
水泳は、リズムが存在する運動である。
長距離をラクに泳ぎ続ける秘訣は
リズムに乗ること。
市民プールではタランチュラのごとく、ゆっくり緩慢に泳ぐ人が非常に多い。見ていても軽快さ(リズム)が全く感じられない。
リラックスしているのに心地よくない・・なぜだろうか?それは、セロトニンが働いていないからだ。
泳いで心地よい状態とは、リズムに乗った結果、セロトニンが作用するからである。
重要なのは、攻撃神経やリラックス神経ではなく、覚醒神経なのである。
そして、本当に多いのが腹式呼吸で腹圧を入れる
という誤解だ。
腹式呼吸では腹圧は入れられない。
呼吸の指導者でさえ腹圧を正しく理解していない。今すぐ認識を改めて頂きたい。
腹式呼吸の欠点は、完全に肺を膨らますことが出来ないことだ。大きく吸い込むには、肋骨を広げなければならないのである。腹圧というのは、肋骨が広がらないとかからないのだ。
※腹圧については、46、53記事で述べているのでぜひ参照されたい。
胸式呼吸はどうだろうか?代良的なのはピラティスだ。
ここにも実は、正しく理解されていないフシがある。
胸を膨らましながら鼻から吸う。次に、胸をしぼめながらロから吐く。これが純粋な胸式だ。ピラティスの導入としては私も理解できる。なぜなら、ピラティスは肋骨を意識的に動かす呼吸法だからだ。しかし、これをピラティスの呼吸だと誤って紹介している指導者がいる。
本来のピラティス呼吸は・・下腹部を常に凹ましながら呼吸するのである。
では次の例。お腹を凹ましながら胸を膨らまし吸う。次に肋骨を下げ、お腹に力を入れながら吐ききる。これは、よくありがちなピラティス呼吸の説明だ。
皆さんは何が誤りであるか見抜けるだろうか?答は、お腹に『力を入れる』である。正しくは、お腹を『凹ましたまま』である。
もう1つ。肋骨を下げながらというのは、自然につまり、重力と肺の弾力に任せて肋骨を下げるのであり、内肋間筋や腹直筋に力を入れて下げるのではないということだ。これは、水泳(特に競泳)も全く同じである。
腹横筋を収縮させる。
ん?どこかで聞いたような・・
そう、46記事でも紹介した『万歳ドローイン』だ。実は、これが本来の水泳やピラティス呼吸法なのである。(汪:両者呼吸動作は同じであるが、ピラティスの場合は息を止めないという点が違う)
この呼吸法は、体が理解するまで時間がかかる。一朝一タで簡単に出来るものではない。しかし一度習得してしまえば、とてもラクに安定した呼吸ができる。
私の実践しているドローインや、(本来の)ピラティスであるが、 正確に言うならば、胸腹両式呼吸である。 わかりやすく書くと、
胸で吸い、お腹で吐くということだ。
この表現のほうが、血圧を上げることもなく、下腹部も凹ましたまま呼吸ができる。腹式より、大きく積極的な呼吸運動となる。大きく息を吸い込む深呼吸が可能なのだ。
深呼吸というものは、片式でやるより、両式で行った方が効率がいいのである。
そして、この呼吸法は『現代人が鍛えるべき呼吸筋』
を最大に収縮させることが可能である。
幾度も申し訳ないが、
外肋間筋を収縮させ、肋骨を広げる行為こそが、現代人には必要な運動なのである。 (補足→特に下部肋骨を広げると、横隔膜が最大収縮する)
ここで最後の休憩。
珍技 4 /4 『アシュラ』
6 躰 ~エンディング~
私達が健康に暮らすには?免疫カを高めるには?高血圧にならないためには?
長生きの4姉妹を筆頭とする、人生の先輩は言う。
よく笑うこと。よく話すこと。大きな声で歌うこと。
これらの共通点は?それは、大きく呼するである。喉ではなく、お腹から声を出す!使う筋肉は腹横筋。
さあ、ここからが私の強調したいところ。
大きく呼するには、大前提として大きく吸うこと!使う筋肉は外肋間筋と横隔膜。
『がいろっかんきん』 と 『おうかくまく』。
この両者揃って初めて肺は大きく膨らむ。肺の奥深くまで新鮮な空気が行き渡る。
普段行っている腹式呼吸の落とし穴は、肋骨を広げないこと。前述した生活習慣病を予防する意味で、また水泳の前重心の体を作る意味でも、常に肋骨を広げることを意識したい。それを言う私も、記事を書いているこの瞬間、肋骨は下がりっばなしだ。ねこ背になっている。どうしても胸を広げることを忘れてしまう。
そこで私は、冒頭の写真をiPhoneの壁紙にし、いつも思い出せるようにした。もちろんこの写真は、あなたに使って頂いても全然構わない。
さて水泳である。あなたは、水泳が健康に良い本当の理由に気付いているだろうか?
水泳の基本姿勢であるストリームラインは万歳をする。そして、大きく肋骨を広げると血液リンパがスムーズに流れる。つまり、免疫カが上がる。
だ か ら、水泳を嗜むと カゼを引きにくくなる。
さあ、
常に万歳するスポーツは他にあるだろうか?
常に呼吸筋を意識するスポーツがあるだろうか?
あばらをここまで広げるスポーツがあるだろうか?
水泳は健康というものをとても身近にさせてくれる。なんとありがたいスポーツなのだろう!
健 康 水 泳 。
もしタイムマシンがあったなら・・
遥か遠い昔の祖先は、私逹にこう言っただろう。
もうひと伸びして深呼吸してごらん?
それが健康の秘訣だよ・・それが水泳のコツだよ・・と。
END
謝辞
私が水泳を根本から見直すきっかけとなったのが、田中育子コーチとの出会いです。いつも丁寧にご指導くださる田中コーチは、現役(マスターズで平泳ぎ、OWSの大会にも出場、いつも金、銀メダル)であり、公式大会の審判もされています。また、子供から大人まで(最高齢は80代!)幅広く指導され、生涯に渡って指導者の道を走り続けており、過去から現在までの水泳を熟知されています。このように経験豊富な田中コーチからは、ずいぶん勉強させて頂き、泳ぎも上達させることが出来ました。この場を借りてお礼申し上げます。
そして当ブログですが、記事を読んで下さった方、田中コーチの生徒さん、また、当ブログをきっかけにプールで知り合いになった方、またコメントを寄せて頂いた、様々な方がいたから、ここまで書き続けられたのだと思います。本当にありがとうございました!またどこかで、お会いしましょう!
尚、当ブログ読者のやぎさんが水泳のホームページを開設されたので紹介させて頂きます。↓
[おことわり]
当ブログは、TIスイムの学習法を紹介するものではありません。予め、ご了承下さい。
54 意外と知らないグライドの秘密
まさか、エピローグ投稿後に筆をとることになろうとは・・今回のテーマはグライド。あなたは、グライドの意味を本当に理解しているだろうか?
私が思うに、グライドはストロークにおいて、最重要項目である。なぜなら、水泳は『水を前に押して進む』行為だからだ。バウウェーブ(船首波)が生じることからも明らかである。その『前に水を押す』局面がグライドである。このことを踏まえた上で読み進めて頂きたい。
グライドとは、手の入水後(肋骨を広げて)前に腕を伸ばす行為だ。クロールの場合は、片手万歳である。
グライドがなぜ重要なのか?それは・・プルがラクになるからだ。ラクに速く泳ぐには、グライドがどうしても必要になる。
??
その前に・・
水泳における抵抗の最も少ない姿勢とは、前後に細長いストリーム形状である。わかりやすく言えば、万歳して伸ぴをするということ。腕を万歳すれば体は身長以上に長くなる。泳ぎの上手い人を見れば、肩からグーンと腕が前に突き出ており、体がよく伸びているだろう。
クロールは、2本のレール上を、片手万歳の姿勢にて重心を左右交互に切り替える泳法だ。
※よく誤解されるが、両手万歳の伏し浮きとは違う。いわゆるキャッチアップクロールというのは両手を前で揃える為、両肩を結んだラインが水面に平行になる。その為、横幅が広くなり抵抗が増す。
速いクロールの基本姿勢は、片手万歳、ななめの姿勢。
片方の肩が水上に出た状態だ。すると横幅が狭くなる。これがグライドの姿勢だ。TIスイムでいうスケーティングである。その名の示すとおり、スケート靴の刃のように体の側面を細長く伸ばす。
この片手万歳が水面において最も抵抗の少ない姿勢である。※両手万歳のストリームラインは、水中において最も抵抗の少ない姿勢だ。誤解のないように。
ちょっと待った!あんた、(両手万歳の)伏し浮きをよく薦めているではないか!伏し浮きが基本姿勢だと言ったじゃないか!
その通りである。伏し浮き(背泳ぎは背浮き)は4泳法全ての基本である。伏し浮きの目的は、体を伸ばす(=背骨をまっすぐにし、肋骨を広げる)ことを学習する為。これを正しく行えば足を浮かすことができる。
ひとつ書き忘れていたが、うなじを伸ばすことを忘れないように!うなじが縮むと胸も同時に縮む。要するにねこ背の状態だ。すると、みぞおちが落ち込み、胸で水を前に押せなくなる。
さらに・・伏し浮きは軸を作る行為でもある。
クロールというのは、背骨を軸とし、その軸を中心にローリングする。
ちょうど、みたらし団子の串が頭のてっぺんから刺さっていると思えばよい。この背骨という軸が曲がっていては、抵抗が大きくなり、ラクに泳げないのである。
※※背骨の補足
ストリームライン時の背骨は、立位同様緩いS字である。これが自然だ。これを姿勢上でのナチュラルポジションと言う。具体的には、壁に背面をつけた時、うなじと腰の後ろに少しスキマが空くことである。腰や背中は決してまっ平らにはならない。
水泳の都市伝説に背面をスキマなくまっ平らに!があるが、これは、トップスピードで泳ぐ選手の結果だけを真似たものである。
そもそも、選手はなぜそうなるのか?胸を張り、お腹を引っこめたょうに見えるのは、前からぶつかってくる水の抵抗に負けない為の力を使っているからである。水を一生懸命前に押しているのである。一般人には、そこまでの抵抗に耐える程力を使う必要がない。緩いS字で十分である。
背骨をまっすぐに!(これを軸という。軸とは意識である。背骨そのものの形状ではない。ただし、軸と言っても厳密には、串や縫い針のように固い物ではなく、鍼師が一般的に使用する毫鍼のごとく、しなやかにたわみ、すぐ復元するようなものである。特にバタフライではその意識が強い)とは、反りすぎず、丸くなりすぎず、自然にまっすぐということだ。いつも背中が丸くなる人は、ドローインで肋骨を広げ、胸を張りぎみにしたほうがいいし、いつも反っている人は背中をリラックスしたほうがいい。本によって真逆の理論になるのも仕方のないことだ。人間の背骨を解剖学の本でよく観察してほしい。これから外れた背骨のラインを持つ人は、立位にて個別に模索してほしい。
話を話を戻そう。
では、私から質問。初心者がいきなり、ななめの姿勢で浮くことが出来るだろうか?これこそ100%不可能だろう。なにしろ、軸という意識が皆無だからだ。まずは簡単な両手万歳の伏し浮きからスタートする。ここで軸及ぴ足を浮かすことを学習してから片手万歳にトライするのである。
グライド。この行為は、前重心を作るつまり、足を浮かす行為でもある。
そして、前に伸ばす手の方向いかんで軸のブレ、ロール角度も変化する。従来よく、キックが舵取りの役目をすると言われたが、本来の舵取りは、先端の手が担っていることを忘れてはならない。
さらにグライドは、安定したリカバリーを行う為にも重要だ。
51記事のジッパーが良い例だが、右腕がリカバリー中は、左腕はグライド(静止)している。スケート靴の刃のように、体の左側面を手先から足先までしっかり伸ばす。これがクロールの土台である。土台がブレずしっかりしているから、リカバリーや息継ぎも安定するのである。
そして・・従来の概念にはなかったこの秘密・・
グライドは、体幹の回転を生じさせる。
サメのポーズから、入水する側の腕を水中へ伸ばすと、それだけで推進カが生じるが・・そう、惰性のカだ。これが、私の泳ぎのメイン推進カであり、初動負荷型プルの根源である。↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm29880364
その入水した腕に引っ張られて、体幹も回転するのである。グライドするとプルがラクになるのは、惰性により体が前に移動するからである。だから、プルに力は必要ないのだ。私がグライドを重要視するのはこうした理由からである。
ところで市販の教本には、グライドの役割に関する記述が未だ見られない。一部でようやく惰性のカについて触れるようになった程度である。
あなたも、グライドの重要性に早く気付いてほしい。
さて・・
プールでよく見かけるスイマー。よく見ると、ローリングをほとんどしていない。というより、ローリングできない。その原因の1つは、水面に手先をキープするからである。これは、一般のスイミングスクールの定番、キャッチアップクロールが関係している。
よくよく考えてほしい。ローリング時は、腕を伸ばす側の肩が水面下に沈み、もう他方の肩が水面上に出る。(※背骨という軸は動かない。つまりブレない。)肩と肩を結んだラインは、前から見ると水面に対しななめになる。前に伸ばす腕は、その沈んだ肩より上にあるのは不自然だと思わないだろうか?
入水後は、必ず水面下20cmくらいに伸ばすこと。
え?だって選手は、手先が水面に位置してるよ?揚力を使うほうが浮くんでしょ?
選手は体が柔らかいからね。しかもそれは、とても高度な技術だよ。手先を水面にキープすると、私でさえ足が沈む。 というわけで、肩や胸郭(肋骨)が固い大人は、水面に手をキープするという考えは捨てたほうがよいだろう。
少々脱線するが、よく入水は前方遠くへ!と言われないだろうか?
これは、入水が近すぎるからというのが理由だが、ここで大人の泳ぎのメカニズムを理解しないと、大変苦労することになる。
大人は肩関節が固いのが常だろう。この為、頭上中心軸に向かって万歳しようにも完全に肘を伸ばせない(肘を伸ばせばYの字万歳になる)。
だ か ら入水が近くなるのだが・・このような人が遠くに入水するよう指導されたらどうなるだろうか?もともとロール角度が小さいのに、さらに平らになりながら入水することになる。入水が完了する前に肘が伸びるため、ローリングする勢いがなくなる。そして入水後、今度は肘が曲がり落ちてしまい、グライド出来ず水を下へ押さえてしまう。そして・・肘から引いてしまう。やはり、手先を水面にキープしようとするからだ。結果足が沈む。
そもそも、肩が固い大人は、エルボーアップをキープして遠くへ入水、また入水後腕を水面に平行に伸ばすことなど不可能なのだ。
これを解決すべく、TI方式の入水(手前入水、ななめ前方へ伸ばす=ゼロポジション型)を行うのである。サメのポーズから水中へ入水し、そこから初めて肘を伸ばしながらななめ前方へ突き出していく(※水面に手をキープしようとすると肘が必ず落ちるので注意)。このように、TIの入水及びグライドは、大人のためには理にかなっているのである。
前方遠くへ入水!というのは、体が柔らかい人向けなのであり、大人の特性が考慮されていない。それを言うのなら、ストレートアームクロールを教えたほうがよっぽと理にかなっている。
さらに・・ゆっくりテンポで泳げばよくわかるのだが、手をしっかり前に伸ばさないと、ストローク数がとても増加する。理由は簡単だ。抵抗が大きく、惰性で進めないからである。
私の泳ぎが滑るように見えるのは、腕をしっかり前に伸ばし、抵抗を最少化しているからだ。だからゆっくりに見えても速いのである。
さて、グライド。腕を伸ぱす。
この行為は奥がとても深い。ただ単に腕を伸ばすだけでは、本当の意味がわからない。
よく似た行為に、板キックがある。しかし、ビート板の上に腕を伸ばすことと、グライドは根本が違う。詳しいことは14記事に追加するのでそちらを参照されたい。
また、自称TIスイマーに多い誤解の1つに、腕の伸ばし方がある。そもそもTIは、なぜ水中深く斜め前方に腕を伸ばすのか?これは、伏し浮き(もちろん静止)して足を浮かせることが出来ない人が、手っ取り早く足を浮かせる為だ。理屈は12、13の動画でも説明している。しかしこれは、ある程度の泳速があるから可能なのであり、超ゆっくり泳ぐと足は浮かない。時々、タランチュラのように泳いでいる人を見受けるが、例外なく足が沈んでいる。
では・・泳速を上げずに足を浮かすにはどうするか?
それは、体の側面を伸ばしきることである。
腕の角度は斜めでも、その腕を肩ごと前へ突き出すということは忘れないことだ。
手の平側、つまり下へ下へ!押さえるのではなく、手の甲側で水を前へ前へ!押すのである。要は、水に体を支えてもらうということだ。
そして、先に述べたように、うなじも伸ばすこと。頭頂部を、これもまた前へ前へ!突き出すのだ。要は、頭部も使って重心を前に移動させるのである。
逆に、うなじに力が入ると頸椎の前湾が大きくなる(縮こまる)。つまり、重心が後ろへ移動する。前を見たり、大きくロを開けて呼吸すると必ず力むので注意。
意識1つでも全く違ってくるので、ご注意願いたい。
ローリングできないもう1つの原因も同じく・・
伸びが中途半端で、肩が前に突き出ていないことにある。だから、体が水平になる。もうひと伸びが足らないのだ。もうひと伸びするには、脇の下を伸ばす意識が必要だろう。
肘を伸ばし、脇の下を伸ばしきることにより、初めて体幹は回転する。
(体幹の回転については追記参照)
脇の下を伸ぱすと肋骨が広がり肩がより前に出る(前重心になる)。そして、お腹が肋骨によって伸ばされ、腹圧が入りやすくなる。肋骨が広がれば、息を止めても苦しくならなくなる。そして、手先からお腹にかけて皮膚のたるみがなくなる。つまり、抵抗が少なくなるのだ。
そして・・脇の下を伸ばせば、大胸筋と広背筋が引き伸ばされる。引き伸ばされた筋肉は、輪ゴムのように弾力がある為、縮もうとする。その縮もうとする力を利用してプルするのだ。
マイケルフェルプス選手や萩野公介選手のストロークを真下から見ると・・グーンと伸び、ひと呼吸おいてプルしている。広背筋がよく伸ばされ、その弾力でプルされているのがわかるだろう。
筋肉を緩めると最大にバワーが出せる。これは47記事で述べたが、その究極が筋肉を晟大に引き伸ばすということ。彼らの強力なプルは、グーンと腕を前に伸ばすことで可能になるのだ。グライドなしにすぐキャッチするというのは、広背筋、大胸筋をフル活用していないことになる。
グライドとはすなわち、プルの予備動作なのである。
ラクに速くクロールを泳ぐ。それを実現するには、脇の下の広背筋を伸ばすグライドを磨くことである。
[追記]
推進力は体幹の回転より生まれる。これは本当なのだが・・誤って解釈されている人が多い。体幹の回転は、体幹(腰)の動きそのものからスタートするわけではない。
TIの2ビートクロールも、キックを打ってから体幹が回転しだすわけではない。(TIスイムの説明では・・キックがきっかけで腰がまず回転し、腰の回転力が腕の入水に伝わるというように、伝達が下から上へとなっているが・・私は、この説明に関しては疑問である)
キックはあくまで回転の補助である。
なぜそう言いきれるのか?それは・・
キックなしクロールでも体幹は回転するからだ。
キックなしクロールを泳げば、本当の伝達メカニズムが明らかになる。
キックなしクロールの体幹の回転は、エントリーの構え(サメのポーズ)から、2本のレールの片側へ腕が伸ばされる過程で生じる。水上に構えた腕は重みがある。この位置エネルギーを利用して、水中へ肩ごと突き出すのである。もちろん、水上の肩は水面下に移動する。すると反対側の肩が水面上に出る。それにつられ腰も回転する。この回転は一瞬の出来事だ。両肩が水平になる局面は皆無である。
先に述べたキャッチアップクロールは、両肩が水平になる局面が長くなり(つまり抵抗が増す)、テンポが上がらなくなる。だ か ら速く泳げない。
テンポを上げるには、両肩水平姿勢(両手万歳)を止めることが先決だ。
ついでに、
両肩水平姿勢を土台にすると、頭が左右にブレやすくなる。それは、頭部と体幹の分離が難しく、ストロークに頭が引きずられるからだ。要するに、体幹の回転という行為を理解していないのである。
私の頭がブレないのは、頭部と体幹の分離が完璧だからだ。軸を中心に、左右が入れ替わることを体が理解しているのだ。それは、スケーティング及びスイッチドリルを誰よりも多く練習したからである。
脱線したが、
体幹の回転に合わせてプルすれば、結果として体が前に進む。つまり、ラクにプルできるのだ。惰性のカで滑る泳ぎになる。(言いかえれば、初動負荷型の泳ぎになる)このことは、11記事の動画をご覧になるとよく理解出来るだろう。これにキックが補助的に加わるのだ。
もう1つ。キックというのは、腰の回転が必ず先行する。上から下へ伝違する。↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm29692263
体幹の回転を生むきっかけは、キック(腰の回転)ではなく腕の落下という行為に内包される、重心の移動なのである。
重ねて言う。重心移動による回転カは、上半身から下半身へと伝達する。これが、私の実証したクロールの正体である。
注;入水後の肘を伸ばす勢いにて生じた、回転カ(型、つまりフォームを生み出す体幹の動き)で推進するのがTiの特徴である。手足の細かいフォーム(形、つまり結果として表われる末端の動き)は人それぞれである。また、私にとってのTIとは、フォーム直しの取っ掛かりとしてTIドリルが存在するのであり、TIスイムのクロールは存在しない。なぜなら、1から10全てのままTIスイム理論でフォーム化していないからだ。身体の特徴に合わせ、個別にアレンジしている。10人居れば10通りのフォームがあるということだ。手足の形、つまり、結果だけを真似るのは、本当のTIではない、というより、水泳ではない。皆さんの誤解が解けることを願いたい)
また、カヤックさんが51記事コメントに、とても明快な解説を寄せて頂いているので引用させて頂く。
以下引用~ 『回転』の意識を完全に捨て、2本のレールの片側にのばす手だけに意識を向けたら、突如できるようになりました。片方の手を伸ばすことによって、左右の重心バランスが偏り、勝手に体が傾くのであって、(意識して)体を回転させようとするのではない、ということがわかりました。できてみると『体幹の回転力』の意味もよくわかりました。(ななめの姿勢にて)体幹を安定させることによって、この重心バランス(重心移動)によって勝手に生じたローリングの力が無意識のプルに勝手に伝わっているのだ~引用終わり
尚、スイム時のグライドは、実際はエントリーから水中へ伸ばす動作と一体であることに注意されたい。こうしたグライド技術を習得している(体幹の回転カでプル出来ている)スイマーは、まだまだ数が少ない。グライドは、奥がとても深いのである。
では、
本当に最後になるが・・
『グライド』はとても重要だ。しかし一字違いの『プライド』は、とても水泳の上違の妨げになる。
私もそうだったが、水泳部に所属していたということが、変なプライドを生んでいた。
自分はうまい!と。
しかし他人から見れば、ただの三流、いや四流スイマーだ。私のプライドがもろくも崩れ去ったのは、自分の泳ぎをビデオに撮ってもらった時である。
悲しいかな・・大人は皆、自分の泳ぎをビデオで見ない限り、自分の欠点に気付くことは難しい。
皆さんは、私がここまで上達出来た本当の秘訣は何だと思うだろうか?
それはズバリ、プライドを捨てたからである。
プライドを捨て、初心者同様伏し浮きからやり直した・・
そしてグライドを徹底的に練習した。
だから今の私が存在するのである。
53 固定観念に縛られない平泳ぎ
52記事の投稿から、もうはや半年が経ってしまった・・。お待たせして大変申し訳ない。
当記事は、平泳ぎが苦手な人はもちろん、平泳ぎにあまり関心のない人、クロールをはじめとする、他3泳法を泳ぐ人にも参考になる内容である。特に、メイン記事である『5 知られざる腹圧』は専門家も知らない重要なことを述べている。ぜひ一読を。
さて・・
4泳法中もっとも難しいのが平泳ぎである・・。
これは私が身を持って感じたことだ。
え~?何言ってんの?一番簡単だよ!
それを言うあなたは、速く泳いだことがないのだと思う。水の抵抗というのは、速度の2乗に比例する。つまり、速く泳ごうとすればするほと抵抗はぐんぐん増加する。ご存知平泳ぎは、4泳法中最も抵抗が大きい。だから、速さを追求するのはとても難しいのだ。平泳ぎは、水泳の基本が出来ていないと、速く泳ぐことは不可能である。それが、泳ぎに露骨に表れる。ごまかしが効かないのだ。平泳ぎは、他の3泳法より抵抗削減の技術を最も要する、とてもシビアな泳法なのだ・・だから、最後に紹介することになったのだ。
私が平泳ぎを泳ぐ目的は、このシビアな技術と感覚を磨き、他の泳法に応用する為である。
というわけで今回は、『ある程度速く泳ぐ』平泳ぎについて述べたい。もちろん『ラクに』である。
私はこの1年、平泳ぎと悪戦苦闘してきた。いかに抵抗を減らすかということに。また、現時点ではキックの推進力も小さい為、どのように推進力を得るかについても取り組んだ。
今回は、以下の映像をもとに、私自身が実証したことを私の視点から述べたい。
水上から↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm27211969
水中から↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm27193359
1 固定観念が、平泳ぎの苦手意識を作り出す
他の泳法は得意でも、平泳ぎだけが苦手な人は多いだろう。私もその一人だった。キックで疲れるわりにちっとも進まなかった。なぜなのか・・?それは、平泳ぎはキックでたくさん進むものだという固定観念に縛られていたからだ。しかし実際は違った。
では、1年前まで平泳ぎがまともに泳げなかった私が、ラクにそこそこ速く泳げるようになった理由を結介する。
平泳ぎの推進力は一般に、キック7割、ストローク3割と言われる。要するに下半身メインだ。が、私の平泳ぎは逆だ。上半身メインである。ぶっちゃけて言うが、私はキックがとても苦手である。キックの推進力など上手い人の5割にも満たないくらいだ。その為、意識としてはキック3割ストローク7割で泳ぐようにしている。
ただし推進力そのものは、何割と明確に言えない。なぜならば、体幹からも生じているからだ。キックだけが上手くても平泳ぎは速くならない。
私の平泳ぎは、推進力に何を利用するかと言えば、重力、浮力、そして・・
惰性のカだ。それを生かすにはストリームライン(伸び)をとる必要がある。また、バタフライと同じく上半身がうねる。
そもそもうねりはなぜ必要なのか・・?
バタフライでは肩を水面上に出す為に必要だった。そしてもう1つ。キックを生み出す為だ。上半身がうねるからキックが打たれることは52記事で述べた。では平泳きはどうか?実は、平泳ぎも上半身がうねることによりキックが生じる。ウソのようで本当の話である。当の私が実証しているのだ。間違いない。
もう1つ。うねりは、前後の重心移動の為に必要である。バタフライでも述べたが、いわゆるシーソーをする為である。上半身が上がれば下半身は下がる。
また、うねりは息つぎも助ける。息つぎは頭を起こさなくとも、上体が上がればついでに出来る。わざわざ息つぎをしに行かなくとも良い。
念を入れたいが、上半身を使わなければうねりは生まれない。私の平泳ぎは上半身がうねる。下のビデオをご覧頂きたい。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm25519939
キックなしでグングン進んでいるのがわかる。どう考えてもキック主導ではない。重心移動だけで前に進んでいる。
うねりというものは、胸郭(正確には胸椎)の伸縮から生じる。私の平泳ぎは、バタフライと全く同じうねり方をする。私の上半身は、バタフライと酷似していることからもわかるだろう。↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm26385551
私がバタフライや平泳ぎをうまく泳げるようになった訳は、キックなし平泳ぎ(ドル平)で、上半身でうねる練習をやったからである。
2 上体を上げる高さについて
その前に・・
平泳ぎでよく進む人、進まない人の差はズバリ、伸びの姿勢にある。水泳の基本中の基本、フラットなストリームラインだ。特に平泳ぎは、1にも2にもこの伸びの姿勢が最重要項目である。平泳ぎというのは、まっすぐなストリームラインから、息継ぎの為に瞬時に上体を上げ、瞬時に元のストリームラインに戻る泳法だ。これは腹圧の観点からとても重要になる。腹圧については後述する。
平泳ぎでラクに速く進むようになりたい人はぜひ、伸びることを練習されたい。これなくしては平泳ぎそのものが成り立たない。
次に・・
もともと平泳ぎとバタフライは同じ種目だったことは皆さんもご存知だろうか? 私の泳ぎは、ここからヒントを見い出している。競泳のスタンダードな平泳ぎのように、上体が高く立つことはない。(バタフライは上体が立たないだろう)これはつまり、背筋や腕力を使っていないからである。浮力と重力でうねる。
ではなぜ競泳の泳ぎは上体を高く上げるのか?実は平泳ぎは、一瞬スピードがゼロになる届面がある。え?!本当である。上体を高く上げた直後だ。もちろん重心は後ろへ移動する。しかし、このタメのおかげでキックの推進力を最大化出来る。私には実感出来ないが、トップ選手は固いカベを押しているように感じるという。これはドラフティング効果の1つと言えるが、選手は意図的に上体を上げる。すると足に水の塊が引っかかるのである。
ただし!これは足のうらでしっかり水を捕らえられないと意味がない。キック単体でグングン進むスイマーならともかく、私のようなキック苦手人間は、上体を高く上げると(重心を後ろへ移動させると)見事に墜落する。
ついでに・・
マスターズスイマーの中には、トップスイマーを真似て上体をかなり上げている(水面に対し背骨が垂直に立っている)人がいる。見た目はダイナミックだが、意外と進んでいない。なぜなのか?それはリカバリーの腕が完全に伸びきってから頭が落下を開始するからだ。伸ばす勢いを殺しているのである。重心移動にズレがある為と言える。上体を高く上げるには筋力を要する。また、背中が反ってしまっている。
試しに背浮きになり背中腰を思い切り反らしてみてほしい。すると下肢もつられて膝が曲がるだろう。人間の体は本能というものがある。上体を反らすと必ず股関節は伸び、膝は曲がる。また、構造上90°まで反らすと、腰椎の棘突起がぶつかり合う。ここまで反らすことを延々と続けると腰痛を引き起こすリスクが高まる。水中から見るとまるでサッカーのへディングの姿勢のようだ。
これは緊張性頸反射なのだが、平泳ぎでは邪魔になる。(バタフライでは有効だが・・)
平泳ぎの難しい所はコンビネーションだ。ストロークとキックを同時に行わないようにせねばならない。それが本能により、同時になってしまうのだ。するといくら頑張ってもスピードは出なくなる。この本能を抑制するには、背筋に力を入れない(ねこ背になる)ことである。また、アゴを上げて顔を正面に向けないこと。水面を見るようにすることだ。
ここで平泳ぎはひと休み。
頸反射の話が出たのでクロールについて書こう。
私がクロールを速く泳ぐ時は、非対称性緊張性頸反射(ATNR)を利用している。赤ちゃんによく出現する本能だ。どういうことかと言うと、右に首を回せば、右の上肢は伸ぱしやすく、左の上肢は曲げやすくなる。反対も同様。要は、人間の体は、視線の方向へ腕を伸ばしやすくなっているのだ。
このATNRを最大限に活用しているのが、実は空手の突きである。医科学が発達する前から、先人はすでに、ATNRを経験的に知っていたのである。私は、空手の形を見る度に、完成度の高さに驚かされる。
では、試しに弓道の弓を引く構えを取ってほしい。視線は伸びた腕の先を見ているだろう。そして後頭部には、肘の曲がった腕が構えている。この(架空の)弓を、ななめ上方へ向けてみる・・。
あっ!サメのポーズではないか!
そうなのである。クロールというのは、ローリングするたび(体幹を基準に見れば)首は右に左に回っている。スイッチするたぴ後頭部にある曲がった腕が、視線の方向へ伸ばされるのだ。そして他方の腕は、伸びた状態から肘が曲がりながらプルし、リリースしていくのである。要するに空手の突きそのものなのだ。(注:突きの動作は全く同じだが、引く側は違いがある。肘が曲がっていくという意味では同じであるが、空手の引き手は脇が締まる。対し、クロールのプルはフォロースルーしていく。このことは後述する。)
これじゃ押し切れなくなるじゃん?それでいい。フィニッシュは押しきる必要はない。私の実践しているクロールは、上腕三頭筋を使って肘を伸ばさないのである。広背筋で引く体幹主導だからだ。空手の突きや、クロールのストロークは、体幹主導であることを忘れてはならない。
でもそれやると、プルの手が腰で止まるじゃん?ご心配なく。内旋を入れていけば自然に反動でリカバリー出来る。ゆっくり動かせば、腰の位置で手がリリースするが(肘が伸びきることはない)、速く動かせば内旋の反動で一瞬肘が伸び、大腿の付け根に手がくる。手が大腿付け根にある時、肘はすでにリリースしている。
結局、押し切るクロールと押しきらないクロールの違いとは、直線運動なのか、円運動なのかの違いである。広背筋で内旋して引きながら、押しきらずスムーズにリカバリーしていくほうが体幹の回転にうまく同調する。私のプルは、体幹の回転カで行っているにすぎない。末端に(上腕三頭筋)力を入れていない。
だからテンポも上げやすいのだ。私はこの押しきらないフィニッシュのほうが断然力を入れやすい。
押しきらない理由はまだ他にある。これは後述する。
さらに脱線するが、背泳ぎの入水時、よく肘が曲がる人がいるが、ATNRが働いている可能性がある。
肩関節が硬い人に、肩幅より外目に小指入水!と言っても、肘を伸ばして入水出来ない人は、思い切って親指入水させたほうがよいだろう。
さて、平泳ぎに戻そう。
平泳ぎもバタフライと同じく、腰を支点にシーソーしている。上半身が上がれば下半身は下がる。もちろん上体が上がらなければ下半身は下がらない。(※フラットに浮けるのが前提)だから、バタフライ同様ローボディで泳ぐのだ。
あの北島公介選手の上体をよく見てほしい。前傾しているのが分かるだろう。最大でもここまでなのだ。それ以上立てるともろ後重心になってしまう。平泳ぎというものは、あくまで斜め上方へと上体は上がっていく。直上へ上がるのではない。
それに、上体を真上に上げるのは心臓にも負担がかかる。
3 心臓への負担
~あまりにも専門的である為、省略させて頂いた。
4 ストロークについて
私の考えでストロークを細かく分けると、アウトスカル~インスカル~リカバリー(グライド)の3ステージである。
あれ?プルは? よく教本ではプルやハイエルボーなとと説明されるが、それらは全て選手向けであり、少なくとも私の平泳ぎには、プルは存在しない。プルとは引くと言う意味である。少なくとも、初級者が引くと必ず失敗する。
え?キックに頼らないわけでしょ?ならばプルに頼らないとどこから推進力を得るわけ?
ところが・・キックで蹴らなくても、腕でかかなくてもちゃんと進むのである。
では
まずアウトスカル。基本のストリームラインの(伸びた)姿勢から、グーッと胸を張って外へ腕をゆっくり広げる。手の平は外へ向く。
そして、インスカルは・・大胸筋に力を入れフッと息を吐く。すると肘は落ちて、外科医ポーズ(後述)になる。この瞬間に吸う。すぐさまリカバリーに入り、元のストリームラインに戻る。と同時にグライドする。たったこれだけである。へ?と思われるかもしれない。
しかし、プルは本当に必要がない。
よくあるNGに、アウトスカル後、ハイエルボーにせず肘を引いて(プルして)しまうことがある。
教本にもよるが、脇をしめるという表現がよく出てくる。これが原因でおかしなことになる。
『脇を締める』この言葉は、空手の引き手の話だ。平泳ぎでは禁句である。
ひとつ指摘する。クロールのプルでよく、広背筋を使って脇を締めよ!と書かれているが、私が素直にやると肘が落ちる。正確に言うと、外旋したまま肘から引いてしまうのだ。つまり、前腕が引く方向に対して平行になり、水をとらえられなくなる。その結果何が起こるか?引っかかりがえられない為、上腕三頭筋で押そうとするのだ。さらにこの状態からリカバリーすると棘下筋(外旋の主働筋)が強く働く為、脇を締めたまま手先から動かしてしまう。これは普段のプールで非常に多く見受けるが、後ろへ押す意識が強く、その結果脇を締めてしまい、棘下筋が緊張し不自然なリカバリーになるのだ。これを延々繰り返したら、水泳肩まっしぐらである。リカバリーは脇を開かないと、つまり棘下筋を緩めないと自然なリカバリーにならない。
あなたは、クロールで次のような悩みをだかえていないだろうか?
肘から先をリラックスしているのに(上腕三頭筋を緩めているのに)なぜか不自然なリカバリーになる・・その根本は棘下筋に『力を入れて外旋している』からに他ならない。より遠くに入水!とぱかりに、手先を水面から高く上げる意識があるからだ。
正しくは、棘下筋の『力を抜いて外旋する』のである。この問題を解決するには、ジッパードリルがおすすめだ。手先を水面から離さないようにサメのポーズにもっていくのだ。体側の近くを手先でなで上げるようにすれば確実にハイエルボーになる。なにも遠くに入水する必要はない。
ただ、根本の解決を計りたいのであれば、反動をよく理解することである。→52記事6フィニッシュ参照
クロールのプルに話を戻そう。
正しくは、脇を開けて、肘を外に張り出しながら引くである。すると前腕が引く方向に対して垂直になる。これが内旋しながら引くということだ。詳しくは21記事を参照されたい。
ともかく
内旋という行為は、脇をある程度開かないと起こらない。
広背筋というのは、脇を締めること『内転』のみに意識を持つと最大限に力を発揮できない。
広背筋は、『内旋』を加え、『引く』ことにより最もパフォーマンスを発揮するように出来ている。
広背筋を鍛える、ウェイトトレのラットプルダウンの落とし穴が、ここに見えてくるだろう。思ったより広背筋が効かないのは、内旋していないからである。だから、一生懸命脇を締めて無理やり効かせようとしてしまうのだ。→広背筋の正しい意識の仕方は、47記事で述べている。
話が長くなったが、平泳ぎでも脇を締めるのではなく、外へ開いた両手を顔の前にもってこればいい。肘を落とせばいい。ハイエルボーの意識ではなく、逆にローエルボー意識のほうがすばやく肘を落とせる。手部は、顔前にあり、常に視野に入っているようにする。
プルせず(引かずに)、背中を緩めねこ背になればいい(肩甲骨を開けばいい)。結果として顔の前に手の平をもってこればよい。手は広げてから寄せる。結果的に外科医ポーズをとることになる。
え~?うまく出来ないよ?
それには、 胸郭を開いて閉じるという意識も必要かも知れない。バタフライでも述べた、胸を張る、ねこ背になるである。アウトスカルは胸を張る。インスカルは力を抜く。結果としてねこ背になる。
あくまで顔の前で両肘を近づけることである。脇を締めないことだ。
その現由は・・肘を後方へ引くとそれだけリカバリーが遅れることになるからだ。腕力があればそれもいいが、私など、力ではどだい無理だ。
それに腹圧の観点からして引くのはとてもデメリットが大きい。
5 知られざる 腹圧
あのさ、腹圧 腹圧ってそんなに重要なの?クロールでも6ビート打てば体は安定するよ?腹圧なんて別に必要ないんじゃないの?
あまい!強く言おう。腹圧は必要である。ではその根拠を述べる。
水泳というのは、腹圧いかんで泳ぎが大きく変わる。特に平泳ぎは、腹圧に左右されやすい、とてもデリケートな泳法である。
平泳ぎはもともと抵抗の大きい泳法である。腹圧の抜けた状態で泳ぐとさらに抵抗が大きくなる。これでは惰性のカを有効活用出来ない。
私が、よく進むな・・と感じる時は、常に腹圧が入った状態になっている。しかし、呼吸をすると腹圧は確実に抜ける。なぜなら、呼吸という行為自体が、腹圧の抜ける原因だからだ。そして息つぎで上体を上げると、肋骨が重力により下がるからでもある。また、大胸筋を収縮させると、肩が前に出てねこ背になる。なおさら胸郭を狭めることになる。その結果息が強く吐き出されるのだが・・。
ここで止息(しそく)について
腹圧の基本は、息を止めること。しかし、息を止めると苦しい人がいるだうう。こらえるのが身についているからだ。具体的には肋骨を下げる(内肋間筋、腹直筋が収縮)方向に力が入っている。こらえると、胸郭内の血管や肺や心臓を圧迫してしまうのだ・・血圧が急上昇するのは言うまでもない。
腹圧という言葉が流行りだした頃、まだよく理解されておらず、誤って教える指導者がいた・・。いや、今でもだ。
顔に赤身がさしてこないような、プルプルしてこないような、苦しくならないようなら、腹圧が入っていない証拠だ・・と。ある指導者は言う。しかしこれは、単なる怒責(息こらえ)である。忠告するが、苦しくなるようなやり方は、決してすべきではない。
このような誤った腹圧を教える指導者がいることは、非常に残念である。
じゃあ、
息を止めても、苦しくならないようにするコツはあるの?
ある。
肋骨を意識して広げられるように!
それがコツ(骨)だ。早い話が、大きく息を吸って、伸びをすればいいのだ。46、49記事の延長で申し訳ないが、水泳においての止息は、肋骨を広げる(外肋間筋、横隔膜が収縮)方向に力を使う。つまり、肺を陰圧に保つのである。むろん、お腹は伸ばされて凹み、腹圧も入りやすくなる。あばら特に肋骨下部の胸径拡大には、横隔膜も関与していることは意外と知られていない。腹圧というのは、横隔膜が最大収縮しないとかからない。
横隔膜が緩むと、息が吐き出される。つまり、水中で吐いている間は、腹圧はかからないのである。
腹圧をかけるというのは、
肋骨を広げ、止息することを意味する。
つまり、『大きく吸って止める!』である。
少し脱線するが、クロールには入水意識と、プル意識とがある。
前者は、腕を前に伸ばすつまり、肋骨を広げる働きをする。後者、特にプッシュは、肋骨を下げる働きをする。
ノーブレでダッシュした時、止息はどちらがラクだろうか?もちろん前者だ。息をこらえることがない。後者の場合、明らかにこらえてしまう。強くプッシュするとこらえきれなくなり、息が漏れる。肋骨が下がるということは、肺に圧力をかけていることになるからだ。
私の泳ぎは、入水意識で自然に肋骨が広がる。この状態で止息するから腹圧が入る。だから苦しくならないのだ。
腹圧の知られざる効能その1である。
じゃあ、肋骨を広げられるようにはどうすればよいの?むずかしそうだけど?
これは、本来なら私が言う必要はないはずだ。なぜなら、水泳の基本を正しく練習している人なら、すでにやっているからである。
??
選手を含めた、水泳がうまい人というのは、ストリームライン(言いかえると、万歳し肋骨を広げた姿勢)を嫌というほと練習している。頭上に腕を伸ばし耳のうしろを挟んで、手を伸ばす。この姿勢をとると必然的に肋骨が上がる。腹部が伸ばされ凹む。この姿勢で息を止めれば結果として腹圧がかかる。
やれ肋骨だの、やれ腹圧だの教わらなくとも自然にやっているのである。子供の通うスイミングスクールでもしかり。必ずふしうきからスタートする。ふしうきが出来ないと次に進めないシステムになっている。ところが大人から水泳を始めた人は、大抵これをやっていない。これをやらないまま板キックしたり、見よう見まねでいきなり泳ごうとする。
基本を飛ばしてしまっているのだ・・。
ストリームライン(伸び)は、見方を変えれば、肋骨を広げる訓練、もっと突っ込めば肋骨を広げたまま息を止める訓練になる。すなわち腹圧の練習をしていることになる。ストリームラインを正しく練習していれば自然な止息が身に着くのだ。
だから私は、口すっぱく伏し浮きを勧めるのである。
伏し浮きは、足を浮かす為だけの訓練ではない。
正しい止息の訓練でもあるわけだ。
そして、ストリームラインのまま(万歳したまま)息を吐くと肋骨は下がらない為、お腹を絞って吐くクセが身につく。これが腹圧で息を吐く(水泳における腹式呼吸)ということだ。
歌を歌う時もそうだが、肋骨を下げながら声を出すと、息のコントロールは難しい。お腹から出さないと(お腹を絞らないと)コンスタントに息を吐けない。水泳でも歌う時と何ら変わりはないのだ。
補足!ドローインというのは、お腹を殴られた時のように、うっ!と体をくの字にすることではない。あくまで背骨をまっすぐのまま、お腹を絞るのだ。とても誤解が多いので気をつけたい。
ついでに・・
背骨をまっすぐに!とは言っても、胸を張って気をつけ!のごとく、背面を壁につけてまっ平らにしようとしないこと!これは水泳界の都市伝説なのだが・・自然な人間の背骨は、緩いS字である。
背中の胸椎は緩くカーブする。
これが私の言うねこ背である。軍隊行進のごとく、肩甲骨を背骨に寄せて胸を張ることなどしない。私のクロール、バタフライ(プル~リカバリー期)の背中をよく観察してほしい。決してまっ平らではない。ねこ背ぎみで、肩甲骨は外に開いている。
というわけで、壁に背中をつけて立った時に、うなじと腰の後ろは少しスキマができるのが正解である。
続けよう。
大人から水泳を始めた人は、ふしうきをほとんと練習しない。だから、息を吐く時、こらえの延長で肋骨を下げて吐いてしまう(胸式呼吸)。
その結果足から沈むのだ・・。
しかし、ふしうきを練習しろ!って言われてもねぇ・・俺は一応泳げることだし・・周りの人はやってないし、ふしうきの練習は素人っぽくて気恥ずかしいわ。
少しイラッときた。私は素人ではない!私は今でも必ずふしうきの練習を行っている。どんなに泳げるからと言って基本を怠ることはまず無い。なぜなら、水泳のコツ(骨)を知っているからだ。
1つとてもいい例がある。
池江璃花子選手が、うんていを自宅に設置し、毎回欠かさずぶら下がりを行っていることはご存知だろうか?彼女は幼い頃からぶら下がりを習慣にしていた。
このぶら下がりという行為は、水泳時の体幹の扱い方(肋骨を広げる行為)そのものだ。肩甲骨の可動域が広がるのはもちろん、その土台である、胸郭をもストレッチできる。
彼女は『体を伸ばす』つまり、『体幹を締める』という、水泳の超基本行為を当たり前に行っている。だから、男子選手並みの大きなストローク(伸びるグライドクロール)が可能なのである。
さらに、ぶら下がって呼吸すればよくわかるが、肋骨を上下させる胸式呼吸は不可能である。なぜなら、腕を伸ばすことにより、肋骨が引っぱられ(広がって)固定されるからである。
大きく胸を広げたままだから、吐ききることが出来なくなる。
逆に止息がラクなのだ。必然的に46記事で述べた『ドローイン』の呼吸になる。池江選手は、自然に腹圧が高まる体なのだ。このような観点からすれば、
彼女が驚異的な速さで泳げるのは当然のことかも知れない。
伏し浮きはどうも・・というならばぜひ、ぶら下がりをお勧めする。
というわけで、
水泳というのは、ストリームラインでフラットに浮かなければならない。その為には、体幹の扱い方(=肋骨の扱い方)を学習する必要があるということ。コツ(骨)をつかまずに、プルやキックを学習しても上達は知れているのだ。
私は、体幹カと言う言葉をよく使うが、筋肉を鍛えろ!と言う意味ではない。体幹の扱い方を練習するということだ。体幹を長軸方向に、背骨をまっすぐ引き伸ばせ!そして肋骨を広げ腹圧をかけよ!ということである。
それにしても体幹力という言葉、何だか腹直筋メインに体を固くするイメージが強い。なんかしっくりこない。
この際、体幹力と言わず、姿勢カと言うことにしよう。
蛇足だが、私は長年の腰痛持ちである。腹圧を入れずにクロールを泳ぐと必ず腰が痛くなる。また、ウェーブ型バタフライを泳いだ後は、翌日の仕事に支障が出るくらいである。だから、腹圧を入れてフラット型で泳ぐのだ。
日常生活も同様。
毎朝の通勤ラッシュの車内では、立ちっぱなしである。もちろん、腰が痛くなる。立ち読みも10分が限界だ。しかし、ここしばらく、腹圧を意識するようになってからは、腰痛も起こらなくなった。腹圧の効能その2である。
ともかく、伸び(ストリームライン=伏し浮き)がどれほどの意味を持つのか・・今一度水泳の基本を根本から考え直したほうがいいだろう。
では、意外と知られていない効能その3。
腹圧の抜けた状態とは、体が緩むことを意味する。体がゆるむと皮膚の表面抵抗が増加する。体というものは、締まっていないと筋肉がゆれ動き、皮膚もたるんでなびく。このまま泳ぐと、接している水も動きだすのだ。これが想像以上に抵抗になる。
ここでよく出てくる、体を締めるとはとういうこと?
それは・・何度も言うが、伸びをしろ!ということ。
手先足先方向に体を伸ばすことだ。つまり、肩をすぼめ、肋骨を広げ、お腹を伸ばす、ストリームラインの姿勢をとることだ。
へ?さっきの説明では・・つまり腹圧を入れるってこと?お腹を絞るってこと?
正解!絞る(締める)理由は簡単だ。お腹が出ていれば断面積が増え抵抗になるからだ。見た目に凹んでいたほうがいいに決まっている。そして・・柔らかいお腹は皮膚も肉もなびく為、余計締める必要がある。
体幹を締める=体を伸ばす
水泳で言う体幹には、胸部と腹部とがある。以下、専門家も誤るポイントであるが・・
体幹を締めるとは、正確に言うと胸郭(肋骨)を広げ、下腹部を締めるということである。
特に誤解されやすいのが肋骨の扱いだ。とある記事に、腹圧を入れるには『肋骨を締める』とある。つまり、肋骨を下げる方向に力を入れよ!体を固めよ!ということだが・・(誤った)腹圧を入れたままどうやって呼吸するのであろうか?
胸部と腹部両方とも締めてしまうと、ガチガチに緊張してしまい、浮けるのも浮けない。ふしうきはリラックスすることだとよく言われないだろうか?
そしてスイムではよく前へ前へ!伸びろ!とも言われないだろうか?それは、肋骨を広げるという意味でもある。
緊張して、腹直筋に力を入れると肋骨が下がる。体は縮むわけだ。すると、見事なくらい足から沈む。
まとめ
体を締める=体が伸びる→あはらを広げる外肋間筋と横隔膜、そしてお腹を絞る腹横筋がメイン
体を固める=体が縮む→あばらを下げる内肋間筋と腹直筋がメイン
体を『締める』『縮める』『固める』。言葉の違いを明確にしないととても誤りやすい。
さて・・体が緊張すると余計に皮膚がたるむのだ。
ん?
試しに座ったまま何もしないでお腹の肉をつまんでみてほしい。必ず皮膚をつまむことが出来るだろう。では、姿勢を正してみる。少しつまみにくくなる。さらに大きく吸って肋骨を広げてみる。さらにつまめなくなるはずだ。
いや、つまめるよ!
ならば、次は直立して姿勢を正して大きく息を吸い、肋骨を広げてみよう。お腹が引き伸ばされて、もうつまめないはずだ。これがストリームライン時の皮膚の状腹だ。
次に、腹直筋に力を入れ、肋骨を下げてみる。皮膚が少しつまめるだろう。そのまま息を吐ききってみると・・簡単につまめるようになる。
これで納得したのではないだろうか?
肋骨を広げて腹圧を入れるというのは、お腹の断面積を少なくするのみならず、
皮膚のたるみも取っているのである。
冒頭の話に戻そう。腹圧の抜ける息継ぎは、素早く完了させ、すぐストリームラインでお腹を締めたほうがよい。
お腹を締めるには肋骨を広げることだと述べた。アウトスカルで胸を張るというのは、肋骨をもっと広げろ!ということである。こうすることにより、手先がより前方へ伸びて体重がかかるようになる。これは同時に、手先からお腹までの皮膚をたるみなく引き伸ばし摩擦抵抗をおさえているのである。このことはバタフライでも同様。
ここで注意すべき点を上げる。先程の実験のように、息を吐き続けると、浮力が弱まるのみならず、肋骨も下がり腹圧が抜け、お腹の皮膚がたるむのだ。平泳ぎのストロークで、プルしてしまうと、さらに肋骨を下げることになる。
ついでに!
クロールで、フィニッシュ時押しきると、これもまた肋骨が下がるほうへ(腹直筋に)力が入り、余計に皮膚がたるむのである。
押しきることはデメリットでしかないことを改めて強調したい。
蛇足だが、レースの水中映像で、その選手が調子がいいか悪いかどうかがわかる。その判断は呼吸で見る。水中で止めているか、吐き誠けているか、どれだけ息が漏れているか・・等で調子がわかる。もちろん止めている局面が長ければ、腹圧がしっかりかかっている証拠だ。
今年夏、世界水泳で金メダルを期待された、入江選手の200m決勝について述べてみたい。(私は、入江選手をとてもひいきにしている)なぜこの実例を取り上げるかと言えば、今回のレースで腹圧がいかに重要であるかがよくわかったからである。
~決勝レースでは、入江選手の調子が良くないことはすぐに判った。ターン後のバサロキックで、多量の息が漏れていたのだ。当然腹圧は抜ける。あそこまで漏れることは、過去のレースでは私の記憶にはない。調子のいい時の彼は、伸び伸びとリラックスした大きなストロークで、うっとりさせられたものだ。ところが今回は・・明らかに力んでいた。無駄に筋力を使うものだから、息も上がる。当然肋骨も下げて多量に吐き出さなければ苦しくなる。おそらくスイム中も深い呼吸になっていただろう。そのたびに腹圧が抜けて軸がブレる。当然泳速は落ちてゆく。それを必死で挽回しようと、プッシュに頼った泳ぎで、余計に酸素消費量がアップし・・悪循環だった。~
最近の彼が結果を出せないのは、もっと根本がありそうだ。ここからは、私の私見であるが、筋トレによる肉体改造が主因ではないかと考える。幻の世界新記録を打ち立てた頃の彼は、とても華奢で体がよく締まっていた。ところが現在の彼は、腹直筋が割れた逞しい体になっている。しかし・・それが彼の専売特許である伸びのある泳ぎを奪ってしまったようだ・・。体を伸ばす(締める)ではなく、縮めて(固めて)しまったのだ。本来、肋骨を広げてお腹を伸ばさなければならないものだが、彼の泳ぎは、腹直筋が強く働くため、肋骨が下がる方へとシフトしてしまったのだ。つまり、より胸式呼吸になってしまった(→補足参照)のだ・・。その為に息がより強く漏れ出すのではないだろうか?
昔の彼のように、肋骨を広げ、伸びをしっかりとれば腹圧のかかった腹式呼吸が行えるのではないだろうか?筋肉を鍛えてお腹を固くせず、肋骨を広げやすい柔軟なお腹を取り戻すことが先決のように感じる。皆さんは、このことについてどう思っているであろうか?
話が長くなってしまったが、
呼吸という視点から、レースを見るのもまた面白いものだ。
というわけで、息を吸ったら、肋骨を広げたまま、必ず止める(腹圧を入れる)。これが4泳法に共通する抵抗削減のキモである。
[補足]競泳の場合、酸素消費量が多い為、腹式だけでは間に合わない。肋骨も下げて(胸式も加えて)、強く吐ききる。よく誤解されるが、競泳は純粋な胸式ではないことに注意されたい。正確には、胸腹両式である。あくまでお腹を絞って(腹圧を入れて)、さらに吐ききれば肋骨も勝手に下がるだけのことである。
6 メイン推進力
ここでいきなり問題。
よく進む平泳ぎの基本は、水上滞在時間を短くし、水面下でフラットな姿勢を出来るだけ長くとることだ。そして惰性の力でグライドする。
では、速く泳ぐ為に何が必要か?
強いキックでしょ?キック後が一番推進力が出るし。キックして惰性のカでグライドするんだ。
実は、惰性のカは、キックよりも手前ですでに働いている。
速く進むには?その答えは、素早いリカバリーだ。よく進む平泳ぎのリカバリーは、文字どおり水中へ突き刺すのである。平泳ぎの選手を見れば明らかだろう。これに後押しする形でキックを入れるのだ。つまり、手と足のタイミングは同時に行わない。
あなたは次のような疑問を抱えていないだううか?
ストリームラインという基本は出来ている。キックも申し分ない。タイミングも合っている・・はず。でもなぜか逮くならない・・。
タイミング・・よく教本には、かいて蹴ると書かれていることが多いが、とてもやっかいである。この表現は間違いではないが、聞く人によって全然違った解釈をする。私が素直にやると、リカバリーしながら(前に伸ばしながら)蹴ることになる。ゆっくり泳ぐにはこのタイミングでもよいが、速く泳ぐには伸 ば し て か ら 蹴るのが正解である。ここが、よく混同されるところだ。平泳ぎを速く泳ぐには、キックよりも先に、素早く手を前に伸ばす必要がある。ストロークが終わってから、つまり、上半身がストリームラインになってからキックするのだ。
人間は、本能で手足を同時に曲げ伸ばしするのが得意だ。しかしこれでは、全くといっていいほど前に進まない。タイミングをずらすには、キックを遅らせるか、リカバリーを早めるかのどちらかである。しかし、キック自体は本能でどうしても遅らせるのは難しい。だから素早くリカバリーする必要がある。そして・・この素早いリカバリー動作そのものが惰性のカを生み出すのだ。クロールの入水と全く同じだ。
実は、この素早いリカバリーこそが、私のメイン推進力となっているのだ。平キックの苦手な人こそ、この素早いリカバリーを極めたい。
リカバリーはだらだらやるものではない。このことはしっかり頭に叩き込んでほしい。
では・・
その素早いリカバリーであるが、これを実現する秘策があることは意外と知られていない。せっかくなので紹介したい。
皆さんは外科医ポーズをご存知だろうか?よくドラマでも見るが、手術医がオペ直前、手ぶくろをしてから、肘を落とし手の平をやや顔に向けるあの構えだ。あれをやるのはなぜだろう?細菌感染予防の為に、余計な物をさわらないようにしているんでしょ?正解!しかし、もっと重要な意味がある。実はこのポジションが最もリラックス出来るのだ。これは医療テクニックの一例である。リラックスの秘密は、外旋回外にある。※回外というより、回内回外中間位。要は力を入れない状態。
逆に回内させると全ての筋肉が締まり力が入りやすくなる。具体的には、肩甲骨が挙上し、肘が伸び腕会体が内側へ捻れた状熊だ。
手の平の動きは、筋膜を介し、肩に間接的に影響を与える。手の平が下を向くと(前腕の回内)肩は緊張し、逆に上に向けると(前腕の回外)肩も緩むのだ。ご存知のとおり手術は、回内した緊張し状態が長時間続くわけである。この緊張を少しでも和らげる為に意図的に外科医ポーズをとるのだ。
もちろん、デスクワークも回内したままだから肩がこる。手の平を上にし、休ませることによって肩こりもラクになる。
このポーズは平泳ぎの息つぎ、つまりリカバリー直前の形でもある。なぜこのような話をしたかというと、
筋肉というのは、緩んだ状態が最もパワーが出るからだ。平泳ぎのリカバリーは、瞬間に突き刺す動作つまり、最も力を要する。その準備として筋肉を緩めるのだ。これをタメと呼ぶ。では突き刺し方だが、肩をすくめながら手の平を下に向けてななめ前方へ伸ばす。すると、タメておいた分一瞬で伸びる。
例えば、空手は引き手を必ず回外(手の平を上に)して構える。そして回内しながら突く。手の平は当然下になる。(10記事動画参照)ボクシングのストレートバンチも同様。野球の投球も。サッカーのスローインや、バスケのシュートも。
そして・・実はクロールも同じなのだ・・
ローリングするから気付きにくいが、片手でちゃんとゆるのポジション=サメのボーズを取り、回内内旋しながら水中へ伸ばされる。
回外外旋(ゆる)と回内内旋(しめ)のメリハリが大切なのである。
要は、腕を伸ばす時、リラックスした状態から腕を内側へ捻ればいいのである。
さらに脱線するが・
人間のDNAには、動物的な動きと人間的な動きの両方が刻まれている。前者は以前に紹介した広背筋で引く動作(体幹意識)。後者は、物を投げるあるいは突く動作(末端意識)だ。太古の昔、人類は槍や石を獲物に投げて狩リをした。その投げる(視線の方向に伸ばす)という行為は、二足歩行の人間ならではの本能である。標的を定め、そこに正破に投げるという能力が優れている。先ほと出てきたATNRもそうだ。この能力があったから人類は生きのびれたわけだ。その投げる(突く)動作は、必ず腕を内側へ捻るようDNAレベルでプログラムされているのだ。これが進化したのが野球の投球である。
だから、勢いがつき惰性の力が生ずる。
惰性の力。
私がこの事に気付いたのは平泳ぎ(のストローク)を練習したからなのだった。まさに空手の突きそのものなのだ。
ちょっと待って!空手でさ、突く時は上腕が外旋で前腕が回内って言われてない?
確かに言われてるね。しかし、あなたは上腕と前腕を逆にひねる事できる?私は無理だよ。
なぜ上腕外旋と言われるんだろう?それは肩が浮かないように、固定する為だよ。そうでないと怪我するし、威力出ない。でも普通の人なら、回内しようとすると上腕もつられて内旋して肩が上がってしまう。これを防ぐには、瞬間的に呼息するんだよ。ヤッ!と声に出すことだね。すると前鋸筋が収縮して肩甲骨が固定(下制)される。結果的に内旋が抑制されるにすぎない。先程も言ったように、人間の体はDNAレベルで内へ捻るようにできている。上腕を力を入れて外旋するようにはできていない。
要は、肩甲骨を下制して腕の付け根を安定させること。これが重要。外旋させるのが重要ではないんだよ。わざわざ外旋するより、呼吸と同調したほうがうまくいくよ。上腕は外旋、前腕は回内。本当に誤解を招く表現だね。
じゃあ、水泳の場合は?
グライドは必ず内旋する。そうしないとキャッチで肘が落ちるよ。それに、わざわざ外旋したら肩甲骨が前に伸びない。水泳というのは、体を伸ばすことが最も重要。そう、他のスポーツとの最大の違いがここだよ。
そして、プル時だけ広背筋によって肩甲骨は固定される。
話がずいぶん飛躍しだが、浮力による上体の上昇に合わせてインスカルすればラクに息つぎが出来る。決して力は要らない。そして、その流れを止めないよう、つかさずななめ前方へ突き刺すのである。もちろん上半身がそれを追いかけるように水中へ入っていく。キックは、上体が水面下に沈む時、後方に押す。キックは重心移動の補助だと割り切ればよいのだ。キックが苦手な人、なにもキック単独で進まないからと、悲観的になる必要はない。推進力の補助だと思えばこれで気がラクになるはずだ。
ねえ、キックについては?
残念ながら、現在の私のキックは、まだまだお手本になるような代物ではない。
現在は、股関節を緩めることが課題になっている。もちろんこれから先も練習を続けるつもりである。キックの改善が上手くいけば、改めて当記事で紹介したい。
なお、初めて行うキックについては、50記事で述べているのでそちらを参照されたい。
今回の記事を振り返ってみると、なんだか水泳の基本の話ばかりになってしまった。しかし、よくよく考えてみれば、平泳ぎというのは、水泳の基本の塊なのである。基本(伸び)が出来ているかを、試すことができる泳法とも言える。私は平泳ぎを練習するようになり、体幹の扱い=肋骨の扱いに細心の注意を払うようになった。そのおかげで、クロールがさらにラクに速く泳げるようになっている。
キックが苦手だからと、平泳ぎをあきらめなくて本当によかった。
というわけで、
固定観念に縛られなければ 平泳ぎは泳げる!
51 正真正銘のキックなしクロール
[お知らせ]
本日、読者のうえださんから、『グライドバタフライ』のとても貴重な映像を頂いた。→52記事コメント欄参照
うえださんは、つい最近まで25mしか泳げなかったそうである。より現実的な泳ぎのイメトレになると思うのでぜひ参考にされたい。
2015年3月1日、52 記事『知られざるバタフライのメカニズム』を投稿させて頂いた。しかし、私の不注意から48と49記事の間に入ってしまった・・。読者の皆さん、お手数をおかけして本当に申し訳ない。
当記事について
先日草食王子さんから、軸の安定性についてのご要望を頂いたので、項目を増やしている。また、度々で申し訳ないが、記事を追加している。あなたがまだ気付いていない事もたくさんあるはずだ。ぜひ一読を。
また、腹圧に関する記事を53記事にも追加させて頂いた。読まれた方も、再度目を通して頂きたい。より、理解度が上がると思う。
今回から、文表現を イメチェンする。実は私、目が弱く文字入力が結構大変である。なので、字数を減らす為に、ですます調は止めることにした。偉そうな印象を与えるかも知れないが、皆さんどうかご理解を。
さて・・このブログ『キックなしでもクロールは泳げる!』であるが、肝心の映像を紹介していなかったことにいまさら気が付いた。なんて鈍いのだろう・・。というわけで、キックなしクロールをお届けする。↓
クロールの推進力は上半身が8割と言われる。しかし、私のキックなしクロールを見る限り、上半身10割だ。
クロールの推進力は体幹の回転より生まれる・・。
1 姿勢カ
過去の私は、我流スイマーで6ビートクロールしか泳げなかった。バタ足はもちろん得意だった。しかし、私の隣りをハイテンポな2ビートクロールで追い抜いていくスイマーがいた・・
なんでキックを頑張らないのに速いんだろう?なんでこっちは頑張っているのに遅いんだろう?疑問を抱きながら、いつしか2ビートに憧れていった。
こんな私が、2ビートクロールを本格的にマスターしようと思いたったのが2007年の初頭。たまたま見つけた練習法がTIスイムだった。初めは独学でスケーティング、ジッパードリル等を実践した。そして・・2008年にTIスイムの船堀サロンに足を運んだが・・ショックだった。
初めて見る私の泳ぎはかなりのオーバーローリングで、体がグニャグニャした醜いクロールだった。2ビートを打っても、足がバタついていた。
船堀でのレッスンは、泳速をかなり落として行ったが、ゆっくり泳ぐととても不安定になる。
今思えば、姿勢を維持する力がなかったのである。土台(体幹)がしっかりしていなければ、いくらTIのドリルを学んでも無駄だ!
そう悟った私は・・独自に伏し浮き、サメのポーズ、そして・・キックなしクロールを実践するようになった。
そうやって士台を作り上げた上で、再びTIのドリルを実践し泳いでみた。するとどうだろう。まるで別人がそこに映っているではないか!それが2013年10月だった。そう、当ブログを立ち上げた頃だ。
TIの専売特許である『体幹の回転カ』が効いた泳ぎになっていた。
そして現在は、かつて憧れていたあのハイテンポな2ビートクロールで泳いでいる。↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm29880364
体幹の回転カを味方にするには、ブレないで泳ぐ姿勢カが必要だ。ブレない力をつけるには、キックなしクロールがとても有効である。
皆さんもキックなしで泳いでみてはいかがだろうか?足をブラさずにまっすぐ揃えで泳げるだろうか?
そして『ゆっくり』泳いでみてほしい。
キックなしでゆっくり泳げば、現在のあなたの姿勢力が判る。
初めてキックなしで泳いだあなたは、足がぐわんぐわんと大きくブレることだろう。このブレをいかに抑えるか・・。それには腹圧が関っている。
しかし、46記事で紹介した腹圧のかけ方が、どうしてもわからない人はたくさんいると思う。
2 ブレない技術
キックなしで泳ぐと、数々のことが見えてくる。
視線をプール底に向け、頭頂部を水面下に沈めると不思議なくらい体幹が安定することがわかるだろう。それは対称性緊張性頸反射が抑制され、自然に腹圧が入るからだ。
そして、グライドの手は水面に平行ではなく、ななめ前方へ伸ばしたほうが腰がよく浮くこともわかる。
また、腹圧を入れキックなしでプル動作をすると、ストレートプルがいかに合理的であるかにも気付くはずだ。S字プルを行うと、下半身が大きくぶれやすいのだ。
さらに・・最後まで押しきるフィニッシュをすると、必ず足は下がる。通常のクロールでは(キックが下半身を浮かしてくれる為)目立たないが、キックなしでは、ごまかしが効かないのである。
ついでに、前を見て背中を反らすと、腹圧が入らずお腹がぽっこり出た姿勢になる。これは体脂肪の多い女性に多いが、左右方向が安定しない為、どうしても外かき(S字プル)になる。あなたは心当たりはないだろうか?
目線が違うだけで姿勢が大きく変わり、プルの軌跡まで変化してしまうのだ・・。
前を見るとS字プルが安定する。
下を見るとストレートプルが安定する。
姿勢。そもそもクロールの姿勢とは何なのか?
それは斜めにローリングし、一方の肩を水面上に出した状態、すなわち半身(TIで言うスケーティング)だ。
私はよく、スイム最後にグライドする。これを練習すると自然に半身を体得できるようになる。↓
もう一つ重要な事を書き忘れていた。それは・・2本のレールである。
前に伸ぱす腕を、進行方向つまり、肩の延長線上にまっすぐ伸ばすことだ。
もし腕を内側に伸ぱしてしまうと軸がブレる。次のビデオを見ると頭が左右に動いているのがわかる。↓
そのセルフチェックのやり方がある。前方にある手は斜めに下げている為、視界に入るはずだ。(水面に平行に伸ばすと、手先は見えないはずである)その手先を上目使いで見る。決してアゴを上げてはならない。目だけを前方に動かすのだ。このポジションで手先が内側に入っていないか確認するのだ。
ここまで読んで疑問を抱いた人もいるだろう。入水側の腕を意識すると、プル側の手は意識出来ないんじゃないか・・?
そう、出来ないのである。肘の角度は何度、手の平の向きはどちら、S字に動かして・・などなど。
ここで質問。私のプルを観察しても無駄である。ということが解るだろうか?
え?どういうこと?
それは・・私のプルは無意識だからである。要するに、入水意識なのだ。冒頭のキックなしクロールは、入水する腕に意識を強く持っている。
それでもプル側の肘は曲がっていく。意識せずともちゃんと曲がる。なぜそれが可能なのか?それは、手先意識でかこうとしていないからである。プル側はリラックスしているのだ。
リラックスしているから肘が曲がる。
このようにビデオ分析というのは、泳者が自ら解説しないと大変な誤解を生むことになる。第三者のビデオ分析は当てにならないこともよくある。
次に、私が独自に編み出したロール角コントロール技術。
それは肩をアゴに密着させることである。(17記事参照)これを行うと格段に左右の軸の安定性が向上する。
ロール角のコントロールであるが、耳に近づけるとロール角は浅くなり、アゴ先に近づけると深くなる。
このように、肩とアゴのラインの接触部位を変えていくことにより、45°~60°の範囲に微調整が出来る。
くれぐれも、頭を肩に寄せないように。頭を動かしてしまうと、かえって軸がブレるので注意。
キックなしクロールと直接関係ないが、参考になるドリルがある。軸の切り替えを強化するジッパードリルだ。↓
これは、私が最も多用するドリルである。
このドリルのポイントは、軸を切り換えた後(体幹が回転した後)、手先から足先まで一直線になったことを感じることである。スキーをやった事のある人は、スキーの板のイメージを持つといいだろう。まっすぐな板(身体)に重心を乗せ換える感じである。その感じをキープしたまま、リカバリーする。リカバリーはなるべくゆっくり行い、肘から先は脱力する。すると、指先が水面をなぞる形になる。注)必ずしも手先を完全に水面上に出す必要はない。大切なのは、背中方向に肘を引き上げるのではなく、脇を開くように外へ肘を体から離していくこと。
この様子が、水面にあるジッパーを引き上げるように見える為、ジッパードリルと呼ぶのだ。
尚、軸が安定するようになるまでは、息つぎをせず頭を動かさずに泳ぐとよい。念を押したいが、TIで言うスケーティングをマスターしてから取り組んでほしい。
初めてキックなしで泳ぐと、下半身がブレまくる。その原因は、腰が常に動いて(ローリングして)いるからだ。ブレないで泳ぐには、腰が静止している状態を保つ必要がある。
よく誤解されるが、ゆっくり泳ぐ時も、緩やかに腰を回転させではならない。腰の回転(左右軸の切り換え=スイッチ)というのは一瞬である。入水する手の速さと同じくらい速く回転させる。だから、静止する間が作れるのだ。腰が斜めに傾いて静止している時に、リカバリーを行うのである。
もう一度ジッバーの映像をご覧頂きたい。腰が回転した後、しばらく静止していることに気付くだろう。冒頭のキックなしクロールも同様だ。これがブレない秘密である。
余談だが、左右の軸の安定性は微妙に違うことを感じている人もいるだろう。どれだけ左右均等に訓練しても、完璧に同じ様に出来ないことに・・。それは左右の筋力が違うからだ。んなこと誰でもわかってるよ!
しかし、もう1つ根本の原因がある。実は、意外と知られていないが、肺の大きさが左右違うからなのである。だから、完璧に左右同一にする必要はない。私も左右のロール角は違っている。
ついでに、肺の話が出たのでもう一つ。
人間は、右呼吸が圧倒的にラクなのは、右の肺が大きいからなのだ。右肺の浮力が大きい為、右側へ体を傾けるのが容易なのである。さらに・・左の肺が小さいのは心臓があるからなのだが・・
その心臓の心尖は左に向いている。あなたは経験がないだろうか?人間は、ひどく疲れている時や妊娠している時、左を上にして横になると、とても胸が苦しくなることがある。
これも意外と知られていないが、左を上に横になるというのは、心臓が逆立ちをしているのと同じ状態だからだ。心臓にまつわる話は、後日平泳ぎの記事で紹介したい。ともかくクロールは、片側呼吸に徹する場合は、右側呼吸をお勧めする。
キックなしクロールを練習すると、本当のフォームとは何か?がわかる。
3 プルブイ
ここで私からの提案。それは、プルブイの有効活用。
水泳選手はごく当たり前にプルブイを使う。なぜ一般の皆さんは使わないのだろうか?特にトライアスロンが目的であれば、なおさらプルブイは必要だ。なぜなら、プールは海に比べ下半身が沈みやすいからだ。海で泳ぐ状況に近づけて泳ぐことが大切になる。プルブイなしでブールで練習すると、いざ海に出た途端、身体感覚の違いに戸惑ってしまう。
プルブイの利点、それは必然的に足を閉じる為、足をまっすぐ揃える良いクセが身に付くことだ。
そこで、私のもう一つのおススメは・・プルブイを挟んでキックありで泳ぐこと。幅の狭い2ビートキックが出来るようになることは間違いない。私はプルブイのおかげで股を閉じたキックが出来るようになった。
2つ目。
足が沈む人は、最初はプルブイを使って練習したほうがいい。下半身を浮かしたらどんな感覚なのかを知る必要がある。
また、プルブイを挟んだほうが、無駄な緊張が取れよりストロークに集中出来る。
初級者は、プルブイなしで泳ぐと、どうしても足が沈む為、無駄なキックを打つ。そのキックを習慣にすると、なかなか改善しないのは言うまでもない。
しかし・・
プルブイを挟むと下半身がフラつく。
そこで、そのフラつきを早い段階から抑える訓練(具体的には腹圧を入れる)をすれば、近い将来きれいな2ビートをマスター出来るだろう。
そもそも水泳の練習は・・
本当の身体の扱い方は、リラックスした状態から学習すべきである。そりゃ最初のうちはプルブイを外した途端に沈むだろう。
皆さんは幼い頃、よく補助輪つけて自転車に乗った記憶はないだろうか?
あれは、恐怖心を払拭し、通常の自転車と全く同じ感覚で学習出来る。初めのうちはぎこちないが、日が経つにつれ、いつのまにか外しても乗ることが出来ただろう。
プルブイも同じである。足が沈む焦りから開放され、自然な形でスイムに導いてくれる。そして・・日が経つと、いつのまにかキックなしで泳げるようになる。なぜなら、ストロークに意識が向き、頭と体で試行錯誤するからだ。私はそうやって学習したのだ。
さて・・
ほとんどの人は自分の泳ぎを、ビデオで直接見たことがないと思う。ではどうやって現在の足の浮き具合を知れば良いだろうか?それは第3者に見てもらうことだ。1人ではとても無理である。しかし、なかなか人に頼めない人も多いだろう。独学で練習するのであれば、プルブイありとプルブイなしを交互に練習することをお勧めする。別に、スイムに限ったことではない。ふし浮きや各種ドリルでも活用してほしい。
これは私の自論だが、
水泳も『理想の正しいバランス感覚』をまず体感させることからスタートすべきではないか?ここが抜けてしまっているから、いつまでも上達しないんじゃないかな?なにしろ、『正しい』感覚を知らないのだから・・。それを知っていれば、現在の自分がどれだけ上違したかもわかる。お手本を見るだけでなく、お手本を体感すること。そしてフィードバックすること。
独学の場合、体で比較する物差しがないと、いったいどうなっているのかさっぱりわからない。足がどんなに沈んでいても気付けない。これでいいと思ってしまう。こういう人達が初めてビデオで自分の姿を見た時、必ずえ~?こんなに沈んでいたなんて・・と絶句することになる。
なにより大切なのは、 現在のあなた自身の姿勢を知ることである。
そして、姿勢カを身に付け、足をまっすぐ浮かせ静止させること。
足が沈んでじたばたしている限り、本当の泳ぎには永遠に辿り着けない。
今時のプルブイはカッコいいのだ!
皆さんも選手のつもりでぜひ活用してみてほしい。
注)ここで誤解のないよう付け足すが、プルブイにどっぷり頼るという意味ではない。プルブイはあくまで補助だ。プルプイを挟んでさあ安心!では意味がない。よく誤解している人を見かけるが(腹圧を入れず足をブラブラさせている)、プルブイを外したところで足は沈むだろう。足をブラさずいかにまっすぐにキープするか、この努力なしにフラットな姿勢は身に付かない。あなたは将来、プルブイをずっと狭んで泳ぐのであれば努力は要らないが。
4 板キック
私の体脂肪率は10%だ。過去の私は、キックなしクロールはプルブイがないと出来なかった。ではなぜ浮くことができるのか?
それは伏浮きやサメのポーズやキックなしクロール等、浮く練習をひたすらやっていたからだ。誰よりも多く練習した。この練習量だけは誰にも負けない。
実は私、前述のようにプルブイを挟んで練習した時期がある。
なぜ?それは皆さんと同じく足が沈むから。そして・・今でもキックなしクロールをよく練習している。プルブイあり、なし交互に。そして今では・・キックなしクロールそのものが私にとって浮く練習になっている。
ところが周りを見ると、伏浮き等、浮く練習をするスイマーはほとんど見かけない・・。
逆に板キックをしているスイマーはよく見る。そして、板キック後は即スイムだ。
キックを頑張ってスイム?
なんだ文句あるか!キックで浮かすんだよ!
しかし、私には到底考えられない。なぜなら力むことを練習することになるから。
じゃあなぜ学生さんや一流選手は板キックをしてるんだい?
それは推進力をキックからも得て、より速く泳ぐ為。
ここで誤解してはならないことを指摘しよう。クロールの推進力はあくまで上半身から生み出される。私のキックなしクロールを見れば明らかだ。そして、残り2割はキックから。というより、上半身10割プラスαでキックなのだ。
板キックの目的をもう一つ。それは心肺機能の強化である。キックをやると息がかなり上がる。
下肢は酸素消費量が圧倒的に多いのである。
これを逆手にとって練習するのだ。なぜ思いっきりバシャバシャやるのか?これで納得だろう。
そもそも、ラクに泳ぎたい!のラクとは、どういうことなのだろうか?それは・・無駄な力みのない、無駄な動きのない状態つまり、酸素消費量を抑えた状態なのである。
すなわち
究極のラクとは、息が上がらない状態なのだ!
そこが理解出来ていれば、キックはなるべく打たないほうがいいことがわかるだろう。その意味で2ビートなのだ。だからキックなしを勧めるのである。(22記事と動画参照)
ラクを追求するのであれば、板キックをする必要はない。選手として大会にでも出ない限り。
キックで推進力を得るものではない。
キックで下半身を浮かすものでもない。
キックに頼ってばかりいては、いつまでもラクにはならないのだ。
ラクに泳ぎたい!のであれば、浮く練習をもっともっともっと増やすべきである。
じゃあ具体的にどうすればいいんだ!オレはキックも必要なんだ!浮く練習してるヒマはないんだ!
いや、ある。意外なところに・・あなたは気付いていないだけだ。
今、手にしているビート板を使わないでキック練習すればいい。
伏し浮きでキックをすればいいのである。
このほうが腹圧も学習出来る。
なぜ?
前述した対称性緊張性頸反射。
実は、頭を上げて板キックをすると腹圧がかからない。はい?お腹に力入るよ?
それは間違った力の入れ方だ。腹圧というのは、腹筋に力を入れお腹全体を固めることではない。さらに、呼吸をしたままでは腹圧はかからないのである。背筋ばかりが緊張する。
水泳の基本であるドローイン腹圧は、アゴを引いた状態つまり、伏し浮きで息を止めて行うぺきなのだ。このことを理解していない指導者が大変多いことに疑問を抱く。
私が板キックを勧めない本当の理由はここにある。
さらに・・
大人のスイマーの中には、腕をまっすぐ頭上に上げられない人もいるだろう。そのような人が板キックをすると、必ず下半身が下がる。その為、膝を大きく曲げ伸ばしするクセがついてしまう。このような観点からも、ふしうき姿勢でキックすることをお勧めする。むろん、手先を水面にキープする必要は全くなく、ななめ前方に伸ばせる範囲で構わない。
もう一度考えてみたい。ふし浮きは何の為に練習するのだろうか??
それは・・抵抗の少ない姿勢を作る為だ。
本気で速く泳ぐには、筋力で推進力を増やすか、抵抗を削減するかである。私達大人は、筋力はどうしても低下していく。ならば、基本中の基本であるふし浮きを極めてみてはいかがだろうか?
足を浮かせる練習、すなわちふし浮きとは、腹圧の練習なのだ。
あなたは、腹圧を入れる練習量が全然足りていないのである。私も最初は腹圧のかけ方がわからなかった。しかし、くり返しふし浮きをするうちに出来るようになった。
その理由は、腹圧により
内蔵が前に移動したからなのだ!
体の内部で重心が前に移動したのだ。
内蔵が移動するには時間を要する。一朝一夕で変化するものではない。
※腹圧のヒントは46記事をご覧頂きたい。
人間は、くり返せばくり返す程、足が浮く体質になってゆくのである。
だから伏し浮きをする。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm26270748
補足!!
伏し浮きをする時は、大きく息を吸って必ず 止 め る こと!
水中で息を吐くと確実に足から沈んでいく。まさか伏し浮きで息を吐く人がいるとは・・私はここまで想定していなかった。
また、足が沈みやすい人は、面かぶり(ノーブレ)のクロールも息を必ず止めること!苦しくなったら立てばいい。
私がなぜキックなしで足が沈まないのか?
それは・・水中で息を止めるからなのだ!
私にとって、あまりにも当たり前すぎて補足すら忘れてしまっていた・・本当に申し分けない。
ラクに泳ぎたい!その気もちはよくわかる。だから、厳しいことを言うようであるが、後々ラクをする為に今、苦労すること。究極のラクを手に入れるには、浮く練習をくり返すのみ。天才でもない限り、くり返す以外に道はないのである。
体を使う(スポーツ全般に言える)ということは、脳と筋肉を繋ぐ神経の伝達を強化する作業だ。単純作業のくり返しなのだ。
伏し浮きの練習し始めは、なかなか効果を実感出来ないかも知れない。いや、実感出来なくてもいい。なにより大切なのは、実践することだから。 私など、伏し浮きが完璧に出来るまで5年かかっている。
とにかくやってみる。続けてみる。そうこうしているうちに必ず出来るようになる!私がそれを実証しているのだから。
今年最後のシメに、私の座右の銘であるこの言葉を贈りたい。
継続の天才になれ!
50 平泳ぎのキックについて
平泳ぎのストローク、タイミングについては、53記事で紹介しています。
私は、平泳ぎのキックがとても苦手です。 その理由は、すねの骨(脛骨)が一般の人より内側に捻れている為、つま先が外を向きにくいからです。また、股関節の内旋域もかなり狭いこともあります(逆に外旋域はかなりある)。
こういった身体的特徴の為、常識通りに練習しても、キックがなかなか出来るようにならなかった。あげくの果てには・・身体のせいにして平泳ぎを全く泳がなかった。
しかし、あることがきっかけで、急に平泳ぎが出来るようになった。その秘訣はどこにあるのか・・?
というわけで、今回は平キックが苦手な人の為に解説してみます。
平泳ぎはもともと、古くから親しまれている泳法で、自己流の方が大変多いのが特徴です。その為、誤解が最も多いのが平キックです。過去の私がそうだった。皆さんは果たして、平泳ぎのキックを本当に理解していますか?
さて・・
平泳ぎのキックには、ウェッジとウィップの2タイプがあると言われている。そして、初心者はウエッジで、膝や足首が柔らかい人や上級者はウィップと説明されている。私は、この常識にとても疑問を持ちます。だいたい平キックを、上記の2タイプに分けていること自体ナンセンスではないか?
1 いわゆるウェッジキック
かなり音からあるタイプ。市民レベルでは最もポピュラーなキックですね。自己流で泳いでいる人はほとんどこのタイプです。
外側に向かってけり出すキック。足が伸ぴきったところで股を閉じて両足を揃える。推進力は主に挟み込みによって得られる。見た目は、足全体が大きく股を広げて回っている。平面的な動きです。
だから、平泳ぎと呼ばれたんですね。
動作は必然的にゆっくりになります。けり出してから、足が揃うまで時間を要する。
昔の平泳ぎは、もともと速く泳ぐためのものではなかったことが起因です。
それなのに・・無理やりこの動きで速く泳ごうとする人がいます。外側にけり出し股を閉じると・・股関節に多大な負荷がかかる。勢いよく蹴ると、必ず股が痛くなります。そのわりに、ちっとも速くならない。それは抵抗が大きいからです。
また、外側に向かって蹴り出す為、運が悪いと隣の人に直撃します。狭いプールや、海で混雑した状況ではとても危険!
私は何度も蹴られました・・。
2 いわゆるウィップキック
これは現在競泳選手が用いるキック。膝を捻ることなく直線的に、水を後ろに押します。
えっ?膝を捻って膝から下だけを回すのがウィップじゃ・・?いいえ、それは誤りです。
確かに水中ビデオを見れば膝から下が回っているように見えます。が、ここが大きな落とし穴。
ウィップは膝を捻りながら蹴っているわけではない!
もっとつけ根(股関節)から捻っています!
膝を痛める人は、股関節をうまく使えていないからです!
解剖運動学を学べばすぐ解ることですが、膝から下を回す動きには、股関節の内旋外旋が組み合っています。股関節が柔らかければ膝を捻らなくとも膝から下は回ります。
具体的には、足の引きつけ(股は軽く外旋している)後、股関節を内へ捻りながら閉じるんです(内旋しながら内転する)。もっとわかりやすく言えば、引きつけた後、両かかとを離して(ウイングして)真後ろへ押す。股をしめるような感じです。すると膝下が回ります。
あくまで、しめるのは押すときのみ。引きつけ時からしめると膝幅が極端に狭くなり、膝を壊します。
というわけで、膝の柔軟性はさほど必要ではないんです。
そのかわり、股関節の柔軟性を高めよ!
以上、ウエッジとウィップの違いをハッキリさせてみましたが・・
では、私のした事とは・・?
3 直線的に後ろに押す
平キックのスタートポジションは、両足をまっすぐ伸ばして揃えた状態(ストリームライン)。
引きつける時は股関節と膝と足首を緩める。すると軽く股が開く。膝幅は肩幅以内に収まる。
引きつけ終了時、足首をしっかり曲げる。
すると自然に、足のうらは後方を向いてハの字につま先が外を向く。
そこから、まっすぐ後ろに押す。(ストリームラインに戻る)
たったこれだけです。膝から下を回そうと考えない。
昔のことですが、膝下を回そうと、股を開いて外へ蹴る人がいた。無知な私です。ウェッジキックをなめらに行うイメージだったんですが、うまくいかなかった。それは意図的に回していたからなんですね。昔の私は、平キックというのは、回して蹴るものだと思い込んでいた。しかし、股関節が硬い為うまく回らない。回せないから平泳ぎをあきらめた・・
回さなくていいんです!股関節が硬いなら、
直線的に後ろに押す!
私は、これがきっかけで急に平キックが出来るようになったんですね。
あなたも無理に回そうとしていませんか?
一方股関節が柔らかい人は・・回したほうがもっと推進力を増加させることが出来ます。しかし、勘違いしないでほしい。本当の回し方は、股をしめながら後ろへ押すんです。すると結果的に膝下が回るんです。
※平キックというのは、初めから膝下を回そうと意識するとうまくいきません。まずは直線的に後ろへ押す。後ろへ押すことが体得できたら、ここで初めて股をしめるように(股関節を内転内旋する)押します。すると、選手のように膝下を回すことが出来ます。
注)膝が悪い人は、回そうと考えないほうが無難です。
以下、全ての動画は、初めて後方キックを練習した時のものです。どうぞご参考に。
1回目2回目のキックが後方キック。3回目はもろウェッジキックになっている。↓
私は、つま先が外へ開きにくい為、水の引っかかりが小さく、キック単独ではあまり進みません。しかし、心配は無用。クロールの2ビートキック同様、平泳ぎというのは、キックがメインではないからです。えっ?どういうこと?そのことは別の機会に説明しますね。
4 平泳ぎのキックは足のうらで押すもの
当たり前だ!そう言いたくなると思いますが、その当たり前な動作には秘密があります。
では、医学の目から平キックを見てみます。
人間には共同運動パターンなるものが存在する。高位脳障害でよく出現する動きです。これは原始的なつまり、本能なんですが健常者でも最大に力を発揮するには、本能を利用したほうがスムーズにパワーが出せます。
ここで言う本能とは、決まった方向に全ての関節が同時に曲がったり伸びたりすることなんです。だから、素早い対応が出来る。四足獣のように生きるか死ぬかの世界では本能なしには生きられません。犬を飼っている人は犬の足の曲げ伸ばしをしてみてください。必ず各関節が同時に動きます。
さて・・細かい説明は割愛させて頂きますが・・
わかりやすい動作として、ジャンプがあります。ジャンプ直前は必ず腰を落とし(各関節が緩み、足のうらが地面に接している)、飛び上がったら両足がまっすぐ揃います(各関節は締まり足首は伸びる)。
ジャンプは重力に逆ってするもの。だから、腰を落とすには力を抜くでしょ?力を入れて下肢を曲げないでしょ?関節を緩めてから、力を入れて伸ばすんです。ごく単純だと思いませんか?これが後方キックの正体です。
一方、外へけり出すウェッジキックは・・共同運動がバラバラです。内転動作が遅れている。外へ蹴っていては、素早いキックなど出来るはずもないんです。
効率のいい(抵抗の少ない)平キックというのは、後ろに押すキックなんです。足も自然に揃う。
ウエッジのような大きな挟み込みがない分、シンプルでとても簡単です。
※水の引っかかり感はウエッジに比べ小さくなりますが、筋肉に負担がなくとてもラクになります。
5 平キック新常識
ウィップキック(後方キック)は膝関節や足首が柔らかくないと、とても出来ませんよ!初心者にはウエッジキックがお勧めですよ!これが今までの常識でした。
しかし、そうではない!私のような、関節の硬い人でも後方キックは出来るんです!
常識に囚われ、外へ蹴り出している限り、これからもきっともがき続けるでしょう・・過去の私のように・・。
後方キックはなにも、上級者、関節の柔らかい人だけのキックではないんです!
平キックの苦手な人こそ、トップスイマーの後方キックをマネしてほしい!
というわけで、一つ私からお願いがあります。
隣を泳いでいる私を蹴ることだけは止めて下さい!
自分の体にやさしい、そして周りを泳いでいる人にもやさしい後方キックでお願いします!
これからの時代、周りの人に迷惑をかけない後方キックがスタンダードになるでしょう。後方キックが平泳ぎを泳ぐ上でのマナーとなります。
49 知られざる 水泳の呼吸
当記事では、バサロキックやギャロップクロールについても述べています。
[おことわり]
今現在ラクに呼吸出来ている人は、わざわざやり方を変える必要はありません。当記事は、従来の方法論で呼吸がラクに出来ない人、そして泳ぎをさらに追求したい!という人に参考になる内容です。
今回は、水泳の基本中の基本である呼吸について。
水泳の呼吸には、あまりにも誤解が多い為、私がこれにメスを入れていきます。
1 吐く→吸う→止める。
今現在、水泳の呼吸ほどに、統一されていないものはないでしょう。それは、水泳の目的、体格、胸郭の柔軟性、年齢、性別等により千差万別だからです。理屈がどうであれ、呼吸がラクに出来れば、それがあなたのベストな呼吸方法です。10人居れば10通りの呼吸法が存在する。しかし、いくら練習しても呼吸がラクにならない!という大人はたくさんいます。それには・・多くの指導者でさえ気付いていない根本的な問題があります。当記事では、しかるべき根拠に基づいて述べていきますが・・
その前に・・私について述べてみます。私の体脂肪率は10%を切っている。何も考えずに伏し浮きすれば、見事に足から沈みます。もちろん、キックなしクロールも同様です。
そして私は、体の持病により、激しい運動は出来ません(活性酸素を増加させない=酸素消費量を抑える必要がある為、息の上がらないラクな泳ぎを追求している)。その為、6ビートキックに頼らずに速く泳ぎたい。つまり、キックに頼らないで足を浮かす必要がある。
さて現在、抵抗削減を目的として、フラットに浮く(足を浮かせる)ことが最新の理論ですが、その為には伏し浮きを完璧に出来るょうにしたい。
では本題です。キックに頼らずに足を浮かせるには?
それは、大きく吸って(=肋骨を広げる)肺を膨らますことです。私のように足が自然に浮かない人は、肺という浮き袋を味方にするしかないんですね。その為に伏し浮きを練習する必要があるんですが・・
伏し浮きを成功させるには、水中で息を止めることです。水中で吐いてしまうと必ず足から沈みます。これはまぎれもない事実です。
キックに頼らずクロールを泳ぐ。
その大前提が大きく吸って止める。
言い換えれば
肋骨を広げて止める。
その上で必要な時に
パァッ!ハア!と
呼吸(→文字どおり“呼して吸う″)をする。そして再び止める。
つまり、呼吸以外は常時肺を膨らましておくんです。これが呼吸のベースになる。
※ ※ ※『止める』というのは、『こらえる』とは全く違う。皆さんここをよく誤解されます。53記事で述べましたが、『こらえる』行為は基本のストリームラインが出来ない(肋骨が広がらない)人によく見られます。どうしてもこらえてしまう場合、少しずつ『漏らすこと』。念を押しますが、意図して『吐く』ではありません。
そもそも、従来からなぜ『水中では止めず吐くように!』と言われるのか?それは、こらえてしまい、血圧が上がるからです。
ここで少々専門的な話を。
呼吸には、ニュートラルポジション=NP(安静時呼吸※の吐き終わりの状態)というものがある。
※安静時呼吸とは、努力を要しない無意識的な呼吸。吸気時は横隔膜が収縮し呼気時は弛緩する。
肺というものは、努力して大きく膨らましても、力を抜けばNPに戻る。また、努力して吐き切っても、これまた力を抜けばNPに戻る。これは、肺(胸郭や腹部も含める)に弾力があるからです。
※従来は後者を重要視していた。
大きく吸って止めるのは、この弾力によって肺がNPに戻ろうとする性質を利用する為です。つまり、肋骨を広げることが大前提。だ か ら、ストリームラインを練習する必要があるんですが・・。
分かり易く言うと、ゴム風船(肺)を膨らましてロ(声帯)を閉じておくんですね。そうすればロ(声帯)を開いた途端、ゴム風船は縮んで元の大きさに戻る。つまり、肺が弾力で自然に縮む。だ か ら 吐ける。そして吸う。
肋骨が広がっていれば、吐く時はなにも努力する必要がないんです。もっとわかりやすく言えば、息を『漏らす』んですね。
私の呼吸は、吐く→吸う→止める。ではなく、さらにラクな『漏らす』→吸う→止める。です。
ストリームラインやスイムで肋骨を広げられるようになれば、『吐く』が『漏らす』に変化していきます。これが理想形です。
というわけで
努力するのは吸う時です。
ただ後で述べますが、脇を開けば吸う努力も最少限にはできます。
これが 私の実践している『吐く→吸う→止める』のメカニズムです。
あなたは、壁蹴りスタートのストリームライン(けのび)を練習したことはありますか?
この行為のはじめに、大きく吸って(肋骨を広げて)止めていますか?
肋骨が下がったまま息を止めていたら、腕が前に伸びません。耳をしっかり挟んだストリームラインにならない。
ストリームラインの基本も『大きく吸って止める』。
質問!止めたら苦しいじゃん!なんで?
それは、肋骨が下がって固まっているからです。
あなたは大きく胸を広げて吸えますか?特に男性はあばらをあまり広げられないですよね?
55エピローグで述べたように、現代人は相対的に肋骨を下げる筋力が強く、逆に広げる筋力が弱っている。
日常生活で肋骨を広げることを意識していない。
その為、
肋骨を広げる筋肉(外肋間筋と横隔膜)が衰えています。
これが根底にあるから、呼吸がラクにならない。息を止めるのもラクにならない。こらえてしまう。知られざる事実。
呼吸をラクにするには、大きく吸う(あばらを広げる)筋力を強化する必要がある。
水中では水圧がかかります。つまり、肋骨を下げる方向に常にカがかかる。この為、吐くことには筋力はさほど要しない。逆に吸うことの方が筋力を要する。吸うという行為は、助骨を広げる方向に力が入ります。
吐くことよりも、吸うこと(水圧に抗うこと)の方が全然重要なんですね。
別の見方をすると、
浮力をなくす努力よりも浮力を大きくする努力が必要ということです。
ボディポジションが低い人というのは、も と も と 小 さ い 容量の(肋骨が下がっている状態)浮き袋を、さ ら に 小さくしながら(息を吐きながら)泳いでいます。
ボディポジションが高い人というのは、浮き袋の容量が 大 き い ま ま(肋骨を広げた状態)泳いでいるんですね。
しかし実際の指導では・・水中で吐ききりなさい!
とロを揃えて言います。
これは、バタ足(6ビート)が前提だからです。吐いて沈む分を、キックで浮かそうとしているんですね。
従来の水泳は、水中で吐くのが常識だった。こらえると危険だからです。また、吐かないと吸えないという理由もある。その為、ブクブクパーが当たり前だったんですね。
また、バタ足をすれば足は浮くし、姿勢も安定した。その為、腹圧という概念もなかった。つまり、伏し浮きなど出来なくとも泳げたわけです。
ただ、バタ足が出来ない人にとっては鬼門だった。ひたすら板キックをすることになり、なかなかラクに泳げるようにならなかった。従来の水泳では限界があったわけです。
これを覆したのが、伏し浮きを重視したフラット理論です。フラットに浮けばキックなど必要なくなります。
しかし・・この伏し浮き(腹圧)のメカニズムが、なかなか解明されなかったんですね。その原因は、水中で吐くという固定観念に囚われていたからです。
私は、フラットに浮くことを知った時(足が浮くようになった時)、同時に腹圧の謎が解けたんです。
伏し浮きを完璧にするには、脇の下を伸ばしながら、大きく吸って止めればいいだけのことだったんです。→詳しくは46記事で。また、53記事にも腹圧のことが書かれています。
話が脱線しましたが、
キックなしや2ビートクロールで息を吐き続けると・・見事、溺れるんです。
吐ききるというのは浮力をなくせ!ということです。
溺れて当然ですよね?
念の為ですが、この時バタ足をしていれば溺れません。
ただ、6ビートで身体を浮かそうとすると、吐ききりたくなります。なぜなら、キックを打てば酸素消費量が増加するからです。
さて・・
息を吐ききると何が起こるか?上半身は当然沈みます。その後大きく吸ったらどうなるか?当然上半身は浮いてきます。こうして身体は、上下動しだすんですね。おかしなバウンドが生じる訳です。それをするならば、ギャロップでうねったほうがまだ救いはあります。
もう1つ。
『吐ききる』というのは、肋骨を下げる筋肉を鍛えていることを意味します。
現代人は、ただでさえ肋骨を下げる筋力が強いというのに・・(腹筋は逆にかなり弱いですが。肺活量をアップするには腹筋の強化が必要)さらに肋骨を締めるだなんて・・
つまり、こらえる訓練をしているのとなんら変わりはないんですね。私には到底考えられない。
2ビートやキックなしがスタイルなのであれば、
息は吐ききらなくてもいいんです!
このことは後ほど詳しく説明しますね。
〔参考〕
この記事の『吸う』理論は、COPDの方には当てはまりません。
COPDの方の肺は、これ以上吸えない状態まで膨張しています。肺の弾力を失っている為、意識的に力を入れないと吐けないんです。その為、『吐く』が重要です。
私の知り合いのАさんも、COPDを患っています。水泳で『吐く』リハビリを兼ねてクロールを泳がれています。Аさんは吸うことは比較的ラクであり、自然に息は止められます。その為、伏し浮きが完璧でよく体が浮きます。クロールでは完全に足が浮く。バタ足も必要ないんですね。というより、換気量を大きくできない為、酸素をたくさん摂取できない。だから必然的にキックなしで泳ぎます。
Аさんの泳ぎを見ていると、本当に優雅です。本人もラクだと言われます。COPDの方は、浮き袋が健常人より大きい為、水泳ではデメリットどころか、メリットになるんですね。私は、Аさんの泳ぎからもヒントを得ています。
私たち健常人も浮き袋を大きくできたら、どんなにラクに泳げることでしょうか?
これを実証できたのが今の私です。肺の容量を大きくすること(下部肋骨を広げる=横隔膜を最大収縮すること)に見事成功しています。
私はここ数年、健康診断の胸部X緑検査では、いつも肺気腫の疑いありと診断されます。念の為、精密検査を受けましたが異常はありませんでした。
実際私のX線写真では、肋骨横隔膜角の鈍化が見られます。レントゲン検査というのは、必ず『大きく息を吸って~止めて!』と言われますよね?鈍化が見られるということは、一般人に比べ横隔膜が最大収縮していることになります。
『大きく吸って止める』。特に、『止める』ことにより、等尺性収縮が可能になり、必ず横隔膜が鍛えられます。結果、浮力が増大しラクに速く泳げるようになりました。
2 腹圧のこと
もう一つ確認したいと思います。
息を止めないと腹圧はかからないんです。
水中で吐いている間は腹圧が抜けるんですね。結果、下半身が沈むわけです。
さらに
息を完全に吐ききると、非常にお腹が固くなりますが、これを腹圧が入った状態と説明する著名な指導者がいます。これは単に、体を緊張させているだけです。
そもそも腹圧とは何ぞや?
腹圧とは、腹腔内圧のことです。腹圧は、横隔膜、骨盤底筋、腹横筋のインナーマッスル三筋同時収縮した状態で入ります。吐ききった時は、横隔膜が完全弛緩します。つまり、腹圧が完全に抜けるんですね。
信じられない!ちゃんと体幹は安定するよ?
それは、体を固めているからです。何度も言いますが、『腹圧』によって安定しているのではありません。アウターマッスルによって力ずくで固定しているだけです。肋骨とお腹両方締めたら、体が縮むだけです。
腹圧は、横隔膜も収縮しないとかかりません!!
吸気時は横隔膜は収縮する。呼気時は弛緩する。呼吸と腹圧についてまとめると、以下のようになる。
息を吸う=横隔膜が収縮→腹圧が入っていく。
息を止める=横隔膜が最大収縮→腹圧がかかる。
息を吐く=横隔膜が弛緩→腹圧が抜けていく。
※ただし、肋骨が常に広がっていることが大前提。肋骨が下がった状熊から息を吸うと、腹圧は入っていかない。なぜなら、外肋間筋と横隔膜は、同時に収縮しないからである。
あのさ、腰痛改善の目的でさ、立っている時や歩いている時にドローインするじゃんね?あれは息止めてないよね?なのに、腹圧は入ると説明されてるけど?だいたい息止めたら生活できんじゃん。
もちろん腹圧は入ります。しかし、呼吸時は圧は弱いんです。止めた時が最も圧が強くなる。
ねえ、人間はそもそも、なんで自然に腹圧をかけられないの?
その訳は・・遠い昔、人間の祖先が四足獣だった頃は、腹横筋は内蔵を支える役割をしていた。それが、直立した人間は、骨盤が内蔵を支えるようになった。その為、新たな役割(姿勢維持や呼吸)に使われるようになったんですね。
しかし、腹横筋は元来、姿勢維持と呼吸を同時にこなせる筋肉ではありません。その為、訓練しないと使いこなせないんです。腹横筋というのは、両方同時には本領発揮できない。強く深い呼吸をすれば(肋骨を上下させるほど)、それだけ腹圧はかけにくくなります。 水泳の場合は、姿勢維持を優先するならば息を止めることです。
ねえ、トイレで大便を排泄するときに、息を止めてお腹に力を入れる(こらえる)けど、あれは腹圧で出しているんでしょ?どうなの??
これは確かに腹圧で出しています。しかし、メカニズムが違います。
横隔膜の収縮力ではなく、肋骨を締めて息を止め、胸腔内圧を加担させて高めています(プレスという)。その為、血圧がかなリ上昇します。これが、水泳における誤った腹圧です。
しかし実際水泳では、ストリームラインが上手くなるまでは、どうしてもこらえてしまう。
だ か ら、『少しずつ吐きなさい!』と言われるんですね。私流に言えば、息は『漏らしてもいいよ!』ということ。決して強く吐かない。強く吐くのは吸う直前です。
『止めるな!』と言うのは、こらえるな!力むな!ということ。力まずストリームラインが維持できれば
つまり、肋骨を広げられるようになれば、自然に止めるようになります。
念の為ですが、腹圧を最大にするには肋骨(特に下部)を広げて止めることです。これが正しい腹圧です。→46記事参照
このように腹圧は、
専 門 家 でさえ理解できていない。
肋骨と横隔膜の解剖学的な関わりをよく理解しないと、誤ったことが起こります。
もう一つ。
正しい腹圧を入れるには、腹部(腰椎)を捻らず、腹横筋をコルセット状態にする必要があります。よく、腹斜筋を使え!と言う指導者がいますが、腹部を捻ると息を止めにくくなります。つまり、腹圧がかからなくなる。また、余計な筋力を使い、酸素摂取量も増加します。
というわけですが・・
正しい腹圧の理論は、ほんの一部の指導者しかまだ知らないんですね。
下のビデオでは、息継ぎ後腰が急に下がっています。速く泳ぐと、腹圧が抜けた途端に、これほどブレるわけです。↓
速く泳ぐ為には、ボディポジションを上げる必要がありますが、従来の考え方では、スカーリングによる揚力と、バタ足によって、モーターボートになることが理想的とされた。しかし、今は違います。息を止める(腹圧を入れる)ことにより、浮力でボディポジションを上げるのが最も効果的です。私の場合、息を止めるだけで、キックなしでも背中が水面上に出ます。↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm27841287
さらに・・息継ぎで、横を向いてもロが水面に出ない!という悩みはありませんか?それは、泳速が低いのに水中で息を吐いてしまうからです。泳速が低いのに水中で吐くとボディポジションが下がるんです。選手が吐ききっても沈まないのは、泳逮が上がっているからです。速く泳げない人は、吐き続けるのを止めれば息継ぎはラクになります。
そして、肋骨を広げて止めることにより、吐く→吸うは自然に出来ます。人間、苦しければ必ず呼吸します。私の呼吸は赤ちゃんと全く同じ。その為、無意識でありとてもラクです。
足 が 沈 ま な い、顔 が 沈 ま な い呼吸の基本は、水中で自然に息を止めることです!
3 呼吸のタイミング
皆さんは、ビデオをご覧になってどう感じたでしょうか?
吸うタイミングが遅い。頭の戻しも遅い。
そう、その通りです。実はこれこそが超自然なんです。
理由は、体の力の入れ方と連動するから。力を入れる(シメる)と力を抜く(ゆるめる)。→23記事参照
呼吸もそう。おなかに力を入れる時に吐き、力を抜く時に吸う。
すると・・ストロークとのコンビネーションは自然に決まる。
入水し腕を鋭く伸ばす時(プル時つまり、シメ)に吐く。つまり体幹(頭)の回転する時に吐く。リカバリー(ゆる)の時に吸う。吸ったら止める。これが超自然。体というのは、シメとゆるは必ず統一されているからです。
では・・
従来の指導では、フィニッシュ(プッシユ)で息を吸え!リカバリーアームが前に移動するより先に頭を戻せ!とよく言います。これは、力を入れる時に吸え!と解釈出来ます。少なくとも私にはそう聞こえる。
生理学的に考えると??です。なぜなら、吐いたほうがプルに力が入るからです。(吐くと言うより、お腹に力が入ることによって息が漏れるだけなんですが)
つまり、お腹に力を入れるから息が吐き出されるんですね。
もちろん、前に述べた肺の弾力も加わる為、ラクに吐ける。自然に吐けるとはこういうことです。
あのな、早めに息つぎを終えて顔をさっさと戻したほうが抵抗が少ないんだよ!
それは確かにそうです。ただし、条件があります。それは、プル前半に力を入れる(前にピークを作る)こと。後半はすでに力が抜けていることです。つまり、ハイエルボーがしっかり出来ていることを意味します。これが出来ない人は後ピークの為、どうしてもフィニッシュで力が最大に入る。どう考えてもフィニッシュでは吐いたほうがラクです。
筋トレは、息を吸いながら力を入れませんよね?必ず吐きます。
また、肋骨の動きとストロークの関係から見てみると・・全身に力を入れると(入水、プル、キックやお腹など)多かれ少なかれ肋骨は下がる。つまり肺を縮める働きが生じる。→結果として息は漏れる。そして力を抜くと(特にリカバリー動作は脇を開く動作の為、自然に肋骨が広がるから)肺は広がる。→つまり吸える。このような肋骨の動きに連動させて呼吸するわけです。
この肋骨ですが、
体ががちがちに緊張していると、肋骨が下がったまま動かなくなります。結果、横隔膜呼吸がしにくくなり、長く泳げなくなる。リラックスすることがいかに大切かなんですが・・ちなみにリラックスするというのは、胸郭を広げることを意味します。人間、怖かったり、自信がないと胸郭が萎縮するんですね。
体が緊張(縮む)していても、呼吸が苦しくなるんです。
ここで重要なことをひとつ。
クロールは、入水(肋骨は前へ動く)とプル(肋骨は後ろへ動く)は同時に行う。その為、両方に力を入れると、たがい違いに胸郭が捻れる。
これは、同時に腹部にも波及する。入水側の腹部は伸ばされ、プル側の腹部は縮むことになる。こうなると、お腹を凹ます(腹横筋を締める)ことが困難になる。
特にフィニッシュに力を入れると肋骨は余計に押し下げられ、腹部が固まってしまう。
フィニッシュは、47記事で述べたように
押しきらないこと。
その為には、プル意識を持たずに入水意識で泳ぐことです。
くり返しますが、力を入れたフィニッシュでは、自然に吸える訳がないんですね。どう考えても不自然です。
※46記事で紹介したドローインですが、スイムの呼吸時は肋骨を広げて完全に固定することは出来ません。力の入れ方により若干肋骨は上下します。同時に上腹部が膨らんだり凹んだりします。なぜなら横隔膜が動く為です。ただし、下腹部(腹横筋)は締まります。これが正しいドローイン腹式呼吸なんですね。引き締めるのは下腹部(おへそから下つまり、ズボンのベルトがかかる高さ)のみ。
腹直筋に力を入れ、お腹全体を固めるのではない!
肋骨がかなり押し下げられてしまい、上腹部までもがガチガチに固まってしまう。上腹部が緩んでいないと横隔膜が動かせなくなり、その紹果吐くこと吸うことすら出来なくなるんです。
ここで私のエピソードですが、案外知られていない事実があります。吐きなさい!の落とし穴なんですが・・
私が遭遇した人の中に、吐こうと思っても、どうしても吐けない!止めたままになっている!という人がいました。これは、よくよく考察すると、すでに吐いてしまっている状態なんですね・・。というより、始めから肺を空っぽにして泳いでいるんです。これでよく浮いていられるなと思うでしょう。それは・・体脂肪が多い為なんですね。
この人の場合、あとは、吸うだけなんですが、吐く意識しかなく、吸い忘れていたんです。止めているから苦しいというのは、文字通り吸えていないんです。
本人曰く、だって吐け吐け~!って言われるから。笑おうにも笑えない話です。また、常に全身緊張しており、肋骨を下げるほうに力を入れてるんですね。だから、自然に吸えない。
まずは、大きく吸っておくことが大前提ですよ!そうしないと吐けませんよ!するとこの人は容易に吐き、吸うことが出来ました。
ここから言えることは、肋骨を広げるように大きく吸うことをまず教える必要があるということです。
よく、水中で息を止めたまま吸えないのは、吐いていないからとよく言われます。でも中には、すでに吐いてしまって体を固めてしまっている人もいることをお忘れなく。意外と知らないことかも知れないですね。
ここでひとつ提案。
腹圧による息の吐き方を練習するには、大きな声を出してみることです。私がよくやるのは、カラオケボックスでマイクなしで歌うこと。のどを傷めずに声がよく通るようにするには、①姿勢を正し②大きく吸って③下腹部(丹田)に力を入れること。
①について・・ねこ背のままでは声は出ない。またアゴを引き過ぎても気道が狭まる。一番いいのは、みぞおちを前上方につき出すことである。むろん、肩の力は抜くこと。ちなみにこの姿勢は、バタフライの体幹の扱いに直結します。
②について・・肋骨を広げること。通常の腹式呼吸にて肋骨を下げたままだと、これまた声は出せない。
③について・・
お腹全体に力を入れて固めてはならない。のどで歌う人は固めることに慣れてしまっている。もちろん声が出ない上、とても苦しくなる。
以上、これらのことは全て水泳の呼吸に当てはまる。ぜひ参考に。
ついでに・・
現在、健康フィットネスなどで腹式呼吸の有効性が叫ばれていますが、肋骨を全く意識しない(肋骨が下がったままの)通常の方法では効果は半減します。この方法は、男性ならば普段から自然にやっています。また、ねこ背の人も同様です。
健康増進の為に行うのであれば、肋骨を広げ(肺を大きく膨らまし)た上で腹式呼吸を行うほうがより効果は上がります。このことはエピローグで詳しく述べます。
ずいぶん脱線しましたが・・
上のビデオを見ると、体幹の回転と同時に頭が回ります。腕が入水するタイミングに頭が動いていますよね?
私は入水意識で泳ぐ為、入水と同時に(顔が横に向きながら)息を吐きます。というより、力が入ると漏れていく。入水して前に伸ばす動作は力を入れる為、私にとってはちょうどいいタイミングなんです。体が回転してからリカバリーで吸います。極端な話、リカバリー(体が静止している)ならいつでも息が吸えるわけです。そしてリカバリーアームの山を見てから、手の入水と同時に顔を戻します。
私のタイミングに納得出来ない人もいるでしょう。そうであれば、柴田亜衣元選手の泳ぎをよく観察してみて下さい。彼女も私と全く同じタイミングで頭を戻しています。なぜあのハイピッチ泳法が可能なのか?それは休幹の回転に連動しているからです。ギャロップクロールもそうですね。
というわけで
私が速く泳ぐ時は、こうした体の特性に合わせている為、吐くことも意識を必要とせず、呼吸していることなど忘れているくらいナチュラルなんです。↓
余談ですが、私のダッシュを見て気付かれた方もいると思います。
ヘッドポジションですが、従来からよく言われる『髪の生え際で水を切る』というのは、スピードが上がり、上体が水面上に出るから可能なんですね。ちなみに速く泳ぐ時、水中で息を止めれば、キックを一生懸命打たなくとも必ずボディポジションは高くなります。
逆に、ゆっくり泳ぐ時は、ボディポジションが下がり、頭頂部は水面下です。それを、ムリやり前を見て頭を起こすと、うなじが緊張します。
一流選手は、ボディポジションを上げているから、わざわざ頭を上げなくてもいいんです。つまり、うなじをリラックスさせられるんですね。
なので、初級者は泳速が低い為、『髪の生え際で水を切る』は忘れて下さい。
ここで、息を止めることに異論を唱える人の為に書き加えてみます。
あなたは、25mや50m(注50mは無理せず1・2回息つぎを入れる)のノーブレダッシュをしたことはありますか?そしてダッシュ時、止めておくのと、吐き続けるのとどちらがラクか比較したことはありますか?私の答えは『止める』です。
なぜなら一旦吐き出すと、肋骨が下がり続けることに歯止めがきかず、どんどん肺から空気を逃してしまいます。結果、後半になるにつれボディポジションが下がり、抵抗が大きく感じます。もちろんムダなエネルギーを使う為、体が重くなり、疲れます。息を止めていればボディポジションが上がり(腹圧によって)体はブレなくなり、抵抗も減る為省エネでとてもラクになります。
先日池江選手が、ノーブレで50m自由形の日本記録を更新しましたね。
息継ぎというのは、どんなに上手い人でも必ず抵抗になります。彼女はその行為を止めたことにより、タイムが上がりましたが・・
皆さんは、息継ぎが抵抗になる理由をご存知でしょうか?
顔を横に動かす時の左右のブレが原因でしょ?
いいえ、私の毎回息継ぎのダッシュを見ればわかるように、ブレずに泳ぐことは可能です。横を向いたくらいでブレが生じるようでは、まだまだ改善の余地はあります。
抵抗になる根本は『吐き続ける』という行為そのものにあります。
強く吐き続けると肋骨が下がり、腹圧も同時に抜けます。その為に体が縮みボディポジションが下がります。
次のビデオでは吐いた瞬間腰が若干沈んでますよね?
http://www.nicovideo.jp/watch/sm30476938
これは一流選手であっても必ず生じる。人間の宿命と言っていい。
彼女は息を『止めて』いました。決して『吐き続けて』いません。もし吐き続けていたら、超人的な彼女でもノーブレは不可能です。記録も落ちたでしょう。
ではなぜ彼女は長く止められるのか?それは、肋骨がよく動くからです。
肋骨を広げっぱなしにする能力(腹圧を入れること)こそが彼女の最大の強みであり、このことで止息がラクになる。
ついでに・・
背泳ぎを実践しても『吐き続ける』ことが抵抗になるのが解ります。
吐き続ければ力が入りにくく姿勢も崩れます。もちろん、ボディポジションも下がります。『止息』をマスターして泳ぐと軸が安定し、力も入りやすくなることがはっきり実感できます。なにしろ背泳ぎというのは、クロールと違い顔を横に向ける行為がない。『顔を横に向けるから抵抗になる』という定説は当てはまりませんょね?
『吐き続ける』から抵抗になる。背泳きを泳げば、このことがより明確になります。
誰もが、抵抗になる理由は息継ぎの『動作』にあると思いますよね?ところが呼吸の『吐き続ける』という行為に原因があるとは誰も思いません。
くり返します。
『吐き続ける』のは抵抗を生む行為です。
これも知られざる事実。
というわけで
止めることに異論を唱えるのであればぜひ、ノーブレダッシュをしていただきたいものです。
4 換気量
先程、吐ききらなくてもいいって言っていたけど、100%出さないと酸素摂取効率悪いんじゃないの?
いいえ、それでいいんです。100%吐ききらなくてもいい。50%で十分!もし100%吐ききってしまうと、大きく吸うことになる。助骨を大きく上下させることになる(胸式)。
つまり、呼吸筋をフルに使う為に酸素をより必要とする。
呼吸筋の為に多くの酸素が必要なんです。
これが実は、呼吸が苦しくなる知られざる原因です。これこそエネルギーの無駄使いなんです。
酸素摂取効率うんぬんを言うより、酸素消費量を抑えることのほうが全然大切です。
なぜなら、酸素消費量の増加は、血圧上昇を招くからです。
話が少しそれますが・・
従来の常識で言えば、まず板キックでバタ足(連続キック=フラッターキック)を練習し、副産物として心肺機能を高める訳ですが・・特に血圧の高めな熟年者にはお勧め出来ません。
ではなぜバタ足をするのか?それはもちろん推進力を得る為ですが、それ以外にも下半身を浮かす為、上半身を安定させる為です。キックという行為を、泳ぎの土台として捉えているんですね。
しかし、私は違います。体幹(腹圧を入れたストリームライン)そのものを土台と考えています。
要は、キックでバランスを取るのか、体幹でバランスを取るのかの違いです。
さらに追求しますが・・
6ビートクロールというのは、腹圧を入れなくとも体は安定します。逆に2ビートは腹圧を入れないと安定しません。その理由は、静止する局面があるからです。キックなしクロールは常に静止状態の為、さらに腹圧を意識しないとブレまくります。
2ビートはラクそうで、実は姿勢カが必要。だから、ふしうきをしっかり訓練せねばならないんです。『腹圧を入れて浮く』努力は必要です。これをやらずにラクしようということは出来ないんですね。
話を戻しますが、私の言う『ラク』というのは、酸素消費量を抑えた状態であるんです。バタ足をすれば当然消費量は増加しますよね?
ここからが私のハッキリ言いたい事ですが、
バタ足(6ビート)は必然的に酸素消費量が増加する。以前から言うように、下肢は酸素が大量に必要なわけです。だ か ら、吐ききらないと酸素供給が間に合わないんです。だから吐ききりなさいと言うんです。
逆に、私の実践しているキックなしや2ビートは、酸素消費量は格段に少ない。省エネです。だ か ら、50%で十分なんです。
ともかく、
血圧の高めな熟年者の場合、血圧をあまり上げない省エネな2ビートをマスターし、深い呼吸ではなく、省エネの浅い呼吸でこまめにすべきです。
呼吸の為の呼吸になってしまわないように!
もう1つ。100%吐ききる意識を持つと、肋骨を完全に下げて(肺を最小化して)しまう。この状熊から急激に肋骨を広げると、自然気胸のリスクが生ずる。特に喫煙している人、肺疾患のある人、高齢者は肺の弾力が低下している為、肋骨を急激に大きく上下させるべきではない。
さらにさらに・・
100%吐ききると(肋骨を下げてお腹をしぼり出すと)血圧がかなり上昇します。
このこともエピローグで述べます。
リスクマネジメントがしっかりしていないと、大変な目に遭うことをお忘れなく。水泳で事故が起こってしまったら・・
とても笑えない話ですよね?
そして・・
水中で吐ききってしまうと、体が沈み水圧をまともに受ける為、吸うことが困難になります。そして吐いてしまっていると、ロが水上に出る前に吸いたくなる。
結果水を飲みます。
もし、足のつかないプールや海で水難事故に遭ったらどうしますか?そこまでいかなくとも、足がつったりしたらどうしますか?
泳ぎを止め、その場で浮くには息を必要以上に吐かないこと。肺の空気の浮力を確保すること。
吐いてしまえば体は沈みます。それでもあなたは、吐き続けますか?
水中で吐 き き る。
まるで都市伝説のように言われ続けているおかしな常識・・
もう、吐ききるのは止めにしませんか?
必ず水中では 止 め る んです!
※※※念の為ですが、こらえてしまうようであれば少しずつ吐いてもかまわない。
というわけで・・
今の指導法には、警鐘を鳴らしたいと思います。
[補足I〕
ちょっと待て!競泳選手は、水中で鼻から息を出しているではないか!・・これはよく誤解されますが、意識的に吐いているのではないんです。運動負荷が強い為、腹圧でどうしても息が漏れるんですね。ちなみに私は運動負荷が低い為、息は漏れることはないんです。
止めろったって、吐くヒマがないじゃないか!一瞬でどうやって吐くんだい?
前述のように競泳選手は腹圧を使って吐き出しています。腹圧を入れていれば瞬時に吐いて吸うことは可能です。 あくまで吐く→吸うはワンセットです。
〔補足2〕
泳速の遅い初級者は、ボディーポジションが下がる為、水中で止めることをお勧めします。私は、ゆっくり泳ぎでは少しずつ吐くと必ずボディポジションが下がります。息継ぎしようにも顔が水面に出ない為、水を飲みます。それがイヤで頭を起こしてしまう。これ、結構ありがちな現象です。
じゃあ、泳速が上がっている時は止めるのは必須ではない。なぜならボディーポジションが上がるから。と言いたいところですが・・しかし、止めないと腹圧がかからなくなる。最近の水中映像は画質もよくなり、選手の息づかいも細かく確認できるようになりました。よく観察すると、水中で止めている選手は意外と多いことに気づきます。ただし、中には止める理由が少し違う人もいます。競泳ではよく肋骨を下げ腹筋を固めて(プレスと言う)泳ぐ選手がいます。酸素摂取効率を高めるのが狙いです。これは腹圧とよく誤解されますが、一般の大人のスイマーは真似しないほうが得策です。あくまで水面に浮く為の正しい腹圧(46記事参照)を入れるようにします。
〔補足3〕
初級者が苦しい!というのは、水中で息を止めてしまい、吐けていないからというのがあります。こういう方にこそ、止めるをベースに『吐く→吸う→止める』を徹底させるべきだと思います。息を止められるというのは、実は長所です。長所を否定せず活かしたほうがいい。
また、苦しい根本の理由は、呼吸回数にあることが多い。4かきに1回の人がそう。こういう人は、毎時呼吸に切り変えてみてはいかがでしょうか?この場合は止めている時間はほんのわずかです。止めた所ですぐ吐きます。上違し、省エネになるにつれ、3かきや、4かきに一回の呼吸をするのも良いですね。
追記
息を吸う時、大きくロを開けると必ずうなじが緊張する。
先程の過去の動画を見ると、ロを大きく開けています。その為、うなじが縮まっています。短い距離なら気付きませんが、長距離を泳ぐと首が凝ってくるんですね。これは最近気付いたのですが、ロを開けるというのは、力を入れて開けるのではなく、アゴのカを抜くだけで十分なんです。
ええ?これじゃたくさん吸えないじゃん!
そう、少ししか吸えません。しかし、前述のように50%で十分です。
いやそうじゃなくて、気道が狭くて全く吸えないの!だから大きく開けるんでしょうが!
実は、気道が狭くなる根本は(私もそうですが)猫背にあります。胸椎が後湾しているとそうなる。このことから、背骨の真っ直ぐなストリームラインがいかに大切なのかが改めてよくわかります。正しい姿勢ができていればロを大きく開けなくても吸えます。
普段から猫背の人は、水泳中も猫背になる。私もそう。だから、余計にストリームラインを意識する必要がある。一つ実験してみます。
まず万歳しながら、目一杯大きく息を吸っておく。
①息を止めたままお辞儀する。
②息を吐きながらお辞儀をする。
さあ、とちらがお辞儀しにくいでしょうか?
もちろん①ですよね?
お辞儀しにくいということは、それだけ体幹の自由度が制限されているわけです。裏を返せば、ぐらつかず安定するわけですね。これが腹圧の入った状態です。
くり返し言いましたが、
大きく吸って止める。
重要なのは、
『肋骨を広げる』こと。
これで背骨はまっすぐになる。もちろんねこ背が改善される。
ちなみに、猫背を助長する行為があります。何だと思いますか?
実は、『吐ききる』ことです。吐ききると、お腹を凹ますどころか、みぞおちまで凹み、体がまるくなります。
つまり、吐ききると体が縮む。それは、呼息筋である腹直筋と、肋骨を下げる内肋間筋が強く収縮するからです。
水泳のストリームラインは、体を伸ばす行為です。体を縮める行為ではありません。
背伸び、ぶら下がりもそうですが、
大きく吸えば体は伸びます。
それは、吸息筋である斜角筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋上部そして、肋骨を広げる外肋間筋が収縮するから。もちろんこの筋群は、伸びをする時に働きます。
つまり、体を伸ばすには、吸う方へカを入れる訳です。決して吐く方へ力は入れません。あなたは、このことを本当に理解しているでしょうか?
吐ききるというのは、胸椎が崩れるということです。すると・・うなじが縮む。そして緊張する。だから、その後ロを大きく開けないと吸えない。
よく、息が苦しくなるのは、吐ききってないからだと言われます。私はむしろ逆だと思います。
吐ききるとみぞおちが凹む。それを復元しようと大きくロを開けて吸う。するとアゴが上がる。もちろんうなじが緊張し、その結果全身に余計な力が波及する。体が縮こまって姿勢の崩れた泳ぎになる。足も沈む。扱抗が増え、ますます酸素消費量が増加し苦しくなる。こうして、負のスパイラルが完成するんですね。
ちなみに、抵抗の少ない姿勢というのは、背骨が(うなじと胸椎が)よく伸びている状態です。 つまり、体幹は『締まっている』んですね。※締めると縮めるは違う。→53記事知られざる腹圧参照
あなたはこんな悩みを抱えていませんか?
はじめはリラックスしていても・・長く泳ぐとだんだん苦しくなってくる・・滑るように泳げない・・
それは、姿勢が崩れているからです。実は、全身リラックスしても姿勢は崩れます。
ラクに泳ぐ。
これは、全身の力を抜くことではありません。無駄な力は抜き、必要な力を入れる。普段の生活もそうですが、背すじをまっすぐ伸ばす(体幹を締める)ことは最低限必要です。ストリームラインです。
姿勢の崩れ、あなたもこころ当たりありませんか?
最後に、
水泳は(肋骨を広げたままで行う)腹式呼吸が基本ですが・・
腹式呼吸の知られざる目的を述べます。
一般に腹式呼吸は、吐く方を重視する傾向にありますが、水泳の場合は吸うことの方が全然重要なんですね。
なぜなら、肋骨を広げ肺を膨らませないと、吐く行為は生じないからです。
大きく吸わないと吐けない。
大きな声は、大きく吸わないと出せないということは理解できますよね?
そもそも、水泳はなぜ腹式呼吸なのか?それは、腹圧には欠かせない横隔膜を活性化する為。
横隔膜は、吸うときに収縮、吐く時は弛緩する。
つまり、吸うことにより横隔膜が活性化するんですね。
もう1つ。
横隔膜が収縮すると、大腰筋が活性化します。
大腰筋はキックを打つ時に働きますが、意外にも息を吐くとカが入りません。カが入るのは大きく吸って止めている時です。
え?吐いてもカ入るよ?
それは、大腰筋ではなく腹直筋や大腿四頭筋が活性化しています。
例えば、バサロキックを例にすると、息を止めているほうが鋭利なカが出ます。
蛇足ですが、背泳ぎの入江選手は(特にターン後の)バサロが非常に苦手です。なぜか?それは、バサロキック中、常にたくさん息を吐いているからです。吐くと横隔膜が弛緩し、大腰筋に力が入りにくくなります。それに、吐いてしまうと浮力で水面に浮上できなくなる。それを理解していない為、カずくで爆弾キックを打つんですね(大きく体幹を動かすから息が漏れてしまうのが真相)。せっかく鍛え上げた体幹の筋肉は、キックよりも吐息に使われてしまっている。本当にもったいない。彼の泳ぎそのものは超一流です。息を止めるバサロをマスターすれば間違いなく世界記録を出せます。
肋骨(特に下部)を広げて息を止める。
バサロで有名な鈴木大地氏は、このことに既に気付いていました。ただ、仰向けの姿勢というのは、慣れないと鼻から水が入ります。(だから鼻から息を出すしかないんですが・・)そこで彼の取った方法は、上唇を鼻の穴に押しつけ栓をすること。私もこれを実践しています。
というわけですが、息を止めているから15m以上潜ってもラクなんですね。先程のノーブレで泳ぐのと理屈は全く同じです。
バサロは息を大きく吸って止める。↓
http://nicovideo.jp/watch/sm26637610
つまり、横隔膜を最大収縮させること。
これが大腰筋をフル活用するコツです。
※※※くれぐれも、こらえることはしないでくださいね。肋骨が広げられない方は少しずつ吐いても構いません。
水中で息を止めるメリットは他にもあります。53記事『5 知られざる腹圧』をご覧下さい。
吐くことばかりを強調しすぎると、思わぬところで損をします。
5 ギャロップについて
ギャロップクロールとは、毎回呼吸をし、左右ストロークのタイミングが違うクロールのことです。ギャロップというのは、泳法というより選手の個性が出た結果でしょう。利き手を活かしたり、リズム感だったり・・自然にそうなるわけですね。もともと左右均等に泳げる選手でも、ラストスパートすると自然にギャロップになることはよくあります。
※このギャロップクロールは、初心者の方にはお勧め出来ません。あくまで基本をしっかりマスターするのが上違の早道です。
さて・・
先日、内田選手の泳ぎを見たみすずさんから、ギャロップクロールについて研究してほしいとの要望がありました。
ギャロップ。これに憧れを抱く人も結構いるでしょう。私もカッコイイと思います。しかし、私は水泳人生一度もギャロップしたことはない。それでも泳げるのか?私は考えた。
ラストスパート。そこにギャロップのヒントが隠されている気がした・・最後の力を振り絞って、より前へ前へ泳ぐその姿。必死にギャロップしている。どうやら片側呼吸に答はありそうだ・・
早速泳いでみました。結果は・・あっさりギャロップで泳げました。
全くギャロップしたことのない私が、いきなりギャロップ出来たのは、体斡主導だったからだと判りました。
え?もっと具体的に説明してよ!
実は、ギャロップというのは、息継ぎが片側だけで、なおかつ頭の戻しが素速いから、馬が走っているような泳ぎになるんですね。
ちよっと待った!なぜ頭を速く戻す必要があるんだい?
息継ぎ時は腹圧が抜ける為、腰が下がります。だから息継ぎは瞬時に完了させ、頭を水中に入れて腰を浮かせる必要があるんです。その結果うねりが生まれる。ギャロップクロールがうねるのはその為です。
で、俺は速く頭戻してるよ!リカバリーアーム見る前に。それでもギャロップにならないけど?
それもそのはず。あなたの泳ぎは体斡主導ではないからです。あなたは、手の入水よりも先に顔を戻してるんですから。体斡の回転が遅れて(頭の回転が先行して)いるんです。首が疲れませんか?
ラクな息継ぎ動作(頭の回転)というのは、先に述べたように体斡の回転に連動させて行います(体斡主導)。このほうが首の筋肉を使わずにラクに回せます。それを、頭だけ先に回すと体斡がすぐについてこない為、首の筋肉は引っぱられる。これを延々毎回呼吸してみて下さい。必ず首が凝ります。
私が毎回呼吸で頭の戻しを速くすると、自然にギャロップになります。↓
ギャロップというのは、体斡主導だからそうなるんですね。
その証拠に、頭の戻しと手の入水は同時です。ということは?頭の戻しが速いとリカバリーアームも素早く前に運ばねばならない。つまり、リカバリーアームの山を見てから頭を戻すことになります。これがギャロップクロールの正体です。
6 知られざるバタフライの呼吸
バタフライはクロールと違い、左右対称の動きをする。そして、胸郭を伸縮させながらうねります。言いかえれば、肋骨を上下に動かしながら泳ぎます。
ラクなバタフライの呼吸は、この肋骨の動きに逆らわないこと。
では・・
人間の肋骨は、腕の動きと連動しやすくなっています。万歳すれば肋骨は広がり、腕を下ろせば肋骨も下がる。もちろん、肋骨が広がれば自然に吸えるし、下がれば吐ける。まずこのことを頭に入れて下さい。
そして前に述べたように、お腹にカを入れる時に吐き、力を抜く時に吸うということも。
これらの考えに基づくと、プル(腕を下げる)で吐き、リカバリー(腕を上げる)で吸う。これはわかりやすいですね。
では、入水~グライドは?
入水は力を入れるから吐くんでしょ?
実は・・答えは『止める』です。
えっ?なんで?
グライドというのは、万歳し体を伸ばします。特にバタフライは、胸を張る為必然的に肋骨は広がります。どう考えても自然に吐けませんよね?必ず止息します。
さらに、ラクなバタフライの入水~グライドですが、キックで潜るのではなく、上半身の重みを使って前へ沈み込むことです。前に伸びることに力を使います。だから、息は吐けないんです。
いや、私は選手だけど吐けるよ!
それは、第一キックを強く打つ為、腹圧で漏れていくんですね。吐いているのではないんです。それが正確な表現です。本当に吐いてしまったら浮力がなくなり、大変疲れます。
では、ストロークと呼吸のまとめです。
グライド~キャッチ→止める。
プル→吐く。
リカバリー→吸う。
冒頭の見出しの『吐く→吸う→止める』。
バタフライこそ、この流れを徹底する必要があリます。これこそが、バタフライをラクに泳ぐコツなんですね。
従来の『止めない』呼吸を教わった人の中には、バタフライに苦しむことがままあります。肋骨の動きに反して、強制的に吐き続けるからです。
スクールでは、クロールを一番始めに教わりますよね?クロールというのは、入水意識(肋骨を広げる)だと止めるのがラクになり、プル意識(肋骨を下げる)だと吐くのがラクです。
よく、クロールの呼吸は、水中で止めるのか?吐くのか?と議論されますが、これで謎が解けた人もいるでしょう。
大半の大人はプル意識が強い為、肋骨を下げて泳ぐクセがつきます。その為に止息出来ず、吐き続けるのがラクになります。このままバタフライを教わると・・肋骨の動きに反する為(うねりに合致しない為)大変苦労します。
余談ですが・・
スクールでは、バタフライを教える時、上半身のうねりから教える指導者はほとんどいません。必ずキックから教えます。第一、第二キックというように、トントントントンとリズムで泳ぎましょう!というわけです。実は、これも止息をしづらくしている要因なんですね。キックを主体にすると、必ずと言っていいくらい、フンフンフンフンと息を吐くクセがつきます。入水~グライドする時も、第一キックでフーンと吐いてしまいます。ここで勢いよく吐いてしまったら、次の第二キックでフーンが持ちません。
つまり、プル時に吸いたくなる。吐いたら吸うしかなくなる。だから顔をムリやり上げることになる。
結果、背中が反る。
このように初級者のほとんどの人は、頭を上げるタイミングが早すぎます。要するに、吸うタイミングが早すぎるんですね。
キック主体の、背中が反る初級者のタイミングをまとめると、
第一キック(グライド~キャッチ)→吐く
第二キック(プル~リカバリー)→吸う??
となっている。??と冠するのはなぜでしょうか?
第二キックを打つときは、本能的に吐くのが自然です。これに逆らって吸うのはとてもしんどいはずです。止めていればまず吐ける。そして吸うにつながる。呼吸を遅らせるまがとれるんですね。
というわけで、
背中の反るバタフライの隠れた原因は・・
息を止めないからである。
さらに余談になりますが、いつもバタフライを練習されている方と、お話をさせて頂いた時のことです。
私は、吐いて~吸って~で泳いでるよ。すぐかかずに、しばらく前に腕を伸ばしているんだけど、でもなぜか推進カが上がらないんだけどね・・。
早速、泳ぎを見させて頂いたところ・・
ストローク中ずっとねこ背のままで、肘が曲がった状態で入水していました。すぐプルせずに伸びているつもりが、キャッチの状態だったんですね・・
こういった事例、たまに見受けます。いつも背中が反っている人とは真逆ですね。息を止めることが出来ない理由とも言えるんですが、
グライドが抜けているんです。
すなわち、息を止める大切なステージが抜けているんです。
グライドは本来、胸を張り、肋骨を広げて沈み込むんです!腕をまっすぐ伸ばすんです!ねこ背で肋骨を下げていると、沈み込めない上、息を吐きたくなります。
息を止めるステージであるグライドがないと、浮力で上がることが出来ない。つまり、推進カが出ないんです。
胸を張って伸びること、上半身のうねり(胸郭の動き)を主体にすること、これを実践すればこのような過ちは犯さずに済むはずです。
幾度も言いますが、息を吐き続けると、ボディポジションは下がり、溺れたバタフライになります。入水は水中深く潜りすぎる上、浮力による自然な浮上が出来ず、プルとキックにたよらざるを得なくなります。
バタフライは、しっかり前にグライドすれば(胸を張って肋骨を広げれば)、息を止めるのもラクになります。
52 知られざるバタフライのメカニズム
[お知らせ]
7 STNRの項目に、水泳界の問題点について述べさせて頂いた。 また、他の項目にも手を加えているので、一度読まれた方も、再度目を通して頂けたらと思う。
そして、49記事の最後にバタフライの呼吸についても述べているので、より知識を深める為に、併せてご覧頂ければ と思う。
今年初となる今回は、『フラットバタフライ』。とても長い記事であることをはじめにおことわりする。記事後半には、クロールを極めるヒントがいくつか転がっている。 尚、当記事では、通常の(競泳ルールに基いた)バタフライを紹介する。
長距離については、『グライドバタフライ』として45記事で紹介しているので、映像のみとさせて頂く。
A ラクに速く泳ぐ『フラットバタフライ』
ある程度の距離を泳げるようになった。そこそこスピードも出せるようになった。レべルで言えば、初級を脱した中級者である。しかし・・より速く泳ごうとするとすぐ疲れる。レベルを引き上げるには何が足りないのか?・・わからない・・
では、そのヒントを探っていこう。
1 バタフライの先入観
競泳のイメージからか、バタフライは力で速く泳ぐイメージが強い。その為、真似して必死に腕を回そうとする。必死にキックしようとする。なぜラクではないんだうう?そして皆バタフライを泳がなくなる・・。
バタフライはとても疲れる。速くなんてとてもじゃない!これがあなたの感想だろう。でも実は、バタフライはとてもラクな泳法である。ええっ?冗談でしょ??いや、ラクである。
あなたは、バタフライの本当のメカニズムをまだ知らないのである。メカニズムさえ理解すればラクになる。腕力や脚力も要らない。タイミングとリズムさえ揃えば、筋力のない私でもラクに速く泳げる。 ↓
2 うねり
皆さんはうねりと聞いて何をイメージするだううか?イルカ?海へビ?周波数の波形?要するに体幹をくねらせて泳ぐんでしょ?
残念ながらこの認識は合っているようで誤りである。えっ?意味わからん!
実は、バタフライの体幹はフラットが基本。お腹を凹ましたストリームラインである。
はい?うねらないのか?バタフライの選手はうねってるではないか!
見た目は確かにうねっているように見える。
うねるとは、
フラットな体が、水面の際を上下することを言う。
身体の 通 り 道 がうねっているのである。
さらに言うならば、腰(注:ウェストのこと。ヒップではない)を支点に上半身と下半身がシーソーをするのである。つまり、腰は上下せず、上半身のみ水上に出たり入ったりするのだ。わかりやすいイメージとして競泳の平泳ぎがある。あれはまさに上半身だけが上下動している。
バタフライも平泳ぎと同じなのでである。
腰を大きく上下させ、体をくねらせで泳ぐのではない。
ちょっと待って!水中から見ると体幹自体もうねってるよ?
落ち着いて晟後まで聞いてほしい。体幹自体のうねりは、上半身を水面下に沈めると浮力が生じる。それにより上半身は浮いてくる。なぜなら胸郭(きょうかくと読む。肋骨、胸骨、胸椎がなすカゴ)には肺が入っているからだ。
その浮き沈みする胸郭の動きが、腰から足先にまで波及する。身体(特に胸郭)が柔らかい選手は、よくしなる為あたかもくねらせているように見えるだけだ。
また、その上半身の動きに合わせて腕を動かせばラクにストロークもでき、息つぎも出来る。推進力はあくまで上半身の上下動から。これがバタフライの正体だ。
さて、現在のバタフライの主流はフラットな泳ぎである。要するに、うねり幅を小さくしたほうが抵抗が少なくスビードが出るということだ。
しかし、全くうねらないで泳いだほうがよいと言う人もいる。これは大きな誤解を生む表現だ。以下、真相を述べる。
私の泳ぎは、腕の入水後体が完全に一直線になる 瞬間がある。もちろん水面に対し平行である。水泳の最も抵抗の少ない姿勢は何であっただろうか?そう、ストリームラインだ。これがバタフライの基本姿勢となる。この姿勢を保つ意識で
上半身だけを上下させるのだ。
ところで私には、お手本とするスィマーがいる。かつて美しいバタフライを泳いだ『ミスターバタフライ』。そう、山本貴司氏である。
彼は上半身のうねりがとても大きく、そして美しかった。しかし、下半身に目を移すと・・ほとんど腰が上下しない(ヒップはわずかに上下する)のである。上下と言うより前後に動く。前後の体重移動なのだ。うねりをよく観察すると、やはり腰を支点にシーソーしている。その体幹の動きはまるで平泳ぎのようだ。これがフラットバタフライの真相である。ミスターバタフライをご存知でない人は、ぜひ彼の泳ぎを見てほしい。
そもそも、バタフライはなぜ上半身を上下させる必要があるのか?それは両手同時に水上でリカバリーするからだ。その為には肩が水面上に出ないとならない。
肩を水面上に出す為に上半身が上下するのだ。
私ね、肩が固いから上に上がらんのよ!
ご心配無用。幸い人間は上半身に肺がある。水中で息を止め、浮き袋を大きくしておくのだ。この浮き袋を沈めることにより、大きな反発力(浮力)が生じ水面上に肩を出すことが可能なのだ。この浮き袋が小さいと、上半身は沈みやすくなり反発力も小さい為、溺れたバタフライになる。
ちなみに息を大きく吸って止めておくと、泳速が上がるにつれ、ホバークラフトのようにボディポジションが上がる。
念の為であるが、上下させる必要があるのは上半身のみ。下半身は上下させる必要がない。
え?キックを打つには腰が上下に動かないと・・?
いや、キックは意識して打たなくてもよい。なぜなら、上半身が沈み込んでいれば、勝手にキックが入るからである。
沈み込む? そう、具体的には胸を沈めることが大切である。
しかし、水面にふし浮きになってどうやって胸を沈めるんだい? これは胸郭の動きが理解できないと確かに難しい。
では・・
イスに座って、まずは真正面を見てほしい。真正面がプール底で、天井が進行方向である。そのままだらんと上半身の力を抜いてみる。すると、みぞおちが凹んでねこ背になるだろう。もちろんアゴは上がる。
次に、ねこ背の状熊から姿勢を正してほしい。背中がビンと伸び、みぞおちが斜め上方に引き上げられ、助骨が広がるだろう。しかし、ここでアゴも引いてしまうのがわかる。実は、アゴを引いてしまうと肺の入っている胸は水中にうまく沈まない。頭だけが水中に突っ込んでいくのだ。
次に、やや進行方向に目線を移し、アゴを上げる。そして、先程のようにねこ背と胸張りをくり返してほしい。目線は固定したまま。
この動きがバタフライにおける胸郭の動きだ。私はこれを上半身のシメとゆると呼んでいる。
さらに、万歳して同じようにくり返してみると、進行方向に体が伸びたり綰んだりするのが分かるだろうか?この体の伸縮に合わせて肩も伸縮させる。
ちなみに、胸を張る(シメ)時が沈み込みである。そして、背中の力を抜いた(ゆる)時が浮き上がりである。
この様子は、以下のビデオでよくわかるだろう。↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm25377190
※実際は、水中では重力がかからない為、座っている時程ねこ背にはならない。私の言う水泳時のねこ背とは、自然にまっすぐ立っている時の背骨の状態であり、前かがみの姿勢とは意味が違う。
というわけで・・私のうねりの意識は、水面に対し上下ではなく前後なのである。
一般のうねり練習は、上下させる意識だからうまくいかないのだ。
誤解のないようにして頂きたいが、バタフライの上半身は、スタートやターン時の水中ドルフィン(バサロも含めて)のように完全に固めるのではない。
腰からの意識では、バタフライは泳げない。胸郭が柔らかく伸縮して初めてバタフライは泳げる。
そして、バタフライのキックというのは・・
胸郭の動きそのものなのだ。
上半身の上下動がキックに直接繋がっている。次のビデオはそれが分かり易いよう、わざと力(腹圧)を抜いて泳いでいる。↓
これを、腹圧を入れて前へ前へまっすぐの意識で泳ぐと、冒頭のフラットバタフライになる。
うねりとはどんなものなのか、少しはイメージできたであろうか?
3 グライド~キャッチ~プル
さて、私のバタフライである。私がスピードを上げる時は、前へ前へ体重をかけることを意識する。また後半バテてきた時は、胸をしっかり沈めることを意識する。
グライドの瞬間(本当に瞬間)水の滑り台をスーパーマンのごとくY字万歳で滑り上がるイメージである。は?
もう一度言おう。滑るように上がるのである。下るのではない。冒頭の水中映像からもわかるように顔と胸元がしゃくり上げるように動いているのがわかる。
具体的には、両腕を水面にキープし、やや前を見て、みぞおちをつき出すのである。むろん、息を止めるからすぐ浮き上がる。注意すべきは前に伸ばす腕の方向。
決してななめ上や下に伸ばさないこと。
必ず水面と平行に伸ばす。そうでないと、プレーキになるもしくは、勢いよく潜水してしまう。
特にななめ下へ伸ばすと、腰が大きく上下する原因になる。
もう一つ。ななめ下へ伸ばしてはならない理由、あなたは答えられるだろうか?
バタフライは潜水してはならないからである。
余談だが・・
2016年日本選手権200mバタフライ準決勝で、矢島優也選手(私個人的にはひいきにしている。なぜなら、他がやらない新しいことをする人が好きだからだ)が泳法失格となったことは記憶に新しい。彼は独特の大きな泳ぎが特徴だが、『体全体が完全に水没してはならない』というルール違反すれすれで泳いでいた。今回の失格はとても残念だった。
しかし、厳密に言うと、潜りが深いだけならば失格にはならない。『意図的に潜水で進もう!』としている・・ように見なされると失格だ。
具体的には・・
グライドするとき、腕をYの字(アウトスカル)に開かずIの字のまま、第2キックを打つと失格である。Iの字は明らかに潜水行為で、Yの字は浮上行為だからだ。矢島選手は、Iの字で第2キックを打っているように見える。だから失格となった。もっと早めにアウトスカルすればよかったのだ・・
というわけで矢島選手は、即アウトスカルをせず、平泳ぎのようにIの字で斜め下へ伸ばしている為、潜りが深くなる。だから重力と浮力を最大限に利用できるのだが・・
実は、完全水没したほうがトップスピードは出しやすい。このスタイルは、私もよく真似ており、フラット泳法よりも速いことを実感している。もし、水没が認められるようルール改正されたならば、矢島式のバタフライが主流となり、世界記録が次々と更新されるだろう。潜水泳法は、それ程に可能性を秘めている。
しかし現在は、水没は認められていない為、今回のような悲劇を招かぬよう、入水後は必ず水面に平行に伸ばすことである。
次にキャッチ。ズバリ、スカーリングをする。
理由は、先に述べたように水没を防ぐ為。スカーリングは上半身を浮かせる働きがある。フラットバタフライには欠かせない技術だ。もちろん息つぎもラクになる。スカーリングを入れるだけでも上体は上がるが、バックボーンとして、大きく息を吸って止める(つまり腹圧を入れる)ことでよりいっそう相乗効果を生む。息を止めスカーリングを入れて泳ぐと、驚くほどボディポジションが上がり安定する。ムダな上下動がなくなり、酸素消費も抑えられとてもラクになる。
私の泳いだ感想は、まるでアメンボになった気分である。ビデオを見ると、背中がとても大きく見えるのがわかる。よく水面上に浮く為、背中も軽く感じる。
では、スカーリングについて。
スカーリングは手首を固定し、手先から前腕全体で水を捕らえること。
入水と同時に胸を張り、脇の下を伸はしてYの字万歳する。腕は内側に捻っていて(内旋回内位)手の平は外を向いている。なぜこうするか?それはその後に続くキャッチに繋げるため。これがアウトスカルである。もちろん両手を広げすぎると大きな抵抗になる。
そしてインスカルは・・グッとみぞおちを出してうでを伸ばしている状熊からフッと上半身の力を抜く。先程椅子に座って行ったねこ背である。(あくまで背中の力を抜くこと。力を入れて背中を丸めない)すると肘が緩むのだ。これがキャッチ。そしてこのままお腹に力を入れ、まっすぐ広背筋(→詳しくは47記事参照)で引くだけだ。この時腹圧により、自然に息は出ていく。
※初級者や中級者は、プルで背中の力を抜けない(お腹に力を入れない)為、自然なうねりが作れず水没するのである。
[注]
あくまでお腹を絞る。腹直筋を緊張させ、肋骨を下げ体幹を固くしてはならない。これを実現するには、第2キックをプル前半に打つことである。タイミングについては後述する。
なお、プルの軌跡(カギ穴、S字など)は、クロール同様、論ずることそのものが無意味である。なぜならば、体力、関節可動域、力加減により個人差があって当たり前だからだ。スカーリングするから、ストレートにはならないだけのことである。
ならば・・
バタフライでスカーリングするなら、クロールも同様にスカーリング(S字プル)してよさそうなのだが・・
クロールの場合、ローリングが入る為、アウトスカルは背中の面を超える動きになる。関節運動学上、なり得ない動作であり、確実に肩を壊す。え?壊さない人もいるよ?それは、ローリング角度が小さいからである。従来よく見られた1軸クロールはローリング角度が大きい為(オーバーローリング)、故障が続出したのだ。どうしてもS字にこだわるならばロール角は小さくすることである。そのかわりに、体幹の回転カをフル活用出来なくなるが念のため。
ハイエルボーも同様である。ロール角が大きいと肩を壊す。そもそも、ロール角が大きいままハイエルボーにすること自体ナンセンスである。ハイエルボーの目的は、より速く泳ぐ為に、プル前半にピークを持っていくことにある。競泳は速さを競う為、ハイェルボーで泳ぐが、ロール角も小さくすることを忘れてはならない。
[補足]
私の言うキャッチとは、フッと力が抜ける瞬間である。
一般の泳者は、キャッチは力を入れて水を捉えることだと勘違いしている。その証拠に、インスカルするとそのまま後方に引いてしまう。その為、第2キックが入るのはフィニッシュになる。
本来の力を抜いたキャッチを行えば、一瞬その場に手が留まるはずだ。これをタメと呼ぶ。タメてからプルするのである。すると第2キックは、フィニッシュより手前に打ち下ろされる。
キャッチとは、一瞬腕を休ませるということだ。一般にいうスカーリングは外と内へ両方に力を入れる為、これが疲労を招くことになる。シメとゆる。これも後で詳しく述べる。
4 リカバリー~エントリー
私がバタフライのストロークで最も重視するのは、実はリカバリー。
皆さんは延々泳ぎ続けると肩や腕がとてもつらくなるだろう。それはなぜなのか考えたことはあるだろうか?それは、リカバリーでリラックスしていないからである。リカバリーというのは、腕を休めることの出来る局面なのだ。なのに脱力が出来ていない。これでは長くは泳げない。
よく水泳では肩甲骨を使って大きく回せ!と言われる。が、肩まわりの硬い大人は子供とは違う。よく誤解されるが、バタフライ(クロールも)のリカバリーに際しては肩甲骨に力を使ってはならない(意識してはならない)。むしろ肩甲骨は捨てるのである。
どういうことか説明しよう。肩甲骨というのは閉じたり開いたりの動作以外に、挙上、回旋などといった様々な動きをする。なめらかに動くには、肩甲間部(肩甲骨周り)がある程度、緩んだ状態にする必要がある。それを目一杯筋収縮させたらロックしてしまうのだ。
試しに気をつけの状態から、大きく息を吸って肋骨を広げて、親指を上にし(外旋させ)両腕を横へ(外転方向に)上げてみてほしい。肩甲骨を意識し、背中に力を入れる。すると、Yの字万歳でロックがかかるのだ。なにも背中に力を入れなければスッと真上まで上がる。よく混同しがちな現象だが、肩関節の内旋によるロックとはまた違う。
背中に力を入れるから腕が上がらないのだ。
この実験からわかるように、肩甲骨を意識して力を入れてはならないのである。
リラックスしたリカバリーには、先程の胸郭の動きで述べたが、背中をリラックスさせることである。私のリカバリー時の背中をよく観察してほしい。ねこ背である。念の為だが、背中は意図的に丸めるのではない。上半身をリラックスすると必ずねこ背になる。
これは先に述べた肩甲骨と深く関わっている。ねこ背になることで肩甲骨が開くのだ。ムダな力みがなくなるのである。ちなみに、上半身が力んでいると(背中と腰が反っていると)ジッタンバッタンと、上半身が沈んだ不格好なバタフライになる。もちろん、腰を痛めるので必ずリラックスするようにしたい。
もう一つリカバリーをスムーズにするコツがある。それは、真横に抜き上げること。
一般的にバタフライのフィニッシュは、後ろに押しきると認識されているが、これをやるとリカバリーの手は空中高く飛んでいく。泳ぎを真正面から見れば、Vの字に腕が跳ね上がるのがわかる。文字通りバタフライ(蝶が羽ばたいている)になっている。これは肩の柔らかい女性や子供に多く見られるが、これを肩が硬い大人がやると水泳肩の原因となる。なぜなら、肩関節の伸展を行っているからだ。
肩の伸展は基本的に、かなり可動域が狭い為、リカバリーは必ず外転方向(背中の面を越えないよう、脇を開くよう)にすべきである。一流選手、特に男子のリカバリーをよく観察してほしい。必ず手が水面すれすれでリカバリーしている(外転している)はずだ。なぜそういうフォームなのか?それは、男子の腕は女子に比べ重い為、水面高く上げるとかなり疲労するからだ。なにせストレートアームなのだ。肩まわりの硬い大人、筋力のない人は、肩の柔らかい女子選手やジュニア選手の真似をしてはならない。
抜き上げは真横へ!
最後に入水。
バタフライはクロールと違い、入水時はストレートアームだ。それは上半身が簡単に深く潜り込んでしまわないようにする役目もある。
一般スイマーの泳ぎというのは、上から落下するようにバシャーンと、腕全体でわざわざ入水抵抗を大きくし、腕を水面直下にキープさせて上体が潜るのを防いでいる。そして、入水した腕は斜め上を向いている。もちろん、グライドなどできやしない。
私のリカバリーに注目すると・・後ろに向いていた手の平が、反動で自然に下向きになり外旋しながら戻っていく。決して意識して外旋しない。そして腕は完全に脱力したまま(見た目はピンと伸びているが、これは遠心力が強くかかる為)エントリーへと向かう。この一連の動きを見ると、手先は水面すれすれだ。だから落下という動作自体が生じない。スムーズに着水できるのだ。
さらに見落としてはならないのが肩の高さである。私のクロール、背泳ぎ、バタフライの共通点なのだが、手先が入水しても肩はまだ水面上にある。これは上体が高いからだが、それを可能にするのが止息である。
リカバリーはわきの下を開き、わきの下を伸ばしていく行為だ。つまり、体が前に伸びていくのである。わきの下を大きく伸ばすとあばらが広がる。だから止息が可能なのである。ここがあなたと私の違いだ。
というわけで着水は、脇を伸ばすとうまくいく。↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm30476938
※このビデオのように、ストレートアームクロールを練習することにより、バタフライの着水を上違させることが出来る。ぜひお勧めする。
しっかりわきの下を伸ばせば肩関節の負担が大幅に下がる。背泳ぎやバタフライといった、ストレートアームの場合は伸びをするから、水面に平行になり抵抗が少なくなる。
蛇足だが、手先の入水位置は、胸郭と肩甲骨の柔軟性が高い人ほど、前方遠くになる。もちろん、スピードも出しやすくなる為、胸郭のストレッチ(46記事万歳ドローイン参照)は欠かさず行いたい。
5 疲れない人は上手に力を抜いている
『締める』と『緩める 』
人間、力を入れっぱなしではすぐ疲れる。筋肉が収縮した(締めた)状熊だと、力も十分に発揮されない。筋肉は、脱力した(緩めた)状態が最もパワーが出る。
でも・・その脱力が難しい・・。しかし・・筋肉は、思いっきり力を入れることにより必ず弛緩する。ここで筋弛緩法をやってみよう。
座ったままでいい。思いっきり肩をすくめて(肩を上げて=肩甲骨の挙上)みてほしい。そして、パッと肩の力を抜いてみる。肩はストンと下に落ちるだろう。いかがだろうか?こうすると肩甲骨は自然なニュートラルポジションになる。
もう一つ、筋肉は最大に引き延ばすと、筋膜の弾力で元の長さに戻ろうとする。さらに、腱のセンサーにより、反射的に収縮力も増加する。
思いっきりYの字万歳(胸を張る)しながら、腕を内へ捻り(内旋回内)、力を抜く(もちろん肩の力も)と必ず元に戻る(外旋回外)。筋膜の弾力がある為、晟大に引き伸ばすと反動でバネのように元に戻るのだ。スカーリングに応用できる。
ここで重要なことは、脇の下を伸ばすということ。
ここからが、私の一番解説したいところ。
胸を張って万歳するというのは(脇の下を伸ばすというのは)、大胸筋と広背筋を引き伸ばす行為だ。
先程うねりで話した上半身のシメとゆる(胸張りとねこ背)をもっと詳しくいうと・・
上半身(胸郭)のうねりは、水中では凹、水上では凸になるが、この動きには腕の万歳が必要だ。万歳で胸とお腹を伸ばし、その後力を抜くのだ。
すると・・大胸筋と広背筋が反射的に力を入れなくとも弾力で元に戻るのである。だから、上半身のシメとゆると呼ぶのだ。この弾力で戻るカを最大に活かしてプルすれば、ラクに速く泳げる。見た目にも、背中が反らない(ねこ背の)美しいうねりになる。
筋肉を締めると緩める(シメとゆる)とは、こうした要素をうまく使いこなすことである。これが出来れば、あなたは疲れ知らずの上級スイマーになれる。
まずエントリーからグライド。
肩幅で着水(前へ伸びる)し、胸を張り脇の下を伸ばす(上腕内旋、肩甲骨挙上)。お腹から脇の下にかけての皮膚を伸ばすイメージだ。手の平は外を向く。これがグライド(アウトスカル)。
次に上半身の力を抜く。すると上半身全体の関節が緩む。もちろん肩甲骨も上腕もニュートラルポジションになる。バランスボールに乗っかる感じである。これがキャッチ(インスカル)。
その後お腹にカを入れ、脇の下の筋肉で『内旋しながら引く』。すると肩甲骨が固定され(下制と言う)、肘から先はリラックスしたまま体の下を手が移動し、そのまま脇を閉めずに体の横までプルしていく。
そして再び上半身を緩める。すると息が吸える。このまま手は遠心力によってストレートアームになりリカバリーしていく。もちろん上腕は勝手に外旋する。
以上、バタフライストロークの流れであるが、リズムは、シメ・ゆる・シメ・ゆるであることがわかる。カを入れる局面は、グライドとプルの2ヵ所である。その間にあるキャッチとリカバリーは脱力している。いわゆるタメと呼ぶ。
タメておいてグーンと力を入れるのだ。これが疲れ知らずの秘密である。
これをクロールに当てはめると・・右手が入水(グライド)時は、左手はどうなっているだろうか?そう、プルなのだ。これがシメ。力を入れるタイミングもバタフライと全く同じなのだ。
※いまいち分からない人は23の動画を参照されたい。
では、バタフライキックのタイミングは?もう気付いている人もいると思う。シメが2回あるということは?そう、ファーストキツクとセカンドキックだ。このシメの時にキックが入るのである。
※キックについて。
22の2ビートでも紹介したように、バタフライも関節を緩めてから、トンと力を入れて伸ばす。このトンと伸ばす時がストロークで述べたシメに当たる。キックもシメゆるシメゆる~になる。
冒頭の水中ピデオで、トンとキックを打った時、ストロークはどのステージになっているかよく観察してみてほしい。必ず体全体でシメゆるシメゆるとなっているのがわかるはずだ。
実際のキックは、スビードが速い為瞬間に鋭く打ち下ろす。後は反動で戻るのだ。反動については後述する。
では、クロールは?入水時にキックが入る。反対の手がプル時である。左右合わせて2回、2ビートキックになる。
まとめ。
入水~グライド(アウトスカル)→背中 シメ。上腕内旋
キャッチ(インスカル)→ゆる。上腕外旋
プル→お腹 シメ。上腕内旋
リカバリー→ゆる。 上腕外旋
となる。
[補足]従来型の教本には、エントリー→キャッチ→プル→プッシュ→フィニッシュ→リカバリーというように、かなり細かく分けられている。
ここで水中の動作について
従来型(左)と私(右)のストロークを対比させてみる。
キャッチ (アウト) ↔ グライド
プル (イン) ↔ キャッチ
プッシュ (アウト) ↔ プル
従来型は3ステージすべてに力が入っている。典型的なS字である。対し私は、前半のアウトからインにかけては瞬時にカが入り抜ける。インの時点でまだ手は後方に移動しない。だから長後のアウトの開始が、ゼロポジションがら『引く』すなわちプルとなる。従来型と私の呼称の違いは、インで力を抜くか入れるかの違いから生じている。
ところであなたは、従来型の6ステージすべてを意識できるだろうか?
私はまず意識できない。
このような意識は、特に速く泳ぐ時は邪魔になるだけだ。
水泳というのは、リズムで泳ぐものだ。
そのリズムが『シメとゆる=筋の収縮と弛緩』なのである。だから、グライド→キャッチ→プル→リカバリーの4ステージなのだ。これ以上細かく分けたらリズムが作れない。
というわけで、
ストロークの動きを文章にするとこうなるわけだが、あ~頭が混乱する!もっと簡単にイメージできないか?
私の掲合、実際こんな細かいことは考えない。もっとシンプルに以下の意識で泳ぐ。
前! フッ! 前! フッ!
胸を張って前にグッと伸びる(背中は凹)。そしてお腹に力を入れてプルする(背中は凸)。
なぜフッ!なのか?それは・・お腹に力が入れば息がフッと漏れるからである。このくり返しで泳ぐと、浮き袋(肺)が水中へ沈む・・水上へ出る・・凹凸凹凸と自然なうねりが生じる。
体幹だけに注目すると・・背中、お腹、背中、お腹、と交互に力を入れている。 別の表現をするならば、体を伸ばす!縮める!伸はす!縮める!である。
※長軸系のクロールや背泳ぎは体幹は伸縮しない。常に伸はす。
短軸系のバタフライや平泳ぎは文字通り伸び縮みする。
要は、シメ(力を入れる)だけを意識するのだ。
ゆるは?
瞬間的にシメれば自然に力が抜ける。そういうことだ。
これが速く泳ぐ時のリズムである。
バタフライはリズムで泳ぐとラクになる。ただし、勘違いしてほしくない。今まで述べたように、リズムは上半身の動きから生まれる。
私はキックでリズムを取らない。その為、トントーントントーンのように、完全均一の間隔にはならない。キックで完全均一に、トントントントンとリズムを取ると、ジッタンバッタンと、不自然な泳ぎになる。
最後に・・従来型のスイマーは、インスカルもシメてしまっている。すると何が起こるか?
それは・・自然なうねりによる第2キックが入らなくなるのだ。第2キックが入らないとプルに頼る為、大変疲れる。なので意識して打たざるを得なくなる。
第2キックは、第1キック後に関節が緩まないと打てない。つまり、グライド後に緩まないと打でない。まさにキャッチのステージだ。
バタフライをラクに速く泳ぐ。極論すれば、キャッチ(インスカル)で力を抜けるかどうか。これにかかっている。
6 フィニッシュ
プル(シメ)からリカバリー(ゆる)の切り返し部分、一般にプッシュあるいはリリースと呼ばれるフィニッシュのことであるが・・
水泳動作の中で呼吸と並んで様々な情報が氾濫しているが、ここでは私の実証したフィニッシュのメカニズムについて述べる。
その前に・・
従来のプルのイメージは、後半に力を入れる『後方に押す』動作である。これを終動負荷型と言う。その証拠に、エントリー→キャッチ→プル→プッシュ→リリース→リカバリーと後半重視の説明がなされてきた。
対し、私の実践しているバタフライやクロールは、前半に力を入れる『前方から引く』動作である。これを初動負荷型と言う。グライド→キャッチ→プル→リカバリーのように、フィニッシュ(プッシュとリリース)は意識しない。だってそうだろう?フィニッシュとは、『終わり』を意味する言葉だ。『終わり』と意識してどうするのか?止めるのだろうか?区切るのだろうか?
実際には、プル~リカバリーは『連続』している。フィニッシュは通過点でしかない。私の概念には『終わり』『区切る』つまり、フィニッシュなどないのだ。ここで途切れることなどあり得ない。この連続した一瞬の出来事をどうやって意識しろと言うのだろうか?意識すればするほど滑らかな動きから遠ざかる。
結論から言うと、フィニッシュは本能に任せ無意識で行うということである。重要なことは意識すべきではないのだ。意識すべきはもっと前の段階、『内旋しながら引く』というプル動作だ。
え?フィニッシュを意識しなきゃあかんでしょ!
まあまあ、詳しくはこれから述べる。
自動車のエンジン内のシリンダーは反動で往復する。蒸気機関車の動輪も。また、自転車のペダリング、そしてプル~リカバリーも。
列記した動きのすべての共通点は円運動だ。
この円運動つまり、回す動作には必ず『戻る』という局面がある。その『戻る』局面は力を加えない。それは、惰性のカを利用するということだ。
さてフィニッシュだが・・
プル(内旋時)にしか力を加えない。
リカバリー(外旋時)は脱力している。
これを可能にするのが前述の円運動だ。(注;背中方向に回すのではない。体の横方向へ回すこと=脇の下を開いていく。)
この円運動を滑らかに行うためには、どうしても『かわし動作=ドッジムーブメント』という、『上腕の内旋』が必要である。
私の泳ぎのフィニッシュとは、『かわし動作』そのものである。だから前の段階で『内旋しながら引く』のだ。その内旋しきった局面がフィニッシュだ。
内旋しながら引いた結果、フィニッシュで腕が内旋しきるのである。
よく誤解されるが(過去の私もそうだった)、内旋『してから』引くのではない。内旋『し な が ら 』引くのである。プルの段階から内旋しきっていたら、フィニッシュでこれ以上内旋されない。つまり反動が起こらない。だから、戻し(リカバリー)も力を入れてせねばならなくなる。見た目にもギクシャクする。
フィニッシュとは、切り返しを行う局面である。
これは肩関節に遊びがないと出来ない。
フィニッシュは、上腕三頭筋に力を入れて脇を閉める(上腕の外旋になる)ように、直線的に肘を伸ばしてロックしないのだ。ロックすれば、文字通り『終わり』になってしまう。次のリカバリーと分断されてしまう。
さらに直線的に伸ばすと、肘頭は上を向き、背中の面を超えて(肩の伸展)リリースしてしまう。→上半身が胸を張るように反っているとこうなる。
上半身が反る原因は・・
肩甲骨を背骨に寄せて大きく背中方向に回す意識が強いからだ。
すると、肩関節を痛めるのみならず、ニの腕がかなり疲労する。
リリースは、正しく行えばどんな人であろうと、上腕の内旋が必ず入る(肩の外転になる)。その為、リリースは肘頭がやや外向きになり、肘は水面で伸びることになる。→背中をリラックスさせるとこうなる。
背中がリラックスできるのは・・
脇の下を開く意識だからだ。
これはクロールも(特にストレートアームは)全く同じだ。
ここで、ふと疑問に思った人もいるかも知れない。クロールのリカバリーはなぜ、エルボーアップ形とストレートアーム形の2種類あるのだろうか?
その秘密は、肩のローリング角度にある。
肩がローリングするというのは、首を左右に捻ることを意味する。ロール角が大きい、すなわち首を大きく捻ると、ATNR(非対称性緊張性頸反射)が強く出現する。つまり、後頭部側(リカバリー)の腕が屈曲する。これが、私の実践しているクロールの正体だ。
逆に、ロール角が小さいとATNRは働かない為、ストレートアームになりやすい。理由は、最大に腕を内側に捻ると肘は伸びやすくなるからだ。もちろん、遠心力によっても肘は伸びる。短距離にストレートアームが多いのは、ボディポジションが上がり、ロール角が小さくなるからである。もちろん、バタフライもATNRが働かない為、ストレートアームになる。
もう1つある。
それは、肩関節の内旋可動域である。内旋域が広い人は、ストレートアームになりやすい。その理由は、フィニッシュ時の内旋域に余裕がある為、リリース後も内旋が継続され、水面上で最大内旋される。結果、肘が伸びるように翻るのだ。
だからストレートになる。
私の場合、内旋域が狭い為、ストレートアームにならない。 なぜなら、フィニッシュで既に最大内旋されているからだ。つまり、肘の伸びしろがないのである。ただし、テンポを上げると遠心力が強く働く為、ストレートぎみになる。
私は、短距離に限ってストレートアームで泳ぐようになったが、プッシュは行っていない。つまり、フィニッシュで上腕三頭筋を使っていない。あくまで着水直前に上腕三頭筋にカを使って腕を前へ伸ばしている。その為、前方への遠心力が強く働く。そして着水の勢いにて生じた、体幹の回転力を使ってプルしている。ただし、長く泳ぐとニの腕が疲労する。だ か ら、短距離限定なのだ。
余談だが、皆さんはリカバリーがまっすぐなのがストレートアームクロールだと思うだろう。確かにそうである。(念の為だが、リカバリーは遠心力と上腕の内旋によってストレートになる)
しかし、本来のストレートアームの意味は、着水時にストレートであることだ。着水時に上腕三頭筋に力を使う。着水側の腕がピンピンになる。逆にフィニッシュ側の腕はリラックスしている。だから体幹の回転による遠心力でぶんぶん振り回せるのである。これがストレートアームクロールの真髄だ。
ストレートアームの目的は、遠心力の活用、そして早めに腕を伸ばすことによる早めのキャッチだ。腕をピンピンに伸ばすから、直後肘がゆるむ(すなわちキャッチのこと)のだ。
ちなみにハイエルボーの場合、曲がった肘を入水後いったん伸ばす必要がある為、キャッチが遅れる。テンポアップはどちらが容易か?これで理解できるだろう。ストレートアームの本来のメリットは、ピンピンに伸ばす着水にある。
というわけで
いくらリカバリーがストレートであっても、着水で肘が曲がるのはストレートアームとは呼ばない。念の為。
では、フィニッシュを掘り下げてみる。
※ここではクロールを例に述べているが、バタフライも基本的に同じである。 念を押したいが、スイムではフィニッシュは意識しない(ドリルは除く)。あくまで、無意識下でどう動いているのかを述べている。
押し切る!と言う表現をよく耳にするが、私は『払う』がしっくりくる。なぜかというと、横方向に回す(脇の下を開く)円運動だからだ。水中で直線的に(意識して)肘を伸ばすのではなく、水面際で手を『払う』のである。
『払う』を正確に言えば、上腕が内旋した結果、手首も内側に返る(回内する)のである。すると、手の平は足先を向くことになる。↓
フィニツシュのメカニズム
http://www.nicovideo.jp/watch/sm29992220
これは選手もよく練習するスカーリングドリルだ。このドリルは非常に奥が深いが、本質を知らないまま形だけを真似ている人が多いのではないだろうか?
そもそもスカーリングはなぜ、あのような8の字を描くのだろうか?
それは、上腕が内旋外旋するからだ。手首だけを動かしても(回内回外だけしても)上手くいかない。この内旋動作に特化すると、フィニッシュとはなんぞや? の答えが見つかる。それは、スカルによる揚力の活用だ。『押し切る』フィニッシュでは、わずかな抗カしか生み出せない。『払う』というのは、結果的に外へスカーリングしていることになる。このフィニッシュでのスカーリングドリルをぜひお勧めしたい。
[補足]従来のスカーリングのアウトインは、イッチニッのニ拍子であるが、私のスカルはイッチの一拍子である。
ではなぜ、『押し切る』とよく言われるのだろうか?
これは、リリースまで手の平を足先に向ける必要があるからだ。
もう1つ。結果として回内されるからだ。
これは私の解釈だが、本当の意味での『押し切る』とは、
水中で腕を伸ばしきりなさい!ではない。
最後まで手の平を足先に向けなさい!最後まで水を押さえなさい!である。
もし、水中で完全に伸ばしきったら、前腕の面と手の平は上を向いてしまう。押さえる方向はあくまで足先である。その為、肘がある程度曲がっていないと、前腕で水を後方へ押さえられない。
『フィニッシュできていない』とは、手 の 平 が 足 先 を 向 い て い な い すなわち、払っていない(回内していない)ことを意味する。見た目には、手の平が体側に向いている状態だ。
フィニッシュは反動を生じる局面だ。先程触れたが、
関節をロックすると、切り返しは起こらない。
皆さんは『押し切る』と聞いて、肘を伸ばし切ることだと思うのではないだろうか?
私も、過去は『押し切る』という表現に本当に泣かされた。実際、複数の指導者に『上腕三頭筋を使って肘を伸ばし切れ!』と言われたことがある。
しかも、伸ばしきるのは水中なのか、水面際なのか言われた記憶がない。
今でこそよく解るのだが、『腕を内に捻り切れ!』つまり、水面際で払う!が正確な表現だったのだ。ただし前に断っているように、スイムではフィニッシュは意識しない。『内旋しながら』プルした結果、外へスカルされるのである。
意識して上腕三頭筋に力を入れて水中で押しきるのがフィニッシュではない。かわし動作(内旋回内)をしながらリリースに入る動作がフィニッシュだ。結果、水面際で肘が無意識に伸びる。 ↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm30476938
上のビデオのように、ストレートアームで泳ぐと、よりフィニッシュの肘使いが明確になる。
要は、水中で肘をピンピンに伸ばしてロックしない(終動負荷で行なわない)ということである。
これが未だに知られていないフィニッシュの正体である。
念の為だが・・
『楽に=楽しく』速く泳ぎたい!とは、どういうことだろうか?
それは、ハアハアと、息を上げずに泳ぐ状態だ。息がハアハアいうのは、酸素が大量に必要だからだ。私の言う、『ラクに!』とは、無駄な酸素摂取を減らすということ。具体的には、フィニッシュで上腕三頭筋を『意識的に』使わないことである。
ちょっと待って!三頭筋使うのは無駄な行為じゃないと思うよ?最近トップスイマーは、プッシュもしっかりやってるんじゃない?
あなたは、トップスピードで泳ぎたいのだろうか?ラクに泳ぎたいのだろうか?
トップスイマーは、お互いスキルは極まっている。年々、スキルだけで記録を伸ばすのも厳しくなっている。残るは筋力勝負だ。
競泳は、疲れて当たり前の世界である。ラクに!と言う世界ではない。
あなたは、疲れてでもトップスピードで泳ぎたいのならば、余力があるならば、遠慮なく三頭筋を使えばいい。しかし、一般人は、スキルにまだまだ改善の余地がある。私も含め、三頭筋うんぬんを言うレベルではないのだ。
というわけで、私は筋力に頼らず、スキルをとことん追求しているだけだ。
三頭筋など小さな筋肉を使わなくとも、体重移動と内旋というスカルによって、ラクに速く泳ぐことは可能だ。
ちなみに私は、プルで押す(プッシュ)という言葉は使わない。押さえる(プレス)を使う。押すは、グライド時に『前に水を押す』と言うことはあっても、プルで『後ろに水を押す』とは言わない。
なぜなら、水泳は前に水を押して進む(体を前に進める)行為だからだ。バウウエーブ(船首波)が生じることからも明らかである。
確認したいが、プル後半で『押す』とは、上腕三頭筋を使って肘を伸ばし、手の平のみで押し出す行為である。
私の言う『押さえる』とは、前腕と手の平で水を押さえる行為である。
以前にも述べているが、肘から先は一枚の板(パドルでもいい)のごとく、手首は固定する。つまり、手首に余計な動きをさせないこと。末端意識にしないこと。
手首を固定し、前腕で押さえるのだから、肘を伸ばし切らないのは言うまでもないだろう。
※従来よく使われたプレスダウン(=入水後下へ押さえる)とは意味が違う。押さえは、あくまで足先方向だ。
私の言うプレスは、イコールプルである。
『プル=プレス』とは、前腕で水を押さえながら(水を動かす意識は持たずに)体を前に進める行為である。対し『プッシュ』とは、水を後方に動かす行為である。プッシュがいかに無駄な行為であるかよくわかるだろう。
それは違う!無駄ではないよ。だって最後まで水を重く感じるのに、押さないなんてもったいないじゃん。
ならば、明快な答えを出そう。
水を重く感じるのは(力感があるのは)、惰性のカで体が前に進んでいないからである。これが、終動負荷になる理由だ。
初動負荷(負荷が減少していくという意味)。
ストローク速度が落ちるキャッチ直後、つまり、プル開始時に『すばやく』プルすれは゛重く感じるはずだ。この時の感覚は『漕ぐ』になる。そして、漕いで体が一旦前に動き出すと軽くなる。なぜなら、反対側の入水した腕が前方へ伸ばされ、惰性のカが生じるからだ。だ か ら、後方へ上腕三頭筋に力を入れて押さなくとも良いのだ。この時の感覚が『払う』である。 このように、力感が減少する動作が初動負荷である。
つまるところ、上腕三頭筋で押す!というのは、体重移動出来ず、あるいは体重移動が遅れて、惰性で体が進まないから生じる行為なのだ。これが終動負荷の正体である。
〔補足〕
初動負荷型プルの開始部分は、力む程の負荷はかからない。なぜなら、腕の落下(重心移動)が先行するからだ。これが初動負荷型の大前提である。これを踏まえた上で以下述べる。
体幹意識(体幹の筋に着目)であれば必ず初動負荷となる。なぜなら、筋は体幹部から手先へ(遠心性)順次収縮するからである。プル開始時は広背筋大胸筋が『意識的に』収縮し、フィニッシュ時は上腕三頭筋が『無意識的に』収縮する。つまり、フィニッシュ時、体 幹 部の筋はすでに力が抜けているのだ。これが初動負荷たる所以である。
ある指導者が、水泳は終動負荷である。と主張しているが、であるならば、プル開始は負荷が軽いまたはゼロであり、負荷のピークがフィニッシュであると言うことになる。わかりやすく言えば、筋トレのゴムチューブ引きである。これはつまり、プル開始時、キャッチできていないことを意味する。なぜなら、『すばやく』引かないからである。すばやく引くには、最大筋力が必要だ。それを行わないのが終動負荷である。
何の為に前でキャッチするのか、根本的に理解していないことになる。今一度、14記事の動画を参照されたい。
もう1つ。終動負荷型は、体幹の回転力を有効利用でさないという欠陥がある。これについては47記事を参照されたい。
さらにもう1つ。2ビートキックは、プル開始直後に打たれる。決してフィニッシュには打たれない。これは何を意味するだろうか?そう、プル開始時に力を入れているからだ。私の2ビートキックを見れば明らかだろう。
水泳が終動負荷だと思う要因は、『プルはゆっくり動かし始め、だんだん速く動かしていくこと』つまり、『加速させること』という理論の影響がある。確かに理論は正しい。
よく誤解されるが、初動負荷であってもプル前半から後半に向けて手先は加速していく。しかも『惰性』にてだ。プル開始でいきなり手先の速度がピークにはならない。その理由は、末端に力は入っていない(→水をやんわりとらえることができる)からだ。あくまで末端をリラックスさせる体幹意識である。その為、体幹の筋出力から実際に手先へ力が伝わるのにはタイムラグが生じる。なぜなら、水は空気より密度が高いからだ。もし末端に力が入っていればズレは生じず、ダイレクトに伝わる。その為水を壊すことになる。
念を押すが、初動負荷及ぴ終動負荷とは、筋力発揮の仕方つまり、力の入れどころを言っているのであり、動作のスピードを言っているのではない。
あまり意識しないでいると、動作のスピードが速くなればなるほど筋力も大きくなるように錯覚しがちだ。これがゴムチューブを使った上腕三頭筋の筋トレという都市伝説である。
フィニッシュというのは、見かけのスピードは最速だ。しかし、必ずしも筋力は最大とは限らないのである。少なくとも体幹の筋肉は力は抜けている。以上、終動負荷については再考願いたい。
脱線したが、
ラクに速く!の究極は、カ感がないのにグングン前に進む状態だ。つまり、力を入れて押さない泳ぎということになる。これが、初動負荷型の特徴である。
注)『漕ぐ』と『払う』という表現は、田中育子コーチからお借りした言葉である。
というわけで、
フィニッシュ動作を言葉で表現するのは、本当に難しいのだ・・。
話が随分飛躍したが
内旋による反動(ドッジムーブメント)を使えば、最もラクに最もスピードを出せる。これがフィニッシュなのだ。
[切り返しの補足]
切り返しが起きる時には、必ず瞬間の入力がある。そして入力後即座にカは抜ける。また、入力と作用は必ず時間的なズレがあり、逆の動きを生ずる。
バタフライの第一キックや6ビートキックは必ず、股関節→膝関節→足関節へと力が伝達される。そして、股関節が屈曲する(膝が下へ移動する)時、足首は上へ移動する。逆に、伸展する(膝が上へ移動する)時、足首は下がり水を押し出す。ちょうどスネの真ん中に支点があり、膝と足部がシーソーしていることになる。下へ入力した時点ではまだ、足部は打ち下ろされない。入力を終了させた(力が技けた)時、初めて水を押すことが出来る。
私のバタフライ、クロールのフィニッシュは、この原理に基づいている。私がよく押し切るな!と言うのは、入力と作用のズレを生じさせる為である。入力はプル前半のことであり、主役は広背筋だ。プル後半の水を押さえるフィニッシュの時点で、既に広背筋の力は抜けているようにする。見た目には、手先が大腿付け根にある時、既に肘はリリースに入っているということである。つまり、前腕の真ん中辺りに支点があり、肘と手部がシーソーするわけである。この前腕がシーソーするには、肩の内旋+肘の軽度屈曲が必要になる。これは、ドッジムーブメントを生む必須動作とも言える。
ここで、内旋による反動の意味を述べる。
幾度も触れたが、フィニッシュとは、かわし動作でリリースに入る局面である。
腕を『伸ばし切る』のではなく『瞬間的に内旋し切る=払う』ことである。これが切り返しの極意だ。
TIスイムでは、反動でリカバリーするとよく指導するのだが、実際に反動が使えているスイマーは少ない。その証拠に意識してリカバリーしている。私から見れば不自然なのだが・・。
ではなぜ反動でリカバリーできないのか?それは、ドッジムーブメントを理解できていないからだ。ドッジムーブメントとはUの字形の円運動であることを理解していないからである。
Vの字のごとく直線で跳ね返るのだと思っているのだ。言いかえれば、意識的に『押して戻すのだ!』と。2拍子になっている。要するに手先意識なのだ。
私の場合、『体幹の回転カで漕ぐ!』と体幹を意識している。フィニッシュは意識していない。手は勝手に払われて戻っていく。リカバリーは、フォロースルーの結果生じるのである。
冒頭で述べたが、体幹意識で行う円運動は、惰性で腕が回っている。だからスムーズに戻れる。回し始めにカを加えれば(初動負荷)、後半は力が抜け、後は惰性で戻ればいいのだ。これがフィニッシュ(プッシュ)不要論である。
TIスイムは、スイムの動作を局面ごとに分解し、ドリル化してゆっくり動作で学習する。つまり、スイムで無意識で動く局面をすべて意識するのだ。そして、再度つなぎ合わせて完成させる。なぜわざわざ意識するのか?それは、今までに染み付いたクセを取るためだ。
誤解されるが、スイムではすべてを意識して動かすのではない。言いかえれば、すべての動作をゆっくり行うのではない。
ドリルはあくまでドリルだ。意識して繰り返し体に記憶させる。つまり、無意識でもその動きができるようにする。自動化するのだ。
スイムは自動化される局面が必ず存在する。それがフィニッシュである。
ジッパー(現在はTIスイムではスイングスケートと言う)も誤解されるが、『完成形』ではない。あくまで『ドリル』だ。このプル~リカバリーのつなぎ目がフィニッシュだが、ここを直線運動(終動負荷)にするか、円運動(初動負荷)にするかで違ってしまうのだ。要するに、『押し切る』か、『払う』かの違いである。どちらが自動化しやすいか?どちらが滑らかな自然な動きか?再考願いたい。
さて前述の自動化であるが、人間に備わっている本能である、『伸張反射』を利用することだ。
反動という行為は、伸張反射の活用も兼ねている。
腕を瞬間的に内へ捻ると、拮抗する外旋筋群は引き伸ばされる。すると無意識に外旋筋群が収縮し、リカバリー(外旋行為)に移行出来る。何も、意識してリカバリー行為をしなくともいいのである。↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm26541116
上腕を内へ捻るからスムーズに反動が使える。
ただし、この本能を引き出すには条件がある。ゆっくり動作ではなく、
すばやい動作が必要である。
内旋しながら『すばやく』プルした結果、自動的にリカバリーされるのである。これがドッジムーブメントを最大に引き出すコツである。
このように、フィニッシュというのは、円運動の通過点であり、無意識に外へスカルされる。これさえ理解すれば十分だ。
ここに、内旋による反動を学習する、とっておきの体操がある。
07記事でも紹介したサークルスクラッチ。あなたは知っているだろうか?大リーグへ羽ばたいたマエケンでおなじみの体操である。まだ見ていない人は必見だ。私のクロールにおける、フィニッシュ~リカバリーは、この動きをそっくりそのまま行っている。※入水~プルは参考にならない。あくまでフィニッシュ~リカバリーを真似ること。
この体操をマスターすれば解るが、反動をスムーズにするには、体幹の回転+肩甲骨の滑らかな動きが必須である(※注参照)。クロールをきれいに泳ぎたい人は、ぜひサークルスクラッチをお勧めする。
(※注)
意外と知られていないが、ATNRには2つの作用がある。一般に知られているのは、後頭部側にある腕の肘が曲がることだ。ではもう1つ。
後頭部側の肩甲骨が挙上する。
先程行った、肩の上げ下げ(肩をすくめる動作)だが、これが無意識で起こるのである。
例えば、首を右に回せば左の肩甲挙筋と僧帽筋上部が伸ばされる。すると、両者は反射的に収縮し、結果的に肩のすくめが起こる。
さらに見落としてならないのは、前方へ肩甲骨が巻き込むように挙上する点だ。
この肩甲骨の前方へのスライド(肩甲骨が肋骨から浮き上がる)と、内旋という行為はとてもマッチする。これが実は、テンポを上げた時、ラクに高速リリース及びリカバリーを行うドッジムーブメントの正体である。
じゃあ、バタフライは?内旋しきればいい。その為に外側へリリースする。内旋すると肩甲骨がとても動きやすくなる。つまり、抜き上げがラクになる。間違っても、外旋させて肩甲骨を背骨に寄せてはならない。
よく、リリースは小指から!と言われないだろうか?注意せねばならないが、背中方向に小指から抜き上げると外旋して肩甲骨が寄ってしまう。外側へ小指から抜き上げれば内旋されて脇の下が開き、リカバリーしやすくなる。
あのマイケルフェルプスのバタフライを覚えているだろうか?彼のフィニッシュ時、肩甲骨はぐわっと浮き上がるだろう。これがまさにドッジムーブメントによって生じた結果だ。
手先はフィニッシュ(後方へ移動)していても、肩は既に前へ移動している。
プル後半から既に抜き上げが始まっている。
なぜなら、プル後半には肩と肘(上腕)が水面上に出るからだ。
これも意外と気付かない事だが、水面上に出た物体には重力がかかる。この水面上へ出た上腕がその場にとどまるというのは、ボディが下へ堕ちるということだ。
特に後方へプッシュすると、留まるどころか後方へ体重が移動する。その理由は、プッシュというのは、肩甲骨の下制により上肢全体がバックするからだ。さらに脇が閉まり肋骨が下がる。結果、体幹自体の重心もバックするのだ。
そうならぬよう、プル後半に水面に出た上腕を前に移動させるのだが・・
その為には、広背筋の力を抜いて(肩甲骨の下制を解除して)上腕を内旋させる必要がある。
つまり、プル前半にのみ(広背筋による)肩甲骨の下制がかかるようにする。するとプル後半(フィニッシュ時)に、下制から開放された肩は前へ移動しやすくなる。そして、手先だけを後方へ動かすことができる。ちなみに、走動作の腕振り(後ろに振る動き)も全く同じことが言える。
まっすぐプッシュするだけより明らかに効率がよくなる。このように、後半に無駄な力を抜き、内旋を有効活用できるか(初動負荷のプルができるか=ドッジムーブメントを起こせるか)がラクに速く泳げるか否かの別れ目となる。
乱暴な言い方だが、見方を変えればプルそのものがリリース動作なのである。先に述べたように、プルと同時に肩が水面上に出るからだ。続いて肘、手先がリリースされる。これは、体幹が移動するからだ。バタフライは特にそう。初動負荷にてプルを開始すると、即座に肩から順次リリースが始まる。その結果、リカバリーもラクになる。
再びクロールに戻ろう。
私のフィニッシュは、体幹の回転+内旋しながら引くという、2つの回旋動作中に起こる、2つの伸張反射を活用しているのである。だから、筋力のない私でも息を上げず速くストロークできる。
念の為であるが、ATNRというのは首の回旋中に起こるのではなく、回旋し終える時に出現する。つまり、ローリング終盤すなわち、フィニッシュ時だ。もしこの時、後方へ押し切ると、せっかく肩甲骨が挙上しようとしているのに(浮き上がろうとしているのに)、
リリースにブレーキをかけていることになる。
脇を締めて押し切ると、上腕が外旋し二の腕が疲労する。肩甲骨もロックされる。
フィニッシュ(反動でリリースに入る動作すなわち、ドッジムーブメント)は、脇を締めずに、内旋させて肩甲骨をフリーにすること。外に開くこと。決して背骨に寄せないこと。二の腕に力を入れないことである。
これがラクに速く泳ぐコツである。
要は、体幹意識で泳ぐということだ。
手を後ろへ!後ろへ!(プッシュ!プッシュ!)ではなく、肩を前へ!前へ!である。
念の為だが、プル開始は肩を足元へ下制することを忘れないように!
というわけで、反動というのは伸張反射を引き出すとうまくいく。
再度、[反動]という文字をよく見てほしい。
筋肉が瞬間的に反対の動きをするのである。
く追記>
今までに述べたドッジムーブメントは、走動作の腕振りでも生じる。クロールやバタフライのフィニッシュは、走動作の『斜め後ろへ腕を振る』のと何ら変わりはないことを強調しておく。
トライアスリートであれば、ランの腕振りから、クロールのフィニッシュに応用するのも1つの方法である。
7 STNR
バタフライというのは、動物的な本能が最も発揮される泳法である。
人間は、アゴが上がると首と背筋が緊張し、上肢は伸展、下肢は屈曲しやすい。逆にアゴを引くと腹筋が緊張、上肢は屈曲、下肢は伸展しやすくなる。
前回の記事にも登場した対称性緊張性頸反射 (STNR)である。これをうまく利用して推進力を上げるのだ。
グライド時は、やや前を見て(アゴが上がる)腕を伸ばす。もちろん胸を張る。(※背中が反る。腰は反らせない)そしてキャッチで、首を緩めると背中がリラックスし、肘が曲がり、プルしやすくなる。そのままフィニッシュまでアゴを引いていると、とても力が入りやすいのである。 なぜか? それは腹圧が入るからである。しかも腹圧というのは、息を止めたほうが最もかかる。要するにノーブレがプルに力が入るのである。なぜバタフライ選手は、毎回息つぎではなく、2ストローク1ブレスなのか?本当の秘密が実はここにある。
このプル時、アゴが上がると力があまり入らなくなる。息つぎを入れると、どうしてもアゴが上がったプルに陥りやすいのである。
しかし、この本能を理解すれば何をすべきかが見えてくる。
そう、首をリラックスすればよい。
ついでに・・
私の場合、短距離でも2ストローク1ブレスは行わない。その理由は頭の重みを推進力として利用するからだ。頭を水面上に出すと重力が使える。
クロールで言えば、入水時45°に肘を構えるサメのポーズである。あれは腕の重みを最大限に推進力として利用しているのだ。
さて、
呼吸時に力を入れて頭を起こすとプルに力が入らない。そこでで私は、首をリラックスすることを心がける。というより、背中をリラックスさせる。くり返し述べているが、背中をリラックスさせるのだ。すると、自然な動きが出てくる。そう、ねこ背になるのである。
ねこ背になるとボディポジションは上がりやすくなる。
その為、頭を持ち上げなくともラクに息つぎできる。
再びマイケル フェルプスのバタフライである。彼の泳ぎの特徴は、息つぎ時に背中が大きく上がることである。それなのに、アゴは水面すれすれだ。もちろん、リカバリーアームもすれすれだ。
なぜこのように″這う”ことができるのだろうか?それは、完全に背中をリラックスしているからである。彼もまた、ねこ背なのだ。
ねこ背になると、自然にアゴが上がる。
意外と気づきにくいが、陸上で背中をリラックスさせていると、ねこ背ぎみになりアゴは上がるだろう。実はこれが彼の息つぎのフォームなのである。彼は、うなじに力を入れて頭をもち上げてはいないのだ。軽くアゴを突き出しているのである。一見、かなり疲れそうだが、実はムダな力を一切使わない合理的なフォームなのである。
STNR。正確にはアゴを上げると背中が緊張するのではなく、頭を持ち上げるから緊張するのだ。だからリラックスが重要なのである。
では、
冒頭のうねりで述ぺた『上半身のシメとゆる』。すなわち胸張りと猫背だが・・
胸を張るとは、背中の筋肉に力を入れる行為である。前を見ればうなじに力が入り、自然に背中は力む。対し猫背は・・背中の筋肉を緩める行為である。だから、首をリラックスすれば、背中もリラックスする。
冒頭のビデオと同じで申し訳ないが、息を吸う時は背中がとてもリラックスしていることがわかる。さらによく観察すると、プル~フィニッシュ時も猫背であることが解るだろうか?
あっ!
プルというのは、『背中の筋肉を緩めて』すべきなのだ。
この時、肩甲骨はどうであろうか?外へ開いていないだろうか?外へ開くと、ゼロポジションになり、とても力が入りやすくなる。私は、プルでは体を前に乗り出す意識で泳いでいる。だから反らない。
バタフライがあまり得意でない人は、胸を張ったまま(背中をリラックスせずに)プルしている。肩甲骨はというと、背骨に寄せてしまっている。これではプルに力が入らない。これは、水上へ上がる意識が強すぎるからだ。
バタフライというのは、上へ上がるのではない。前へ飛び出すのだ。
では、体幹の動きをまとめる。
水中で伸びる時は胸を張る=肩甲骨を寄せる。
水上に出る(プル)時は猫背になる=肩甲骨を外に開く。
これが自然なうねりにも繋がるのだ。
もう1つ。初級者が水中へスムーズに潜れない原因は、水上で胸を張ってしまうことにある。
余談だが、水泳コーチの教本に『コブラ』というエクササイズが掲載されている。肩甲骨の柔軟性を高めて肩の障害を予防するのが狙いだ。
うつ伏せで気をつけになり、胸を張り肩甲骨を背中に寄せる(上腕は外旋、小指が上になる)ポーズなのだが、一見すると反るバタフライのフィニッシュに見える。
某クラブの指導者が、立位にてシャドースイムしていたのだが、フィニッシュが『コブラ』なのである。これは、スイミングスクール全般にも言える。
なぜこのようなことが起こるのか?
それは、シャドー時の背骨の向きに起因する。
立位のシャドーには、進行方向を天井とする型(背骨を立てる)と、前方とする型(背骨を寝かせるつまりお辞儀をする)の2タイプある。
大概のスクールで行うシャドーは、背骨の向きがあいまいだ。どちらかと言えば立っている。それだけではない。進行方向もあいまいだ。習う側の意識は、特に何も言われない限り、進行方向は前方である。ここが問題だ。背骨が立った状態でバタフライのストロークを行うと、体の前後(腹~背中)に動かすことになる。このまま 後 方 へ かききるつまり、背 中 方 向へ押しきると?フィニッシュは、背中が反って(肩甲骨を寄せて)しまう。しかも・・
体幹の動きも逆になるのだ!!
これで背中の反ったバタフライが完成する。
背骨を立てるなら、天井を進行方向とし、上下(天井~床)へと動かすことである。こうすると、フィニッシュは当然 足 先 方 向 になる。肩甲骨を寄せる動きもなく、背中がリラックスできる。これが本来のラクなバタフライの動きてある。
もう1度おさらいする。
背中方向(肩の伸展)へプッシュすると、肩甲骨が背骨に寄ってロックされる。結果、惰性を利用できなくなりリカバリーが遅れる。
足元方向へ内旋していけば、自然と肩の外転となり、肩甲骨が外へ開いてフリーになる。だから惰性ですばやくリカバリーできる。
バタフライは、とにもかくも、すばやく前に戻せるかが、非常に重要なのである。このような細かい説明は、いかなる指導書にも載っていない。
現在私は、4泳法全て天井を進行方向とする(直立する)シャドーを行うようになった。理由は、前方を進行方向とすると(お辞儀をすると)腰がつらいからだ。また、下半身との連動を重視する為でもある。さらにバタフライのうねりを再現できるメリットもあるからだ。
というわけで、水泳界の都市伝説は、あいまいなシャドースイムが生み出すのである。
だから、バタフライの指導理論もあいまいなのである。 これでは大概の生徒さんが誤解するのも仕方のないことだ。いつまで生徒さんにつらい思いをさせているのか・・心当たりのある指導者はぜひこのことに留意されたい。
ついでに・・ストリームライン時の背骨は、立位同様、緩いS字である。背中は決してまっ平らではない。カーブを描いている。私は、まっ平らに対比し、便宜上ねこ背と言っているのだ。
さらに、立位で重心線上に自然にまっすぐ背骨を伸ばせば、肩甲骨は軽く外に開くはずである。軍隊行進のごとく力を入れて背骨に寄せないこと。
えっ?そんなこと言ったら、両肩が前に出るじゃん!ダメでしょうが!
それは、肋骨が下がっているからだ。ドローインすれば、適正な位置に肩甲骨はおさまる。
本当は、肩の障害予防には、『コブラ』よりも、肋骨を広げる『ドローイン』が効果的である。肩甲骨の土台である胸椎が適正位置になければ、いくら肩甲骨をいじくっても無駄である。
というわけで、背中をリラックスすれば、頭を持ち上げる必要がなくなる。
さて・・対称性緊張性頸反射。ここで気付いた人もいると思う。
クロールも、自然にアゴを引いていたほうが(プール底を見たほうが)プルに力が入るのだ!
私は、バタフライを泳いで初めてこのことに気が付いた。
余談だが、小学生の子供を持っている方は、体育に関する悩みを持ってないだろうか?悩みに多いのが逆上がり。これが出来ない理由。ズバリ、アゴが上がっているからだ。対称性緊張性頸反射。
逆上がりは、腕を曲げ、腹筋に力を入れないと出来ない。アゴを引けば必ず出来るようになる。また、腕相撲も、アゴを上げると負ける。逆に、逆立ちは後ろを見ると(アゴを引くと)出来ない。まあ、必ず地面を見て(アゴを上げて)歩くとは思うが・・念の為。
8 バタフライキック②
45記事のバタフライキック①続編である。
私のバタフライを見ていると、第1第2の両キックが入っている。そのせいか、普通のバタフライと違いはないように思われる。しかし、私は意識してキックは打っていない。ウソだ!そう思うかもしれないが本当だ。先程のビデオと同じで申し訳ないが↓
うねりに注目してほしい。よく観察すると、肩、腰、足先の三拍子でリズムよく入水しているのが分かる。特に立位から水中に潜るところに注目するとさらに分かりやすい。これはバタフライ独特の動きでもあるが(45記亊のドルフィンキックも同様)気付いた人もいると思う。
第2キックというのは、上半身が入水した結果生じるのだ。つまり意識しなくとも勝手にキックが入る。これを理解すると、とてもラクに泳げるのだ。
プルとのタイミングも自然に決まる。実は、第2キックが入る時はフィニッシュではない。キャッチ直後なのだ。ここが、一般の泳ぎとの違いである。
では、プルとキックと息継ぎのタイミングについて。
一般的な泳ぎは、フィニッシュにキックを合わせるとよく言うが、これでは遅すぎる。別の見方をすると、プルが速すぎるのだ。
大抵のスイマーは、入水した腕を斜め上方に向けて伸ばしている。入水即キャッチ、つまりグライドをしていないのである。これは、クロールでも同じことが言えるが、『がまんの手』が出来ていない。それと同時に背中に力が入っている。つまりタメを作っていない(リラックスしていない)ということだ。
すると肩や背中が水面に出にくくなり、ボディポジションの低いバタフライになりやすい。だから息継ぎで無理やりアゴをつき出すことになるのだ。首が疲れる為、長く泳げないのである。
は?バタフライ選手はフィニッシュでキックしてるよ?
これは本当によく誤解されるので、詳しく解説する。
選手は泳ぐスピードがとても速い。その為、キャッチしてプルする前に、体がすでに前へ移動している。つまり、プルに力を入れる前に手が後方へ移動してしまうのだ。キャッチ直後にキックを入れているつもりでも、実際にキックが入るのはフィニッシュになる。結果的にフィニッシュにキックが入るのだ。
このことは冒頭の水中映像を見てもわかる。フィニッシュに近い局面にキックが入っている。念を押すが私のキック意識はキャッチ直後だ。その証拠に『うねりのバタフライ』はゆっくりの為、キックはキャッチ直後に入っている。意識は同じでも、泳速によってかなりタイミングが変化するということ。速く泳ぐ時は、体が前に移動することを計算に入れないとならないのである。
さらに・・選手がフィニッシュで押し切っているように見えるのも、泳速が上がって体が前に移動しているからである。力を入れる意識はキャッチ直後だとしてもフィニッシュになる。
ついでに・・
選手のキャッチはなぜ、ハイエルボーになるのか知っているだろうか?
これは、上腕三頭筋の力を抜くからであるが・・泳速が上がっている為、力を抜いた途端に前方からの水圧により前腕が後方に押されるのだ。決して力を入れて曲げているのではない。上腕三頭筋を緩めた結果、肘が曲がるのである。後はそのまま、肘をリラックスしたまま広背筋で引くだけでよい。
しかし、泳速が低いのに力を入れ、形だけハイエルボーにすると何が起こるか?広背筋でプルした途端、肘が落ちるのだ。
ハイエルボープルは、泳速が上がるから可能なのである。
このように、泳いだことのない第三者がビデオ分析をすると、とんでもない解釈をしてしまう。真相は、実際に泳いでいる人にしかわからないのだ。
話が飛躍したが、
跳び箱を思い出してほしい。飛び越える時、出来るだけ前(プル前半に該当)に手をついて力を加えるだろう。これが初動負荷だ。
後ろ(フィニッシュに該当)に手をついていたらつんのめるだけで前に体が進まない。これが終動負荷だ。
力のピークを前に持っていけばすばやく水面に顔を出すことが可能になり、戻しも速くなる。
冒頭の泳ぎを見ると、プル前半で頭が上がり始め、フィニッシュ時に息を吸っている。(注 私の場合、力のピークは前半にもっていく為、フィニッシュは力がすでに抜けている。だから息が吸える。力を入れるフィニッシュでは息は吸えない。呼吸の詳しいことについては49記事参照)
手先がリリースする瞬間、息継ぎはすでに終えており、スムーズに頭が戻っていくのが見て取れる。常に前重心意識なのである。
でもさ、選手はリリースやリカバリー中もアゴを突き出して息吸っているじゃんね?これでは遅いの?
これは先程述ぺたように、泳速がとても上がっている為、フィニッシュで押し切る形となるからだ。もちろんフィニッシュでお腹に力が入っている為、どうしても息が漏れていく。つまり息を吸えない。結果的に力を抜くリカバリーで息を吸うことになる。だからアゴをつき出すのである。泳速の遅い一般スイマーのつき出しとは意味が違うのだ。選手のタイミングは決して間違いではない。筋力を使って速く泳げば必ず選手のようなタイミシグになる。
じゃ、結局どっちが正しいの?
あなたは、選手のように力を使ってトップスピードで泳ぎたいのだろうか?それとも私のようにラクに泳ぎたいのだろうか?その違いである。
先程のグライドに話を戻そう。グライドとは前重心になる瞬間なのである。バタフライは前後の重心移動を使って泳ぐ。しかし、このグライドがないと後重心のまま、つまり下半身が沈んだ泳ぎとなり、ちっとも進まなくなる。
では、ここで注意点を1つ。
スムーズに前重心にするには・・
頭と腕の入水は同時であること。
頭が先に入ると、重心移動がバラバラになってしまう。いくら頭を先に入れても、腕が入水しないことには前重心にはならない。
というわけで、どんなに短距離でも一瞬のグライドは必要だ。これがないとラクに泳げない。
『うねりのバタフライ』を、もう一度観察してほしい。第2キックはキャッチ直後である。つまり、プル開始時にダウンキツクが打ち下ろされる。このタイミングに打つと、跳び箱のごとく、グーンと前方への推進力が増加する。そして、打ち下ろした後は体がまっすぐになり抵抗が少なくなる。
プル全工程において、体が一直線になる。
だから、プルは力を必要とせず、ラクなのである。
第2キックは、バランスを取る為というより、
プルを助ける為に打つのだ。
これを実現させるには、グライドするまを取ることである。
このタイミングは、クロールも全く同様。キャッチ直後に2ビートキツクが入る。だから、力を入れてかかなくてもラクに進む。
さらに入水の勢い(惰性の力)が合わされば、
文字通りか か な く て も泳げるのである。
バタフライのプルが疲れる知られざる原因。実はフィニッシュ(プル後半=終動負荷)でキックを打つからだったのだ。常識通りにやっている限り、ラクにはならない。
[補足]本来のフィニッシユとは、プルの終わりを意味する。一般的な指導では、プル後半の、上腕三頭筋での『押し』を指すことが多い。プッシュとも言う。
さらに・・第2キックを、フィニッシュに合わせて意識的に打つと自然なうねりにブレーキがかかる。つんのめって勢いよくリカバリーの腕が空中を舞う。第2キックは意識せず自然に流せばいい。要は、末端意識(キック)ではなく体幹意識(上半身)で泳ぐのである。
そして・・もっとラクに速く泳ぐには・・
胸をしっかり沈めることにより第2キックの推進力も増加させることができる。調子がどうも良くないなと思う時は、間違いなく胸の沈み込みが不足している。ぜひ沈めることを試みてほしい。他の泳法にはない、この『沈み込み』がバタフライの原動力である。
次に第1キック。これも実は意識せずとも勝手に打たれる。しかも鋭く。なぜかわかるだろうか?それは、冒頭で述べたように、シーソーするからだ。腰を支点に上半身が上がり、下半身が下がる(この点は平泳ぎも全く同様)。上半身が水面上に出れば、下半身は必ず沈む。これにつられ、膝も必ず曲がる。
身体というのは無意識にバランスを取ろうとするのだ。これも本能なのだろう。そして入水直後、膝は必ず伸びる。動かすまいとしても勝手にキックが入る。ちなみに、第1キック直前に膝が曲がるのは、全身の力を抜いているから。タメているのである。
第1キックは、重心を前に移動させるすなわち、グライド=沈み込みをする為に打たれるのだ。
以上が、バタフライの知られざるメカニズムである。
今回は、競泳のバタフライについて述べてきた。
キックなしでもバタフライは泳げる!
45記事でもこのタイトルを書いたが、その根拠を述べたつもりである。
バタフライは、胸郭が動かせるようになればなるほど、とてもラクに速く泳げるようになる。このことは、以前胸郭が固まっていた私が実証している。
胸郭が動かせるつまり、胸椎の伸展が出来るようになれば、沈み込みもラクになる。その為には肋骨が広がらなければならない。バタフライをラクに泳ぐコツ(骨)も肋骨なのだ。
競泳のバタフライ選手が、何kmも延々泳ぎ続けられるのは、胸郭がよく動いているからである!ことを改めて実感させられた。除々に胸郭が動くようになってきた私は、ついに 競 泳 のバタフライで1500mを泳げるようになった。ちなみに『グライドバタフライ』は、胸郭がまだ固かった頃に編み出した泳ぎである。
というわけで
胸郭の動き(型)こそがバタフライのフォーム(形)を生み出しているのである。胸郭の動き(型)こそがバタフライキック(形)の正体なのだ。そして、4泳法中最も動物的な動きが色濃く出るのがバタフライだ。私がバタフライの虜になった理由は、このように本能のままに泳げるからだ。人間の本能が生み出した泳法とも言える。
だから皆さんの目には、バタフライはカッコイイ泳ぎに映るのかも知れない・・。
B ラクに長く泳ぐ『グライドバタフライ』
注)この動画では、あくまでデモとして最少ストローク数で泳いでいる。実際の長距離では水中ビデオのテンポで7ストロークで泳ぐ。↓
これは、超距離に特化させたバタフライである。文字通りグライド(潜水)を長くとる。このまっすぐなグライド姿勢が、最もラクに進む為に重要である。前回45記事で紹介したように、筋力を使わず、浮力と重力だけで泳ぐ。
そもそもバタフライというものは、競泳ルールの『体の一部が常に水面上に出ていなければならない』に乗っ取った、水没せずに泳ぐ泳法だ。しかし、初心者や高齢者は泳速が遅い為、必ず水没してしまう。実は、常に水面にキープして泳ぐには、泳速を上げる必要がある。もちろん体力を必要とする為、きつく感じてしまうのだ。ならば、積極的に水没(潜水)すればよい。
競泳が目的ではないのだから。
もし、平泳ぎのように、水没が許されたならば、バタフライフリークは格段に増加することだろう。筋力のない私が2000m泳げるということは、それだけ初心者や高齢者に向いているという証拠でもある。バタフライの常識(ルール)にとらわれているから、長く泳げないのである。
バタフライとひとロに言っても、目的によりかなり違うことをご理解頂けただろうか?
速くならばアメンボのように水上を這うように泳ぐ。
長くならば潜水艦のように水中を潜るように泳ぐ。
しかし、どちらにも共通することが一つだけある。
フラットであること。
バタフライの基本姿勢はフラットであることだ。
見た目に囚われてはならない。
意識はまっすぐなストリームライン。
上へ泳ぐのではない。
下へ泳ぐのでもない。
前へ伸びて泳ぐのだ!
48 2ビート背泳ぎ
今回は、前から予告していたとおり、オリジナルの背泳ぎを紹介したいと思います。
私は現在、『常識』に囚われない泳ぎを追求している。
一般的に、2ビートでの背泳ぎは無理!と言われます。連続キックというのは、下半身を浮かす役目がある。キックを打ち続けることにより、下肢の沈下を防ぐことが出来る。
しかし、背泳ぎもクロール同様腹圧を入れ、あることをすれば足を浮かして泳ぐことは可能です。
私がそれを実証しているように、背泳ぎでも2ビートは可能です。
1 指先までまっすぐなリカバリーアーム
背泳ぎは、遠心力を最大限に生かします。
そのため、最も重視するのは、フィニッシュではなく、リリースなんです。見た目にも、このリリースが鋭い。
腕を鋭くリリースして天高く伸ばすと、遠心力により肩甲骨が体の外側へ開いてくる。そしてそれにつられて上半身が水面上に引き上げられ、ボディポジションが高くなる。つまり、肩の位置が高くなるんです。
一般のフォームというのは、リリース時は手首の力を抜き、リカバリー中は手がだらんと下がっています。リカバリースピードも最初からゆっくりです。
これでは遠心力も働かず、ボディは腕の重みにより沈んでしまう。
皆さんは、ストレートアームの本当の意味を考えたことはありますか?
遠心力。
背泳ぎは、これを最大に活かすためにストレートアームで泳ぐんです。
リカバリーアームが体をより高く、より前に引っぱるんだ!
こう意識すると自然に指先までまっすぐ伸びます。
2 2ビートキック
※初心者の方は、必ず連続キックで泳ぐことをお勧めします。いきなり2ビートをやると、体幹の軸がかなりブレます。2ビートは、連続キック(6ビートでなくとも可)で背泳ぎが出来るようになってから挑戦して下さいね。
前回やぎさんからご質問を頂いてから、もっと分かり易いキックにならないか試行錯誤しました。その結果.独特の2ビートが誕生した。このキックは、4ビートに比べ、動画を見ながらイメトレがしやすいと思います。というわけで、前回4ビートで説明しましたが、2ビートに訂正させて頂きます。
私は基本、クロールの2ビートの要領で足を動かします。(22記事参照)つまり、蹴った後必ず両足を揃える。
膝の緩めと蹴り上げがワンセットです。どういうことかと言うと・・右のダウン→右のアップ、そして休みを挟み左のダウン→左のアップとなります。メインはあくまで足の甲で蹴るアップのほう。それは、クロールの2ビートを背浮きでやっているだけだからです。
背泳ぎもクロール同様、腰の回転時は意識しなくとも、自然に膝が緩むんです。だから、アップキックだけを意識して打てばいい。
[補足]水泳のキックのイメージについて・・誤解しやすい表現として、サッカーのキックがあります。
サッカーボールは蹴る前に、一度後方に足を振り上げますよね?力を入れて大きく膝を曲げています。そしてボールにインパクトするのがメインキックです。これまた、前へ振り抜いて(フォロースルーして)います。これは水泳では誤ったキックの打ち方です。あくまで曲げ伸ばしではなく、膝を緩めて打つ。
下のビデオは、サッカーキックになっており、両足が開いてしまっています。
注意したいのは、クロールの2ビートと、背泳ぎの2ビートは使用目的が全く違うこと。クロールは、腰の回転を補助する為に打つんですが、背泳ぎの場合、遠心力を使ったグライドに勢いをつける為に、推進力を目的とし打ちます。なので、斜め内側に打つのではなく、後方に水を押します。斜め内に打とうとすると、必ず横蹴り(サイドキック)になり、大きく左右にブレます。上級者でさえもブレるくらいです。中には、入江選手に憧れサイドキックを打ちたい人もいるでしょう。しかし、サイドキックのイメージは払拭したほうがいい。意図的にするものではない。まっすぐ後方へ押す。それでもローリングにより、勝手にサイドキックになるのでご安心を。
さて、打つタイミングは腰が回転した直後です。
フィニッシュを終えた右手をポーンと天井に向かって放り投げるようにリリースする。これに同調して右足もポーンと後方に蹴ります。
蛇足ですが、皆さんは『なんば歩き』という言葉を聞いたことはありますか?人は普通、右足(右腰)を前に出す時、左手(左肩)が前に出ますよね?つまり、身体を捻るんです。
なんば歩きというのは、右足を出す時、左腰と左肩を前に出します。身体を捻らず同側に力を入れるんです。(補足参照)
特に階段や急な上り坂を上る時には、同側パワーの素晴らしさが実感出来ます。
試しに階段を昇る時、同側の肩と足を斜め上に出してみてください。同時に、反対の肩と足を同側で下へ踏ん張ってみてください。
これは左右に重心を乗せ替えるためと言っていい。
普通の昇り方より、明らかにラクですよ!コツは右足を上げる時は右肩甲骨と肘を上げるようにする。左手は左の足先に向かって伸ばすことです。というわけで、なんば式だと一段や二段飛ばしは、いとも簡単に出来ちゃいます。
[補足]
『なんば歩き』という概念が提唱された当時は、『右手と右足が同時に前へ出る』と言われた為(私も)大混乱を招いていた。しかし現在は、『右足を前に出す時、左肩左腰を前に出す』というのが正論である。なんば式であっても、右足が前に出ると左手が前に出る。ただし、階段を上る時は、右手右足は同時に前に出ます。私はそれを実証しています。
つまるところ、なんば式とは、腕と足の関係というより、上半身の重心の動きと下肢の動きを連動させた方法。その肩の動きは09動画のヤーさん歩きにとても似ています。やはり肩を前後(肩甲骨の上下動も含める)に揺らしたほうが下肢と通動しやすくなる。腕振りは意識しないほうがスムーズです。極端に言えばポケットに手を入れたままでもいいくらいです。
このなんば式からも、水泳に応用できるヒントがいくつがあります。
体幹主働。別の表現をすると、重心移動のことです。特に上半身の重心の動き(これを可能にするには肩甲骨の上下動が必要)が下肢をリードすることによりラクになる。
体幹(特に腹部)は捻らない。同側で力を入れる。
体幹意識。腕は肩の動きについていくだけである。
話がそれましたが、背泳ぎの2ビートも体の扱いは同じです。
体を捻らず同側に力を入れる。
なんば歩きはともかく、背泳ぎのイメージとしてはこれでいい。
そしてキック後は足を伸ばしたまま惰性の力でグライドします。
意識としては、グ-ンと手を前に伸ばす!です。
クロール同様、グライドを重視するのが私のスタイルです。この時が最も推進力が出る。
3 着水動作
私の入水は、入江選手の入水を参考にしています。正確に言うと、腕全体で着水動作をしており、その流れで手の甲から入水します。泡がほとんど手につかない。また、手の甲が入水した時は肩がまだ高い位置にある。つまり、まだローリングをしていないんです。手の平を上にし(ニュートラルポジション=回内回外中間位)、片手万歳している。一般の泳ぎに比べて、入水時の肩の高さが際立っているんですね。
では一般の泳ぎは・・肩の延長上に小指入水させるには・・特に肩が固い人はローリングをしながらでないと不可能です。まずローリングにより肩が入水し、それから肘が入水し、最後に手が入水する。
手が入水する時点で既に肩が水面下に沈んでいます。
水中から見ると肩が一番低く手先が高い。クロールとは真逆です。この為、入水抵抗がかなり大きい。だから、惰性の力で滑ることが出来ないんです。
背泳ぎのスピードが思ったより出ない理由・・実はここにあるんですね・・。
さらに、肩峰と上腕骨頭がこすれてインピンジメント症候群を起こしやすくなります。これは、肩関節を内旋したままだからです。
[補足]
対策として、小指入水は必ず肩の延長線より外目に入水させます。その理由は、ゼロポジション(47記事参照)になるからです。肩が硬い人は外目がおススメ。
じゃあ、なぜあなたはそれをやらないの・・?と突っ込みたくなると思いますが・・
私は、幅の狭い相互通行のコースで泳ぐ為、外目入水だと、必ず手先がコースロープに接触するからです。それを防ぐ為、どうしても肩の延長上に入水せざるを得ないのです。
再び・・一般の泳ぎは、手が入水した時は既にローリングが終盤て、手の平が下を向きます。これは、予めリカバリー時に手の平を外に向けた(肩の内旋と前腕の回内をした)状態で小指入水するから。さらに深い位置に手が沈み込み(押さえ込み)、すぐキャッチに入る。私がこれをやると、肩の内旋域がかなり狭い為、余計な力みを生じる。また、ゼロポジションから大きく外れており、グライドもやりにくい。そして、肩関節の一番弱い部分に力が入り、とても違和感が残ります。
さらに、プルの予備動作として一旦、手の平を足先に向け(回外させ)肘を曲げる必要がある。結果的にS字プルになります。
一方、入江式は・・着水し、手が入水時初めてローリングが開始され、ローリングにより手の平は外を向く。前段階のリカバリーの途中で手の平を外に向けない(肩関節の内旋と前腕の回内をしない)。
内旋と回内を止めると無駄な力みがなくなる。
そのおかげでラクに入水出来るんです。さらに、頭より前方でキャッチもできる。スカーリングも要らない。ほぼストレートプルになります。
また、肩を高く保ち手の甲着水動作をすると(ローリングを、手の入水ぎりぎりまで行わない、すなわちプルを遅らせること)わきの下から手先まで、腕が水面と平行になり、抵抗が最も少なくなります。だから、滑るように進むことが可能なんです。見た目にはキャッチアップに近くなる。
従来、背泳ぎの(左右の腕の)タイミングはほぼ対称的でしたが、実はこのスタイルそのものが下半身の沈む原因です。背泳ぎの常識で、私にとって?なのがこれでした。なぜグライドをしないのか・・?クロールなど他の泳法はグライドが大切と言いながら、なぜか背泳ぎはグライドせず即キャッチするように言われる。
私から見れば、キックを打ち続ける短距離のクロールを教わっているようなものです。そのスタイルでゆっくり泳ぐことに違和感があります。
私の腰の位置がなぜ、2ビートなのに高いのか不思議に思いませんか?
それはズバリ、キャッチアップに近いから。クロールでも話したように、足を浮かせるには、片方の腕が常に前に伸びていること。グライドです。私は、グライドしているから、6ビートを打たなくとも浮けるんですね。
もし私が従来のタイミングを用いて2ビートで泳いだら、下半身が沈みます。
もう1つ、これも私にとって?ですが、小指入水。その目的は、即キャッチする為。もちろんテンポは上げやすいですね。しかし・・
先程のビデオでも言いましたが・・
小指から入水は、リカバリーで上腕を内旋します。すると、私のように可動域の狭いスイマーはロックがかかってしまう。(選手のように内旋域の広いスイマーなら間顕ありませんが)
手前(肩幅よりやや外目)に入水する為ストローク長が短くなる。つまり、ストローク数が増加する。速いキャッチとあいまって、短距離向きの泳ぎになる。
従来のタイミングで行えば、体幹の回転力を効かす局面もフィニッシュに限定される。腕力に頼った泳ぎになります。
ついでに・・
小指入水をやると、肘が曲がった状態で入水する例が多いですよね?外目に入水!と意識しても曲がってしまう人は、非対称性緊張性頸反射(ATNR)が働いている可能性があります。どういうことか?
背泳ぎでは、肩が水面上にある時は肘が伸びやすく、肩が水中へ移動するにつれ、肘が曲がりやすくなる現象です。もっと具体的には、ローリングしながら入水しようとすると、肘は曲がりやすいということです。それを抑制するには、入水する直前までローリングしないようにすることです。入江式の長所が、実はここにあります。
私が入江式で泳いだ感想ですが、とにかく
肩がとてもラク!
これは十分に試す価値あり。
従来からあるフォームと、入江式の伸びるフォームを泳ぎ比べてみればその差は歴然!!
入江選手は、こんな気もち良さを味わいながら泳いでいたとは!!
皆さんも入江選手の泳ぎを研究して泳いでみると、また新たな発見がありますよ!
追記 背泳ぎのメカニズムについては、45記事でも詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。また、背泳ぎのフィニッシュについては、53記事で述べています。
47 クロールにおけるゼロポジション 及び 初動負荷
[お知らせ]
初動負荷及び終動負荷について、医学的な視点で述べさせて頂いた。ぜひ一読を。
※ここではゼロポジションに力のピークを持っていくことを初動負荷、フィニッシュに力のピークを持っていくことを終動負荷と定義します。
今回は、25~43記事のキーワードをいくつか拾って書いてみました。そして新たに『ゼロポジション』というキーワードを加えてみたところ・・
では早速ご覧ください。
〔おことわり〕
ここで述べている内容は、『整形外科領域でのゼロポジション』です。水着でフラットに浮く話とは一切関係ありません。予めご了承下さい。
なお、フラットに浮く為のお話は、46記事で紹介されています。
1 本能について
四足獣は、内旋しながら地面を蹴ります。そして、力を抜いた反動(本能)で外旋しながらもとに戻します。つまり、内旋にしか力を入れない。
だからバネの効いた走りが可能なんです。人間はその四足獣から進化した動物。その証拠として、人間の肩関節は構造的に、内旋方向に捻る筋肉がとても発達している。特に広背筋が発達しています。広背筋は、内旋動作の主働筋です。
人間も内旋の反動を利用したほうがラクに素早くストローク出来ます。
その反動をもっとくわしく言うと・・。伸張反射がそう。筋肉というものは、瞬時に引っ張られると、引き伸ばされまいと収縮する。いわゆる防衛反応です。
蛇足ですが、人は走る時、股関節を伸展しながら地面を蹴ります。最大に伸展すると、股関節前面を走行する大腰筋が引き伸ばされる。すると大腰筋は反射的に収縮し、足は前にふり出される。意識しなくとも本能によって股関節の屈曲が起こるんです。ちなみに黒人の大腰筋は日本人に比べ一回り太い。だから日本人は、矩距離では黒人に勝てないんです。
水泳のストロークも内旋の反動を使えばスムーズにリカバリーが出来ます。(52記事6フィニッシュ参照)
ただ、人間というのは手先がとても発達している。知的な脳が手を司っていて、ずいぶん細かい動きが出来ます。
しかし、この手先意識が時として力みを生じ、本能を邪魔します。
本能とは、無意識に行われる運動です。動きも体幹部から起こり、わりと大ざっぱです。
四足獣は逃げる時、いちいち体の動かし方を考えていません。考えていたら襲われて命を落とすでしょう。
本能的な(動物的な)動きは、手先をリラックスさせる体幹意識で発揮される。手先意識だと、余計な力の入った人間的な動きになる。力みを生む手先意識とは捨てたほうがいい。
ここで言う体幹意識とは、腕の付け根です。通常、よく言われるのが肩甲骨ですが・・しかし、肩甲骨と言われても私はしっくりこない。変に意識しないほうが、動きが滑らかになり体幹とも連動する。
私の場合、背中(肩甲骨)ではなく、脇の下に意識を持ちます。こちらのほうが感覚的に自然だからです。
入水~グライドは脇の下を伸ばす。キャッチは脇の下に水のボールを抱え込む。プルは脇の下の筋肉に力を入れる。リカバリーは脇の下を開く。いかがですか?
特にプルは、手先意識だと確実に力みます。上腕三頭筋に力が入ってしまう。つまり、棒かきです。かと言って背中(肩甲骨)意識では、何をしているのかわからない。
脇の下を意識するのは・・
ズバリ、広背筋がそこにあるからです。
私はよく、広背筋と言いますが、皆さんはいまいちイメージできなかったかも知れません。
では、右腕を上げて左手で脇の下を触って下さい。脇の下には、大きな窪みがあり、その両側に太い筋肉が縦に走っています。
内側が大胸筋、外側が広背筋です。
泳ぐ時は肩甲骨ではなく、脇の下の水かきに見える、外側の筋肉(=広背筋)を意識します。
クロールのストロークをくり返し見ていると、あることに気付きませんか?グライドは広背筋を伸ばしている。プルは広背筋を収縮させている。
このように、左右交互に水かき=広背筋を伸縮させる。これが体幹を使って泳ぐということです。
ついでに・・広背筋とよく似た作用をする筋肉について。
従来からよく、腹斜筋を使え!と言われます。実は、これは当たっていて、私も腹斜筋を使って泳ぐ時があります。(※6ビートキック限定)
この筋肉は、広背筋の動きを補助する役目があります。広背筋というのは構造上、プル前半にしか力を発揮できません。プル後半を補うのがこの腹斜筋です。
プル開始に広背筋に力を入れ、手先が肩を越えたあたりから、広背筋に被せるように腹斜筋に力を入れる。意識としては、脇の下から脇腹まで広く持ちます。腹斜筋を使えは、上腕三頭筋に頼らずともフィニッシュがパワフルになるのは確かです。
私も力強く泳ぐ時に多用しますが、ただ、体幹を捻る為息が漏れます。つまり、腹圧をかけにくくなる。そして、腰痛持ちにはしんどい。
しかし、悪いことばかりではありません。体幹を捻るということは、骨盤を回転させず、上半身だけを大きく回転させることを意味します。となると、キックの支えが必要になる。その為に(骨盤を安定させる為に)6ビートキックを使うんですね。
最大のメリットは(骨盤が傾かないから)バネの効いたキックが力強く打てること。腹斜筋を使わない泳ぎに比べて、ラクにアクセントの効いた6ビートが打てます。
そのメカニズムは・・
プル後半には腹斜筋の収縮により、上半身と骨盤の間で捻りが生じ、それぞれ逆向きの回転になる。例えば右手のフィニッシュでは、右上半身が上へ、右骨盤が下へ移動します。すると骨盤の動きにつられ、右足が下がります(ダウンキック)。これがアクセントキックの正体です。
このメリットがあるからこそ、競泳の選手は腹斜筋で泳ぐんですね。
腰痛持ちでなければ、力に余裕があれば、6ビートクロールを泳ぐのであれば『腹斜筋でフィニッシュ!』をお勧めします。
とかく、 脇の下意識なのか手先意識なのかの違いが、水泳の得意、不得意を決定づけます。
もう一つ。クロールのストロークは上腕の内旋がうまくできるか否かで、上違の度合いが違ってくるんですね。
内旋の主働筋は、脇の下の広背筋ともう1つ、大胸筋です。
水泳選手は、泳ぎこみにより感覚的に内旋という動作を獲得しています。内旋しろ!
と教わらなくとも自然にそうなる。その訳は、元来人間の体に備わっている本能だからです。
しかし、私は違った・・昔から運動音痴で、頭でっかちだった。
ボールを投げるのも、走るのも苦手だった。逆に、美術や工作は得意だった。
おそらく、手先がとても器用だった(手先意識が突出していた)からでしょう。
こんな私が体幹意識で 運動できるようになったのは、学校で気功や解剖運動学を勉強したからです。つまり、体のしくみと扱い方を学習したんですね。
特に、肩関節の内旋を理解したことは、大きな 進歩でした。
この内旋 動作を手に入れると、本当に泳ぎが変わります。ぜひ、あなたも追求してみて下さい。
[追記]
プル動作の広背筋の使い方ですが、誤解されている方が非常に多い。
広背筋は文字からして、背中の筋肉というイメージがあります。その為、背中に力を入れるんだ!と、皆さんは思いますよね?実際、筋トレのラットプルダウンなどは、胸を張り、肩甲骨を寄せて背中へ腕を引くようにします(上腕は外旋する)。
実は、これは水泳の動作としては誤りです。この背中を意識した行為こそが、背中の反るバタフライやクロールを量産するんですね。
広背筋というのは、解剖学的に見れば、背中ではなく腰部と腕の付け根を走行している。意外ですが、一般に言う背中(肩甲骨周囲)には広背筋は存在しないんです。背中に力を入れると、広背筋ではなく脊柱起立筋、菱形筋が働きます。
そもそもプルというのは、肩甲骨を背骨に寄せる動きはしない。なぜか?
プルというのは、正確に言うと広背筋だけではなく、大胸筋も協調して働く必要があるからです。
私の泳ぎを見れば、肩甲骨は寄せていないことがわかります。↓
http://www.nicovideo.jp/watch//sm29880364
寄せるのではなく、逆に外に開きます。そして足元方向に下げて固定する。これを肩甲骨の下制と言います。脇の下に力を入れると、自然に下制できます。
ちなみに肩甲骨を開く理由は、ゼロポジションになるからです(後述)。
そして、
プル開始時は、必ずゼロポジションで上腕を内旋させます。
理由は、広背筋だけではなく、大胸筋も作用させる為。
肩甲骨を寄せて背中に力を入れたら、しんどい上に大胸筋が働かず内旋しづらくなります。
筋トレは、筋をいかに疲労させるか(効かせるか)の世界です。その為に、しんどい終動負荷で行ってきたとも言える。しんどいから筋肉が発達するんですね。しかし、水泳のプル動作は、いかに疲労させないかということに重点を置きます。つまり初動負荷です。
筋トレ(ストレッチもそうだが)は、実動作とはかけ離れているものです。なぜなら、目的が全く違うからです。筋トレの動きを泳ぎで行うとラクに泳げないのは当然ですよね?
蛇足ですが、水泳ではよく肩甲骨を動かせ!と言われませんか?しかし、肩甲骨は無意識のほうが滑らかに動きます。
私はストローク中、意識して肩甲骨を背骨に寄せることは一度もしない。もちろんリカバリーもです。今一度先程のビデオをご覧下さい。↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm29880364
私の背中は大きく水上に出ていますよね?そして肩甲骨はどうなっていますか?
明らかに開いていますよね?実は、肩甲骨を開くと(背中をリラックスすると)ボディポジションが高くなります。
意外と知られていませんが、プルからリカバリーにかけて肩甲骨を背骨に寄せると(背中が力むと)肋骨が十分に広がらなくなります。すると重心がバックします。リカバリー時の吸気も十分ではなくなる為、ボディポジションが下がります。
あなたは、柴田亜衣選手の泳ぎを見たことはありますか?彼女はさらに背中が大きく水面上に出ています。その彼女がなぜストレートで泳ぐのかご存知ですか?
それは、肩甲骨を開いたまま(背中をリラックスしたまま)リカバリーするからです。背中がリラックスすると、脇や背中の肋骨が十分に広がり、十分な空気が入ります。だから彼女の背中は水面上に大きく出るんですね。もし背中に、余分な力を使っていたら、背中の肋骨が広がらずに水没し、抵抗が増します。そうなると、テンポも上がらなくなり、あのハイテンポな泳ぎは出来なくなります。
また、ストレートアームは、遠心力が強くかかります。その為放り投げないと疲れます。背骨に寄せると、遠心力との引っ張り合いになる。だから開く。ただ、バタフライと違い、片手リカバリーの為ブレやすくなる。そうならないよう、内旋動作を行います。すると、ドッジムーブメントにより肩甲骨が浮き、背中と脇の肋骨が広がり軸が通りやすくなります。結果ブレなくなる。↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm30476938
※内旋しているかどうかは手の平の向きで判別出来ます。
さらに余談ですが、私はストレートアームクロールは否定すべきではないと思います。なぜなら、肩甲骨の使い方、反動の行い方、そして腕の落下がより明確になるからです。→詳しくは52記事6フィニッシュで。
というわけですが、
今まで述べたように、脇の下を意識すれば、結果的に肩甲骨は動く。
さて、広背筋と大胸筋の意識の仕方です。もう一度右腕を軽く上に伸ばし、左手で脇の下を触って下さい。そして、右腕を足元へ引くように動かして下さい。その時、脇の下の窪みの両サイドの筋肉が収縮するか確認します。収縮しないようであれば肩を足元方向に押し下げます(肩甲骨の下制)。わかり難ければ、鉄棒を右手で掴みながら引いてみます。両筋をしっかり収縮させると、窪みがより深くなります。このポジションがあなたのゼロポジションです。※ゼロポジションは個人差があります。一概に角度は何度と決めつけることはできません。
このように脇の下を触りながら、どの角度が一番力が入りやすいか探ってみます。これが正しい広背筋(と大胸筋)の意識の仕方です。
2 関節を緩める
関節を動かす筋肉に偏りがあったり、一部の筋肉に余計な力が入った状熊だとギクシャクした動きになる。
あなたは太極拳を見たことはありますか?また、実際に気功など習ったことはありますか?私は学生の頃、気功を習いました。気を感じる・・ことは出来ませんでした。しかし、体(関節)を緩めることを覚えた。関節が緩むと重みつまり、重力を感じることが出来る。リラックスすると体の重さを感じることが可能なんです。
・・ある時、気功の先生が野球の投球動作を披露してくれた事がありますが、リラックスした肉体がなすパフォーマンスは驚異的でした。60才になるその肉体は10代の選手以上にダイナミックで美しいフォームだった。60近い肉体なのに、なぜそんなにしなやかなんだろう!私はいまだにこの出来事が脳裏に焼き付いています。今だからわかるんですが、筋肉(関節)が偏りなく全てゆるんでいるから、しなやかなんですね。
無駄な力が入っていない。
水泳でも筋肉を緩めて泳ぐと、とてつもないパフォーマンスが可能になるんです。
余談ですが、私が泳ぐ前にブールサイドで必ずやることがあります。それは気功の準備体操であるスワイショウ。意味は、手を捨てる。
スワイショウはただ、力を抜いて腕をブランブらんと前後に振るだけの簡単な体操です。これなら誰でも気軽に出来るでしょう。
しばらくブランブランしていると、腕が重たく感じるようになる。その訳は、手先の血管が拡張して血液が集まってくるから。リラックスすると重く感じるのはこういうことです。
この状態になると、不思議なことに水と一体になる。つまり、水の引っかかりが向上する。これがキャッチの本質です。キャッチはリラックスが命なんですね。この重みを感じながら、脇の下の水かき=広背筋でストローク出来れば理想的です。
逆に、手先意識で腕に力を入れると、血管が収縮しスカスカになります。
手先意識を捨てる為にも、スワイショウを実践されることをぜひお勧めします。
3 ゼロ 『О』の意味
医療現場や、野球の投球動作ではよく言われている『肩のゼロポジション』。ご存知水泳では(特にクロール)、肩を痛める人がとても多い。『水泳肩』と言う言葉があるくらいです。なのに・・なぜかゼロポジションという概念がありません。このことはとても重大だと医療従事者の私は思います。
さて、今回のキーワードはゼロポジション。
肩のゼロポジションとは、体幹や肩甲骨から上腕骨に付く全ての筋繊維が、起始~停止までまっすぐで、等しい張力を維持した状態。そして内旋外旋もしない中間位。つまり、肩甲骨も(挙上、下制もしない)ニュートラルポジションにある。(※具体的な肢位は後述)
ゼロポジションとは、肩関節に付く全ての筋肉に余計な力が入っていない(ゼロ)リラックスした状態を言います。
(注)筋のリラックスとは、筋肉が完全弛緩することではない。生体は、最低限の張カを保っている。筋肉を完全弛緩させるには、筋弛緩剤を投与することになる。もし仮に完全弛緩させた場合、肩関節が脱臼しやすくなる恐れがある。
ゼロポジション。
要は、肩関節周囲の全ての筋肉を緩めることの出来るポジションということ。そして筋肉というものは、緩めた状態が最もラクにパワーを発揮できる。いわゆるタメです。
水泳のプル(開始時)でも、このポジションで行うと、最大限に力を発揮することが可能です。
その訳は・・
プル開始時ゼロポジションをキープすると、広背筋と大胸筋がお互いバランスよく張カを保つことができます。見方を換えると、この大きな両筋は、あたかも1つの巨大な筋肉と化して、いまかいまかとプルを待ち構えているんですね。
ラクに速く泳ぐ為のプルは、この両筋が同時収縮して初めて可能になります。
水泳の推進力は、大半がプルから得られるという。その源が、この大胸筋と広背筋です。
ゼロポジションとは、その両筋を動員する為のポジションでもあるんですね。
※指導者によっては、ゼロポジションのことをパワーポジションまたはパワーポイントと呼ぶ場合があります。
ただし!注意したいのは、実際に力を入れるのは、ポイントではなくゾーンです。正確に言うならば、パワーポイントではなく、パワーゾーンです。私がなぜ『ポイント』と呼ばずに『ポジション』と言うのか?それは、プル開始のみに力を入れるのではなく、プル前半に力を入れるからです。後述する初動負荷では、ポイントだけに力を入れるのではありません。
ちなみに、従来からある、肘を水面に近いところまで上げるハイエルボーキャッチは、肩甲骨を無理に寄せることになります。すると、肩甲骨は肋骨から浮いたままになり、大胸筋と広背筋が収縮しづらくなります。つまり、内側に力の入らないスッポ技けたプルになる。
ついでに・・最新のハイエルボーとは、肘が手先より高いということ。たったそれだけです。
肩が一番水面に近く、次に肘、そして手先です。肘が水面すれすれつまり、肩と同じ高さまで高い位置に保つということではありません。この従来のハイエルボーは、少なくとも大人から水泳を始めた人にはお勧めしません。このようなゼロポジションから外れた肢位は、確実に肩を壊します。私の言うゼロポジションで力を入れるようにすれば、水泳肩というスポーツ障害を予防することも出来ます。
またまた余談ですが、水泳の練習をする時は、リラックスして、落ち着いて、ゆっくり動作で行うことが肝心です。先程出てきた気功や太極拳は、なぜゆっくり動作なのか?それは、ゆっくりでないと感じることの出来ないものがあるから。重心移動、水感、体の緊張具合などなど・・あわてて速く動かしたら、力むことしか学習出来ない。もがくことを覚えてしまったら元も子もない。
さて、リラックスするにはどうしたらいいか?それは、首(うなじ)を緩めることです。ほら、よくボクシングで、トレーナーさんが選手のうなじを揉んでいるでしょ?あそこが緩めば全身の筋肉がリラックスするんです。
あなたは、泳ぐ時や伏し浮きで前を見ていませんか?前を見ると頭が上がり、うなじが緊張します。すると全身に余計な力が入る。従ってちょこまかした小さな泳ぎになるんですね。だから、前を見てはいけないんです。
ちなみに、私が全身リラックスしている時は、通常では実現出来ないパフォーマンスを披露することが出来ます。それは、クロールや背泳ぎを9ストロークで泳ぐこと。しかし、ビデオカメラの前ではどうしても構えてしまい(必ずうなじが緊張して頭が上がる)、なかなか披露出来ないのが残念。意識をカメラの方に向けるのではなく、いつも通り、うなじを緩めることに集中すればいいだけのことですが・・。心と体は繋がっていることを実感します。
では、ここから先は、クロールのストロークについての解説です。
私の考えでは、グライド→キャッチ→プル→リカバリーの4ステージになります。 これは、筋肉の収縮と弛緩にうまく合致させる為です。→52記事の5参照
4 グライド (シメ)
肩のゼロポジションは、 肩甲棘のラインと上腕骨の長軸ラインが一致した状態、具体的には 軽くYの字に開いて万歳した状態です。ほら、体操選手がよくやるあの万歳です。真上に伸ばすのではありません。そして手の平は軽く外を向くはずです。力を入れて外へ向けません(回内しない)。念の為。
※Yの字の両腕は、完全な真横に上げるのではなくやや前方に上げます。理由は、肩甲骨の土台である肋骨が楕円形にカーブしているからです。先程述べた、肩甲骨を外に開く。これです。
このまま顔を右に向けると・・右腕は斜め前方に伸びた(手の平は下を向いた)グライドのポジションに見えませんか?そして左腕の肘を曲げると・・サメのポーズではないですか!
このゼロポジションをキープした左腕が入水の構えとなります。サメのポーズそのものがゼロポジションなんですね。肩関節に優しいポーズなんです。
そして、入水からグライドするまでの一連の動作をゼロポジションで行います。(入水については45記事で説明済み)
初級者と上級者の最大の違いは、惰性で滑るグライドを長くキープしているか否かです。大きなストロークで滑るように泳ぐには、前に腕を伸ばし続けることがポイントになります。
私のクロールは、片方がストロークしている(動いている)時は、もう片方の腕は伸ぴたまま静止しています。グライドがとても長いんです。
※注意! 私の泳ぎは、両手が前で一瞬揃うキャッチアップではありません!
前回、グライドを磨いてください!というお話をしました。しかし、皆さんは前方に腕を伸ばし続けるのは大変な努力を要しませんか?どうしてもがまん出来ずに、手を下げてしまいませんか?ズバリ、水面に平行に伸ばしていませんか?
がまん出来ないのは、ゼロボジションでないからなんです。自然な状態ではなく、力みを生む。体というのは正直なもので、ゼロボジションになりたがる。だから腕が下がるんです。
伸ばし始めから、斜め前方つまり、ゼロポジションに腕をもっていけば、いつまでもリラックスして伸ばし続けることが可能なんです。 ↓
5 キャッチ (ゆる)
私の、キャッチ時の肩関節もゼロボジンョンです。なぜかというと、斜め前方に伸ばしたグライドそのものがキャッチだからなんです。グライドはゼロボジンョンであることは先程述べました。なぜグライド=キャッチなのか?
腕が斜め前方ということは前腕が水を捉える角度になるからです。グライド即キャッチなんですね。厳密に言えばグライドは筋肉を締めた(前方へ伸びることに力を使う)状熊で、キャッチは緩めた状態です。
緩めたキャッチが(肩甲骨の観点から見た)本来のゼロポジションです。シユッと腕を肩ごと前へ伸ばしてからリラックスする。すると肩甲骨は元のニュートラルポジションに戻る。つまり、カ発揮(プル)の準備が整う。タメをつくるんです。すると水の引っかかりが格段にアップします。私がキャッチ時にイメージすることは、バランスボールに乗っかること。
そして後方にプルするにつれ、腕は緩く弧を描いています。
上のビデオ『コンビネーション』は、私のキャッチの様子がよくわかります。
蛇足ですが
競泳のスイマーは、水面に平行に腕を伸ばし、そこから肘をカックンと曲げて(肘を立てるハイエルボー)前腕に角度をつけます。要するに、キャッチポイントが浅いんですね。しかし、この方法は肩関節の柔軟性がないと肩を痛めやすい。なぜか?それは先程述べたように、ゼロボジンョンではないからです。つまり、ローリング角度がつくと、肩関節が内旋したまま肩峰と上腕骨頭が衝突する(ロックする)からです。また、内旋したままだと肩甲骨が肋骨から浮いた状態(挙上)になる。浮いたままでは力も入らない。
少々脱線しますが・・
私の肩関節の内旋可動域は、極端なくらいに狭い。普通、腕を内側にひねり(内旋させて)前に突き出せば、肘頭が外もしくは、ななめ上を向きます。ですが・・私はななめ下を向いています。ここで肘をゆるめると・・ハイエルボーならぬ、ローエルボーになる。このような、肩の硬い人が無理にハイエルボーを行うことは、医学的に見てとても不自然です。
以前の私はハイエルボーをなんとか習得しようとしました。しかし、難解だった。肩甲骨を内側に回し込むように前へつき出し、最大限に内旋しても肘頭が上を向かないんです。しかし、解剖学的に考えてみれば当たり前です。体はローリングし、腕が外転しているんですから・・。ハイエルボーにどうしてもこだわるなら、完全にローリングをしないで泳ぐことになります。腕かきになってしまう。そうは言ってもクロールは多少のローリングは入る。
キャッチはリラックスが命なんですが私の場合、目一杯内旋方向へ力を入れている為、リラックスどころか、ガチガチに固まってしまいます。というわけで今の私は、選手のようなハイエルボーは行いません。
腕全体を斜めにする(キャッチポイントを深くする=ゼロポジションにする)ドラフティング効果のキャッチを行います。
6 プル (シメ)
キャッチしたら(肩甲骨を念め、腕全体を緩めたら)脇の下に力を入れて回転力で漕ぐ。(?と感じた人は14記事参照)すると自然に内旋しながら、手が太もものつけ根まで移動します。なにも考える必要はない。本能のままに無意識でいい。見た目はストレートプルになる。※厳密に言えば緩いS字です。S字は意識して行うものではない。この辺を皆さんよく勘違いされます。
従来からあるS字プルは、末端意識のいわばオーバーアクションです。そのS字プルというのは、いったん外へスカルしますが、じつはこれこそが肩を壊す原因なんです。その理由は、明らかにゼロポジションから外れており、肩の一番弱い部位を酷使するからです。
見体的には・・親指入水で目いっぱい上腕を内側へひねったまま前へ伸はす。するとグライド時の手の平は外を向く。すると肩甲骨が前へ伸びきる為、手の平側へのスカルに力が入らない。無駄な動作となる。手の平は下に向ければ、必要以上に内へひねらない為ラクになる。
そして、注目してほしいのがプルの後半。
現在、大抵のスイマーは上腕三頭筋でのフィニッシュを行っています。見た目は肘がピーンと伸びきってリリースしている。肘の過伸展をしているスイマーもいます。実はこれも肩関節に負担がかかります。なぜか?
その前に・・内旋という動作は四足獣であった時の名残です。その四足獣は、ゼロポジションを保ちながら内旋して走ります。人間は二足歩行で上肢の自由度が格段にアップしました。つまり、ゼロポジションを外れた動作も容易に出来てしまうんです。だから、裏を返せば故障のリスクが高い。
人間も、力を入れる内旋動作は、なるべくゼロボジンョンですべきなんですね。このことは、解剖学的な観点からも明白です。
エピローグでも触れたように、大胸筋と広背筋は『万歳』のゼロポジションでは筋繊維が起始~停止までまっすぐですが、『気をつけ』のフィニッシュではクロスして(捻れて)いる。ねじれた繊維は負担が大きくなる。力も最大限に発揮できない。このことに気付いている指導者が果たしてどれくらいなのかはわかりませんが・・
さて
プルの開始位置つまり、キャッチはゼロボジンョンです。そこから内旋の主動筋である広背筋でプル(内旋しながら引く)します。しかし後ろに引くほどゼロボジンョンから外れていく。
これは言いかえると、後ろに手が移動する程力を抜く必要があるということ。広背筋でプルすれば後半には力が抜ける。
内旋の力が最もかかるのは、プル開始のゼロボジンョン時です。そしてプル前半まで力は入っています。プル後半に力が抜けたらその反動で外旋し始める(リカバリーが始まる)。
要は、大胸筋広背筋をゼロポジションでフル活用するということです。
もう1つ忘れないでいただきたいのが、体幹の回転力との関係です。
ローリングの開始時は、ゼロポジションをキープします。そして(反対の入水した手を伸ばすことによる)回転についていくように脇の下に力を入れる。
ここで意外と知られていないことを述べます。実は、脇の下に力を入れて引くだけで体幹が回転します。プル開始から、内 旋 し な が ら引くと、その反動でプルする側が水上に出ます。入水側の腕による回転に同調させることでラクにパワーが出せます。回転開始から回転終盤まで、つまりプル全域で回転力が利用できるんですね。だからこのゼロポジションを、指導者によってはパワーポジションと言うんです。
これがクロールにおける初動負荷の根拠となります。
対し、従来の上腕三頭筋でのフィニッシュ(後ろに手が移動する程力を入れる終動負荷型)は、肩甲棘のラインと上腕骨の長軸ラインが最大の角度になる位置で最大の力を加える為、不自然なひずみが筋繊維に発生する。先程述べた、大胸筋広背筋も捻れる。また、肩関節を締めた状態になり血流が悪くなります。このことが水泳肩の原因及び疲労となる。終動負荷のデメリットがこれです。
そして回転力との関係です。
プル開始時、脇の下にグッと力を入れない(肩甲骨を下制しない)終動負荷では、回転力が腕に伝わりません。広背筋そのものによる回転も起こりません。
広背筋のパワーを有効活用していない。
これが終動負荷の最大のデメリットですね。
再び蛇足ですが、水泳でよく使う言葉、プル。直訳すると引く。
プルというのは、後方へ押すのではなく、前方から手前に引くんです。選手が後方へ押しているように見えるのは、泳速が上がり身体が前へ移動するからです。
プルは、内旋動作が必ず入ります。注)文字通り肩関節の内旋だけを行うという意味ではありません。あくまで体幹の回転+引く動作が入ります。具体的には、(回転同始から)広背筋を使って肩甲骨を足先方向へ引きます。念を押しますが背中方向ではありません。
肘を伸はし切っていたら脇が締まりすぎてスムーズなリリースが妨げられる。内旋の本能的な反動(ドッジムーブメント)が利用出来ない。
さらに余談ですが、フィニッシュというのは終わり、仕上げという意味です。ストロークのフィニッシュとは、プルの終わりです。
力を最大に出しきるという意味ではない。なのに実際は、上腕三頭筋で力いっはい押しきることがフィニッシュだと勘違いされている。つまり、終動負荷が水泳の常識になってしまった・・。いつからこうした誤りがまかり通るようになったのか・・?
話がだいぶ飛躍しましたが、押す意識で脇を完全に締めるのではなく、引く意識を持って脇に遊びを作ってリリースに繋げていく。このほうが反動を利用できるんです。
この動作が医学上、理にかなっている。なぜか・・?それは、肩甲棘ラインと上腕骨長軸ラインの角度が小さいからです。また、脇が開いたほうが血流を阻害しないからです。
そして・・ここが重要なんですが、
脇を少し開いた時が内旋しやすい。つまり反動が使える。
そして、リリースは最大に内旋しきった状態になっています。手先が水上に出て初めて外旋します。
!参考!
フィニッシュからリリースにかけては、ブルに力を入れるほど内旋しきる形になる。内旋域の広い選手は、リカバリー前半まで内旋が継続される。中にはリカバリーの手の平が上を向く選手もいる。だが、表面だけを真似てリカバリーでムリに内旋してはならない。
話がそれましたが、
逆に、脇を締めると外旋しやすい。つまり、肘から引いてしまう。そして、水が引っかからない為、上腕三頭筋で押しきらざるを得なくなります。だからすぐに疲労する。
!! 水泳では『脇を締める』という表現には注意が必要。普通の人(私もそうですが)は『気をつけ!』のごとく脇を閉める、あるいは閉じることだと思ってしまいます。もっと言えば、体温計を脇に挟むように力を入れるんだと思ってしまう。当記事での『脇を締める』とは、普通の人の感覚で『脇を閉める』という意味で使用しています。
水泳での本来の脇を締めるとは、プ ル 前 半 に、肩甲骨を外に開いて下制せよ!という意味です。つまり、肋骨に肩甲骨を(広背筋と前銀筋により)密着させ、体幹と腕を繋けよ!ということ。密着すれば体幹の力が腕に伝わるようになるんです。
背骨に肩甲骨を寄せると、肋骨から肩甲骨が浮いてしまう。つまり、体幹と腕が分断されてしまう。
自動車で言えば、シフトレバーがNに入って、エンジン側とタイヤ側が切り離されている状態です。だから動力がタイヤに伝わらない。そこでシフトレバーをDに入れると、エンジンとタイヤは繋がる。この繋げる行為が、本来の脇を締める!です。
ただし・・
私は、脇を締めるという言葉はあまり使いたくない。『脇を締める』という言葉を使うのではなく、『脇の下の筋肉に力を入れて引く』『肩甲骨を下制する』と具体的に言いたい。要は、脇の下の広背筋に意識を持て!ということです。
さて話を戻します。
外旋してしまうと背中の面を超えてリリースしてしまう。もちろん反動は起こらない。意識してリカバリーすることになる。特に、ストレートアームで誤まるのがここです。
ところで 、
内旋の反動(ドッジムーブメント)をフル活用しているのが、とてもわかりやすいスイマーがいます。
池江璃花子選手です。彼女のストレートアームのリリースは、水中で肘が伸び切らず、その為水上ではね上がります。手の平があのようにひる返るのは、最大に内旋しているからです。そして、肩甲骨は前へスライドしている。つまり、この時点で重心が前へ移動しているんですね。これがドッジムーブメントの特徴です。こうした反動を上手く利用出来るから、驚異的な速さで泳げるんですね。→詳しくは52記事の6フィニッシュ参照
ここで何が言いたいかというと、実際の泳ぎでは、筋トレ的な上腕三頭筋によるプッシュではなく、内旋動作が肩甲骨の動きには重要だということです。
というわけで、
フィニッシュというのは、力いっはい脇を閉めて肘を伸ばしきることではない。
ドッジムーブメントでリリースに入る動作を言います。
別の言い方をすると、『瞬間的に内旋しきること』となります。
要は、体幹意識(広背筋)でフィニッシュするということ。すると末端の手はそれにつられて反動で大腿付け根まで移動します。↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm29878276
ちなみに内旋していないと、手は腰の高さで中途半端に終わります。これが私の言う、フィニッシュ出来ていない状態です。
※さらに重要なことを52記事の6フィニッシュで述べています。
次のビデオ『リカバリー③』のフィニッシュをよく観察してみて下さい。
プルからリカバリーにスムーズに移行しています。内旋により、手先が水着の横まで移動していますよね?これがクロールの本来のフィニッシュです。
反動を使って一瞬でリリースすると、重心が前にかかったまま、とてもラクに体を前に進めることが可能です。上腕三頭筋で押し切るのは(気をつけの状態というのは)、重心がかなり後ろに移動します。
左右重心移動もそう。右腕を伸ばして右に重心を移動するには左腕は速やかにリリースする必要がある。その為に前述のドッジムーブメントが必要です。後方へ押しきるというのは、重心移動にブレーキをかけているのと同じです。
また、押しきると力んだままリリースしてしまい、次のリカバリーもリラックス出来ない。
私の場合、押しきらないフィニッシュのほうが、ラクに速く泳げます。このことは実際にダッシュで実証しています。↓
[注 あくまで軸の練習の一環として毎回呼吸しています。実際のダッシュはほとんどノーブレです。]
押しきることのデメリットは他にもあります。53記事をご覧下さい。
7 リカバリー (ゆる)
水泳は、誤ったフォームのままで肩を使いすぎると軟部組織の炎症を引き起こしやすい。特に肩甲骨が固い人は要注意。
クロールのリカバリーは、外転方向つまり脇の下を開く行為です。
だから、内旋したままリカバリーすると必ず後半に、上腕骨頭が肩峰と衝突し、ロックがかかる。このまま前に腕を伸ばすと二者の間にある軟部組織がこすれ合い強い摩擦を生じる。親指入水の意識が強いほどリカバリー後半に内旋したままになる。
私がそれを行うと、とても不自然な動きになります。これを延々とくり返せばインピンジメント(衝突)症候群を引き起こしやすくなります。そうならぬよう、必ずリカバリー 後半 には外旋させる必要がある。
※意識して外旋はしない。内旋の反動で無意識に外旋する。
その為、リカバリーは必ずリラックスしながら行います。
具体的には、
手先の意識を捨てること。
そして肩甲骨を寄せるのではなく・・
脇の下を開く!
肘から先は脱力します。すると自然に外旋しながらリカバリー出来ます。結果的に回内回外中間位(中指入水)になる。先程のフィニッシュでも述べましたが、プル後半に力を入れて押しきると、力んだリカバリーになります。
リラックスした、きれいなリカバリーは、プル後半に力が抜けているから可能なんですね。
どうしたら後半に力が抜けるの?
それは、後方へ押すのではなく、前方から引く意識を持つことなんです。
でもさ、引くと肘から引いちゃうじゃん。
それならば、もぐらが・・いや、犬が穴を掘るイメージを持つといいですね。
某大学の学生さんからお借りした言葉ですが、
『ここほれワンワン!』
この引く意識だから、反動でリカバリーできるんです。↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm26541116
それでもうまく脱力出来ない場合は、手の平を内側に向けてリカバリーする。親指から入水ではなく、小指から入水!と意識すると、確実に外旋させることが出来ます。
※必ず体幹をローリングさせてリカバリーすること!ローリングすることにより背中の面(外転方向)上を上腕が移動し、ゼロポジション(サメのポーズ)へと向かいやすくなる。結果、肩がラクになります。
先程も述べましたが、
肩甲骨を背骨に寄せる(背中の面を越えた動作になる)必要は全くありません!!
ある指導者が、肩甲骨を意識して背骨に寄せる(ハイエルボー)リカバリーを推奨していますが・・肩の柔軟性を高める以前に、肩を壊します。ローリングを抑え、肩甲骨を寄せてリカバリーしなさい!ということですが、私には到底理解できない。水泳選手ならともかく、大人から水泳を始めた人が肩甲骨を意識したら、かえってギクシャクしたリカバリーになります。
というわけで、肩が固い人が肩甲骨を寄せたり、親指入水を行うと、水泳肩になりやすくなります。
ちょっと待って!水泳は肩甲骨が柔らかく大きく動くからいいんでしょ?肩甲骨が重要でしょ?
はい、その通りです。実は、ここに罠があります。私の持論ですが、重要な部位は意識して力を入れてはならない。結果として無意識に動いているんですね。
クロールのストロークは、脇の下が鍵を握っています。脇の下を意識することにより、結果として肩甲骨が動きます。脇の下を意識することにより、ゼロポジションでの動作が可能になります。
今回は、医療従事者の私が一番書きたかった内容でしたが、かなり専門的でわかりにくかったかも知れません。しかし、水泳というものは陸上と違い、独特の動きをするスポーツです。リラックスさせるのが非常に難しい。また、誤った体の使い方を平気で行ってしまいやすい。
あなたの体、どこかしら痛みや不調が出ていませんか?体は訴えています。
それは止めてくれ!
それでも我慢して、体を騙しだまし、常識通りにやっている・・
常識だから? みんながやっているから?
自分の体の声に、もっと耳を傾けてください。
健康によいと言われる水泳。だが、水泳の常識にはリスクが潜んでいることを忘れないで頂けたら・・。皆さんに、一つでも心当たりがあればぜひ、改善されることを心から願います。
皆さんも私と一緒に、体に優しいフォームを追求しましょう!
46 知られざる肋骨の重要性
[おことわり]
重要な記事を追加しています。ぜひご覧ください。
今回は、42 『クロールにおけるドローイン呼吸法』を読まれていない方のために、視点を変えて書き直しました。
1 足が浮く人、浮かない人の差は肋骨にあり
一般的に体脂肪率の高い人は苦労せず足先まで浮くことは出来ます。しかし、私のように体脂肪率10%を切る者にとっては浮くことは至難の技。過去の私は伏浮きをすると足が沈んでいた。
私のような人は、皮下脂肪という天然の浮く水着の浮力を利用出来ない為、肺の空気を味方につけるしかありません。
そこで、あることを意識してからは、完璧に伏浮きが出来るようになった。それが肋骨を広げる(肺を最大に膨らませる)ことだったんです。足を浮かすのには、この肋骨を意識して動かせるかどうかにかかっています。
え?なんで肋骨なの?それは・・
2 重心移動の本当の意味
伏浮きの姿勢を思い浮かべてみます。人間は、みぞおちに浮心(水面へ、つまり上に移動する力)があり、へそ下に重心(プール底へ、つまり下に移動する力)がある。この、浮心と重心の距離は、約15cm~20cm離れている。その為、回転力が生じ下半身は沈みます。
下半身が沈まないようにするには・・重心と浮心を近づけることです。そうなんです!重心を前に移動させるんです!
皆さんは、なぜ重心を前に移動させるのかについて深く考えたことがなかったと思いますが・・。
足を浮かせる為に重心を前に移動させるんです!
もう1つ、浮心を重心に近づける(浮心を後ろに移動する)ことも必要です。
肺というのは、下部に行く程容量が大きくなっています。そして底辺には横隔膜が存在する。大きく吸えば吸う程、横隔膜が下がる。見た目には下部肋骨が広がる。つまり、より下へ肺が広がります。浮心がバックするわけです。
3 肩甲骨と肋骨の深い関わり
クロールでは入水後グライド(腕を前に伸はすこと)しますが、これこそが足を浮かす手段なんですね。
グライド。とにかくこれを磨いてください。
試しに、気をつけ(後重心)で浮くのと、万歳(前重心)して浮くのとを比べてみると・・明らかに万歳したほうが足は沈みにくくなります。
クロールを泳ぐ時、足の沈下を防ぐには片腕が常に前方に伸びていることが最も重要です。
そのグライドですが、前方に伸ばす腕をより前につき出す程、足は浮いてきます。
この、腕を出来るだけ前につき出すには肩甲骨を前に突き出します。しかし、これだけではまだ足らない。肋骨も前に動かす必要がある。
わかりやすく言うと、脇の下を伸ばすということです。
肩甲骨と肋骨は筋肉を介して繋がっている。さらに肩甲骨は鎖骨を介し、胸骨と繋がっている。そして胸骨は肋骨と繋がっている。胸骨(肋骨)は肩甲骨の土台なんです。その土台ごと前へスライドしなければ肩甲骨はフルにつき出せないんです。
※土台のことを解剖学では胸郭(きょうかく)と呼ぶ。
私は肩甲骨だけでなく、肋骨も使って腕を前につき出しています。
そして、さらに前重心にするには、リカバリーアームをより前に構えること。すなわち、脇の下を伸ばすサメのポーズ(15記事参照)です。
さらにさらにですが、前に伸ばす腕は水面に平行ではなく、手先の下がったポジション、ななめ前方です(ゼロポジション)。
このサメのポーズが足を浮かす観点からして、いかに優れているかがよく解ります。
[補足]
視線はプール底に向けうなじをリラックスさせ(うなじを伸ばす)、頭を水面すれすれに沈めます。すると、これまた重心が前に移動します。
逆に、前を見るとうなじが力み、重心が後ろへ移動します。肩周りが固くなり、脇の下を伸ばすサメのポーズが難しくなります。
ついでに・・
年輩の方に多い悩みの一つ。
腕を頭上にまっすぐ上げられない!というのがあります。
原因として、猫背で肋骨が広げられないということが考えられる。
腕が上がらないならば、後述する万歳ドローインを習慣化することをぜひお勧めします。
4 水泳の呼吸と肋骨の関係
水泳の呼吸の基本は、吐く→吸う→止める。
止める理由は、肺をふくらましたままのほうが体は浮くからです。特にゆっくり泳ぐと、止めることの重要性がさらに増します。
息つぎで構を向いても口が水面上に出ず苦しいという方は、間違いなく浮き袋(肺)が小さくなっています。水中で息を吐いてしまっているか、息つぎで息が少ししか吸えていないかのどちらかです。肺がしぼめば、浮力は小さくなり下半身どころか、上半身まで沈むんです。ですから、浮き袋は常に膨らましたままで泳ぎます。
でも、息を止めると苦しいんだけど?
それは・・肋骨を引き上げる(広げる)ことが身についていないから。息をこらえて(肋骨を下げて)しまってるんです。
皆さんは肋骨の上げ下げが出来ますか?女性ならば呼吸と同時に肋骨も上下に動くはずです(胸式呼吸)。しかし男性は・・お腹が膨らんだり凹んだりするでしょう(腹式呼吸)。肋骨がほとんど動いていないんです。正確に言うと、肋骨を広げることが出来ていない。これが息を止めると苦しくなる根本的な原因です。
また、息が少ししか吸えない理由ですが、吐いていないから吸えないということが多々あります。
吐く→吸う→止める。の一番最初のステップです。
吐くのは吸う直前です。顔が横を向く時に強く吐きます。その反動で吸います。
吸った直後は必ず止める。この止めるクセはつけたほうがいい。特にグライドバタフライで生きてきます。また、腹圧を入れる為にも。
もう一つ、ここが重要なんですが、吸う時は肋骨下部を広げて吸うこと。肺に瞬間的に空気を取り入れるには肋骨の手助けがないと、まず大きく吸えません。
呼吸を助ける骨です。
くり返しになりますが、肋骨を広げて吸うことがとても大切です。
5 腹圧について
腹圧はなぜ必要なのか?皆さんは考えたことはありますか?
クロールは体の中心軸を回転軸にローリングします。この軸がブレないように腹圧を入れるんです。
また、腹圧を入れずに泳ぐとキックの力が上半身にうまく伝わらない。キャッチ後のプルも力が入らない。そして、キックなしでクロールを泳ぐと腰から下が大きくブレます。腹圧は骨盤をしっかり固定する為に必要なんですね。また、息を吐く時にも。そしてもう一つ。足を浮かせる為にも必要なんです。
ひとつ書き忘れていたことがあります。
実は、肋骨を広げて腹圧を入れると、内蔵が上方へ移動するんです!
腹圧の要である腹横筋は、内蔵を上方へもち上げる働きをするんですね。
さらに重心が前に移動するんです!
だ か ら 足が浮くんです。
蛇足ですが、特に背浮きや背泳ぎをする時は腹圧を入れないと必ず足が下がります。違う見方をすると、これこそ腹圧を入れる訓練になります。背浮きも併せて練習されることをぜひお勧めします。↓
さて、クロールというものは、グライドで体を伸ばして(腹筋を伸ばして)泳ぐスタイルです。通常の力の入れ方(腹直筋を収縮させる)では、とても腹圧が入りにくい。そこでドローインの登場です。
↑腹圧を入れるとまっすぐなストリームラインになる。
↑腹圧を入れると足は浮く。
腹圧を入れるには・・お腹を凹ますというより、下腹部を締める必要があります。
ドローインとは、下腹部を絞る行為です。
見た目には、お腹が凹んでいます。
余談ですが、腹圧を正しく理解していない指導者をよく見受けます。特に下腹部の扱いを誤って教えている人がいます。
下腹部は常時締めたままにするのが正しいやり方です。少なくとも水泳でのドローインは下腹部が膨らむことはありません!
え?ドローインはどの記事を見ても、お腹を膨らまして息を吸い、お腹を凹まして吐くと書いてあるよ?
これは肋骨の下がった単なる腹式呼吸です。ドローインは、肋骨を広げたまま腹式呼吸をします。
また、呼吸を止めてはいけません!というのは腹圧を目的としていない、つまり、呼吸そのものを目的としているからです。『呼吸法』として紹介しているに過ぎないんですね。そうでなければ、腹圧を正しく理解していないということになります。
腹圧がかかるのは息を止めている間だけです。
このことをしっかり頭に入れて下さい。
著名な指導者でさえ理解していないのは、いったいどういうことでしょうか?これでは混乱を招くのも当然です。
もうひとつ。これもよく誤解されますが、逆腹式(丹田)呼吸とドローインは似て非なるものです。逆腹式は武道でよく使いますが、吸う時は同じでも、吐く時は下腹部を膨らまします。これは、内蔵を(重心を)下げる意図があります。先程も述べましたが、水泳の場合重心は上げます。だから、常に下腹部を締めるんですね。これがドローインです。
というわけで・・
ドローインは、腹圧の観点、呼吸の観点,足を浮かす観点のいずれからしても理想的な体の扱い方です。
※49、53記事にも腹圧の話が書かれています。併せてご覧ください。
6 ドローインの実際
ここでは、私が実際に行っている万歳ドローインについてお話します。
通常のドローインはお腹を凹ますことのみに意識を持ちますが、ここでは肋骨を広げることを意識します。
なぜかと言うと、お腹を意識しすぎると上腹部に余計な力が入り、お腹全体を固めてしまうからです。あくまで下腹部を絞るんです。
そして・・下腹部を絞るには
肋骨を広げないとまず出来ません!
では、初歩的な練習方法ですが、まず床に仰向けになり、膝を立てます。
そして、08でも紹介したように、
『万歳しながら』息を吸います。
この『万歳しながら』がポイントです。
言い変えれば『脇の下を伸ばしながら』息を吸うということ。
※肩が固い人は無理して手先を床につけないように!つけようとすると腰が反ります。腰が反るということは、下部肋骨を下げる方向に力むことを意味します。すると、肋骨全体が固まって動かなくなります。
お腹を膨らまし、お腹に息を入れるのではなく、
胸の方へ目一杯息を入れて下さい。
※上達するにつれ、脇や背中側に息を入れるようになります。
すると肋骨が腕に引っ張られて上方へ移動します。(広がります。)この時、お腹はどうなりますか?たるんでいたお腹が引き伸ばされて若干凹みますよね?これは肋骨が広げられた証拠です。肋骨がお腹を引き伸ばすんです。
そして息を止める。
すると自然に下腹部(腹横筋)に力が入る。また腹横筋は背筋と繋がっているので背筋にも力が入る。
脇の下を伸ばし、息を止めることにより腹筋と背筋(あくまで腹横筋、多裂筋といったインナーマッスルのこと。腹直筋、脊柱起立筋といったアウターマツスルではない)両方が締まるんですね。自前のコルセットになる。これが伏浮きやスイム時のスタイルです。
そして肋骨を広げたまま(脇の下を伸ばしたまま)お腹を絞り息を吐く。
すると・・お腹はさらに凹みます。吐いたら再び吸って止めます。
吸う時も下腹部は力が入っています。
吸う時は上腹部を膨らまします。→正確に言うと、肋骨下部を広げるということ。
これをくり返すごとに、次第に下腹部が引き締まってきます。
慣れてきたら、立てていた膝を伸ばし、ストリームラインの姿勢になります。
そして、手先足先方向に細長く体を引き伸ばすように意識します。
呼吸は、
吐く→吸う→止める。
これが腹圧を重要視した呼吸の流れです。
※ドローイン呼吸がどうしてもわからない人は、(ぶら下がり健康器や鉄棒あるいはうんていに)ぶら下がって実践されることをお勧めします。自重により、体を強制的に引き伸ばせば、必然的にドローイン呼吸になります。
ちなみに、万歳ドローインでは肺の空気を完全に出しきることは出来ない。でも実はこれがミソ。実際に泳ぐ時、肋骨を下げて完全に吐ききってしまうと、肺を元の大きさに膨らますのがとても大変です。息つぎは短時間です。肺を満タンにすることが出来なくなる。先程述べたように、顔が水没した息つぎに陥りやすいんですね。
もう1つ。息を完全に吐き切ると重心がかなり後ろに移動します。
よく誤解されますが、肋骨は意識して上下させるものではない。(胸式ではない。)
広げっぱなしにするんです!
肋骨が下がる動きは、強く吐いた結果として生じるにすぎないんですね。あくまで、お腹を絞って息を吐く。これが水泳の呼吸の自然なやり方です。
くり返しますが、腹圧を入れる(下腹部を絞る)には、肋骨を広げっぱなしにするんです!これが正しい腹圧のかけ方です。
腹圧に慣れていない人は、常に腹圧を入れるのは騅しいものがあります。
しかし、万歳し、肋骨を広げることにより、お腹を意識しなくとも自然に腹圧は入るようになります。
くといようですが、
肋骨を広げる(浮き袋を広げる)とは体を伸ばすということ。
だからクロールを泳いでも沈む局面がないんです。これが私の行っているドローインです。
万歳して肋骨を広げると、肩甲骨がより前に出しやすくなり、(腕がより前方に伸び)、前重心になる。
また、腹圧で腰は結果として平らになり(注:意識して平らにするのではない!意識して平らにしようとすると体がくの字に曲がります。また、お腹を凹ます!と意識しても同じことが起きることがあります。私も凹ますという言葉を過去に使っていたが、あまりにも誤解される為、絞ると言うことにしました)、内蔵も前へ移動し、その結果下半身が浮くんです。
※息をこらえると、肋骨を下げる方向に力が入る。いわゆるプレスです。これが*体を縮める、体を固める(『体を締める』とは違う!くわしくは53記事参照)ということです。これは、間違った腹圧のかけ方。特に血圧の高めな熟年スイマーは
絶対にやらないように!!
[補足]
肺の空気は100%入れ換える必要は全くありません。50%で十分です。
肋骨を上下させず広げたまま、腹式(横隔膜=上腹部)で出し入れします。
ついでに・・
伏浮きやスイムで前を見て背中を反らす方をよく見かけます。お腹がぼっこり出た姿勢です。つまり、腹圧が入っていないんですね。確かに見かけ上は足は浮いています。しかし、重心はむしろ後ろに移動している。なぜなら、頭部が後ろに位置するからです。下を見て、うなじを伸ばした方が重心は前に移動します。それに、この姿勢だと肩甲骨がスムーズに動きません。また、左右方向の安定性に欠ける上、背中を反らす為腰を痛めます。あくまでお腹もフラットな(むしろ凹んだ)ストリームラインが水泳における基本姿勢です。
肋骨にまつわるお話、いかがでしたか?
45 クロールをもっと上違させるには?
[お詫びとおことわり]
25~43記事を誤って削除してしまいました・・。本当に申し訳ございません!
私は視力が弱く、再度書き直すのにはかなりの労力を要します。ですから記事の復活は難しいです。
そのかわりと言ってはなんですが、削除された記事のキーワードは、まとめて47記事に掲載させて頂きます。ご了承下さい。
4泳法全てがリンクしている!
昔の私は、クロールしか練習しなかった。クロールが
上手くなるにはクロールさえ泳げばいいと思っていた。しかし、今となってはそれは大きな間違いだった。
重力の大切さを知ったのはバタフライだったし、ローリングでの左右の重心移動は背泳ぎで開眼し、突き刺すような入水に確証を得たのが平泳ぎだった。
クロールがうまくなるヒントは、他の泳法にたくさん転がっている。
他の泳法を泳ぐと、ハッとさせられることがたくさんあります。
クロールで行き詰まりを感じたら、違う視点から(他の泳法を泳ぎながら)見直すのもありですね。
本当にクロールを上違させるには、いろいろな泳法を練習したほうがいい。私は、他3泳法をぜひお勧めします。
というわけで、当ブログではいろいろな泳ぎをとり上げていきます。
今回は、やぎさんからご質問を頂いているので、それを元にしてお話しようと思います。(ご質問の内容については44記事のコメント欄を参照)
1 フラットを正しく理解する
水泳の基本姿勢は、前後(長軸方向)が水面に対し水平(フラット)な状態で浮くことある。まっすぐなストリームラインです。これが一番抵抗が少ない。
しかし、クロールや背泳ぎは、トップスピードになるほど上半身は水面上に浮き上がります。↓
どんなにフラット姿勢を保ってもそうなる。
それは、上半身に肺という浮き袋があるから。そのせいで、下側から水圧を受け、圧のかからない水面上へと上半身は押しやられます。対し下半身はというと、しっかり水面すれすれにキープされている。↓
じつはモーターボートのごとく上半身が水に乗っかっていくほうがトップスピードは出ます。だから、キックで一生懸命頑張るんです。そりゃ疲れますよ。トップを競うというのは。筋力勝負なんです。ラクなんて言っている世界ではない。必ず筋力は必要になる。
ただし、初級者の場合は・・無駄な筋力を使う。下半身が下がった後傾姿勢は特に。だから疲れる。ラクに泳ぎたい!ということは、この無駄な力を取り除くことです。
カヤックのように泳ぎたい!のであれば、キックに頼らなくとも浮けること、つまり伏し浮きを極めること。
フラットに浮くことです!
そうすれば、余った力を進むだけのことに回せるんです。結果、速くなります。
さて、よく水泳では前のめりになるという表現をしますが、これは感覚的な表現であって、体が前傾するわけではない。私のクロールを見れば明らかです。あくまで水面に対し平行な状態をそう呼ぶんです。初級者のように、下半身が沈んだ後傾姿勢に対比し、そう呼ぶだけです。選手のモーターボートの後傾と、初級者の後傾は意味が違うことをご理解下さい。
では次です。モーターボートにならずに、フラットな姿勢のままスピードは出るのか?答えは、そこそこ出せるです。スピードが出るに従い、浮き袋が邪魔をするため、頭から浮き上がろうとします。これは人間の宿命です。
しかし、手を下げることによりフラットな姿勢が可能になる。すると浮き袋を支点に下半身は浮いてくる。これが私の説明してきたクロール(背泳ぎも同じ)の前のめり姿勢です。長距離を速く泳ぐのにはとても有効です。
じゃあ、平泳ぎとバタフライは?これについては上下動が加わる為、少し違ったように感じますが・・
仮に前傾姿勢でストリームラインをとるとどうなるか?飛び込みがいい例ですがどんどん潜っていこうとします。しかし、ある地点から今度はグングン水面に向かって浮上します。なぜなら、上半身に肺があるから。
実はここにバタフライ(と平泳ぎ)をラクに泳ぐヒントが隠されています。つまり、うねりです。クロールや背泳ぎと違い、水面をうねることによって浮力というパワーが使えるんです。しかし、うねるからと言って、文字通りうねうねと体幹を動かすと、うねりが大きくなります。スピードも出ません。バタフライや平泳ぎも、意識上はまっすぐなフラットなストリームラインです。速くラクに泳ぐには、フラットであること。これが4泳法の共通語です。
2クロールの入水
クロールの場合、前腕を水面に対し45度で保ち(サメのポーズ)、肩の延長上に斜め前方へとまっすぐ突き刺すように伸ばす。特に重要なことが肩幅入水です。
2本のレール上に伸ばしていくイメージです。なぜこうするかというと、落下エネルギーを利用する為。腕が落下しようとする力は、手が中心軸から外側へ行くほど大きくなり、回転しやすくなります。中心軸から入水(1軸S字プル)すると、重力による回転力は得られません。また、重心がセンターに乗ってしまい、オーバーローリングになります。
そして、一般的に出来るだけ遠くへ親指から入水しましょう!と指導されていますが、これは入水前に肘が伸びてしまい、腕を前に伸ばす勢い(惰性の力)が弱くなります。また、入水の前にローリングが始まってしまい、入水後は水面に平行に腕が伸びます。すると落下エネルギーも有効に働きません。また、ゼロポジションではない為、水泳肩のリスクが高まります。
さて水中への突き刺し方ですが、最初はじわっと動き始め、しだいに加速をつけて、速くします。だって、物体が倒れる時って、いきなり倒れませんよね?
ほら、西部劇でよくピストルで人が撃たれ後ろへ倒れるシーン。思い浮かべてみて?倒れはじめはゆっくりで地面に後頭部を打ちつける時が一番スピードが出ていますよね?また、ボールが手から落下する時も、離した瞬間はじわっと下へ落ちだし、地面に接触する瞬間が一番速い。
だから、力づくではなく、落下しようとする力に任せて動き出し、途中から肘を伸ばすんです。具体的には、手先が水中へ入水してから前方へ肘を伸ばすことです。
実際はリカバリーと連動している為、リカバリー後半(肘が肩を越えた時)から既に落下は始まっています。じわっと動いている局面は、リカバリー後半の、前へ手が移動している部分です。
感覚で言うと、力を入れる局面と力を抜く局面というメリハリをつけるんです。じわっと動いている時がまさに、手先の力をぬいて脱力している瞬間です(サメのポーズ)。これをタメといいます。タメて(脱力して)おいてグーンと伸ばすんです。
3 背泳ぎの入水
背泳ぎの場合も、クロール同様落下エネルギーを使います。さらには遠心力を使う方法もあります。まずは、一般的な泳ぎを解説します。
リカバリーの腕はストレートアームの為、かなりの位置エネルギーがあります。このまま中心軸より外側に小指から入水させると・・肩関節はロックされているので体幹が引っぱられて回転します。体幹が回転すると、もう他方の腕はやはり勝手にプルし、肩が出た状態で気をつけになる。クロールと同じでとてもシンプルですね。フィニッシュと入水が同調することによりローリングがスムーズになる。クロールに比べローリングがとてもしやすいんです。
しかし、惰性の力はかなり弱い。理由は、肘が伸びきっているから。前へ伸びる勢いがないんです。(クロールはサメのポーズのように、肘を曲げた状態から伸ばすので勢いが生まれる。)だから、キックはクロールと違い、推進力を目的とし打ち続けます。背泳ぎの場合、重力は回転だけに使われてしまうんです。だから、キックが必要なんですね。以上、一般的な背泳ぎのメカニズムでした。
しかし、私の背泳ぎは一般の泳ぎとはかなり違う。先程も述べたように、惰性の力が弱いのが背泳ぎの欠点です。それを補うのが遠心力。私は遠心力をメインにし、
2ビートキックで泳ぎます。この方法を取ると、とてもゆったりしたフォームで、しかも速く泳ぐことが可能です。
要約すると、フィニッシュからリカバリー前半はノンストップで速く動かし、リカバリー後半から入水にかけては、なるべくゆっくりやさしく行います。勢いよく入水させません。意識の上では、前方へ素早く入水するより、天井へ高く伸ばすんです。この時にキックが打たれる。
ええっ?なぜ?
それは遠心力を最大限に活用する為です。
走っている電車に立って乗っていたとします。急に電車がブレーキをかけたらどうなりますか?人は前へつんのめりますよね?つまり惰性の力です。じつは、私の背泳ぎはこれを応用しています。
リカバリーアームはかなりの遠心力がかかります。これをリリースの勢いのまま入水すると、体幹の回転ばかりが速くなるだけなんです。惰性の力は思ったより生じない。
そこでリカバリー途中から、ブレーキをかけるように天高く伸ばし、リカバリースピードを落とします。すると、腕の遠心力のベクトルはななめ上に向かう。つまり、上半身は上へ引っぱられるんです。これにより、上半身はリカバリーアームの重さで沈み込むことがなくなる。背泳ぎもクロール同様、決して上半身を沈めません。あくまでフラットです。もちろん、惰性の力は生じる。
リカバリーアームが体を前へ引っぱるんだ!
そう私は意識して泳ぎます。
入水する直前に既に惰性の力が働いているんです!ここを見逃さないで。この惰性の力で進んでいる時(グライド時)に、キックは止めます。キックを打った後止めるんです。左右それぞれ1回ずつキックを打つ。2ビートです。だからラクで速い。そして手の平を上にし、そっと滑り込ませるよう入水する。すると、スムーズに穏やかに重心を前に移動出来るのです。
4 バタフライは2種類ある
バタフライは、私が一番好きな泳法です。
それは、重力と浮力を感じながら、豪快に泳げるからです。また、うねりそのものがとても気もちが良いから。じつは私、クロールはあまり好きではない。なぜなら、常に水面に体をキープさせる為、体が自由にならないからです。本当の意味で体が開放されるのは、水面を縫うように泳ぐバタフライなんですね。それが、バタフライの存在理由です。
豪快なバタフライは、一番疲れそうな泳法だと思うかも知れないですが、
とんでもない!
全然ラクですよ!皆さんが思っている以上に。
では、なぜラクなのか・・?
バタフライは、大きく2つの種類がある。1つは50m~200mで用いる一般的な競泳ルールに乗っとったタイプ。もう1つはグライドバタフライというタイプです。前者は短い距離を全力で泳ぐのが目的であり、入水後すぐにキャッチに入ります。つまりグライドはほとんどしないんです。後者は1500mのような長距離をラクに泳ぐのが目的となります。入水後は必ずグライドします。(グライドはいったん体が水没する為、競泳ルール違反となるので、競泳種目のバタフライには使用不可)
バタフライはグライドすることにより、とてもラクになります。↓
もちろん、やぎさんの目標とするバタフライは後者でしょう。以下、私のスタイルである後者について解説します。
※前者については、52記事『フラットバタフライ』で紹介しています。
私は、バタフライを約7年間研究し泳いできました。連続で最長2000m泳いだことがあります。なぜ、とてつもない長い距離を泳げるのか?
それはクロール同様、重力(と浮力)を使ってグライドするからです。
ロングは、筋力だけではとても成し遂げることは出来ません。ましてや筋力のない私ですから・・。2000mを泳ぎ続けるには極限にまで無駄な力を省く必要がある。
では早速、キャッチについて
ズバリ、スカーリングは要らない。
なぜかと言うと重力と浮力を利用してグライドするからです。このグライドが最も重要なんです。だからグライドバタフライと呼びます。
グライドバタフライは入水後、水面下20~30cmくらいまで潜水します。これが浮力を生むきっかけとなる。浮力というものは深く潜るほど大きくなる。
もちろん潜り過ぎも良くないですが・・。この潜水をキープしたまま滑るようにグライドするんですが、もし外側に開くようにスカーリングすると確実に前面から水の抵抗を受けます。つまり、グライドにブレーキがかかる。私の泳ぎは入水後、両手を頭上でいったん合わせます。親指と人差し指が軽く触れます。手の平は下を向く。この方が無駄な力みがなくなります。全体の腕の形はまるで耳を挟んだあの平泳ぎのストリームラインのようです。
え?肩の延長上にまっすぐじゃないの?これじゃ手に体重が乗らんちゃう?いいえ、体重は、わきの下にしっかり乗ります。ボディで受け止めるんですね。
わきの下に体重をしっかり乗せるには胸を張りプール底に向かって水を押さえるんです。
※速く泳ぐ為にテンポを上げる短距離の場合、手が肩より内側へ入ると 外へ開く動作が時間のロスになるので注意。また、初級者は体幹が安定しない為、肩のライン延長上に伸ばします。
ここで注意すべきは、伸ばしている両腕を水面に対し平行に保つことです。クロールのように斜めに下げるとどんどん体はプール底に向かって潜水し、大きなうねりの泳ぎになってしまいます。また、グライド時の視線は真下ではなく斜め前方です。下を見て、アゴを引き過ぎても深く潜ってしまう。意識の仕方は、とにかく前へ前へ!です。ストリームラインです。これがもっとも抵抗少なくスピードの出る方法です。
そして、浮き上がり直前顔を少し上げ前を見ると、浮力と顔面に受ける水の抵抗により、上半身は勝手に水面上へ向かおうとします。浮上のきっかけは頭部が担ってるんですね。
皆さんよくありがちですが、入水後前を見たままグライドすると、もろに水の抵抗を受け矢速します。さらに早い段階でキャッチもせずプルを開始してしまう。だから溺れるんです。
話がそれましたが、浮上直前前を見ると(アゴを上げると)、手はこれまた勝手に自然に下へ動き出します。このタイミングに腕を緩める。すると肘が軽く曲がります。これがキャッチです。そしてあれよと言うまに自然にプルしちゃうんです。幅の狭いストレートプルになります。それは体幹意識(広背筋でプル)だから。上腕三頭筋を使ってS字を描かないんです。えっ?ちょっと待って?スカスカにならんの?
はい、しっかりキャッチしています。
ドラフティング効果のキャッチです。(詳しくは13キャッチを参照。)
水面に平行に伸ばしたままでも、すでにドラフトティング効果は生じています。なぜなら、上半身は斜め上へ移動しているからです。また、肘は外に張り出し若干曲がるので前腕が進行方向に対し、斜めになる。ちょうど、バランスボールに抱きついている感じです。本当にスカーリングしなくても引っかかります。
仮にですが、手先を水面へ、つまり斜め上に向かわせ外へスカーリングしたとします。問題はその後。内へスカーリングせずに(肘を緩めないで)引くと・・下へ水を押さえるだけになる。その為、ドラフティング効果は無くなるばかりか、身体が立ち失速します。
では、スカーリングしたほうがラクなのはなぜか?それは、しっかりグライド(伸びること)が出来ないからです。すぐかかないと間が持たないんです。なぜそうなるか?それはうねりが大きいから。うねりが大きいと前に進む勢い(惰性の力)も殺されてしまいます。まずは、ストリームラインでまっすぐをキープすることです。それが出来て初めて惰性の力が有効活用されます。
前に進む勢いはリカバリーアームと頭(5Kgもある頭部は水面上に上げるとそれだけで重力が大きく使える)の戻しを素早く行うことで得られる。さらに前へ進む勢いの前段階として、浮力によるスムーズな浮上が必要です。バタフライは水面を縫うようにうねります。浮いたり沈んだりをくり返すんです。
ではもう1つ。ストレートプルより、S字がラクな理由として、スカーリングには、上半身を浮かせる働きがあるからです。このことから、スカーリングしないとスムーズに浮いてこれないということも考えられる。
蛇足ですが、競泳のバタフライの場合ルール上水没は許されません。常に体の一部が水面上に出ていなければならない。だから、グライドがあまり取れないんです。入水したらすぐ浮上しなければならない。だから、スカーリングを入れるんですね。見た目はYの字万歳になります。
潜水とスイムでは潜水が明らかに速い。なぜなら浮力のパワーを使えるからです。この浮力のパワーを最大限に使わせないよう、ルール規制されているのが競泳種目のバタフライです。矢島優也選手は、いつもこのルールに泣かされますよね。
しかしそのルールから開放された時、バタフライはとてもラクなことに気付きます。
話がそれましたが、水面にスムーズに浮上出来ない理由として、もっと根本的な理由がありそうです。
それは水中で息を止めていないこと。水泳の呼吸は、吐く→吸う→止める。息を吸ったら必ず止めるんです。特にグライドバタフライの場合、水中で吐き続けると肺が小さくなり、グライド後半になってもスムーズに浮上出来なくなる。グライドバタフライを泳ぐ時は必ず肺を最大限に膨らまして泳ぎます。すると、強い浮力が上半身に生じる。肺は上半身にあるからです。
いったん沈んだ上半身は強い浮力により水面に向かいます。スカーリングで水面へ向かわせなくてもいいんです。自然に斜め上へと浮上する。だから、キャッチに続くプルも力は要らない。浮上の補助でしかない。浮力に便乗し、まっすぐ引けば加速していきます。このまま体の外に向かって腕を開けば、いとも簡単にリカバリー出来てしまうんです。もちろん、後方へのフィニッシュも要らない。外へ回す勢いで腕を前に素早く運ぶんです。プルとリカバリーは通続した動きです。決して太もものつけ根で手を休めないようにします。
しかし、浮き袋が小さいとなかなか浮上しない為、腕力で後ろまでフィニッシュしてしまう。すると腰は沈みます。体が立ってしまう。そして背中に重い水を乗せたまま力づくで水面上に飛び出す為、とても疲れます。
というわけで背中の水を、浮力のパワーで押しのけて水面上に出ると、リカバリーと息継ぎが本当にラクになります。
くり返しになりますが、グライド時息を止めるから水没せず、ラクになるんです!
これが、2000mを泳いだ私からのアドバイスです。
注)決して息をこらえないこと!
肋骨を下げてお腹を固めると(プレスという)、突然死を招く恐れがあります。
5 バタフライキック①
ラクに泳ぐには、酸素消費量の多い下肢を使わないことです。つまり、キックは意識して打たない。
私の場合、通常のバタフライでは意識して打っていません。第1キックでさえも意識しない。つまり、意識の上ではキックなしなんです。それでも見た目にはちゃんとキックは入っている。※グライドバタフライの場合、第2キックのみ意識します。第2キックは浮上時には入らない。グライド前に入る。
バタフライのキックというのは体幹がうねるからその波動が下肢に伝わる。勝手に動くんです。下肢は体幹の延長であり、体幹に付随しているものだと考えてください。バタフライもクロール同様、体幹主動で泳ぎます。体幹のうねりに手足を同調させると、見た目にも美しいバタフライになります。
その体幹の扱い方ですが、間違ってはならないことは、腰から動かすのではないということ。肺の入っている胸部からうねるんです。その胸部が水面から出たり入ったりするわけです。つまり、浮き袋を浮かせたり沈めたりするんですね。この意識がとても大切です。この波動が腰を上下させ、キックが打たれるんです。分かり易く言えば、胸を張るそして猫背になる。この繰り返しです。クロール以上に、体幹意誠を持ちます。末端(下肢)は無意識でいいんです。 キックは意識するものではない。
というわけで、ブログタイトルを下記に訂正しちゃおうかな?
キックなしでもバタフライは泳げる!
※スタートやターン直後のドルフィンキックと区別する為、スイム時のキックはバタフライキックと呼ぶことにします。
なお、バタフライキック②は52記事で紹介します。
24 初公開!チャックさんのクロール
スイムビデオ
これは、私が初めて2ビートキックの練習をした時の映像です。まずは地上から。↓
[3kmのイーブンペースで泳いでいます]
次に水中から。2ビートキック練習前の映像↓
同じく水中から。2ビートキック練習後の映像↓
ビデオ解説
今回は、私自身の泳ぎを解説してみたいと思います。
まず全体的な考察から。なんといっても滑るように泳いでいます。DPSが長く、推進力がかなりあります。とても身長150cmとは思えません。これは抵抗の少ない姿勢が出来ているからです。腰もしっかり浮いています。また、左右の側の切り換えも適度な回転角で安定しています。ただ、首に力が入っている為、頭が上がりぎみになっているのが惜しい!あと、壁を蹴ってからの浮き上がりのストリームラインが、かなりあまいですね。頭を下げ腹筋にもっと力を入れて、まっすぐな姿勢を作る必要があります。
次に上半身(ストローク)。緩急のメリハリがあり、軸も安定しています。(頭の動きを見ればわかります。)これは2本のレール上にまっすぐ伸ぱしているから。さらに、肩甲骨を使って肩を前に突き出しているため、体重がしっかり脇の下に乗っています。
リカバリーはなめらかに見えますが、なぜだと思いますか?それは上腕三頭筋に力が入っていないからです。でも、ちゃんと広背筋でフィニッシュしてますよ!
ストローク全体として、肩甲骨がうまく使えています。(腰の回転角と肩の高さを比較するとよくわかります。)ここで間違えてほしくないのは、肩だけでローリングするのではないということ。腰をしっかり回転させることです。つまり、背骨はねじらないことです。肩甲骨を使って肩を水上に上げます。
改善点がないように見えますが、ちゃんとあります。肘がまだ緩んでいません。そしてもっと丁寧に入水すべきですね。水しぶきがまだまだ上がっています。
次に下半身(キック)。練習前は右足がつられて動いています。これが私のキックのクセです。なぜこんなクセがついてしまったかというと,長い間クロールを泳がず、バタフライばかり泳いでいたからです。つまり、ドルフィンキックの名残りなんですね・・。
話が少しそれますが、クロールの改善に取り組む前は、約2年間1500mバタフライを泳ぎ続けていました。当時の記録を見ると、1500mを35分、50mのストローク数が19となっています。こんな競技あるの?と思うでしょ?でもオーストラリアではあるんですね。出場してみたい気がする・・。話を戻します。
キックそのものは一瞬でスナップを効かせて打っています。蹴り終わりはしっかり両足が揃っています。つまり、足のストリームラインが出来ている。ちなみに足先が常に水面から下がっているのは、反張膝だからです。特に修正する必要はありません。※反張膝とは過伸展が容易に起こる膝です。水泳選手に比較的多く見られます。
この時の練習で意識したことは、右足の『がまんの足』
結果としてはギリギリで成功しました。なんとか我慢できています。ただ、ラスト10mになると、またすぐ元に戻ってしまっています。いきなりドルフィンキックが入って大きく泡が立っている。そして水中分解したかのように乱れています。
正しい2ビートが体にしみ込むには,まだまだ時間がかかりそうです。コツコツ練習あるのみ。
キック改善というのは、すごい集中力がないと出来ないんですね・・。ここからも、とても同時に2つのことは意識できないことがわかります。だから2ビートの練習時は、正しく体にしみ込むまでは息つぎを入れないのがポイントです。
23 ゆっくりに見えて速いのはなぜ?
キックと体幹とストロークのタイミングを合わせるとは?
上記三者が一体となって動く。クロールってほんと、難しい泳ぎだなって改めて私は思います。そして、よくもまあ難しい泳ぎを、初心者に練習させるものだ、と。後日水泳界の常識について話そう・・。つぶやきはこれくらいにして。
さて、上級者の泳ぎに共通する特徴として、ゆっくりに見えても泳ぐスピードが速いということが上げられます。ゆっくりなのに速い。一見、 矛盾した現象に感じるのですが、なぜだと思いますか?それは速く動かす(力を入れる)パートと、ゆっくり動かす(力を抜く)パートという『メリハリ』があるからです。
皆さんは、ゆっくり泳ぐ時はプルもゆっくり動かすものだと思っていませんか?実は、これは大きな誤解です。
私がゆっくり泳ぐ時は、水上動作(リカバリー)はゆっくりでも、水中の動作(プル)は素早いんです。
さて・・
人間、力を入れっぱなしではとても疲れる。どんなに筋力があっても疲れます。筋肉は、収縮と弛緩をくり返します。伸び縮みする。だから、関節運動ができる。これは誰でも分かるよね?そして、筋肉はリラックス(弛緩)した状態が一番パワーが出せる。なぜなら、縮みしろがある状態だから。これをタメとも言います。常に力を入れていたら(収縮した状態)、これ以上収縮できないでしょ?力をぬく(弛緩)、力を入れる(収縮)、このメリハリが大切。これを体全体で統一させることがコンビネーションです。すると、各部位のタイミングも自然に決まります。↓
入水直前、頭の横の手は脱力します。力を入れる準備、つまりタメを作るんです。前に紹介したサメのポーズのことです。さらにいうと、この脱力した時が、反対側の手のキャッチのタイミングなんですね。この時にキックの準備として軽く膝も力をぬく。
そして腕の落下(入水)と同時に全身に力が入る。つまり、キックが入り、体の回転時、腹筋も力が入り腹圧で腰から肩が固定される。前に伸ばす腕は鋭くまっすぐ水中を貫き、反対の腕も広背筋に力が入りプルする。全て同時にです。
同時 ・・同時・・同時・・どうじ・・Doji・・・止まれ!
ついに壊れたかい!
この腕の落下により、左から右、右から左へ重心を移動させます。この切り換えは一瞬です。一瞬の間に全身に力が入り体幹が回転する。まさに空手そのものです。切り換え以外はリラックスする。このメリハリがあるから、どれだけ泳いでもスタミナがきれないんです。ラクに泳げるんです。もし、それぞれがバラバラに動くと歯車が狂い、とても疲れます。
22 2ビートキックについて
↑今回はゴロがいいね!にーにーにーにほんぶんかセ~ンタ~♪
ところで、ブログのタイトルは『キックなし』と書いてますが、私は最近2ビートキックも使います。
おいおい話が違うだろ!って突っ込みたくなると思うけど、最後まで聞いてちょ。そもそも、私がなぜキックなしで泳いできたのか?それは06で話したように、過去のクセのあるキックを忘れる為だったんです。最初はどうしても無意識に余計なキックを打ってしまう。打つな!と体に命令しても言うことを聞かないんです。
キックなしクロールの本当の目的は、足を動かさず、まっすぐ伸ばす訓練、言いかえると、『がまんの足』をクセにする為だったんです。↓
今の私は、『正しい2ビートキック』を体にしみ込ませる練習に取り組んでいます。
私のキックは、皆さんのキックとは明らかに違います。なにが?それは目的が違います。
体幹の回転を助けるキックです。前に進むためのキックではないんです。
だから、2ビートキック単独では、ちっとも前には進みません。ではどうなるか?体幹が回転します。強く打つと、体操の白井選手のようにクルッと1回転してしまいます。これが正しい2ビートです。
体が回ると前へ進まないじゃん!そう思うでしょ?でも実際は違います。前回紹介したストロークと組み合わせると、驚くほど前によく進みます。私がイメージするのは、スクリューなんです。ワインボトルのコルクを抜くときのグルグルがあるじゃん。回転方向のベクトルを前方向のベクトルに変換するわけです。こう説明すればわかりやすいはず。これで体幹の回転が推進力を生むという謎が解けたでしょ?なぜ斜め前方に腕を伸ぱすのかということも。
キックで体幹の回転を強固なものにする。
さすがに、本気で速く泳ごうとすると、キックなしでは限界があります。それに、重心移動によるブレが下半身に生じます。2ビートキックは、下半身のスタビライザーの役目もするんですね。
練習時、時々キック起点に体幹が回り、入水する腕へと(→TIスイムの説明を引用していましたが、実際は腕の入水が起点となっている)完全に連動するときがあります。その時は全然疲れない、楽というか、本当に異次元の世界に足を踏み入れたような感じです。
一言で表現するならば、『一体感』。それぞれの動きが一体となる。そして、水も一体となる。これを知ってしまうと病みつきになります。
あなたも、ぜひ味わってほしい!せっかく同じ水泳をやってるんだから!あなたも従来のクロールのイメージは払拭して、まっさらな状態で見なおしてみて?
ここで私からのアドバイス!2ビートキックを練習する時はプルブイを股に狭んでやると、ちょうどいい蹴り幅になります。私も2ビートキックを練習する時は、例外的にプルブイを狭みます。プルブイは、浮かす為ではなく股を閉じる訓練に有効なんですね。
とにかく、これだけは言えます。
キックなしでクロールを泳いできた甲斐があった!
おかげで、すんなり苦労せず正しい2ビートキックが出来ちゃいました。
次回は2ビートキックとストロークのタイミングについて話したいと思います。
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